容量市場(実需給2029年度)の事後監視結果 ― 応札取消によらず是正を可能にする入札ガイドライン改定を経産大臣へ建議
電力・ガス取引監視等委員会は2026年1月20日、2025年10月にOCCTOが実施した容量市場2025年度メインオークション(対象実需給年度2029年度)の事後監視結果を公表した。売り惜しみは正当理由に該当し問題なしと判断された一方、価格つり上げの監視では3事案が確認され、いずれも意図的とは認められないとしつつ再発防止策の策定・実施が指導された。あわせて、応札取消によらず必要な是正を図ることも可能であると明確化する観点から、電気事業法第66条の14第1項に基づき入札ガイドライン改定が経済産業大臣に建議された。
このページの要点
- 監視委は応札取消によらず必要な是正を図ることも可能であると明確化するため、電気事業法第66条の14第1項に基づき『容量市場における入札ガイドライン』の改定を経済産業大臣に建議した(2026年1月20日公表)。応札取消は容量拠出金の増加・需要家利益の阻害のおそれがあるためとされる。
- 対象は2025年10月にOCCTOが実施した容量市場2025年度メインオークション(対象実需給年度2029年度)。売り惜しみの事後監視では、応札しなかった電源・期待容量を下回った電源はいずれも正当理由に該当し問題なしと判断された。
- 価格つり上げの事後監視では3事案(北海道電力・JERA・東北電力)が確認された。いずれも意図的とは認められないとしつつ、約定価格上昇・容量拠出金増加・需要家利益阻害のおそれがあるとして3社に再発防止策の策定・実施を指導。広域機関は北海道電力の一部電源について応札価格を是正し約定処理を実施した。
出典:電力・ガス取引監視等委員会『容量市場2025年度メインオークション(対象実需給年度:2029年度)に係る事後監視の結果及び「容量市場における入札ガイドライン」の改定の建議』(2026年1月20日公表)。
容量市場という入札の場で「電源の出し惜しみ」「維持に必要な額を不当に上回る応札」が起きていないかを国が事後点検した結果の公表である。売り惜しみは問題なし、価格つり上げでは3事案が確認され再発防止が指導された。加えて、誤りがあっても応札を取り消さずに是正できるようルールを明確化する建議が行われた。
目次
- 容量市場の事前・事後監視の枠組み
- 2029年度の事後監視結果 ― 売り惜しみと価格つり上げ
- 入札ガイドライン改定の建議
- 系統用蓄電池の応札実務への示唆
- よくある質問(Q&A)
- 編集部の見立て(独自分析)
- 出典(一次情報)
容量市場の事前・事後監視の枠組み
監視の対象は、市場支配力を有する事業者の応札行動である。
容量市場では、市場支配力を有する事業者(原則500万kW以上の発電規模)の応札行動により約定価格が不当に上昇することを防ぐため、ガイドラインに基づく事前監視・事後監視が実施されている。監視の類型は2つである。
今回の事後監視の対象は、2025年10月にOCCTOが実施した容量市場2025年度メインオークション(対象実需給年度:2029年度)である。
※ 本記事は事後監視の結果と入札ガイドライン改定の建議に絞って解説する。同オークションの約定結果そのものは別記事(容量市場メインオークション 実需給2029年度の約定結果)で扱う。
2029年度の事後監視結果 ― 売り惜しみと価格つり上げ
以下は公表資料に記載された事実の範囲での整理である。編集部として個別事業者への評価・論評は行わない。
図1:2029年度メインオークションの事後監視結果 ― 売り惜しみと価格つり上げ
出典:電力・ガス取引監視等委員会『容量市場2025年度メインオークション(対象実需給年度:2029年度)に係る事後監視の結果及び「容量市場における入札ガイドライン」の改定の建議』(2026年1月20日公表)。いずれも意図的とは認められないとされている。
売り惜しみ ― 正当理由に該当し問題なし
売り惜しみの事後監視では、応札しなかった電源および期待容量を下回った電源について、正当理由に該当するかが確認された。結果はいずれも正当理由に該当し問題なしと判断されている。
価格つり上げ ― 抽出方法と確認された3事案
価格つり上げの事後監視では、約定価格決定電源とその上下2電源、市場支配力を有する事業者ごとの高値応札3電源などが抽出され、人件費・修繕費等の算定方法が確認された。その結果、3事案が確認されている。
