長期脱炭素オークション第4回 ― 蓄電池は「認定セル優先約定」へ、製造国30%制限は廃止
資源エネルギー庁は制度検討作業部会 第112回(2026年3月4日)の資料3で、長期脱炭素電源オークション第4回入札に向けた蓄電池の約定方法を提示した。経済安全保障推進法の供給確保計画の認定を受けたメーカー製セルを使うリチウムイオン蓄電池案件を優先的に約定し、第3回で導入したセル製造国30%制限ルールは適用しない方針である。
このページの要点
- 蓄電池の約定方法について、経済安全保障推進法の供給確保計画の認定を受けたメーカー(支配する子会社・孫会社を含む)が製造するセルを使うリチウムイオン蓄電池案件を優先的に約定する仕組みを提案(資料3)。
- 第3回入札で導入したセル製造国30%制限ルールは、リチウムイオン蓄電池には適用しない方針。優先約定の対象はリチウムイオン蓄電池および揚水リプレース等案件のみ(資料3)。
- あわせてLNG専焼火力の第4回以降の継続募集、蓄電池の事業規律(JC-STAR★1・経済安保法認定)、電取委による他市場収益の監視に係るガイドライン改定の建議内容を整理(資料3)。
出典:資源エネルギー庁 制度検討作業部会 第112回 資料3(2026年3月4日・全24ページ)。
20年間の固定的な容量収入を得られる長期脱炭素電源オークションで、蓄電池の落札条件を「価格の安さ」だけでなく「サプライチェーンの安定性」でも選ぶ設計へ切り替える議論である。経済安保法の認定を受けたメーカーのセルを使う案件を優先し、従来の製造国30%上限ルールは廃止する。
目次
- 長期脱炭素オークションと第4回入札に向けた論点
- 蓄電池の約定方法見直し(認定セルの優先約定・30%制限廃止)
- 事業規律(JC-STAR★1・経済安保法認定)と応札準備への影響
- よくある質問(Q&A)
- 編集部の見立て(独自分析)
- 出典(一次情報)
長期脱炭素オークションと第4回入札に向けた論点
脱炭素電源への新規投資に、原則20年間の固定的な容量収入を約束する制度。その第4回入札に向けた見直しが始まった。
長期脱炭素電源オークションは、脱炭素電源への新規投資を対象に固定費水準の容量収入を原則20年間付与する制度である。系統用蓄電池にとっては、投資回収の柱となる主要な収益源の一つに位置づけられる。第3回入札は2026年1月19〜26日に応札が行われ、応札価格は電力・ガス取引監視等委員会(電取委)が監視している。
資源エネルギー庁は制度検討作業部会 第112回(2026年3月4日)の資料3で、第4回入札に向けた制度見直しとして4つの論点を議論した。①LNG専焼火力の募集量、②蓄電池の約定方法、③水素・アンモニアの事前審査要件、④電取委の建議(ガイドライン改定)である。蓄電池事業者にとって直接の焦点は論点②だが、他の論点も応札環境を左右する。
LNG専焼火力は第4回(2026年度)以降も当面継続募集する。2040年に需要11,000億kWhとなるシナリオでは、経年火力3,900万kWを全てリプレースしてもなお供給力が1,300万kW不足するとされる。
— 制度検討作業部会 第112回 資料3本記事は2026年3月4日公表の資料3に基づく。第4回入札の具体的なスケジュール・確定ルールは今後の審議で示されるため、最新情報は一次資料で確認されたい。
蓄電池の約定方法見直し ― 認定セルの優先約定・30%制限廃止
第3回では「セル製造国の分散」で対応していたが、第4回は「認定メーカーのセルを使う案件を優先」する仕組みへ転換する。
図1:認定セル優先約定の処理順とセル製造国30%制限の廃止
出典:制度検討作業部会 第112回 資料3(2026年3月4日)。資料3の提案であり確定ルールではない。
資料3は、第3回入札ではセル製造国の分散化が見込まれるものの、特定国のメーカーが各国でセル製造工場を保有しているため、サプライチェーン途絶リスクが依然として高い状況にあると指摘した。そのうえで蓄電池の安定供給を確保するため、経済安全保障推進法に基づき特定重要物資に指定された蓄電池について、供給確保計画の認定を受けたメーカーが製造するセルを使用する案件を優先的に約定することを提案した。認定メーカーには、そのメーカーが株式・持分50%超の支配力を持つ国内外の子会社・孫会社が製造するセルも含まれる。
この見直しに伴い、第3回入札で導入したセル製造国30%制限ルールは、リチウムイオン蓄電池には適用しない。取組方針がリチウムイオン蓄電池のみを対象とするため、優先約定の対象もリチウムイオン蓄電池および揚水リプレース等案件に限られる。
蓄電池事業者にとっては、落札の競争軸が「応札価格」に「認定メーカーのセル採用」が加わる構造へ変わることを意味する。認定メーカーのセルを採用した案件は、価格が同水準でも優先的に約定される位置づけになる。
事業規律(JC-STAR★1・経済安保法認定)と応札準備への影響
セル調達の見直しだけでなく、サイバーセキュリティとサプライチェーンの2つの事業規律が応札の前提になる。
図2:蓄電池の事業規律(JC-STAR★1・経済安保法認定)と電取委の建議
出典:制度検討作業部会 第112回 資料3(2026年3月4日)。
資料3は、蓄電池の事業規律としてサイバーセキュリティ(JC-STAR★1)とサプライチェーン強靱化(経済安全保障推進法の認定)を前提に据えたうえで、これら以外に考慮すべき要件があるかを論点として問うている。応札を検討する事業者は、セル調達の見直しと並行して、これらの事業規律への適合を準備する必要がある。
また電取委は、2025年12月に長期脱炭素オークションガイドラインの改定を建議した。内容は、相対契約の市場価格規律・無差別規律、他市場収益の還付計算における可変費の監視、監視フローの明確化である。落札後の収益還付計算に関わるため、応札戦略の前提として押さえておきたい。
