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市場・価格上級

IEA『Electricity 2026』の系統用バッテリー特集 ― 2024年63GW増設・累計124GW・コスト約150ドル/kWh

国際エネルギー機関(IEA)の年次電力市場報告『Electricity 2026 – Analysis and forecast to 2030』(全225ページ)は、予測期間を従来の3年から2026年〜2030年の5年に拡張し、グリッドとフレキシビリティを特集章に据えた。系統用バッテリーは2024年に63GWを増設して累計124GWに到達し、プロジェクトコストは約40%低下して約150ドル/kWhに。コスト低下と裏腹に、系統接続・許認可の多年度遅延と収益変動という課題も明示されている。

このページの要点

  1. IEA『Electricity 2026』は全225ページ、予測期間を従来3年から2026年〜2030年の5年に拡張。本年版はグリッドとフレキシビリティを特集章とし、需要応答と系統用(utility-scale)バッテリーを詳述している。
  2. 系統用バッテリーの2024年増設は63GWで過去最高を更新し、累計設備容量は124GWに到達。プロジェクトコストは2024年に約40%低下して約150ドル/kWh、リチウムイオンパック価格は2024年に約20%、2025年に約8%低下した。
  3. 最大市場は中国(累計約145GW)。長時間化も進み、英国GBはQ4 2024新設の98%が2時間以上、豪州NEMは2024年以降の95%が2時間以上。一方でIEAは系統接続・許認可の多年度遅延と収益変動・資金調達難を課題として指摘する。

出典:IEA『Electricity 2026 – Analysis and forecast to 2030』。数値・単位・通貨はいずれも同レポートの記載に基づく。

要旨 ― ひと言でいえば

電力業界の「年鑑」の蓄電池版。世界の蓄電池がどれだけ増え(2024年に63GW)、いくら安くなり(約150ドル/kWh)、どの国が伸びているか(中国は累計約145GW)を一冊で示す市場全体の地図帳である。同時に、増えているのに接続できないという系統側のボトルネックも記されている。

目次

  1. 『Electricity 2026』の全体像と特集章
  2. 系統用バッテリーの世界データ(増設量・コスト)
  3. 国・地域別の導入状況と長時間化
  4. コスト低下と裏腹の課題/日本市場への含意
  5. よくある質問(Q&A)
  6. 編集部の見立て(独自分析)
  7. 出典(一次情報)

『Electricity 2026』の全体像と特集章

IEAの年次電力市場見通しが、今年は系統と柔軟性を主題に据えた。

『Electricity 2026 – Analysis and forecast to 2030』は、AI・データセンター・産業/交通/建物の電化を背景に世界の電力需要が急増する「電化の時代(Age of Electricity)」を分析するIEAの年次報告である。電力需要・供給・CO2排出の予測に加え、本年版はグリッドとフレキシビリティを特集章として、需要応答と系統用バッテリーの動向を詳述している。

IEAは系統用バッテリーを、短期フレキシビリティを提供する最も汎用的な手段の一つと位置づける。具体的な役割として、風力・太陽光の統合支援(系統バランシング・系統サポート)、容量提供による供給安全保障、再エネの高需要時へのシフト、ネットワーク増強の繰延、EV・ヒートポンプ・データセンター等の新規負荷の統合支援を挙げている。

系統用バッテリーの世界データ(増設量・コスト)

導入の急増を支えたのは、単年で約40%というコスト低下だった。

図1:2024年の系統用バッテリー世界データ ― 増設63GW・累計124GW・コスト約150ドル/kWh

IEA Electricity 2026が示す系統用バッテリーの2024年増設63GW・累計124GW・コスト約150ドル/kWhの図

出典:IEA『Electricity 2026 – Analysis and forecast to 2030』。通貨・単位はレポート記載のとおり(ドル建て)。

2024年の系統用バッテリー増設は63GWで過去最高を更新し、累計設備容量は124GWに到達した。ピーク需要に対する系統用バッテリーの比率は、カリフォルニアで約25%、南豪州・英国で約15%に達している。2019年にはいずれも5%未満だったとIEAは記す。

コスト面では、2024年にプロジェクトコストが約40%低下して約150ドル/kWhとなり、これが導入急増を支えたとIEAは位置づけている。リチウムイオンパック価格についても、2024年に約20%、2025年に約8%低下したと記載される。

