需給調整市場ガイドライン2026年改定 ― 蓄電池の限界費用算定式とFIP併設蓄電池の固定費ルール
電力・ガス取引監視等委員会(制度設計・監視専門会合)は、需給調整市場の価格規律(事前的措置)を定める需給調整市場ガイドラインを2026年3月13日に改定した。蓄電池の限界費用算定式、蓄電原資の考え方、FIP電源併設蓄電池の固定費算入の範囲などを規定し、2026年3月14日受渡分から適用される。
このページの要点
- 監視委(制度設計・監視専門会合)が需給調整市場ガイドラインを2026年3月13日に改定し、2026年3月14日受渡分から適用する(策定2021年3月・全13ページ)。
- 調整力kWh市場では揚水・蓄電池の限界費用の算定式を規定。蓄電原資はスポット等の調達市場価格・自社充電費用・充電電気の加重平均価格とし、インバランス補給による充電・想定インバランス料金は用いない。
- 調整力ΔkW市場ではFIP電源併設蓄電池は蓄電池に係る固定費のみ算入、想定応札量は蓄電池の充放電制約を考慮。B種電源協議の廃止や全商品前日取引化に伴う機会費用の見直しを反映。
出典:電力・ガス取引監視等委員会 制度設計・監視専門会合『需給調整市場ガイドライン』(2026年3月13日改定)。
蓄電池が調整力市場に「いくらで入札してよいか」を定める価格規律のルールブックの改定である。充電に要した費用の考え方(蓄電原資)や、上乗せできる固定費・機会費用の範囲を規定し、遵守すればセーフハーバーとなる。
目次
- 需給調整市場の価格規律(事前的措置)の全体像
- 蓄電池の限界費用算定式と蓄電原資の考え方
- FIP併設蓄電池の固定費・想定応札量と入札ロジックへの影響
- よくある質問(Q&A)
- 編集部の見立て(独自分析)
- 出典(一次情報)
需給調整市場の価格規律(事前的措置)の全体像
ガイドラインは、市場支配力を持つ蓋然性の高い事業者に価格規律を求め、遵守をセーフハーバーとする枠組みである。
需給調整市場ガイドラインは、需給調整市場の適正取引を確保するために策定された(2021年3月策定、今回2026年3月13日改定、全13ページ)。市場支配力を有する蓋然性の高い事業者に対し、競争的な市場で取るべき価格規律(事前的措置)を要請し、これを遵守すれば問題となる行為には当たらない(セーフハーバー)とする仕組みを定める。
調整力kWh市場(予約電源以外)の望ましい価格は、上げのkWh価格は「限界費用+一定額」以下、下げのkWh価格は「限界費用-一定額」以上とされ、この一定額は限界費用の10%に相当する。揚水発電・蓄電池の限界費用は、機会費用を含めた限界費用を基本とする。
ガイドラインは、市場支配力を有する蓋然性の高い事業者に対して競争的市場で取るべき価格規律(事前的措置)を要請するものであり、これを遵守すればセーフハーバーとなる。
— 需給調整市場ガイドライン(2026年3月13日改定)本改定は、第10回制度設計・監視専門会合(2025年6月27日)以降の複数回の議論を反映した一連の見直しの一環であり、価格規律の精緻化が段階的に進められてきた。
蓄電池の限界費用算定式と蓄電原資の考え方
蓄電池の限界費用は、充電に要した費用(蓄電原資)をどう捉えるかが核心になる。
図1:蓄電池の限界費用を決める蓄電原資の3つの例示
出典:電力・ガス取引監視等委員会 制度設計・監視専門会合『需給調整市場ガイドライン』(2026年3月13日改定)。
蓄電池・揚水発電の限界費用は機会費用を含めた限界費用を基本とする。その中核となる蓄電原資の考え方として、ガイドラインは3つの捉え方を例示している。いずれも、約定ブロックに向けた充電に実際にかかった費用を基礎に置く考え方である。
一方で、ガイドラインは一般送配電事業者からのインバランス補給による充電は蓄電原資として適当でなく、限界費用の算定に想定インバランス料金は用いないと明記した。これは、インバランスを利用した価格形成を蓄電原資の外に置く趣旨と読める。