- 長期脱炭素オークションへの蓄電池応札を検討する事業者は、経済安全保障推進法の供給確保計画の認定を受けたメーカーのセル採用を調達戦略に織り込み、優先約定の対象となるよう準備する。
- JC-STAR★1の取得など、サイバーセキュリティの事業規律対応を第4回入札の応札要件として整備する。
- 電取委が建議した他市場収益の監視ガイドライン改定(可変費監視・相対契約規律)を、落札後の収益還付計算の前提として確認する。
- 第4回入札の募集要綱・確定ルールの公表を継続的にモニタリングし、優先約定の運用詳細を応札設計へ反映する。
読者別の緊急度
蓄電池の落札条件(認定セル優先約定)の方向性を今月中に把握しておきたい。
調達・応札設計担当は認定セル採用・JC-STAR★1対応を今週中に確認すべき。
第4回入札の約定方法に直結するため、応札を検討するなら直ちに押さえるべき。
よくある質問(Q&A)
第4回入札で蓄電池の約定方法はどう変わりますか?経済安全保障推進法に基づく供給確保計画の認定を受けたメーカー(そのメーカーが株式・持分50%超の支配力を持つ国内外の子会社・孫会社を含む)が製造するセルを使用するリチウムイオン蓄電池案件を、優先的に約定する仕組みが提案されました。
優先約定はどのような順序で行われますか?募集上限の範囲内で、リチウムイオン蓄電池の認定案件と揚水リプレース案件を価格の低い順に落札し、それで埋まらない場合に非認定案件を価格の低い順に落札するイメージが示されています。
セル製造国30%制限ルールはどうなりますか?第3回入札で導入したセル製造国30%制限ルールは、リチウムイオン蓄電池には適用しない方針です。取組方針がリチウムイオン蓄電池のみを対象とするため、優先約定の対象もリチウムイオン蓄電池および揚水リプレース等案件に限られます。
なぜ認定セルを優先約定するのですか?特定国のメーカーが各国でセル製造工場を保有しており、サプライチェーン途絶リスクが高い状況にあるためです。経済安全保障推進法で特定重要物資に指定された蓄電池の安定供給を確保する目的で、供給確保計画の認定を受けたメーカー製セルを使う案件を優先します。
蓄電池の事業規律には何が求められますか?サイバーセキュリティ(JC-STAR★1)とサプライチェーン強靱化(経済安全保障推進法の認定)が前提とされ、これら以外に考慮すべき要件が論点として問われています。
LNG専焼火力の募集はどうなりますか?第4回(2026年度)以降も当面継続募集する方針です。2040年に需要11,000億kWhとなるシナリオでは、経年火力3,900万kWを全てリプレースしてもなお供給力が1,300万kW不足するとされています。
編集部の見立て(独自分析)
独自分析
- 経済安保法の認定メーカーのセル使用案件を優先約定する仕組みは、蓄電池の落札競争力を「価格+認定セル採用」で決める構造へ転換し、サプライチェーン強靱化を約定の優先順位に直結させる。
- セル製造国30%制限の廃止と認定案件優先への切替えは、特定国メーカーの各国製造工場を通じた途絶リスクへの対応を「一国あたりの制限」から「供給確保計画の認定ベース」へ移す転換と読める。
- JC-STAR★1(サイバーセキュリティ)と経済安保法認定(サプライチェーン)が事業規律の柱となり、第4回入札では応札要件としての整備が事実上必須になる可能性が高い。
※本ブロックは一次資料の事実に基づく編集部の見立てであり、確定情報ではありません(2026年7月時点)。
この記事のまとめ
資源エネルギー庁は制度検討作業部会 第112回(2026年3月4日)資料3で、長期脱炭素電源オークション第4回入札に向けた蓄電池の約定方法を提示した。経済安全保障推進法の供給確保計画の認定を受けたメーカー製セルを使うリチウムイオン蓄電池案件を優先約定し(募集上限内で認定案件+揚水リプレースを安い順に落札、埋まらなければ非認定案件を補充)、第3回で導入したセル製造国30%制限はリチウムイオン蓄電池には適用しない。事業規律はJC-STAR★1と経済安保法認定が前提で、電取委は他市場収益の監視に係るガイドライン改定を建議している。応札を検討する事業者は、認定メーカーのセル採用と事業規律対応を準備段階から織り込む必要がある。
編集体制
執筆
BESSNEWS編集部
系統用蓄電池の制度・市場・ファイナンスを一次資料に基づき解説する専門編集チーム。
監修
BESS NEWS編集長
系統用蓄電池の制度・電力市場を専門とする社内専門家。本記事の制度記述・数値を確認。
出典(一次情報)
- 資源エネルギー庁 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会 制度検討作業部会 第112回(2026年3月4日)資料3「長期脱炭素電源オークション」(全24ページ)
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/seido_kento/ - 保存済み一次資料PDF:02.04_蓄電池情報/02_政策・制度(経産省・エネ庁・監視委)/エネ庁/20260304_エネ庁_長期脱炭素電源オークション第112回.pdf
本記事は2026年3月4日公表の一次資料のみに基づいています(対象日より後の情報は含みません)。制度内容は今後の審議で変更される可能性があります。第4回入札の確定スケジュール・数値等は一次資料を参照してください。
出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/market/proffessional/4608503001002/
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