系統用蓄電池の2040年見通しと施策の方向性 ― 需給調整市場依存をアービトラージへ誘導する処方箋
資源エネルギー庁は第2回分散型エネルギー推進戦略ワーキンググループ(2026年3月6日)の資料5で、3機関による2040年度のDER導入見通しと、系統用蓄電池の収益課題への施策の方向性を一体で提示した。ストレージ式運用・系統混雑緩和・サプライチェーン強靱化まで、収益モデル転換の道筋を一次資料で整理する。
このページの要点
- 電力広域機関・McKinsey・三菱総研による2040年度DER導入見通しを報告。供給側蓄電池280万~1,000万kW、需要側蓄電池800万~3,300万kW、DR最大750万~1,500万kW(資料5)。
- 系統用蓄電池は収益が需給調整市場に偏在しアービトラージ活用が限定的。足元CAPEX6.8万円/kWhでは十分な収益が期待できない試算とされ、ストレージ式運用(10MW以上・専用線オンライン)への誘導や系統混雑緩和への立地誘導が課題と整理(資料5)。
- 施策の方向性としてJC-STAR★1要件化(2027年4月以降の新規接続)、地域共生(NITE安全ガイドライン確定版2026年5月頃予定)、サプライチェーン強靱化(長期脱炭素第4回で経済安保認定セルを優先約定)を提示(資料5)。
出典:第2回分散型エネルギー推進戦略WG 資料5「DERの導入見通し及び課題等を踏まえた施策の方向性」(2026年3月6日・全45ページ)。
系統用蓄電池の「2040年の見取り図」と「収益体質の処方箋」を一枚に描いた中核資料である。どこまで増えるかの将来推計と、需給調整市場頼みの収益をアービトラージへ移すための政策メニュー(ストレージ式運用・混雑緩和・補助加点)をセットで示している。
目次
- 2040年度のDER・蓄電池導入見通し
- 系統用蓄電池の収益課題と施策の方向性
- ストレージ式運用・混雑緩和・サプライチェーンで何が変わるか
- よくある質問(Q&A)
- 編集部の見立て(独自分析)
- 出典(一次情報)
2040年度のDER・蓄電池導入見通し ― 3機関の試算
電力広域機関・McKinsey・三菱総研が、2040年度の分散型エネルギー(DER)の導入量を試算した。
図1:2040年度のDER・蓄電池導入見通し(3機関試算)
出典:第2回 分散型エネルギー推進戦略WG 資料5「DERの導入見通し及び課題等を踏まえた施策の方向性」(2026年3月6日)。
資料5は、各機関による2040年度のDER導入見通しを報告している。供給側蓄電池は280万~1,000万kW、需要側蓄電池は800万~3,300万kW、DR(デマンドレスポンス)最大量は750万~1,500万kWと幅を持って試算された。供給側蓄電池の足元は連系済み50万kW・契約申込み2,431万kWで、申込みが見通しの上限を大きく上回っている。
供給側蓄電池は、契約申込み2,431万kWに対し連系済みは50万kWにとどまる。大量の申込みが見通しの実現量へどれだけ結実するかが、系統用蓄電池の将来像を左右する構図である。
2040年度の導入見通しとして、需要側蓄電池は電力広域機関・McKinsey800万kW/三菱総研3,300万kW、DR最大量は広域機関1,500万kW/McKinsey750万kW、供給側蓄電池は広域機関800~1,000万kW/McKinsey280~960万kWと試算。供給側蓄電池の足元は連系済み50万kW・契約申込み2,431万kW。
— 第2回分散型エネルギー推進戦略WG 資料5系統用蓄電池の収益課題と施策の方向性
現状の収益は需給調整市場に偏り、アービトラージ活用が進んでいないことが課題と整理された。
図2:系統用蓄電池の収益課題と施策の方向性
出典:第2回 分散型エネルギー推進戦略WG 資料5(2026年3月6日)。施策の方向性であり確定した制度ではない。