国・地域別の導入状況と長時間化

量の中心は中国、時間軸の長期化は英豪、そして制度が継続時間を決めるカリフォルニア。

図2:国・地域別の導入状況と継続時間の長期化 ― 中国が最大市場、英豪は2時間以上が主流

系統用バッテリーの国別導入量と継続時間の長期化(英国GB98%・豪州NEM95%が2時間以上)を示す図

出典:IEA『Electricity 2026』。中国は2.1時間(2021年)から2.6時間(2025年)と記載。

中国が最大市場である。2024年に42GW/101GWh(平均約2.3時間)、2025年に約66GW/189GWhを増設し、累計は約145GWに達した。2025年末時点で独立系(standalone)が累計の58%を占める。

もう一つの潮流が長時間化(duration の伸長)である。英国GBではQ4 2024の新設の98%が2時間以上、豪州NEMでは2024年以降の95%が2時間以上で、平均は2024年の1.5時間から2027年の2.5時間へ向かうとされる。中国は2.1時間(2021年)から2.6時間(2025年)へ。カリフォルニアは資源充足性ルールにより4時間に集中している。

コスト低下と裏腹の課題/日本市場への含意

安くなっても、つながらなければ稼働しない。IEAはボトルネックも明記している。

IEAは、系統用バッテリーのプロジェクトが系統接続・許認可(用地計画・火災安全等の地元の反対対応を含む)の多年度にわたる遅延、および不確実で変動の大きい収益・資金調達難に直面していると指摘する。グリッドの章では、系統が供給・需要・ストレージ接続のボトルネックとなり、接続キューが過去最高、出力抑制が増加していることが課題とされ、規制改革とグリッド増強技術(GET)が容量を解放する鍵と位置づけられている。

日本市場への含意 ― 一次資料の記載と編集部の見立てを分けて読む

本レポートは世界の電力市場を対象としており、日本の制度に直接言及して何かを定めるものではない。日本市場への当てはめは、あくまで一次資料に記された事実と、それを踏まえた編集部の解釈を区別して扱う必要がある。

  • BESS事業者・投資家は、コスト約150ドル/kWh・2024年に約40%低下や長時間化トレンドを、事業計画・商品設計(容量・継続時間)の国際ベンチマークとして活用する。
  • 制度関係者は、カリフォルニアの資源充足性ルールが4時間の継続時間を誘導した事例を、継続時間要件を検討する際の参照材料とする。
  • 系統接続・許認可遅延(火災安全に関する地元の反対を含む)という共通課題を踏まえ、連系・立地戦略とステークホルダー対応を検討する。

読者別の緊急度

初級(投資家・土地オーナー)3/5

世界のBESSのコスト低下・導入急増の潮流を今月中に把握しておくと判断材料になる。

中級(建設・メーカー・設計)3/5

長時間化・コスト動向を商品戦略の参考に今月中に確認したい。

上級(事業者・アグリゲーター)3/5

継続時間要件・系統接続課題の国際比較として今月中に確認したい。

よくある質問(Q&A)

IEA『Electricity 2026』とはどのようなレポートですか?

国際エネルギー機関(IEA)の年次電力市場報告『Electricity 2026 – Analysis and forecast to 2030』で、全225ページです。AI・データセンター・産業/交通/建物の電化を背景に世界の電力需要が急増する「電化の時代(Age of Electricity)」を分析し、予測期間を従来の3年から2026年〜2030年の5年に拡張しています。本年版はグリッドとフレキシビリティを特集章とし、需要応答と系統用(utility-scale)バッテリーの動向を詳述している点が特徴です。

系統用バッテリーは2024年にどれだけ増えましたか?

IEAによれば、2024年の系統用バッテリーの増設は63GWで過去最高を更新し、累計設備容量は124GWに到達しました。ピーク需要に対する系統用バッテリーの比率は、カリフォルニアで約25%、南豪州・英国で約15%に達しています(2019年はいずれも5%未満)。また平均容量は米国で2021年の約15MWから2024年の約35MWへ倍増しています。

系統用バッテリーのコストはどこまで下がりましたか?

IEAは、プロジェクトコストが2024年に約40%低下して約150ドル/kWhになったとし、これが導入急増を支えたと位置づけています。リチウムイオンパック価格については2024年に約20%、2025年に約8%低下したとしています。通貨・単位はいずれもレポート記載のとおりです。

どの国が最大市場ですか?

