櫻貿易株式会社
制度・政策・審議会上級

2025年度における揚水随契の運用状況等について② ― 蓄電池事業者ヒアリングと投資予見性の論点

電力・ガス取引監視等委員会の第18回制度設計・監視専門会合(2026年2月20日)で、一般送配電事業者による揚水発電の随意契約(揚水随契)について、調整力提供事業者である蓄電池事業者・揚水供給事業者からのヒアリングが実施された。蓄電池事業者は、揚水随契が市場の透明性や投資予見性を損なう懸念を表明し、継続するのであればエリアごとの競争状況を踏まえたスモールスタートを求めた。以下はいずれも会合で示された各主体の意見であり、確定した方針ではない。

このページの要点

  1. 電力・ガス取引監視等委員会の第18回制度設計・監視専門会合(2026年2月20日)で、議題「2025年度における揚水随契の運用状況等について②」として、蓄電池事業者・揚水供給事業者へのヒアリングが実施された。
  2. 蓄電池事業者は、①揚水随契は市場の透明性・投資予見性を損なう懸念がある、②継続する場合はエリアごとの競争状況を踏まえてスモールスタートとすべき、③特に来年度の北海道エリアは慎重に検討すべき、と主張した。
  3. 委員からは、揚水随契のコスト抑制効果を踏まえポートフォリオ調達自体を強く否定する意見はなかった一方、随契の妥当な規模をエリアごとの競争状況・参加機会から検討すべき、揚水以外の電源にも随契の門戸を開くべきとの意見が示された。

出典:電力・ガス取引監視等委員会 第18回 制度設計・監視専門会合 資料4「2025年度における揚水随契の運用状況等について②」(2026年2月20日)。本記事に記載の意見は、いずれも会合で各主体が述べたものである。

要旨 ― ひと言でいえば

送配電会社が揚水発電と相対契約(随意契約)で調整力を確保する仕組みについて、競合する蓄電池側が「それでは市場が育たず投資が読めない」と意見を述べる場が設けられた回である。調達コストの安さと、市場参加機会の確保をどう両立させるかが論点になっている。

目次

  1. 揚水随契とは何か ― 第18回会合の位置づけ
  2. 蓄電池事業者・揚水供給事業者の主張
  3. 一般送配電事業者の回答と委員の意見
  4. 需給調整市場と蓄電池への影響・今後の追跡点
  5. よくある質問(Q&A)
  6. 編集部の見立て(独自分析)
  7. 出典(一次情報)

揚水随契とは何か ― 第18回会合の位置づけ

前回は一般送配電事業者の側から、今回は調整力を提供する側から意見を聴く回である。

揚水随契とは、一般送配電事業者による揚水発電の随意契約(相対契約)を指す。第18回制度設計・監視専門会合では、この揚水随契の2025年度における運用状況等が議題となり、調整力提供事業者へのヒアリングが行われた。

蓄電池事業者・揚水供給事業者の主張

同じ「調整力提供事業者」でも、立場によって主張は分かれた。以下はいずれもヒアリングで述べられた各主体の意見である。

図1:ヒアリングで示された意見(発言主体別) ― 蓄電池事業者の懸念とスモールスタート

揚水随契に対する蓄電池事業者の投資予見性の懸念とスモールスタート要望、揚水供給事業者の意見を並べた図

出典:電力・ガス取引監視等委員会 第18回 制度設計・監視専門会合 資料4(2026年2月20日)。いずれもヒアリングにおける各事業者の意見であり、会合の結論ではない。

蓄電池事業者の主張は、揚水随契の存廃そのものというより、規模と進め方に軸足がある。「継続するのであればスモールスタート」「北海道エリアは慎重に」という言い方は、随契の規模がエリアごとの競争状況に見合っているかを問うものと読める。