資料5は、系統用蓄電池の収益構造について、容量市場が応札4年後の実需給に未到達で収入化に至っておらず、現状の収益は需給調整市場が太宗を占め、アービトラージ活用・収益が限定的であると整理した。需給調整市場の応札不足による約定価格の高止まりと、卸電力市場の価格ボラティリティが相対的に小さい環境が、アービトラージ運用のインセンティブを乏しくしていると指摘している。
コスト面では、系統用蓄電池は足元CAPEX6.8万円/kWhでは十分な事業収益が期待できない試算とされた。業務・産業用蓄電池も足元10.6万円/kWhでは経済性が成立せず、2030年目標の6万円/kWhに供給力提供を加えて半数程度が成立するとされている。
これらの課題を踏まえ、施策の方向性として①アービトラージ誘導(ストレージ式運用の対象蓄電池の導入促進)、②系統混雑緩和に資する立地・運用への誘導、③サイバー(JC-STAR★1要件化と★2以上の整備)、④地域共生(火災・騒音対策、NITE安全ガイドライン)、⑤サプライチェーン強靱化が提示された。再エネ併設蓄電池は、FIPへの移行促進と出力制御削減の観点から導入支援の継続が適切とされている。
ストレージ式運用・混雑緩和・サプライチェーンで何が変わるか
収益モデル・立地・調達仕様の3点で、系統用蓄電池の設計が変わる。
ストレージ式運用は、長期脱炭素電源オークション・容量市場で落札した調整機能を有する10MW以上・専用線オンライン接続の蓄電池を、TSO(一般送配電事業者)が余力範囲で柔軟に運用する形態である。この対象となる蓄電池の導入促進によってアービトラージ収益への誘導を図る。長期脱炭素の落札案件はストレージ式運用の対象となり、2027年度運開に向けた中央給電指令所の改修が進む。
収益モデル
需給調整市場偏在からアービトラージ併用へ。ストレージ式運用(10MW以上・専用線オンライン)でTSOがSoCを余力範囲で柔軟運用。
立地・運用
系統混雑緩和に貢献する立地・運用を採る場合、導入支援で高評価。混雑エリア情報の確認が要となる。
調達仕様の面では、サイバー・安全・サプライチェーンの要件が具体化する。系統連系技術要件で2027年4月以降の新規接続にJC-STAR★1取得(PCS・EMS等)を要件化し、★2以上の基準整備も議論されている。地域共生では、公共調達・重要インフラ向けの蓄電池安全ガイドラインの暫定版が2025年12月23日に公表され、確定版は2026年5月頃を予定。サプライチェーン強靱化として、長期脱炭素第4回入札で経済安保推進法認定メーカーのセルを使用する案件を優先約定する方向が示された。
- 系統用蓄電池事業者は、10MW以上・専用線オンライン接続でストレージ式運用・容量市場安定電源を狙う事業計画を検討し、アービトラージ収益との両立を試算する。
- 混雑緩和に貢献する立地・運用を採る場合の導入支援加点を見込み、各一般送配電の混雑エリア情報を確認する。
- 調達では、JC-STAR★1(将来★2)・NITE安全ガイドライン準拠・経済安保認定メーカーのセル採用を仕様に織り込む。
読者別の緊急度
将来導入量と収益誘導策の方向を今月中に把握しておきたい。
ストレージ式運用要件(10MW・専用線)と安全GLを今月中に確認すべき。
収益モデル転換に直結するため、絶対に今押さえるべき。
よくある質問(Q&A)
2040年度の蓄電池・DERの導入見通しはどのくらいですか?各機関の試算で、供給側蓄電池280万~1,000万kW、需要側蓄電池800万~3,300万kW、DR最大750万~1,500万kWとされています。供給側蓄電池の足元は連系済み50万kW・契約申込み2,431万kWです。
系統用蓄電池の収益構造の課題は何ですか?容量市場が応札4年後の実需給に未到達で収入化に至らず、現状の収益は需給調整市場が太宗を占め、アービトラージ活用・収益が限定的である点が課題とされています。足元CAPEX6.8万円/kWhでは十分な事業収益が期待できない試算です。