中国が最大市場です。2024年に42GW/101GWh(平均約2.3時間)、2025年に約66GW/189GWhを増設し、累計は約145GWに達しています。2025年末時点で独立系(standalone)が累計の58%を占めます。大型案件としては、ドイツでLEAGとFluenceが1,000MW/4,000MWhの欧州最大級プロジェクトを建設中、豪州Eraringは2027年に460MWから700MW(2,800MWh)へ拡張予定、サウジアラビアはBishaで500MW/2,000MWhを2025年に稼働させたと記載されています。

蓄電池の長時間化はどこまで進んでいますか?

英国GBではQ4 2024の新設の98%が2時間以上、豪州NEMでは2024年以降の95%が2時間以上で、平均は2024年の1.5時間から2027年の2.5時間へ向かうとされています。中国は2.1時間(2021年)から2.6時間(2025年)へ、カリフォルニアは資源充足性ルールにより4時間に集中しています。

IEAは課題として何を指摘していますか?

系統接続・許認可(用地計画・火災安全等の地元の反対対応を含む)の多年度にわたる遅延と、不確実で変動の大きい収益・資金調達難に直面しているとIEAは指摘しています。グリッドの章では、系統が供給・需要・ストレージ接続のボトルネックとなり、接続キューが過去最高、出力抑制が増加していることが課題とされ、規制改革とグリッド増強技術(GET)が容量を解放する鍵と位置づけられています。

編集部の見立て(独自分析)

独自分析

  • プロジェクトコストが単年で約40%低下し約150ドル/kWhに至ったという数値は、投資回収・LCOSの前提を更新すべき水準の変化と見る。急速なコスト低下が導入加速の主因と位置づけられている点は、事業計画の前提見直しを促す。
  • 英国98%・豪州95%という2時間以上の比率と、カリフォルニアの4時間集中が資源充足性ルールに起因するという記載は、市場制度が継続時間を規定することを示している。継続時間は技術要件であると同時に制度設計の産物である、という読み方ができる。
  • 系統接続・許認可の多年度遅延と収益変動・資金調達難は、コスト低下と裏腹のボトルネックである。安くなったから増えるのではなく、つながって初めて増えるという構図は、日本のBESS事業の連系・立地・ファイナンス戦略にも共通しうる課題認識だと考える。

※本ブロックはIEA『Electricity 2026』の記載事実に基づく編集部の見立てであり、IEAの見解ではありません(2026年7月時点)。日本市場に関する記述は編集部の解釈です。

この記事のまとめ

IEA『Electricity 2026 – Analysis and forecast to 2030』(全225ページ)は、予測期間を従来3年から2026年〜2030年の5年に拡張し、グリッドとフレキシビリティを特集章として需要応答と系統用バッテリーを詳述した。系統用バッテリーの2024年増設は63GWで過去最高、累計は124GW。プロジェクトコストは2024年に約40%低下して約150ドル/kWh、リチウムイオンパック価格は2024年約20%・2025年約8%低下した。ピーク需要比はカリフォルニア約25%、南豪州・英国約15%(2019年はいずれも5%未満)、米国の1件あたり平均容量は2021年約15MWから2024年約35MWへ倍増。最大市場の中国は2024年に42GW/101GWh、2025年に約66GW/189GWhを増設して累計約145GW、2025年末で独立系が58%を占める。長時間化も進み、英国GBはQ4 2024新設の98%、豪州NEMは2024年以降の95%が2時間以上、カリフォルニアは資源充足性ルールにより4時間が集中する。一方でIEAは、系統接続・許認可の多年度遅延(用地計画・火災安全等の地元の反対対応を含む)と収益変動・資金調達難、接続キュー過去最高と出力抑制の増加を課題として挙げている。

編集体制

執筆

BESSNEWS編集部

系統用蓄電池の制度・市場・ファイナンスを一次資料に基づき解説する専門編集チーム。

監修

BESS NEWS編集長

系統用蓄電池の制度・系統運用を専門とする社内専門家。本記事の数値記述と出典対応を確認。

出典(一次情報)

  1. IEA『Electricity 2026』(Electricity 2026 – Analysis and forecast to 2030)
    https://www.iea.org/reports/electricity-2026
  2. 収録資料:20260219_IEA_Electricity2026_全文.pdf

本記事の数値・単位・通貨はすべてIEA『Electricity 2026』の記載に基づいています。日本市場に関する記述は編集部の解釈であり、同レポートが日本について述べたものではありません。

出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/market/proffessional/4607203001001/

本記事は BESS media の転載条件(出典明記のうえ全文転載可)にもとづき転載しています。 記事内容の著作権は転載元に帰属します。

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