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イベリア半島大停電はなぜ10秒で全域に広がったか ― 電圧上昇と連鎖的電源脱落、再エネ系統と蓄電池の役割

電力中央研究所(CRIEPI)は、2025年4月28日に発生したイベリア半島の大規模停電について、ENTSO-Eの事実報告書・最終報告書等に基づく解説資料を公表した。停電の第一の要因は『系統電圧の上昇とこれによる連鎖的な電源等の停止』とされ、再エネ大量導入下の電圧調整能力不足という、日本の電力系統にも通じる教訓を整理している。

このページの要点

  1. 電力中央研究所(CRIEPI・永田真幸首席研究員)による解説資料。2025年4月28日のイベリア半島大規模停電を、ENTSO-Eの事実報告書(2025年10月3日公表)・最終報告書(2026年3月20日公表)等に基づき分析。
  2. 停電の第一要因は『系統電圧の上昇とこれによる連鎖的な電源等の停止』。12:30頃の系統動揺から12:33:24の全域停電まで、最初の電源脱落からは約10秒で連鎖した。
  3. 低需要で同期電源の並列が少なく再エネ比率が高い状況、再エネの電圧調整能力が同期電源より低いルール、変換器起因の0.6Hz強制振動等が要因。系統用蓄電池の系統安定化機能の重要性に直結する。

出典:CRIEPI解説資料『イベリア半島における大規模停電 ―調査の結論および推奨事項と日本の電力系統への示唆―』(2026年3月付)。

要旨 ― ひと言でいえば

欧州で実際に起きた大停電の事故調査を、日本の系統向けに読み解いた資料である。再生可能エネルギーが多い軽負荷の日に系統電圧が上がりすぎ、電源が連鎖的に停止した――日本でも起こり得る系統安定性の教訓を、系統用蓄電池が担い得る電圧調整・系統安定化の役割とともに整理している。

目次

  1. イベリア半島大停電の経緯(10秒で全域停電)
  2. 第一要因『電圧上昇と連鎖的電源脱落』の分析
  3. 再エネ系統と蓄電池の系統安定化機能への示唆
  4. よくある質問(Q&A)
  5. 編集部の見立て(独自分析)
  6. 出典(一次情報)

イベリア半島大停電の経緯 ― 10秒で全域停電へ

系統動揺の発生から全域停電までは、ごく短時間の連鎖だった。

図1:全域停電に至る経緯(2025年4月28日)― 12

33

30頃の系統動揺から12

2025年4月28日、イベリア半島(スペイン・ポルトガル)で大規模停電が発生した。CRIEPIは2025年に2回の動画解説を行ったのに続き、ENTSO-Eの事実報告書(2025年10月3日公表)と最終報告書(2026年3月20日公表)等の内容に基づき、要因分析と日本への示唆を整理した解説資料を公表した。

最終報告書によれば、12:30頃からの系統動揺の発生、送電系での3度の電源脱落、そして連鎖的な電源脱落を経て、12:33:24に全域停電に至った。最初の電源脱落から全域停電までの時間は約10秒であった。あわせて、スペイン・フランス間の位相差拡大と同期喪失、揚水・負荷の遮断、系統分離も発生している。

短時間で全域に波及した点は、電圧という系統の状態量が崩れると、電源が次々に系統から切り離され連鎖が止まらなくなるという、系統安定性のもろさを示している。

第一要因『電圧上昇と連鎖的電源脱落』の分析

最終報告書は、停電の第一要因を系統電圧の上昇に置いた。

図2:電圧上昇を招いた4つの要因 ― 電圧調整能力の不足・系統動揺・無効電力の流入・不十分なルール遵守

イベリア半島大停電の第一要因である電圧上昇を招いた4つの要因。再エネの電圧調整能力不足やPSS未具備を整理した図

出典:CRIEPI解説資料(ENTSO-E事実報告書・最終報告書等に基づく)。要因の整理はCRIEPIによるもの。

最終報告書では、停電の第一の要因が『系統電圧の上昇とこれによる連鎖的な電源等の停止』であったと結論付けられた。電圧上昇は、無効電力吸収能力の不足・低下、下位系統からの無効電力の流入、再エネ・小規模電源の出力低下等によるものと整理されている。CRIEPIは、その背景として次の4つの要因を挙げている。

一次資料の記載(要旨)

停電の第一の要因は系統電圧の上昇とこれによる連鎖的な電源等の停止であった。電圧上昇は無効電力吸収能力の不足・低下や無効電力の流入等によるもので、最終報告書では系統安定性維持や監視機能強化に関する多数の推奨事項が示された。

— CRIEPI解説資料『イベリア半島における大規模停電』

要因の多くは、再エネ・インバータ主体の系統で顕在化する新しい安定性課題である。従来の同期発電機が担っていた電圧調整・慣性・無効電力供給を、誰がどのルールで担うのかが問われている。

再エネ系統と蓄電池の系統安定化機能への示唆

同じ課題は、再エネ比率が高まる日本の電力系統にも通じる。

再エネ大量導入下での電圧調整能力の不足・系統安定性の確保という課題は、日本の電力系統にも直結する。系統用蓄電池(BESS)は、グリッドフォーミング機能・無効電力供給・電圧調整・慣性応答等を通じて系統安定化の担い手となり得るため、本停電の教訓は、BESSに求められる系統安定化機能の要件強化の方向性を示している。

