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技術・仕様・EMS上級

系統連系規程JEAC9701-2024の2026年追補版(その1) ― 蓄電設備の出力変化速度・充電時力率の要件を新設

日本電気技術規格委員会(JESC)は令和8年2月17日の第131回委員会で、系統連系規程JEAC9701-2024(JESC E0019(2024))の一部改定3案件を全員賛成で承認した。2026年追補版(その1)の中核は、大容量の蓄電設備が急峻に充放電することで電圧位相が急変し、他の発電等設備の単独運転検出機能が不要動作する懸念に対応する「出力変化速度」要件と、充電時の運転力率(系統側からみて進み)要件の新設である。配電系統に連系する系統用蓄電池の連系協議・設計の前提が直接変わる。

このページの要点

  1. 第131回日本電気技術規格委員会(令和8年2月17日)で、系統連系規程JEAC9701-2024の一部改定3案件が全員賛成で承認され、2026年追補版(その1)として発行された。
  2. 中核は蓄電設備の連系に係る出力変化速度・運転力率の規定の追加。急峻な充放電による電圧位相急変が他の発電等設備の単独運転検出機能(能動方式)を不要動作させる懸念に対応する。充電時の力率は、2024年12月改正の系統連系技術要件ガイドラインで明確化された系統側からみて進みの考え方を規程に反映した。
  3. 出力変化速度の対策が必要かどうかは、連系協議で一般送配電事業者が配電線インピーダンスと連系容量等から位相変動を計算し、申込者に個別に提示する運用であることが議事要録のQ&Aで示された。

出典:JESC『系統連系規程 JEAC9701-2024(JESC E0019(2024))2026年追補版(その1)』および第131回 日本電気技術規格委員会 議事要録(令和8年2月17日)。

要旨 ― ひと言でいえば

蓄電池が一気に充放電すると、周囲の発電設備が「系統が切れた」と誤検知して停止しかねない。これを防ぐため、「急にアクセル/ブレーキを踏まない(出力変化速度)」「充電時は系統電圧を下げないよう力率を調整する」というルールが、系統連系規程に正式に書き込まれた。適用の要否は立地ごとの計算で決まる。

目次

  1. 2026年追補版(その1)の全体像と3つの改定案件
  2. 蓄電設備の出力変化速度・充電時力率要件を読み解く
  3. 出力変化速度は誰がどう決めるのか(第131回JESC 議事要録)
  4. グリッドコード明確化・地域独立系統対策と実務対応
  5. よくある質問(Q&A)
  6. 編集部の見立て(独自分析)
  7. 出典(一次情報)

2026年追補版(その1)の全体像と3つの改定案件

系統連系規程は、発電等設備を電力系統につなぐときの技術要件を定める民間規程である。

一般社団法人日本電気協会 系統連系専門部会がまとめた『系統連系規程 JEAC9701-2024(JESC E0019(2024))2026年追補版(その1)』は、第131回日本電気技術規格委員会(令和8年2月17日開催)において3案件の一部改定が全員賛成で承認されたものである。改定箇所は原則として下線・朱書きで明示されている。

3案件のうち、系統用蓄電池の設計・連系協議に最も直接影響するのは第1案件である。以下ではまず第1案件の要件内容を確認し、続いてその運用判断を議事要録で補ったうえで、第2・第3案件の位置づけを整理する。

蓄電設備の出力変化速度・充電時力率要件を読み解く

BESS固有の「短時間で出力を大きく振れる」「双方向に流れる」という性質が、そのまま新要件の背景になっている。

図1:新設された2要件 ― 出力変化速度と充電時の運転力率

系統連系規程2026年追補版の出力変化速度要件と、放電時の電圧上昇・充電時の電圧低下に対する進み力率を示す図

出典:JESC『系統連系規程 JEAC9701-2024 2026年追補版(その1)』、および同版が参照する2024年12月改正『電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン』。