蓄電原資として、調達の市場価格、自社電源での充電費用(スポット調達費用と比較して著しく高額でないこと)、充電電気の加重平均価格を例示する。一般送配電事業者からのインバランス補給による充電は適当でなく、限界費用の算定に想定インバランス料金は用いない。
— 需給調整市場ガイドライン(2026年3月13日改定)この算定式は、蓄電池の調整力kWh価格の登録ロジックそのものを規定する。蓄電原資をどう定義するかで上げ・下げの価格の上限・下限が変わるため、EMS・入札システムの設定に直結する。
FIP併設蓄電池の固定費・想定応札量と入札ロジックへの影響
調整力ΔkW市場では、上乗せできる固定費と想定応札量の考え方が蓄電池の入札額を左右する。
図2:調整力ΔkW市場の一定額とFIP併設蓄電池の固定費算入範囲
出典:電力・ガス取引監視等委員会 制度設計・監視専門会合『需給調整市場ガイドライン』(2026年3月13日改定)。
調整力ΔkW市場の価格規律は、ΔkW価格≦逸失利益(機会費用)+一定額等とされる。この一定額は、A種電源が0.33円/ΔkW・30分、B種電源は固定費回収のための合理的な額とされる。卸電力市場価格(予想)は、時間前市場価格の想定価格(スポット価格を基に算定)を用いる。
固定費に含める費目・含めない費目
B種電源の固定費回収額に用いる当年度分固定費には、人件費・減価償却費・修繕費・委託費・発電側課金のkW課金分等を含める。一方、法人税・容量拠出金は当年度分固定費に含めない。FIP電源に併設する蓄電池については、蓄電池に係る固定費のみを算入する。
含める費目
人件費/減価償却費/修繕費/委託費/発電側課金のkW課金分 等
含めない費目
法人税/容量拠出金
改定経緯と適用時期
今回の改定には、これまでの制度設計・監視専門会合での整理が反映されている。改定後のガイドラインは2026年3月14日以降の受渡分から適用される。
- 蓄電池事業者・アグリゲーターは、蓄電池の限界費用算定式(蓄電原資の考え方・加重平均価格・インバランス補給充電の不可)に沿って調整力kWh価格の登録ロジックを2026年3月14日受渡分までに整備する。
- FIP電源併設蓄電池を運用する事業者は、固定費算入範囲(蓄電池に係る固定費のみ)と想定応札量の充放電制約考慮を踏まえてΔkW価格の固定費回収額を再計算する。
- 2026年度の全商品前日取引化に伴う卸電力市場価格(予想)の算定方法・起動費等の計上方法の見直しを入札戦略に反映する。
- 当年度分固定費に含める費目・含めない費目(法人税・容量拠出金を除く)を整理し、B種電源としての固定費回収額の妥当性を確認する。
読者別の緊急度
蓄電池の調整力収益の前提となる価格規律の方向性を把握しておくとよい。
EMS・入札ロジック設計担当は限界費用算定式を今週中に確認すべき。
3月14日受渡分から適用される入札ロジックに直結するため直ちに押さえるべき。
よくある質問(Q&A)
需給調整市場ガイドラインとは何ですか?需給調整市場の適正取引確保のため、市場支配力を有する蓋然性の高い事業者に対し、競争的市場で取るべき価格規律(事前的措置)を要請し、これを遵守すればセーフハーバーとなる仕組みを定めるガイドラインです。2021年3月に策定され、今回2026年3月13日に改定されました(全13ページ)。
蓄電池の限界費用はどのように算定しますか?揚水発電・蓄電池の限界費用は機会費用を含めた限界費用を基本とします。蓄電原資の考え方として、スポット市場等から調達した費用(調達の市場価格)、自社電源で充電した場合の充電費用(スポット調達費用と比較して著しく高額でないこと)、蓄電池に充電されている電気の加重平均価格が例示されています。
