系統用蓄電池の新規連系における課題と対応 ― 順潮流混雑の計画値制御は工費約300億円・納期5〜7年、リアルタイム制御は760〜930億円・4年
OCCTOは2026年1月19日の第97回広域系統整備委員会(資料2)で、接続検討申込が急増する系統用蓄電池を早期に連系させるため、充電による順潮流混雑の制御手法を比較した。計画値制御は工費約300億円・納期約5〜7年、リアルタイム制御は工費約760〜930億円・納期約4年で、需給運用面・充電機会・システム構築後の連系の迅速さに着目すれば計画値制御に優位性があると整理された。ただし供給力・調整力・容量市場・需給調整市場への波及を含め、国および関連審議会での議論が必要とされている。
このページの要点
- 計画値制御は工費約300億円・納期約5〜7年、リアルタイム制御は工費約760〜930億円・納期約4年。OCCTOは需給運用面・充電機会・システム構築後の連系の迅速さに着目すれば案A(計画値制御)に優位性があると整理した(2026年1月19日・第97回広域系統整備委員会 資料2)。
- 選択肢は案A(充電制限→計画値制御)/案B(リアルタイム制御)/案C(暫定リアルタイム→計画値)/案D(早期連系追加対策=充電制限契約・導入済み)の4案。第4回次世代電力系統WGからタスクアウトされた検討である。
- 計画値制御を採る場合、事業者側には充電計画の提出と計画値制御対応PCSの導入が必要。順潮流出力制御の共通課題として調整力(下げ代確保)と供給力(広域予備率・供給信頼度評価での考慮)が挙げられ、容量市場・需給調整市場への影響も考えられるとされた。
出典:OCCTO 第97回広域系統整備委員会(2026年1月19日)資料2『系統用蓄電池の新規連系における課題と対応』。
蓄電池を早くつなぐために、充電側(順潮流)の混雑をどう抑えるか。前もって計画から絞る「計画値制御」は安いが遅く、実潮流を見て絞る「リアルタイム制御」は速いが高い。OCCTOは需給運用面などで計画値制御に優位性があると整理したが、供給力・調整力・他市場への波及は未整理であり、方式は確定していない。
目次
- 連系急増と順潮流混雑制御の4つの選択肢
- 計画値制御 vs リアルタイム制御|工費・納期・課題の比較
- 充電制限が供給力・調整力・他市場に与える影響
- 蓄電池事業者・アグリゲーターの実務対応
- よくある質問(Q&A)
- 編集部の見立て(独自分析)
- 出典(一次情報)
連系急増と順潮流混雑制御の4つの選択肢
逆潮流(放電)ではなく、充電による順潮流の混雑をどう扱うかが論点である。
OCCTOは2026年1月19日の第97回広域系統整備委員会において、資料2『系統用蓄電池の新規連系における課題と対応』を示した。系統用蓄電池の接続検討申込数が急増するなか、順潮流側(充電方向)の混雑を生じさせずに早期に連系させる手法を検討したもので、第4回次世代電力系統WGからタスクアウトされた検討である。
示された選択肢は次の4案である。計画値制御は、ローカル系統の逆潮流ノンファーム接続方式を参考にした方式と位置づけられている。
計画値制御とリアルタイム制御の仕組み
計画値制御は、発電・需要計画の断面で想定潮流を計算し、運用容量を超過する場合に蓄電池の充電出力予定値を抑制する制御である。実務上は、ゲートクローズ(GC)から実需給までの1時間のあいだに制御量の計算とPCSスケジュールの書き換えを行う必要がある。
リアルタイム制御は、北海道エリアで試行的に取り組まれている方式で、設備潮流が運用容量を超過した場合に蓄電池の充電上限を90%・80%……0%と段階的に引き下げる自端制御である。資料では1系統あたり200MWとされている。
計画値制御 vs リアルタイム制御|工費・納期・課題の比較
費用が小さく納期が長い方式と、費用が大きく納期が短い方式のトレードオフである。
図1:計画値制御とリアルタイム制御の工費・納期・需給運用面の比較
出典:OCCTO 第97回広域系統整備委員会(2026年1月19日)資料2。計画値制御=逆潮流側システム導入予定の9社計(子局・通信線工事費を除く)、リアルタイム制御=北海道を除く9社計。2026年1月19日時点の検討段階であり方式は確定していない。
両方式の工費・納期は次のとおり整理された。計画値制御の工費約300億円は逆潮流側システムを導入予定の9社計で、子局・通信線工事費は除かれている。リアルタイム制御の工費約760〜930億円は北海道を除く9社計である。
納期は計画値制御が約5〜7年、リアルタイム制御が約4年である。計画値制御の納期には着手条件が含まれ、順潮流計画値制御対応PCSの仕様決定、計画値制御の詳細仕様決定、一部エリアの逆潮流側システム運開が前提とされている。
