櫻貿易株式会社
技術・仕様・EMS中級

高圧連系の蓄電設備に出力変化速度5秒以上 ― 関西電力送配電が求めるランプ20%/秒以下・ステップ10%/ステップ以下

関西電力送配電は、高圧配電線に新たに蓄電設備を連系するお客さま向けに、充放電時の出力変化速度の設定を求める文書を示した。充電時・放電時の出力が0%から定格出力100%まで変化する時間を5秒以上とし、出力変化率はランプ状で20%/秒以下、ステップ状で10%/ステップ以下とする内容である。同社系統に逆潮流しない蓄電設備は対象外とされる。PCS・EMSのランプレート設定に直結する、地域固有の連系技術要件である。

このページの要点

  1. 関西電力送配電は、高圧配電線に新たに連系する蓄電設備に対し、充電時・放電時の出力が0%から定格出力100%まで(またはその逆)変化する時間を5秒以上とする設定を求めている。
  2. 出力変化率は、出力変化がランプ状の場合は20%/秒以下、ステップ状の場合は10%/ステップ以下(詳細波形は別紙に図示)。
  3. 対象は高圧配電線に連系する蓄電設備で、同社系統に逆潮流しない蓄電設備は対象外。背景は、蓄電設備の高速な充放電が当該系統の電圧位相を急峻に変化させ、周辺設備で意図しない保護リレー動作(不要解列)等を生じうることにある。

出典:関西電力送配電株式会社『蓄電設備の系統連系時における「出力変化速度」の設定のお願いについて(高圧連系)』。

要旨 ― ひと言でいえば

関西エリアで高圧連系する蓄電設備には、充放電のアクセルとブレーキを急に踏み込まないことが求められる。0%から100%まで最低5秒。PCSのランプレートを連系協議の前に決め打ちしていると、仕様変更が必要になる。

目次

  1. 求められる設定内容 ― 5秒以上・20%/秒以下・10%/ステップ以下
  2. 背景 ― 電圧位相の急変と周辺設備の不要解列
  3. 適用対象と対象外 ― 逆潮流の有無が分岐点
  4. PCS・EMS設計と調整力参加への影響
  5. よくある質問(Q&A)
  6. 編集部の見立て(独自分析)
  7. 出典(一次情報)

求められる設定内容 ― 5秒以上・20%/秒以下・10%/ステップ以下

まず、何をいくつに設定するよう求められているかを確認する。

図1:求められる出力変化速度の設定内容(変化時間・ランプ状・ステップ状)

高圧連系の蓄電設備に求める出力変化速度の設定を示す図。変化時間5秒以上、ランプ状20%/秒以下、ステップ状10%/ステップ以下

出典:関西電力送配電『蓄電設備の系統連系時における「出力変化速度」の設定のお願いについて(高圧連系)』。詳細波形は同文書の別紙に図示。

関西電力送配電が示した設定内容は明快である。蓄電設備の充電時・放電時における出力が0%から定格出力100%まで(または定格出力100%から出力0%まで)変化する時間を5秒以上とすること、そして出力変化率について、出力変化がランプ状の場合は20%/秒以下、ステップ状の場合は10%/ステップ以下とすることである。詳細な波形は同文書の別紙に図示されている。

一次資料の記載(要旨)

蓄電設備の充電時・放電時における出力が0%から定格出力100%(または定格出力100%から出力0%)まで変化する時間を5秒以上とすること。出力変化率については、出力変化がランプ状の場合は20%/秒以下、ステップ状の場合は10%/ステップ以下とすること。

— 蓄電設備の系統連系時における「出力変化速度」の設定のお願いについて(高圧連系)

背景 ― 電圧位相の急変と周辺設備の不要解列

なぜ速度そのものを制限するのか。因果は文書に明記されている。

図2:出力変化速度を制限する理由 ― 電圧位相の急変と周辺設備の不要解列

蓄電設備の高速な充放電が系統の電圧位相を急峻に変化させ、周辺設備の保護リレー不要解列を生じうる因果を示す図

出典:関西電力送配電『蓄電設備の系統連系時における「出力変化速度」の設定のお願いについて(高圧連系)』。

背景として示されているのは、蓄電設備の系統連系申込が増加傾向にあるなか、蓄電設備の高速な充電・放電が周辺の系統利用者(需要者・発電事業者)に電力品質上の影響を与える可能性があることである。