インバランス補給による充電は蓄電原資に使えますか?使えません。一般送配電事業者からのインバランス補給による充電は適当でないとされ、限界費用の算定に想定インバランス料金は用いないと明記されています。
FIP電源併設蓄電池の固定費はどこまで算入できますか?調整力ΔkW市場の固定費には、FIP電源併設蓄電池は蓄電池に係る固定費のみを算入します。当年度分固定費には人件費・減価償却費・修繕費・委託費・発電側課金のkW課金分等を含め、法人税・容量拠出金は含めません。
調整力ΔkW市場の価格規律はどうなっていますか?ΔkW価格≦逸失利益(機会費用)+一定額等とされます。一定額はA種電源が0.33円/ΔkW・30分、B種電源は固定費回収のための合理的な額です。想定応札量は定期検査・燃料制約や蓄電池の充放電制約等を考慮して算定します。
改定はいつから適用されますか?2026年3月13日改定後のガイドラインは、2026年3月14日以降の受渡分から適用されます。B種電源協議の廃止や2026年度以降の全商品前日取引化に伴う機会費用の見直し等が反映されています。
編集部の見立て(独自分析)
独自分析
- 蓄電池の限界費用に「機会費用を含めた限界費用」を採り、蓄電原資をスポット調達価格・加重平均価格で定義した点は、蓄電池の調整力kWh価格の上限・下限を構造的に規定する核心ルールと読める。
- インバランス補給による充電を蓄電原資に用いず、想定インバランス料金も限界費用に用いないとの明記は、インバランスを利用した不当な価格形成の抑止を意図していると考えられる。
- FIP電源併設蓄電池の固定費を「蓄電池に係る固定費のみ」に限定し、想定応札量で充放電制約を考慮する整理は、併設蓄電池のB種電源としての固定費回収の枠組みを明確化する実務上の要点である。
※本ブロックは一次資料の事実に基づく編集部の見立てであり、確定情報ではありません(2026年7月時点)。
この記事のまとめ
監視委(制度設計・監視専門会合)は需給調整市場ガイドラインを2026年3月13日に改定し、3月14日受渡分から適用する。調整力kWh市場では蓄電池の限界費用算定式を規定し、蓄電原資はスポット等の調達市場価格・自社充電費用・充電電気の加重平均価格とし、インバランス補給による充電・想定インバランス料金は用いない。調整力ΔkW市場ではFIP電源併設蓄電池は蓄電池に係る固定費のみ算入、想定応札量は蓄電池の充放電制約を考慮する。B種電源協議の廃止や全商品前日取引化に伴う機会費用見直しも反映されており、蓄電池事業者は入札ロジックの即時対応が必要である。
編集体制
執筆
BESSNEWS編集部
系統用蓄電池の制度・市場・ファイナンスを一次資料に基づき解説する専門編集チーム。
監修
BESS NEWS編集長
系統用蓄電池の制度・電力市場を専門とする社内専門家。本記事の制度記述・数値を確認。
出典(一次情報)
- 電力・ガス取引監視等委員会 制度設計・監視専門会合『需給調整市場ガイドライン』(2021年3月策定、2026年3月13日改定、全13ページ)
https://www.egc.meti.go.jp/activity/emsc/ - 保存済み一次資料PDF:02.04_蓄電池情報/02_政策・制度(経産省・エネ庁・監視委)/監視委/20260313_監視委_需給調整市場ガイドライン改定.pdf
本記事は2026年3月13日改定の一次資料のみに基づいています(対象日より後の情報は含みません)。制度内容は今後の審議で変更される可能性があります。
出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/institutional/proffessional/4609403102002/
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