出力変化速度 ― 電圧位相の急変を抑える

配電系統に連系される蓄電設備は、充放電出力を極めて短時間で変化させることができ、需給調整への貢献が期待される。一方で、大容量の蓄電設備が急峻に充放電すると系統の電圧位相が急変し、他の発電等設備の単独運転検出機能(能動方式)が不要動作する懸念が生じる。この電圧位相の急変を抑えるために整備されたのが、出力変化速度に係る要件である。

充電時の運転力率 ― 放電時の電圧上昇だけでは足りない

蓄電設備は、放電時の電圧上昇に加えて充電時の電圧低下が問題となりうる。2024年12月に改正された『電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン』で蓄電設備充電時の力率(系統側からみて進み)が明確化されたのを受け、追補版では充電時運転力率に係る要件が規定された。低圧連系では、蓄電設備の充電に起因する系統電圧低下の防止のため必要な場合に限り、受電点力率を系統側からみて進み力率としてよい、といった扱いである。

いずれも、充放電が双方向であるという蓄電設備固有の性質に由来する要件であり、PCS側の無効電力制御・出力勾配制御の実装能力が問われることになる。

出力変化速度は誰がどう決めるのか(第131回JESC 議事要録)

規程本体が「何を決めたか」を示すのに対し、議事要録は「なぜそう決め、運用でどう判断するか」を質疑応答付きで記録している。

図2:出力変化速度の必要性を誰がどう判断するか

蓄電設備の出力変化速度の必要性を連系協議で一般送配電事業者が配電線インピーダンスと連系容量から計算し地点ごとに判断する流れの図

出典:第131回 日本電気技術規格委員会 議事要録(令和8年2月17日)の質疑応答(Q&A)。

第131回日本電気技術規格委員会は令和8年2月17日13:00〜17:00、日本電気協会AB会議室およびWebで開催された。委員長は大崎氏(東京大学)、出席は委任状・代理を含め38名で、定足数26名を充足し委員会が成立している。

系統連系規程JEAC9701-2024の改定(系統連系専門部会、資料№3)は全員賛成で承認された。その審議では、改定提案で説明された「必要がある場合は」という条件について委員から質問があり、系統側・系統利用者側のいずれが対策機能を備えるべきか、必要性の判断基準が不明確であるとの指摘がなされている。

この回答は実務上の要点を示している。出力変化速度要件は蓄電池側が常時備えるべき一律の義務ではなく、立地(配電線インピーダンス・連系容量)に依存して連系協議ごとに個別に決まる。規程本体だけでは読み取れない部分であり、議事要録を併読する意味はここにある。

なお同委員会では、令和8年度事業計画(案)の承認、電技解釈第17条の改正(案)および第226・227条の改正(案)と系統連系規程の改定(系統連系専門部会)、電技解釈第17条改正と配電規程・22(33)kV配電規程の改定(配電専門部会)、発電用火力設備規格基本規定の火技省令適合性審議(発電用設備規格委員会)、外部公告案、IEC委員会活動報告、2026年JESC功績賞等も審議・報告されている。

グリッドコード明確化・地域独立系統対策と実務対応

第2・第3案件は、連系協議の予見性を高める方向と、対策手段の選択肢を広げる方向の改定である。

第2案件では、再生可能エネルギー大量導入に必要なグリッドコード(個別技術要件)が追加されたほか、フェーズ1で規定済みだが記載が不明瞭で解釈差が生じうる項目が明確化された。あわせて、グリッドコード検討会で審議されフェーズ1・2で導入された各要件の会議体・規定時期・箇所を体系的に整理した一覧表が付録10として新設されている。要件がいつ・どの会議体で決まり、規程のどこに書かれているかを追える形になったことで、連系協議の参照性が高まる。

第3案件では、NEDO事業(2022〜2026年度)で得た国内外の最新知見に基づき、地域独立系統のブラックスタート時の励磁突入電流に伴う瞬時電圧低下対策として、限流リアクトル設置・ソフトスタート等に加えた新たな技術的知見が追記された。事業者が選択できる対策の幅が広がる改定である。