公表資料は、これらについていずれも意図的とは認められないとしたうえで、約定価格の上昇・容量拠出金の増加・需要家利益の阻害のおそれがあるとして、3社に再発防止策の策定・実施を指導したとしている。また、広域機関は北海道電力の一部電源について応札価格を是正し、約定処理を実施した。
入札ガイドライン改定の建議
「取り消す」のではなく「是正する」ことも可能であると明確化する。
図2:入札ガイドライン改定の建議 ― 応札取消によらず是正を可能にする明確化
出典:同資料(2026年1月20日公表)。本記事執筆時点で示されているのは建議の内容。
監視委は、応札を取り消すと容量拠出金の増加・需要家利益の阻害のおそれがあることから、応札取消によらず必要な是正を図ることも可能であると明確化する観点で、電気事業法第66条の14第1項に基づき『容量市場における入札ガイドライン』の改定を経済産業大臣に建議した。
応札を取り消すと容量拠出金の増加・需要家利益の阻害のおそれがあるため、応札取消によらず必要な是正を図ることも可能であると明確化する観点から、電気事業法第66条の14第1項に基づき『容量市場における入札ガイドライン』の改定を経済産業大臣に建議する。
— 監視委 事後監視結果および建議(2026年1月20日公表)系統用蓄電池の応札実務への示唆
応札価格の妥当性監視は、安定電源として参加する蓄電池にも同じ枠組みで及ぶ。
容量市場における応札価格の妥当性監視(売り惜しみ・価格つり上げ)は、安定電源として参加する系統用蓄電池の応札価格にも同じ枠組みで適用される。維持に必要な金額を不当に上回る価格での応札が監視対象となるため、蓄電池の応札価格積算(維持管理コストの根拠)の妥当性確保が制度的に求められる。
市場支配力の基準(原則500万kW以上)に満たない蓄電池事業者は直接の監視対象になりにくいが、約定価格形成の透明性・公正性が確保されることは市場の信頼性に資する。また、入札ガイドライン改定により、誤りがあっても応札取消ではなく是正で対応する運用が明確化される点は、応札実務のリスク低減につながる。
- 容量市場に安定電源として応札する蓄電池事業者は、維持管理コスト(人件費・修繕費等)の算定根拠を、事前監視・事後監視に耐えうる水準で整備する。
- 応札価格が指標価格・基準価格との関係で適切か、事前監視の要否を確認する運用を整える。
- 入札ガイドライン改定(応札取消によらず是正)の内容を、社内の応札手続に反映する。
読者別の緊急度
容量市場の公正性確保の仕組みとして把握しておくとよい。
事業性評価担当は応札価格算定の監視基準を今月中に確認したい。
応札価格の妥当性監視とガイドライン改定は応札実務に直結。今週中に押さえたい。
よくある質問(Q&A)
容量市場の事後監視では何を確認しているのですか?市場支配力を有する事業者(原則500万kW以上の発電規模)による「売り惜しみ」と「価格つり上げ」を監視しています。売り惜しみは、稼働決定電源を応札しない、または期待容量を下回る応札を行うこと、価格つり上げは、電源の維持に必要な金額を不当に上回る価格で応札することを指します。これらにより約定価格が不当に上昇することを防ぐため、ガイドラインに基づき事前監視と事後監視が実施されています。
売り惜しみの事後監視結果はどうでしたか?応札しなかった電源や期待容量を下回った電源について正当理由に該当するかが確認され、いずれも正当理由に該当し問題なしと判断されました。正当理由の例としては、1年以上の休止かつ休廃止予定であること、補修・脱炭素化工事により稼働見通しが不確実であること、廃止決定が公表済みであること、FIT認定予定であることなどが挙げられています。
価格つり上げの事後監視ではどのような確認が行われましたか?約定価格決定電源とその上下2電源、市場支配力を有する事業者ごとの高値応札3電源などを抽出し、人件費・修繕費等の算定方法が確認されました。その結果3事案が確認されています。北海道電力は複数電源で事前監視価格を超える価格で応札、JERAは2電源を事前監視を受けずに基準価格(指標価格9,875円/kW)以上で応札(結果的に適切な算定価格と確認)、東北電力は事前監視で算定方法の誤りを指摘され是正したものの、2021年度メインオークション(実需給2025年度)以降も同様の誤りで回収必要額を上回る価格で応札していたことが確認されました。いずれも意図的とは認められないとされ、3社に再発防止策の策定・実施が指導されています。
約定結果にはどのように反映されましたか?広域機関は、北海道電力の一部電源について応札価格を是正したうえで約定処理を実施しました。この結果は約定結果の訂正版に反映されています。
