需給調整市場2026年度の複合市場見直し ― 募集量1σ化・上限価格15円への引下げと系統用蓄電池の参入余地
資源エネルギー庁は2026年1月23日の制度検討作業部会第110回で、2026年3月13日取引(3月14日受渡分)から前日取引化・30分化される複合市場(一次〜三次①)について、募集量を現在の3σ相当量から1σ相当量へ削減し、上限価格を19.51円/ΔkW・30分から15円へ引き下げる具体水準を示した。競争状況に改善が見られない場合は10円、7.21円/ΔkW・30分等へ段階的に引き下げる。あわせて、系統用蓄電池の接続検討申込の件数が急増していることなどを踏まえ、十分な競争が確認できた場合には募集量を増加させるとした。
このページの要点
- 複合市場(一次〜三次①)の募集量を3σ相当量→1σ相当量へ削減し、上限価格を19.51円/ΔkW・30分→15円へ引き下げる具体水準が示された。競争状況に改善が見られない場合は10円、7.21円/ΔkW・30分等へ段階的に引下げ。適用は2026年3月13日取引(3月14日受渡分)からの前日取引化・30分化に合わせる。
- 資源エネルギー庁は系統用蓄電池の接続検討申込の件数が急増していることなどを踏まえ、新規リソースの参入により応札量が増加することも予想されるとし、十分な競争が働いていることが確認できた場合には募集量を増加させ、競争改善が見られればそれ以上の上限引下げは行わないとした。
- 需給調整市場の運営主体(EPRX)の法的位置づけを法制度上の措置を含めて検討。EPRXは前日取引化・30分化に伴うシステム改修費・保守費の増加を主因に、2026年度の売買手数料単価を0.03円→0.06円/ΔkW・30分へ引き上げる意向を報告した。
出典:資源エネルギー庁『需給調整市場について』(制度検討作業部会第110回・2026年1月23日 資料4、全15ページ)。
調整力の売り枠(募集量)と値段の上限が2026年度から絞られる一方、系統用蓄電池の接続検討申込が急増していることを根拠に、競争が十分に働けば募集量を戻すという条件が明記された。蓄電池の参入動向そのものが、次の制度判断の入力になる設計である。
目次
- 2026年度複合市場の前日取引化と募集量1σ化・上限価格引下げ
- 系統用蓄電池の接続検討申込急増と新規リソース参入の見込み
- 競争状況モニタリングと運営主体・売買手数料の見直し
- 蓄電池事業者・アグリゲーターの実務対応
- よくある質問(Q&A)
- 編集部の見立て(独自分析)
- 出典(一次情報)
2026年度複合市場の前日取引化と募集量1σ化・上限価格引下げ
募集量は3σ相当量から1σ相当量へ、上限価格は19.51円から15円へ。適用は2026年3月13日取引から。
図1:2026年度複合市場の見直し ― 募集量1σ化・上限価格15円・適用時期
出典:資源エネルギー庁『需給調整市場について』(制度検討作業部会第110回・2026年1月23日 資料4、全15ページ)。
資源エネルギー庁は2026年1月23日、制度検討作業部会第110回に資料4『需給調整市場について』(全15ページ)を提出した。第108回・第109回作業部会の議論を踏まえ、2026年3月13日取引(3月14日受渡分)から前日取引化・30分化される複合市場(一次〜三次①)の募集量と上限価格について、具体水準を提示したものである。
募集量は、現在の3σ相当量から1σ相当量へ削減する。一次オフライン枠の調達上限についても、平常時分の1σ相当値へ改めるとされている。上限価格は、19.51円/ΔkW・30分から15円/ΔkW・30分へ引き下げ、市場の競争状況に改善が見られない場合は10円、7.21円/ΔkW・30分等へ段階的に引き下げる。
募集量の見直しには、応札量不足への対処という背景がある。市場外調整力控除の期限が2026年3月であることから、2026年度は応札量が募集量に満たない懸念があったが、1σ相当への統一によって一定程度是正され、適正な競争環境の形成が期待されるとしている。
系統用蓄電池の接続検討申込急増と新規リソース参入の見込み
蓄電池の参入見込みが、募集量を戻す条件として資料に書き込まれた。
図2:募集量を戻す条件 ― 系統用蓄電池の接続検討申込急増と新規リソースの参入
出典:資源エネルギー庁『需給調整市場について』(制度検討作業部会第110回 資料4)。募集量の増加は競争状況の確認を前提とする。
本資料でBESS事業者が最も注目すべきなのは、資源エネルギー庁が募集量の再拡大の根拠として系統用蓄電池の接続検討申込の件数が急増していることに言及した点である。新規リソースの参入により応札量が増加することも予想されるため、十分な競争が働いていることが確認できた場合には募集量を増加させるとし、競争改善が見られればそれ以上の上限引下げは行わないとしている。