系統用蓄電池側の実務対応

  • BESS事業者・PCS/EMSベンダーは、PCSの出力勾配制御(ランプレート制限)と充電時の進み力率制御の実装可否・性能を確認し、連系協議で求められうる出力変化速度の範囲を一般送配電事業者と早期にすり合わせる。
  • 配電系統連系の案件では、配電線インピーダンス・連系容量から想定される位相変動と要求出力変化速度を試算し、需給調整・FFR運用への制約を収益モデルに織り込む。
  • 追補版(その1)の下線・朱書き改定箇所と付録10の要件規定経緯一覧を設計標準・連系協議資料に反映し、続報(その2)の発行も継続してフォローする。
  • 電技解釈第17条・第226条・第227条改正の続報(国への要請・施行時期)を追跡し、配電・連系の技術基準改定がBESS設計に与える影響を確認する。

読者別の緊急度

初級(投資家・土地オーナー)3/5

連系要件の追加がBESSの設計・コストに影響しうる方向性を今月中に把握しておきたい。

中級(建設・メーカー・設計)5/5

設計・PCS/EMS担当は出力変化速度・充電時力率要件を直ちに設計標準へ反映すべき最優先事項。

上級(事業者・アグリゲーター)5/5

連系協議・市場運用担当はランプレート制限が需給調整・FFR運用に与える制約を直ちに評価すべき。

よくある質問(Q&A)

2026年追補版(その1)では何が変わりましたか?

系統連系規程JEAC9701-2024(JESC E0019(2024))について、3案件の一部改定が行われました。第1案件は蓄電設備の連系に係る出力変化速度・運転力率の規定の追加、第2案件は再生可能エネルギー大量導入に必要なグリッドコード(個別技術要件)の追加・明確化とフェーズ1・2要件の規定経緯を整理した付録10の新設、第3案件はNEDO事業の知見に基づく地域独立系統の瞬時電圧変動対策の規定追加です。改定箇所は原則として下線・朱書きで明示されています。

蓄電設備の出力変化速度要件とは何ですか?

「蓄電設備の充放電が他の発電等設備に影響を及ぼすおそれがある場合は、蓄電設備の充放電時の出力変化速度を変更する対策を講じること」という要件です。配電系統に連系される蓄電設備は充放電出力を極めて短時間で変化させられますが、大容量の蓄電設備が急峻に充放電すると系統の電圧位相が急変し、他の発電等設備の単独運転検出機能(能動方式)が不要動作する懸念が生じます。この電圧位相の急変を抑えるために整備された要件です。

出力変化速度の対策が必要かどうかは誰が判断しますか?

第131回日本電気技術規格委員会の議事要録によれば、連系協議において一般送配電事業者から申込者に対し、必要な場合にどのような出力変化速度とするかを伝える形になります。検討方法としては、配電線のインピーダンスと連系する容量等により位相変動量が計算で求められるため、その計算結果に基づき地点ごとに判断するとされています。蓄電池側が常時備えるべき義務ではなく、立地に依存して個別に決まる点が実務上の要点です。

充電時の運転力率の要件とはどのようなものですか?

蓄電設備は放電時の電圧上昇に加えて充電時の電圧低下が問題となりうるため、2024年12月に改正された『電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン』で蓄電設備充電時の力率(系統側からみて進み)が明確化されたことを受け、充電時運転力率に係る要件が規定されました。低圧連系では、蓄電設備の充電に起因する系統電圧低下を防止するため必要な場合に限り、受電点力率を系統側からみて進み力率としてよい、といった内容です。

グリッドコード関係では何が追加されましたか?

再生可能エネルギーの大量導入に必要なグリッドコード(個別技術要件)が追加されたほか、フェーズ1で規定済みではあるものの記載が不明瞭で解釈の差が生じうる項目が明確化されました。さらに、グリッドコード検討会で審議されフェーズ1・フェーズ2で導入された各要件について、会議体・規定時期・規定箇所を体系的に整理した一覧表が付録10として新設されています。

系統用蓄電池の事業者・設計者はいま何をすべきですか?