計画値制御の3つの課題
計画値制御には次の課題が示された。第一に出力制御量で、想定潮流の誤差により実潮流を見るリアルタイム制御よりも制御量が大きくなるが、代替充電で緩和可能とされる。第二に需給バランス制約による出力制御との協調。第三に逆潮流混雑との協調で、多段の制御量計算が必要となるため計算時間の増加・ハード費用の増加・工期の長期化が懸念されている。
なお、対象系統や対象蓄電池を限定する、充電計画を使用しないといった簡易化策も検討されたが、開発工数の削減効果は確認できなかったとされている。
充電制限が供給力・調整力・他市場に与える影響
順潮流出力制御は、連系の問題にとどまらず市場収益にも波及する。
図2:順潮流出力制御の共通課題(調整力・供給力)と他市場への波及
出典:OCCTO 第97回広域系統整備委員会(2026年1月19日)資料2。容量市場・需給調整市場への影響も考えられるとされた。
資料は、方式の別を問わない順潮流出力制御の共通課題として次の2点を提示した。
共通課題1:調整力
調整電源である蓄電池の調整力が混雑により制約されるため、下げ代の確保が必要。再エネ余剰時の充電制限は再エネ出力制御の増加につながる。
共通課題2:供給力
充電抑制により発電可能量が減り供給力が想定より減少する。広域予備率・供給信頼度評価での考慮の整理が必要。
これらを踏まえ、資料は本件が容量市場・需給調整市場への影響も考えられるとしている。順潮流混雑による充電制限は、充電量の不足を通じて放電(供給力)と調整力の提供能力を制約するため、連系条件の問題が他市場の収益評価に直結する構造にある。
海外事例
需給運用面・充電機会・システム構築後の連系の迅速さに着目すれば案A(計画値制御)に優位性があるが、供給力・調整力・既存系統制約制度(逆潮流側システムを含む)・需給制御への影響を含め、国および関連審議会での議論が必要である。
— 第97回広域系統整備委員会 資料2(各案比較の結論)※ 本記事は2026年1月19日時点の検討段階の整理であり、この時点で制御方式が確定したものではない。本論点はその後の次世代電力系統WGで継続議論されており、後日の整理は別記事(次世代電力系統WG 第7回の整理)で扱う。
蓄電池事業者・アグリゲーターの実務対応
用地選定・機器仕様・運用システムの前提が制御方式によって変わる。
- 連系を計画する事業者は、混雑系統での充電制限(順潮流対策)の適用可能性と、計画値制御対応PCS・充電計画提出といった事業者側対応の要否を、用地選定・機器仕様に織り込む。
- アグリゲーターは、計画値制御導入時の充電計画の提出単位の分割や対応システムの要件を事前に検討する。
- 充電制限が容量市場の供給力評価・需給調整市場の調整力提供に与える影響を試算し、次世代電力系統WG・関連審議会の議論を継続フォローする。
- 納期が約4〜7年と長いことを踏まえ、その間の早期連系が案D(充電制限契約)での対応となる点を、制御量・系統増強リスクとして投資判断に織り込む。
読者別の緊急度
蓄電池の連系制度の方向性(充電制限・連系時期)を今月中に把握しておきたい。
計画値制御対応PCS・充電計画提出の要件に直結するため、いま押さえるべき。
連系可否・時期・他市場への波及に直結する制度設計。いま押さえるべき。
よくある質問(Q&A)
順潮流混雑の制御手法にはどのような選択肢が示されましたか?案A(充電制限から計画値制御へ移行)、案B(リアルタイム制御)、案C(暫定的にリアルタイム制御を行い本対応で計画値制御へ移行)、案D(早期連系追加対策としての充電制限契約・導入済み)の4案が示されました。計画値制御は、ローカル系統の逆潮流ノンファーム接続方式を参考にした方式です。
計画値制御とリアルタイム制御の工費・納期はどう違いますか?計画値制御は工費が約300億円(逆潮流側システムを導入予定の9社計。子局・通信線工事費を除く)、納期が約5〜7年と整理されています。リアルタイム制御は工費が約760〜930億円(北海道を除く9社計)、納期が約4年です。計画値制御は費用が小さく納期が長い、リアルタイム制御は費用が大きく納期が短いというトレードオフの関係にあります。
計画値制御が採用された場合、蓄電池事業者は何を準備する必要がありますか?事業者側の対応として、充電計画の提出と、計画値制御に対応したPCSの導入が必要とされています。アグリゲーションを行う場合は、充電計画の提出単位の分割対応も論点となります。計画値制御はゲートクローズから実需給までの1時間のあいだに制御量の計算とPCSスケジュールの書き換えを行う必要があるため、運用システム側の要件も変わります。