蓄電設備は充電・放電時の出力を高速に変化させることが可能であり、その特性により当該系統の電圧位相を急峻に変化させるおそれがある。この場合、周辺の発電設備や蓄電設備において意図しない保護リレー動作による不要解列や、電圧変動面の影響等を与える可能性があるとされている。

適用対象と対象外 ― 逆潮流の有無が分岐点

同じ高圧連系でも、逆潮流するかどうかで適用が分かれる。

対象設備は「高圧配電線に連系する蓄電設備(当社系統に逆潮流しない蓄電設備を除く)」とされている。逆潮流しない蓄電設備は対象外であり、自家消費・ピークカット用途など連系形態によって適用可否が分かれる。事業設計の段階で、自社の蓄電設備が逆潮流する構成かどうかを確認しておく必要がある。

PCS・EMS設計と調整力参加への影響

ランプレート制約は、収益源となる商品の応動性能と正面から関わる。

本要件は、関西エリアで高圧配電線に連系する系統用・需要地併設の蓄電設備のPCS・EMS制御に直接影響する。出力変化時間5秒以上・ランプ状20%/秒以下というランプレート制約は、需給調整市場のうち速応性が要求される商品(特に一次調整力・二次調整力など)への応動性能や、急速充放電を前提とした制御ロジックの設計前提を左右する。

新規に高圧連系する蓄電設備は、連系協議とPCS仕様の確定段階で本要件を織り込むことが前提となる。逆潮流しない構成であれば対象外となるため、用途・連系形態の設計と技術要件の適用範囲を併せて判断したい。

いま確認すべきこと

  • 関西エリアで高圧配電線に新規連系する蓄電設備の事業者は、PCS・EMSのランプレート設定を出力0%から100%まで5秒以上(ランプ状20%/秒以下・ステップ状10%/ステップ以下)に対応させ、連系協議に織り込む。
  • 需給調整市場(一次・二次調整力等)への参加を想定する場合、本ランプレート制約と商品の応動要件の整合性を事前に検証する。
  • 自社の蓄電設備が逆潮流する構成か否かを確認し、本要件の適用対象に該当するかを連系形態の設計段階で判定する。

読者別の緊急度

初級(投資家・土地オーナー)2/5

収益への直接影響は限定的だが、関西エリア案件では応答性能の制約として把握しておきたい。

中級(建設・メーカー・設計)5/5

PCS・EMSの設計・連系担当は、新規高圧連系でランプレート要件を今すぐ織り込む必要がある。

上級(事業者・アグリゲーター)4/5

調整力の応動要件とランプレート制約の整合を関西案件で確認すべき。

よくある質問(Q&A)

具体的に何を設定するよう求められていますか?

蓄電設備の充電時・放電時における出力が0%から定格出力100%まで(または定格出力100%から出力0%まで)変化する時間を5秒以上とすることが求められています。あわせて出力変化率について、出力変化がランプ状の場合は20%/秒以下、ステップ状の場合は10%/ステップ以下とすることが示されています。詳細な波形は別紙に図示されています。

対象となる設備は何ですか?

高圧配電線に連系する蓄電設備が対象です。ただし、関西電力送配電の系統に逆潮流しない蓄電設備は対象から除かれます。

なぜ出力変化速度に制限が必要なのですか?

蓄電設備は充電時・放電時の出力を高速に変化させることができ、その特性により当該系統の電圧位相を急峻に変化させるおそれがあるためです。その場合、周辺の発電設備や蓄電設備において意図しない保護リレー動作による不要解列や、電圧変動面の影響等を与える可能性があるとされています。

逆潮流しない蓄電設備も対象になりますか?

対象外です。文書では対象設備を『高圧配電線に連系する蓄電設備(当社系統に逆潮流しない蓄電設備を除く)』としており、自家消費・ピークカット用途など逆潮流しない構成の蓄電設備は適用対象から除かれます。自社設備が逆潮流する構成かどうかを連系形態の設計段階で判定する必要があります。

需給調整市場への参加に影響はありますか?

出力0%から定格100%までの変化に5秒以上をかけるというランプレート制約は、速応性が要求される商品(一次調整力・二次調整力等)の応動性能と相反しうるため、関西エリアでの商品参加戦略とPCS制御設計のトレードオフを検討する必要があります。

いつの段階で確認すべきですか?