ストレージ式運用とは何ですか?長期脱炭素電源オークション・容量市場で落札した調整機能を有する10MW以上・専用線オンライン接続の蓄電池を、TSO(一般送配電事業者)が余力範囲で柔軟に運用する形態です。アービトラージ誘導の柱として、その対象となる蓄電池の導入促進が施策の方向性に位置づけられています。
JC-STARの要件化はいつからの予定ですか?系統連系技術要件で、2027年4月以降の新規接続にPCS・EMS等へのJC-STAR★1取得を要件化する方向が示されています。★2以上の基準整備も議論されています。
NITEの蓄電池安全ガイドラインのスケジュールは?公共調達・重要インフラ向けの蓄電池安全ガイドラインは、暫定版が2025年12月23日に公表され、確定版は2026年5月頃の公表が予定されています。
サプライチェーン強靱化に関する施策は?長期脱炭素電源オークション第4回入札において、経済安全保障推進法の認定メーカーのセルを使用する案件を優先約定する方向が示されています。
編集部の見立て(独自分析)
独自分析
- ストレージ式運用(10MW以上・専用線オンライン接続)が容量市場・アービトラージとの両立を促す鍵であり、TSOが余力範囲でSoCを柔軟運用する点で従来の自律運用と異なる収益・制御モデルを要する。
- 足元CAPEX6.8万円/kWhでは収益が成立しないという試算は、補助金加点・マルチユース収益の確保が事業成立の前提であることを示す。
- NITE安全ガイドラインのスケジュール(暫定2025年12月23日・確定2026年5月頃)と長期脱炭素第4回の経済安保認定セル優先約定は、安全・経済安保が調達条件化する流れを定量的に示す。
※本ブロックは一次資料の事実に基づく編集部の見立てであり、確定情報ではありません(2026年7月時点)。
この記事のまとめ
第2回分散型エネルギー推進戦略WGの資料5は、3機関による2040年度DER導入見通し(供給側蓄電池280万~1,000万kW、需要側蓄電池800万~3,300万kW、DR最大750万~1,500万kW)と、系統用蓄電池の収益課題(需給調整市場偏在・アービトラージ限定的・足元CAPEX6.8万円/kWhでは収益不足)への施策の方向性を一体で示した中核資料である。ストレージ式運用(10MW以上・専用線オンライン)への誘導、系統混雑緩和への立地誘導、JC-STAR★1要件化(2027年4月以降)、NITE安全ガイドライン(確定版2026年5月頃)、長期脱炭素第4回での経済安保認定セル優先約定が柱で、系統用蓄電池の収益モデル・立地・調達仕様の設計に直結する。
編集体制
執筆
BESSNEWS編集部
系統用蓄電池の制度・市場・ファイナンスを一次資料に基づき解説する専門編集チーム。
監修
BESS NEWS編集長
系統用蓄電池の制度・市場運用を専門とする社内専門家。本記事の制度記述・数値を確認。
出典(一次情報)
- 資源エネルギー庁 第2回分散型エネルギー推進戦略ワーキンググループ(2026年3月6日)資料5「DERの導入見通し及び課題等を踏まえた施策の方向性」(全45ページ)
https://www.enecho.meti.go.jp/committee/ - 保存済み一次資料PDF:02.04_蓄電池情報/02_政策・制度(経産省・エネ庁・監視委)/エネ庁_分散型エネルギー推進戦略WG/第2回/20260306_エネ庁分散型WG_DER導入見通し施策方向性_資料5.pdf
本記事は2026年3月6日公表の一次資料のみに基づいています(対象日より後の情報は含みません)。試算・施策の方向性は今後の審議で変更される可能性があります。
出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/institutional/proffessional/4608703102001/
本記事は BESS media の転載条件(出典明記のうえ全文転載可)にもとづき転載しています。 記事内容の著作権は転載元に帰属します。