充電制限は容量市場や需給調整市場に影響しますか?資料では、順潮流出力制御の共通課題として調整力と供給力の2点が挙げられています。調整電源である蓄電池の調整力が混雑によって制約されるため下げ代の確保が必要になること、充電抑制により発電可能量が減り供給力が想定より減少するため広域予備率・供給信頼度評価での考慮の整理が必要になることが指摘されています。本件は容量市場・需給調整市場への影響も考えられるとされています。
海外ではどのような制御が行われていると紹介されていますか?世界の系統用蓄電池は中国が65%、米国が25%を占めるとされ、米国ではCAISO・ERCOTで導入されていること、英国ではANM(Active Network Management)により配電事業者が一律制御か先着優先かを選択していることが紹介されています。
OCCTOはどの案に優位性があると整理しましたか?需給運用面・充電機会・システム構築後の連系の迅速さに着目すれば案A(計画値制御)に優位性があると整理されました。ただし、供給力・調整力・既存の系統制約制度(逆潮流側システムを含む)・需給制御への影響を含め、国および関連審議会での議論が必要であると結論づけられており、この時点で方式が確定したものではありません。
編集部の見立て(独自分析)
独自分析
- 工費と納期が逆向きに効く構造が、この検討の要である。安いが遅い計画値制御を待つあいだの連系は案D(充電制限契約)で凌ぐことになり、連系時期と制御量のトレードオフがそのまま事業者の用地・投資判断に跳ね返る。
- 資料が挙げた共通課題(調整力・供給力)は、連系条件の議論が容量市場の供給力評価や需給調整市場の調整力提供にまで及ぶことを示している。連系検討と市場収益の試算を別々に行っている事業者は、前提の突き合わせが必要になる。
- 計画値制御の課題である逆潮流混雑との協調(多段の制御量計算)は、計算時間・ハード費用・工期の三方に効く。納期5〜7年という幅の広さは、この協調設計の難易度を反映していると読める。
※本ブロックは一次資料の事実に基づく編集部の見立てであり、確定情報ではありません。本資料は2026年1月19日時点の検討段階の整理であり、制御方式は確定していません。
この記事のまとめ
OCCTOは2026年1月19日の第97回広域系統整備委員会 資料2で、接続検討申込が急増する系統用蓄電池の早期連系に向け、充電による順潮流混雑の制御手法を比較した。選択肢は案A(充電制限→計画値制御)・案B(リアルタイム制御)・案C(暫定リアルタイム→計画値)・案D(充電制限契約・導入済み)の4案。計画値制御は工費約300億円(逆潮流側システム導入予定の9社計・子局/通信線工事費を除く)・納期約5〜7年でインバランス量が小さく需給運用面で優位、リアルタイム制御は工費約760〜930億円(北海道を除く9社計)・納期約4年で導入は早いがインバランスが拡大し供給力・調整力への影響が大きい。計画値制御を採る場合、事業者側には充電計画の提出と計画値制御対応PCSの導入が必要となる。順潮流出力制御の共通課題として調整力(下げ代確保・再エネ出力制御増)と供給力(広域予備率・供給信頼度評価での考慮)が示され、容量市場・需給調整市場への影響も考えられるとされた。需給運用面・充電機会・システム構築後の連系の迅速さに着目すれば案Aに優位性があると整理されたが、国および関連審議会での議論が必要とされており、本記事の内容は2026年1月19日時点の検討段階の整理である。
編集体制
執筆
BESSNEWS編集部
系統用蓄電池の制度・市場・ファイナンスを一次資料に基づき解説する専門編集チーム。
監修
BESS NEWS編集長
系統用蓄電池の制度・系統運用を専門とする社内専門家。本記事の制度記述・数値を確認。
出典(一次情報)
- 電力広域的運営推進機関(OCCTO)広域系統整備委員会
https://www.occto.or.jp/iinkai/kouikikeitouseibi/ - 第97回広域系統整備委員会(2026年1月19日)資料2『系統用蓄電池の新規連系における課題と対応』
保存ファイル:20260119_OCCTO_系統用蓄電池新規連系課題と対応第97回.pdf
本記事は2026年1月19日付の一次資料に基づいています。記載内容は検討段階のものであり、以後の審議により変更される可能性があります。
出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/institutional/proffessional/4604103102001/
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