新規に高圧連系する蓄電設備では、連系協議とPCS仕様の確定段階で本要件を織り込む必要があります。PCS・EMSのランプレート設定を出力0%から100%まで5秒以上(ランプ状20%/秒以下・ステップ状10%/ステップ以下)に対応させたうえで協議に臨むことが実務上の前提となります。

この要請が出された背景は何ですか?

蓄電設備の系統連系申込が増加傾向にあるなかで、蓄電設備の高速な充電・放電が周辺の系統利用者(需要者・発電事業者)に電力品質上の影響を与える可能性があることが背景として示されています。

編集部の見立て(独自分析)

独自分析

  • 出力変化率の上限(ランプ状20%/秒、ステップ状10%/ステップ)は、急峻な出力変化による電圧位相の変動と周辺設備の保護リレー不要解列を抑制する地域固有の連系技術要件であり、グリッドコード・連系要件の実装事例として押さえておく価値がある。
  • 0%から100%まで5秒以上という時定数は、高速応答が収益源となる調整力(特に一次調整力・FFR領域)の応動性能と相反しうる。関西エリアでの商品参加戦略とPCS制御設計はトレードオフとして設計する必要がある。
  • 適用対象が逆潮流する高圧連系の蓄電設備に限定され、逆潮流しないものが除外される点は、連系形態(逆潮あり/なし)が技術要件の適用範囲を分ける実務上の分岐点である。用途設計の段階で判定しておきたい。

※本ブロックは一次資料の事実に基づく編集部の見立てであり、確定情報ではありません(2026年7月時点)。適用の可否・詳細は連系協議で確認してください。

この記事のまとめ

関西電力送配電は、高圧配電線に新たに連系する蓄電設備に対し、充電時・放電時の出力が0%から定格出力100%まで(またはその逆)変化する時間を5秒以上とし、出力変化率をランプ状の場合20%/秒以下、ステップ状の場合10%/ステップ以下とする設定を求めている。背景は、蓄電設備の系統連系申込が増加傾向にあるなかで、高速な充放電が当該系統の電圧位相を急峻に変化させ、周辺の発電設備・蓄電設備において意図しない保護リレー動作による不要解列や電圧変動面の影響を生じうることにある。対象は高圧配電線に連系する蓄電設備で、同社系統に逆潮流しない蓄電設備は除かれる。関西エリアで高圧連系する新規案件は、PCS・EMSのランプレート設定を本要件に適合させたうえで連系協議に臨み、あわせて需給調整市場の速応性が求められる商品への参加を想定する場合は応動要件との整合を事前に検証する必要がある。

編集体制

執筆

BESSNEWS編集部

系統用蓄電池の制度・市場・ファイナンスを一次資料に基づき解説する専門編集チーム。

監修

BESS NEWS編集長

系統用蓄電池の制度・系統運用を専門とする社内専門家。本記事の技術記述・数値を確認。

出典(一次情報)

  1. 関西電力送配電株式会社(系統連系・技術要件)
    https://www.kansai-td.co.jp/
  2. 関西電力送配電『蓄電設備の系統連系時における「出力変化速度」の設定のお願いについて(高圧連系)』/保存ファイル名:20260105_関西送配電_蓄電設備の系統連系時における「出力変化速度」の設定のお願いについて(高圧連系)[689,728B].pdf

本記事は上記一次資料に記載された内容のみに基づいています。なお本PDFは文書本文に2026年5月25日付の日付表記がありますが、ファイル名・掲出は2026年1月5日分であり、関西電力送配電の連系技術要件に関する周知として整理しています。適用の可否・詳細は連系協議でご確認ください。

出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/technology/standard/4602702405001/

本記事は BESS media の転載条件(出典明記のうえ全文転載可)にもとづき転載しています。 記事内容の著作権は転載元に帰属します。

お気軽にご相談ください

系統用蓄電池事業についてなど、まずはお気軽にお話しください。

メールでお問い合わせいただいたお問い合わせには、2〜3営業日以内に担当者よりご返信いたします。
些細なことでも、まずはお気軽にご相談ください。
お問い合わせはこちら

NEWS

お知らせ