一般送配電事業者の回答と委員の意見

コスト抑制の実績値と、蓄電池の価格競争力に関する回答が示された。

図2:一般送配電事業者の回答と委員の意見 ― 随契の揚水単価は数十銭〜3円/ΔkW・h

揚水随契の揚水単価3〜6円から数十銭〜3円への比較と、委員が示した随契の規模・対象に関する意見の図

出典:監視委 第18回 制度設計・監視専門会合 資料4(2026年2月20日)。委員の発言要旨であり、会合としての決定事項ではない。

一般送配電事業者からは、エリアごとに異なる観点の回答が示されている。中部電力パワーグリッドは、随契前の需給調整市場における揚水単価が3〜6円/ΔkW・hであるのに対し、随契では数十銭〜3円/ΔkW・hであるとした。

委員からの意見は、随契そのものの否定ではなく、規模と対象の妥当性に向けられた。

需給調整市場と蓄電池への影響・今後の追跡点

揚水随契の規模は、需給調整市場の募集量を通じて蓄電池の参加機会に跳ね返る。

蓄電池を調整力として需給調整市場へ供出するアグリゲーター・事業者にとって、揚水随契の規模・継続方針は需給調整市場の募集量、すなわち蓄電池の市場参加機会に直結する。蓄電池事業者が述べた「投資予見性」「スモールスタート」という主張がどこまで制度に反映されるか、特に北海道エリアの扱いが注目点となる。あわせて、前日取引化(2026年4月から全商品前日取引)後の揚水・蓄電池の市場参加構造の変化も、入札戦略・収益予見の前提となる。

  • アグリゲーター・蓄電池事業者は、エリア別の揚水随契規模と需給調整市場の募集量の関係を確認し、特に北海道エリアの方針を継続して注視する。
  • 第19回会合(3月30日)における2026年度揚水随契の調達量決定と併せて追跡する。
  • 前日取引化後の市場参加構造の変化を踏まえ、入札戦略・収益予見の前提を点検する。

読者別の緊急度

初級(投資家・土地オーナー)2/5

調整力市場の構造変化の方向性を把握する程度でよい。

中級(建設・メーカー・設計)3/5

調整力市場の募集量動向として今月中に把握しておきたい。

上級(事業者・アグリゲーター)5/5

需給調整市場の募集量・収益に直結する論点で、エリア別方針を必ず押さえるべき。

よくある質問(Q&A)

揚水随契とは何ですか?

一般送配電事業者による揚水発電の随意契約(相対契約)を指し、本記事では揚水随契と表記します。第18回制度設計・監視専門会合では、この揚水随契の2025年度における運用状況等が議題となり、調整力提供事業者へのヒアリングが実施されました。

第18回制度設計・監視専門会合では何が行われましたか?

2026年2月20日に開催された第18回会合では、議題「2025年度における揚水随契の運用状況等について②」として、調整力提供事業者である蓄電池事業者・揚水供給事業者からのヒアリングが実施されました。前回の第17回(1月30日)では各一般送配電事業者が、揚水随契は安定的な調整力確保・低コストのポートフォリオ調達に寄与し市場参加機会を過度に抑制していないとして継続意向を示していました。

蓄電池事業者はどのような意見を述べましたか?

ヒアリングで蓄電池事業者からは、第一に揚水随契は市場の透明性や投資予見性を損なう懸念があること、第二に継続する場合はエリアごとの競争状況を踏まえてスモールスタートとすべきこと、第三に特に来年度の北海道エリアは競争状況を踏まえ慎重に検討すべきこと、という意見が示されました。いずれも蓄電池事業者の主張であり、会合の結論や確定事項ではありません。

揚水供給事業者や一般送配電事業者はどう述べましたか?

揚水供給事業者からは、一般送配電事業者が運用権を持つことで設備が有効活用され調達単価が安価になるとの意見がありました。一般送配電事業者からは、中部電力パワーグリッドが随契前の需給調整市場の揚水単価3〜6円/ΔkW・hに対し随契は数十銭〜3円/ΔkW・hであると示し、北海道電力ネットワークが蓄電池の調達単価は下がってきており高価格火力と競合して蓄電池が約定しているとし、東京電力パワーグリッドが前日取引化で余力電力が全量スポット市場に応札され需給調整市場の調達価格が下がらないリスクを指摘しています。

委員からはどのような意見が出ましたか?