入札ガイドライン改定の建議とは何ですか?応札を取り消すと容量拠出金の増加や需要家利益の阻害のおそれがあることから、応札取消によらず必要な是正を図ることも可能であると明確化する観点で、電気事業法第66条の14第1項に基づき、容量市場における入札ガイドラインの改定が経済産業大臣に建議されたものです。
系統用蓄電池もこの監視の対象になりますか?容量市場における応札価格の妥当性監視は、安定電源として参加する系統用蓄電池にも同じ枠組みで適用されます。維持に必要な金額を不当に上回る価格での応札が監視対象となるため、応札価格の積算(維持管理コストの根拠)の妥当性確保が制度的に求められます。なお市場支配力の基準(原則500万kW以上)に満たない事業者は直接の監視対象になりにくい一方、約定価格形成の透明性・公正性が確保されることは市場の信頼性に資すると整理できます。
編集部の見立て(独自分析)
独自分析
- 建議の核心は、制裁ではなく是正という手段を制度上明確に置くことにある。応札取消が容量拠出金の増加を通じて需要家に跳ね返るという整理が示されており、監視の目的が価格形成の適正化に置かれていることが読み取れる。
- 価格つり上げ監視の基準が「電源を維持するために容量市場から回収が必要な金額」である以上、応札価格の積算根拠(人件費・修繕費等)の作り方そのものが実務論点になる。蓄電池も安定電源として同じ基準で見られる。
- 東北電力の事案は、確認された範囲が2021年度メインオークション(実需給2025年度)以降にさかのぼる点で、算定方法の一度の誤りが複数年度に及びうることを示している。応札価格算定のプロセス管理は単年度で完結しない。
※本ブロックは公表資料に記載された事実に基づく編集部の見立てであり、個別事業者の行為に対する評価・論評を意図するものではありません。事案の性質はいずれも意図的とは認められないと公表資料に記載されています。
この記事のまとめ
電力・ガス取引監視等委員会は2026年1月20日、2025年10月にOCCTOが実施した容量市場2025年度メインオークション(対象実需給年度2029年度)に係る事後監視の結果を公表した。監視対象は市場支配力を有する事業者(原則500万kW以上の発電規模)の売り惜しみ・価格つり上げである。売り惜しみは、1年以上の休止かつ休廃止予定、補修・脱炭素化工事による稼働見通しの不確実性、廃止決定の公表済み、FIT認定予定等の正当理由に該当し問題なしと判断された。価格つり上げでは、約定価格決定電源とその上下2電源、市場支配力事業者ごとの高値応札3電源等を抽出して人件費・修繕費等の算定方法を確認した結果、北海道電力・JERA・東北電力の3事案が確認され、いずれも意図的とは認められないとしつつ、約定価格上昇・容量拠出金増加・需要家利益阻害のおそれがあるとして3社に再発防止策の策定・実施が指導された。広域機関は北海道電力の一部電源について応札価格を是正し約定処理を実施した。さらに、応札取消によらず必要な是正を図ることも可能であると明確化する観点から、電気事業法第66条の14第1項に基づき『容量市場における入札ガイドライン』の改定が経済産業大臣に建議された。安定電源として容量市場に参加する系統用蓄電池も同じ監視枠組みの下にあり、応札価格の積算根拠の整備が実務課題となる。
編集体制
執筆
BESSNEWS編集部
系統用蓄電池の制度・市場・ファイナンスを一次資料に基づき解説する専門編集チーム。
監修
BESS NEWS編集長
系統用蓄電池の制度・系統運用を専門とする社内専門家。本記事の制度記述・数値を確認。
出典(一次情報)
- 電力・ガス取引監視等委員会
https://www.egc.meti.go.jp/ - 『容量市場2025年度メインオークション(対象実需給年度:2029年度)に係る事後監視の結果及び「容量市場における入札ガイドライン」の改定の建議』(2026年1月20日公表)
保存ファイル:20260120_監視委_容量市場2025年度メインオークション(対象実需給年度:2029年度)に係る事後監視の結果及び「容量市場における入札ガイ.pdf
本記事は2026年1月20日公表の一次資料に基づき、記載された事実の範囲で構成しています。個別事業者の行為に対する評価・論評は行っていません。
出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/institutional/proffessional/4604203102001/
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