第一に、PCSの出力勾配制御(ランプレート制限)と充電時の進み力率制御の実装可否・性能を確認し、連系協議で求められうる出力変化速度の範囲を一般送配電事業者と早期にすり合わせることです。第二に、配電系統連系の案件では配電線インピーダンス・連系容量から想定される位相変動と要求出力変化速度を試算し、需給調整・FFR運用への制約を収益モデルに織り込むことです。第三に、追補版(その1)の改定箇所と付録10の一覧を設計標準・連系協議資料へ反映し、続報(その2)の発行も継続してフォローすることです。

編集部の見立て(独自分析)

独自分析

  • 出力変化速度要件は「必要がある場合」という条件付きであり、判断は連系協議における一般送配電事業者の位相変動計算に委ねられる。蓄電池側で常時備える義務ではなく立地依存で個別に決まるという構造が、実務上の最重要論点になると見る。
  • 急峻な充放電を前提とする需給調整・FFR等の運用と、出力変化速度の制限は相反しうる。求められるランプレート次第で、PCS/EMSの出力勾配制御の設計とサービス提供能力に制約が生じる可能性がある。
  • 充電時力率の明確化は、従来の放電時電圧上昇対策(遅れ力率)に加えてBESS固有の双方向性に起因する新たな無効電力制御要件と位置づけられる。PCSの仕様選定に影響する。
  • フェーズ1要件の解釈相違の解消と付録10の新設は、要件が連系協議でどう適用されるかの参照性を高め、実務負担の軽減と予見性の向上に働くと考えられる。

※本ブロックは一次資料(追補版および議事要録)の記載事実に基づく編集部の見立てであり、確定情報ではありません(2026年7月時点)。

この記事のまとめ

第131回日本電気技術規格委員会(令和8年2月17日、出席38名/定足数26名で成立)は、系統連系規程JEAC9701-2024(JESC E0019(2024))の一部改定3案件を全員賛成で承認し、2026年追補版(その1)として発行された。第1案件は蓄電設備の連系に係る出力変化速度・運転力率の規定の追加で、大容量の蓄電設備が急峻に充放電した際の電圧位相急変が他の発電等設備の単独運転検出機能(能動方式)を不要動作させる懸念に対応する。要件は「影響を及ぼすおそれがある場合は出力変化速度を変更する対策を講じること」と規定され、必要性の判断は連系協議で一般送配電事業者が配電線インピーダンスと連系容量等から位相変動を計算し、地点ごとに申込者へ提示する運用であることが議事要録のQ&Aで示された。充電時運転力率は、2024年12月改正の系統連系技術要件ガイドラインで明確化された系統側からみて進みの考え方を反映している。第2案件はグリッドコード個別技術要件の追加・明確化と付録10の新設、第3案件はNEDO事業(2022〜2026年度)の知見に基づく地域独立系統の瞬時電圧低下対策の追記である。配電系統連系のBESSは、PCS/EMSの出力勾配制御と充電時進み力率制御の実装を早期に確認し、連系協議での要求水準をすり合わせる必要がある。

編集体制

執筆

BESSNEWS編集部

系統用蓄電池の制度・市場・ファイナンスを一次資料に基づき解説する専門編集チーム。

監修

BESS NEWS編集長

系統用蓄電池の制度・系統運用を専門とする社内専門家。本記事の技術記述・規程記載を確認。

出典(一次情報)

  1. 日本電気技術規格委員会(JESC)
    https://www.jesc.gr.jp/
  2. JESC『系統連系規程 JEAC9701-2024(JESC E0019(2024))2026年追補版(その1)』(令和8年2月17日 第131回JESC承認)/収録資料:20260217_JESC_系統連系規程2026年追補版その1.pdf
  3. 第131回 日本電気技術規格委員会 議事要録(令和8年2月17日)/収録資料:20260217_JESC_doc_968rq.pdf

本記事は上記の一次資料の記載に基づいています。規程の適用にあたっては、追補版本文および連系協議での一般送配電事業者の提示内容をご確認ください。

出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/technology/proffessional/4607003405001/

本記事は BESS media の転載条件(出典明記のうえ全文転載可)にもとづき転載しています。 記事内容の著作権は転載元に帰属します。

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