揚水随契のコスト抑制効果を踏まえ、ポートフォリオ調達自体を強く否定する意見はありませんでした。一方で、蓄電池が将来重要な調整力であることを踏まえ、随契の妥当な規模をエリアごとの競争状況・参加機会から検討すべきという意見、および揚水以外の電源にも随契の門戸を開くべきという意見が示されています。

系統用蓄電池の事業者は今後何を追うべきですか?

アグリゲーター・蓄電池事業者は、エリア別の揚水随契規模と需給調整市場の募集量の関係を確認し、特に北海道エリアの方針を継続して注視することが挙げられます。また、第19回会合(3月30日)における2026年度揚水随契の調達量決定と併せて追跡することが必要です。

編集部の見立て(独自分析)

独自分析

  • 揚水随契は需給調整市場の募集量を実質的に縮小させる方向に働くため、蓄電池の市場参加機会と直接トレードオフの関係にあると整理できる。蓄電池事業者の主張はこの構造を踏まえたものと読める。
  • 北海道電力ネットワークの「蓄電池の調達単価が下がり、高価格火力と競合して蓄電池が約定している」という回答は、調整力としての蓄電池の価格競争力が一部エリアで火力を上回りつつあることを示す一次情報として重要である。
  • 「揚水以外の電源にも随契の門戸を開くべき」という委員意見は、蓄電池が将来的に随契の対象となりうる可能性を示唆しており、調整力調達のグランドデザイン論につながる論点だと考える。

※本ブロックは第18回会合資料の記載事実に基づく編集部の見立てであり、会合の結論や確定情報ではありません(2026年7月時点)。特定の事業者の主張の当否を評価するものではありません。

この記事のまとめ

電力・ガス取引監視等委員会の第18回制度設計・監視専門会合(2026年2月20日)で、一般送配電事業者による揚水発電の随意契約(揚水随契)について、調整力提供事業者である蓄電池事業者・揚水供給事業者からのヒアリングが実施された。前回の第17回(1月30日)で各一般送配電事業者が継続意向を示したのに対し、蓄電池事業者からは①揚水随契は市場の透明性や投資予見性を損なう懸念がある、②継続する場合はエリアごとの競争状況を踏まえスモールスタートとすべき、③特に来年度の北海道エリアは慎重に検討すべき、との意見が示された。揚水供給事業者からは、一般送配電事業者が運用権を持つことで設備が有効活用され調達単価が安価になるとの意見があった。一般送配電事業者側では、中部電力パワーグリッドが随契前の需給調整市場の揚水単価3〜6円/ΔkW・hに対し随契は数十銭〜3円/ΔkW・hと示し、北海道電力ネットワークは蓄電池の調達単価が下がり高価格火力と競合して蓄電池が約定しているとし、東京電力パワーグリッドは前日取引化で需給調整市場の調達価格が下がらないリスクを指摘した。委員からはポートフォリオ調達自体を強く否定する意見はなく、随契の妥当な規模をエリアごとの競争状況・参加機会から検討すべき、揚水以外の電源にも随契の門戸を開くべきとの意見が出ている。第19回(3月30日)の2026年度揚水随契の調達量決定が次の焦点となる。

編集体制

執筆

BESSNEWS編集部

系統用蓄電池の制度・市場・ファイナンスを一次資料に基づき解説する専門編集チーム。

監修

BESS NEWS編集長

系統用蓄電池の制度・系統運用を専門とする社内専門家。本記事の制度記述と発言主体の対応を確認。

出典(一次情報)

  1. 電力・ガス取引監視等委員会 制度設計・監視専門会合
    https://www.egc.meti.go.jp/activity/index_system.html
  2. 第18回 制度設計・監視専門会合 資料4「2025年度における揚水随契の運用状況等について②」(2026年2月20日)/収録資料:20260220_監視委_制度設計監視専門会合第18回_資料42025年度揚水随契運用状況2.pdf

本記事に記載した意見は、いずれも会合において各主体(蓄電池事業者・揚水供給事業者・一般送配電事業者・委員)が述べたものであり、会合の決定事項ではありません。

出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/institutional/proffessional/4607303102001/

本記事は BESS media の転載条件(出典明記のうえ全文転載可)にもとづき転載しています。 記事内容の著作権は転載元に帰属します。

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