市場外調整力控除の期限が2026年3月であることから2026年度は応札量が募集量に満たない懸念があったが、1σ相当への統一で一定程度是正され、適正な競争環境の形成が期待される。特に系統用蓄電池の接続検討申込の件数が急増していることなどを踏まえ、新規リソースの参入により応札量が増加することも予想されるため、十分な競争が働いていることが確認できた場合には募集量を増加させる。
— 資源エネルギー庁『需給調整市場について』(制度検討作業部会第110回 資料4)すなわち、募集量の削減と上限価格の引下げは固定的な結論ではなく、蓄電池を含む新規リソースの参入量に応じて巻き戻し得る条件付きの措置として設計されている。蓄電池の応札実績が積み上がるかどうかが、その後の募集量・上限価格の水準を左右する構図になる。
※ 需給調整市場の価格前提の変化が系統用蓄電池の事業採算にどう効くかは、収益性の観点から別途整理している。関連する制度検討の解説記事はこちら。本記事は制度改定の内容(募集量・上限価格・複合市場の設計)に絞る。
競争状況モニタリングと運営主体・売買手数料の見直し
段階引下げの引き金となるモニタリングの物差しと、EPRXをめぐる2つの論点。
上限価格を10円、7.21円/ΔkW・30分等へさらに引き下げるかどうかは、競争状況の判断に連動する。資料では、前日取引開始後1・2・3・6か月の実績で判断するとされ、確認する指標として募集量に対する応札量、応札価格の分布、余力の価格水準が挙げられている。あわせて、エリアや商品の違いに留意するとされている。
運営主体(EPRX)の位置づけ検討
需給調整市場は、EPRX(一般社団法人電力需給調整力取引所)が私設・任意で運営している。資料では、同時市場の導入も見据え、運営報告やガバナンスの適切性確保等を担保するため、法制度上の措置を含めた運営主体の位置づけを検討するとしている。
売買手数料単価の引上げ
EPRXは、前日取引化・30分化に伴うシステム改修費・保守費の増加を主因として、2026年度の売買手数料単価を0.03円/ΔkW・30分から0.06円/ΔkW・30分へ引き上げる意向を示し、2025年12月に意見聴取を実施したと報告されている。この手数料は需給調整市場ガイドライン上ΔkW応札価格に算入が認められており、蓄電池の入札価格構成に直接反映される費用増となる。
蓄電池事業者・アグリゲーターの実務対応
2026年3月13日の適用開始に向けて確認すべき論点を整理する。
- 2026年3月13日からの募集量1σ化・上限価格15円(→10円・7.21円)を織り込み、複合市場での応札戦略と収益試算を更新する。
- 上限価格の段階引下げが競争状況モニタリング(1・2・3・6か月の実績)に連動するため、自社の応札・約定実績が制度判断に影響することを踏まえ、早期の応札実績づくりを検討する。
- 売買手数料0.06円/ΔkW・30分への引上げを、ΔkW入札価格の費用前提に反映する。
- 前日取引化・30分化に伴う入札オペレーション・EMS側の対応を、適用日である2026年3月13日取引から逆算して確認する。
読者別の緊急度
蓄電池の調整力市場参入余地の変化を今月中に把握しておきたい。
前日取引化・30分化への対応を今週中に確認すべき。
応札戦略・収益試算に直結。3月の適用前に必ず押さえる。
よくある質問(Q&A)
複合市場の前日取引化はいつから始まりますか?2026年3月13日取引(3月14日受渡分)から、一次〜三次①を対象とする複合市場が前日取引化・30分化されます。資源エネルギー庁『需給調整市場について』(制度検討作業部会第110回・2026年1月23日 資料4)に記載された内容です。
募集量の1σ化とは何を意味しますか?複合市場の募集量を、現在の3σ相当量から1σ相当量へ削減する見直しです。一次オフライン枠の調達上限についても平常時分の1σ相当値へ改めるとされています。市場外調整力控除の期限が2026年3月であることから2026年度は応札量が募集量に満たない懸念がありましたが、1σ相当への統一により一定程度是正され、適正な競争環境の形成が期待されるとしています。
上限価格はいくらに引き下げられますか?上限価格は19.51円/ΔkW・30分から15円/ΔkW・30分へ引き下げられます。さらに市場の競争状況に改善が見られない場合は、10円、7.21円/ΔkW・30分等へ段階的に引き下げるとされています。逆に競争改善が見られれば、それ以上の上限引下げは行わないとしています。