また、再エネに求める電圧調整能力が同期電源より低いルールが要因の一つとされた点は、インバータ電源(BESSを含む)への系統安定化要件の強化に向けた論拠となり得る。電圧調整能力に関するルールや保護動作の適正化は、日本の次世代電力系統WG等での制度議論にも波及し、BESSの連系要件・付加価値サービスの設計に影響する。

  • BESS事業者・メーカーは、電圧調整・無効電力供給・グリッドフォーミング等の系統安定化機能の重要性を製品・制御設計に反映する。
  • 系統連系・制度関係者は、再エネ・インバータ電源への電圧調整要件の強化動向(次世代電力系統WG等)をフォローする。
  • ENTSO-E最終報告書の推奨事項を、日本の系統安定性確保策を検討する際の参考とする。
  • 変換器起因の強制振動やPSS未具備といった論点を、インバータ主体系統での制御設計・連系要件の検討材料とする。

読者別の緊急度

初級(投資家・土地オーナー)2/5

再エネ系統の安定性リスクの教訓として把握しておくと有益。

中級(建設・メーカー・設計)4/5

BESSの系統安定化機能の重要性を今月中に把握しておきたい。

上級(系統連系・制度関係者)4/5

電圧調整要件の動向と教訓を今月中に確認しておきたい。

よくある質問(Q&A)

イベリア半島の大規模停電はいつ起きましたか?

2025年4月28日に発生しました。CRIEPI(永田真幸首席研究員)が、ENTSO-Eの事実報告書(2025年10月3日公表)および最終報告書(2026年3月20日公表)等に基づき解説しています。

停電の第一の要因は何ですか?

『系統電圧の上昇とこれによる連鎖的な電源等の停止』と結論付けられました。12:30頃からの系統動揺、送電系での3度の電源脱落、連鎖的な電源脱落を経て12:33:24に全域停電に至り、最初の電源脱落から全域停電までは約10秒でした。

なぜ系統電圧が上昇したのですか?

無効電力吸収能力の不足・低下や、下位系統からの無効電力の流入、再エネ・小規模電源の出力低下等によるものと整理されています。

電圧調整能力が不足した背景は何ですか?

当日は低需要で同期電源の並列が少なく再エネ比率が高い状況だったこと、再エネに求める電圧調整能力が同期電源より低いルールであったこと、発電機の電圧調整が不十分であったことが整理されています。

系統動揺の原因は何ですか?

一部は変換器起因の0.6Hzの強制振動によるもので、一部の従来電源にはPSS(電力系統安定化装置)が具備されていなかったことが指摘されています。

この停電は系統用蓄電池(BESS)にどう関係しますか?

系統用蓄電池は、グリッドフォーミング機能・無効電力供給・電圧調整・慣性応答等を通じて系統安定化の担い手となり得ます。本停電の教訓は、BESSに求められる系統安定化機能や、再エネ・インバータ電源への電圧調整要件の強化に向けた論拠となり得ます。

編集部の見立て(独自分析)

独自分析

  • 電圧上昇による連鎖的電源脱落という機序は、無効電力・電圧調整の重要性を示し、BESS(特にグリッドフォーミング型)の電圧調整・無効電力供給機能の価値を高める。
  • 再エネに求める電圧調整能力が同期電源より低いルールが要因の一つとされた点は、インバータ電源(BESS含む)への系統安定化要件強化の論拠となる。
  • 変換器起因の強制振動(0.6Hz)やPSS未具備の指摘は、インバータ主体系統での新たな安定性課題を示し、BESSの制御設計・連系要件に示唆を与える。

※本ブロックは一次資料の事実に基づく編集部の見立てであり、確定情報ではありません(2026年7月時点)。

この記事のまとめ

2025年4月28日のイベリア半島大規模停電について、CRIEPIはENTSO-Eの最終報告書等に基づき、第一要因を『電圧上昇と連鎖的電源脱落』と整理した。低需要で同期電源の並列が少なく再エネ比率が高い状況、再エネの電圧調整能力が同期電源より低いルール、変換器起因の0.6Hz強制振動やPSS未具備、下位系統からの無効電力流入などが要因とされ、最初の電源脱落から全域停電まで約10秒で連鎖した。再エネ大量導入下の電圧調整・系統安定性という課題は日本にも通じ、系統用蓄電池の系統安定化機能(電圧調整・グリッドフォーミング)の重要性と、インバータ電源への要件強化の方向性を示す資料である。

編集体制

執筆

BESSNEWS編集部

系統用蓄電池の制度・市場・系統安定性を一次資料に基づき解説する専門編集チーム。

監修

BESS NEWS編集長

系統用蓄電池の系統運用・系統安定性を専門とする社内専門家。本記事の技術記述・数値を確認。

出典(一次情報)

  1. 電力中央研究所(CRIEPI)永田真幸 首席研究員 解説資料「イベリア半島における大規模停電 ―停電に関する調査の結論および推奨事項と日本の電力系統への示唆―」(2026年3月付。ENTSO-E事実報告書〔2025年10月3日〕・最終報告書〔2026年3月20日〕等に基づく)
    https://criepi.denken.or.jp/
  2. 保存済み一次資料PDF:02.04_蓄電池情報/08_研究機関/CRIEPI/20260302_CRIEPI_資料のダウンロードはこちら.pdf

本記事はCRIEPIの解説資料(2026年3月付)およびそこで引用されたENTSO-E報告書の内容に基づいています。個別の数値・時刻・推奨事項の詳細は一次資料をご確認ください。

出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/engineering/proffessional/4608303506001/

本記事は BESS media の転載条件(出典明記のうえ全文転載可)にもとづき転載しています。 記事内容の著作権は転載元に帰属します。

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