系統用蓄電池はこの見直しにどう関係しますか?資源エネルギー庁は、系統用蓄電池の接続検討申込の件数が急増していることなどを踏まえ、新規リソースの参入により応札量が増加することも予想されるとしています。そのうえで、十分な競争が働いていることが確認できた場合には募集量を増加させるとしており、蓄電池の参入動向そのものが募集量の回復や上限引下げの停止を判断する材料に位置づけられています。
競争状況はどのように判断されますか?前日取引開始後1・2・3・6か月の実績で判断するとされています。具体的には、募集量に対する応札量、応札価格の分布、余力の価格水準を確認し、エリアや商品の違いに留意するとしています。
EPRXの売買手数料はどうなりますか?EPRX(一般社団法人電力需給調整力取引所)は、前日取引化・30分化に伴うシステム改修費・保守費の増加を主因として、2026年度の売買手数料単価を0.03円/ΔkW・30分から0.06円/ΔkW・30分へ引き上げる意向を示し、2025年12月に意見聴取を実施しました。あわせて、同時市場導入も見据え、運営報告やガバナンスの適切性確保等を担保するため、法制度上の措置を含めた運営主体の位置づけが検討されています。
編集部の見立て(独自分析)
独自分析
- 資源エネルギー庁が系統用蓄電池の接続検討申込件数の急増を、新規リソース参入の根拠として明示した点が本資料の要である。蓄電池の参入見込みが、募集量増加・上限引下げ停止という制度判断の入力に組み込まれた形になる。
- 上限価格の段階引下げ(15円→10円→7.21円/ΔkW・30分)は、前日取引開始後1〜6か月の競争状況モニタリングに連動する。短期の応札・約定実績が次の制度判断に直結するため、初期の実績づくりの重みが従来より大きい。
- 売買手数料の0.03円→0.06円/ΔkW・30分への倍増は、需給調整市場ガイドライン上ΔkW応札価格への算入が認められている費用である。上限価格が下がる局面での費用増であり、入札価格の組み立てに与える影響は水準以上に大きくなり得る。
※本ブロックは一次資料の事実に基づく編集部の見立てであり、確定情報ではありません(2026年7月時点)。段階引下げの発動可否は今後の競争状況の判断に依存します。
この記事のまとめ
資源エネルギー庁は2026年1月23日の制度検討作業部会第110回に資料4『需給調整市場について』(全15ページ)を提出し、2026年3月13日取引(3月14日受渡分)から前日取引化・30分化される複合市場(一次〜三次①)について、募集量を3σ相当量から1σ相当量へ削減(一次オフライン枠の調達上限も平常時分の1σ相当値へ)、上限価格を19.51円/ΔkW・30分から15円へ引き下げ、競争状況に改善が見られない場合は10円、7.21円/ΔkW・30分等へ段階的に引き下げる具体水準を示した。市場外調整力控除の期限が2026年3月であることによる応札量不足の懸念は1σ相当への統一で一定程度是正されるとし、特に系統用蓄電池の接続検討申込の件数が急増していることなどを踏まえ、十分な競争が確認できた場合には募集量を増加させ、改善が見られればそれ以上の上限引下げは行わないとした。競争状況は前日取引開始後1・2・3・6か月の実績(応札量・応札価格の分布・余力の価格水準)で判断する。あわせて、EPRXの運営主体としての法的位置づけを法制度上の措置を含めて検討し、EPRXは2026年度の売買手数料単価を0.03円から0.06円/ΔkW・30分へ引き上げる意向を報告した。
編集体制
執筆
BESSNEWS編集部
系統用蓄電池の制度・市場・ファイナンスを一次資料に基づき解説する専門編集チーム。
監修
BESS NEWS編集長
系統用蓄電池の制度・系統運用を専門とする社内専門家。本記事の制度記述・数値を確認。
出典(一次情報)
- 資源エネルギー庁 制度検討作業部会
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/jisedai_kiban/system_review/index.html - 資源エネルギー庁『需給調整市場について』(制度検討作業部会第110回・2026年1月23日 資料4、全15ページ)/収録ファイル:20260123_エネ庁_需給調整市場について第110回.pdf
本記事は2026年1月23日の制度検討作業部会第110回 資料4(一次資料)に基づいています。記載内容は今後の審議により変更される可能性があります。
出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/institutional/proffessional/4604503102002/
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