調整力市場の“品薄”をどう埋めるか ― 応札不足・前日取引化・機器個別計測と蓄電池の市場機会
電力広域的運営推進機関(OCCTO)は、需給調整市場検討小委員会の2025年度検討状況を第117回の調整力等委員会に報告した。全商品で応札不足が続くなか、2026年度からの前日取引化・30分化・機器個別計測の導入と、変動性再エネ(FIP)の調整機能活用の継続検討を整理している。
このページの要点
- 需給調整市場は2024年4月の全商品運開後も、全商品で募集量に対する応札量・約定量の未達(応札不足)が継続している(第117回 調整力等委 資料4)。
- 応札不足対応として、市場外調整力(自然体余力)・緊急時調整力の見直しによる募集量の控除や必要量低減等を実施。取引実績(〜2026年2月14日)は一定の改善傾向。
- 2026年度から現週間商品の前日取引化・30分取引化と機器個別計測(群管理含む)を導入。変動性再エネ(市場連動型FIP電源)の調整機能活用も継続検討する。
出典:電力広域的運営推進機関 需給調整市場検討小委員会 検討状況(2025年度報告)/第117回 調整力及び需給バランス評価等に関する委員会 資料4(2026年3月16日・全84ページ)。
調整力市場が慢性的な「品薄」(応札不足)に陥っている現状の総点検報告である。2026年度から前日取引化・30分化で応札余力を増やし、機器個別計測で低圧・分散型リソースの参入を広げ、将来はFIP電源も調整役に動員する。系統用蓄電池の調整力市場環境に直結する。
目次
- 需給調整市場の応札不足の現状と対応策
- 2026年度の制度変更(前日取引化・30分化・機器個別計測)
- 変動性再エネ(FIP)活用と蓄電池の市場機会
- よくある質問(Q&A)
- 編集部の見立て(独自分析)
- 出典(一次情報)
需給調整市場の応札不足の現状と対応策
全商品の取引が始まっても、募集量に応札が届かない状態が続いている。
図1:需給調整市場の応札不足の現状と実施した対応策
出典:第117回 調整力及び需給バランス評価等に関する委員会 資料4(2026年3月16日・全84ページ)。
需給調整市場は、系統の周波数・需給を維持するための調整力(一次調整力〜三次②調整力)を取引する市場である。2024年4月に全商品の取引を開始(全面運開)したが、その後も全商品で募集量に対する応札量・約定量の未達(応札不足)が発生し、需給調整市場検討小委員会・制度検討作業部会・制度設計/監視専門会合等で対応が検討されてきた。2025年度の開始当初も未達状態は継続しており、施策・検討が続いている。
今回の報告は、電力広域的運営推進機関の需給調整市場検討小委員会が、(1)2025年度の検討状況、(2)2025年度の取引実績、(3)2026年度以降の検討すべき課題を、第117回 調整力及び需給バランス評価等に関する委員会(資料4・全84ページ)に整理して報告したものである。
需給調整市場は2024年4月より全商品取引を開始したが、全商品で募集量に対する応札量・約定量の未達が発生している。応札不足対応として、市場外調整力(自然体余力)や緊急時調整力の見直し(EPPS動作期待等)による募集量の控除、将来的な一次調整力のΔkWマージンの取扱いの方向性、変動性再エネの活用方法の整理を実施した。
— 需給調整市場検討小委員会 検討状況(2025年度報告)取引実績(〜2026年2月14日)は、応札不足対応等を通じて一定の改善傾向が見られるとされる。ただし二次①はまだ広域調達が実施されていないなど、商品ごとに状況は異なる。連系線利用枠の拡大による広域調達の進展も論点として挙げられている。
2026年度の制度変更 ― 前日取引化・30分化・機器個別計測
応札量を増やすための、市場の「入口」を広げる制度変更が2026年度から始まる。
図2:2026年度の制度変更(前日取引化・30分取引化・機器個別計測)
出典:需給調整市場検討小委員会 検討状況(2025年度報告)/第117回 調整力等委 資料4。
2026年度からは、現週間商品の前日取引化・30分取引化と、機器個別計測(群管理を含む)の導入に向けた対応・準備がフォローアップされている。前者は応札できる時間軸を前日・30分単位に細分化して応札量の増加をねらう施策、後者は次世代スマートメーターを設置した低圧機器点をリスト・パターンで市場参入させ、分散リソースの供出を広げるものである。
前日取引化・30分化
現週間商品を前日取引化・30分取引化。応札量の増加をねらう施策として2026年度に開始する。
機器個別計測(群管理含む)
次世代スマメを設置した低圧機器点をリスト・パターンで市場参入可能に。群管理を含む。
前日取引化以降の複合商品の調達量判断
前日取引化以降は、複合商品の調達量判断の閾値を10%(控除後の下限値600MW)とし、三次②必要量は複合商品の調達量に応じて控除量を使い分ける運用を開始する。市場外調整力(自然体余力)・緊急時調整力の見直しによる募集量の控除を、前日化後の運用ルールとして具体化したものである。
前日取引化以降は複合商品の調達量判断の閾値を10%(控除後の下限値600MW)とし、三次②必要量は複合商品の調達量に応じて控除量を使い分ける運用を開始する。機器個別計測は、次世代スマメ設置の低圧機器点がリスト・パターンで市場参入可能となる(群管理含む)。
— 需給調整市場検討小委員会 検討状況(2025年度報告)変動性再エネ(FIP)活用と蓄電池の市場機会
将来は太陽光・風力(FIP)も調整役に動員する構想が整理された。
報告では、将来の変動性再エネの調整機能活用についても方向性が整理された。対象は市場連動型のFIP電源とし、技術面・制度面(市場への応札方法・市場取引の対価性)の課題やリソース種別ごとの市場参加方法を整理して継続検討するとされている。
需給調整市場は系統用蓄電池の主要な収益源の一つである。慢性的な応札不足は、裏を返せば蓄電池の調整力供出機会(収益機会)が大きいことを意味する。2026年度の前日取引化・30分取引化は蓄電池を含む調整力提供者の応札余力を増やす方向で、機器個別計測(群管理含む)と低圧機器点のリスト・パターン参入は、低圧・分散型蓄電池(アグリゲーション)の市場参入の門戸を広げる。
- 蓄電池事業者・アグリゲーターは、2026年度の前日取引化・30分取引化・機器個別計測の制度変更を踏まえて調整力市場への応札戦略・参入計画を見直す。
- 低圧・分散型蓄電池を扱う事業者は、次世代スマメ低圧機器点のリスト・パターン参入や群管理の要件を確認し参入準備を進める。
- 複合商品の調達量判断閾値10%(控除後下限600MW)など、前日化後の運用ルールが約定機会に与える影響を試算する。
- FIP電源の調整機能活用の検討動向を注視し、FIP併設蓄電池の市場戦略への影響を評価する。
読者別の緊急度
調整力市場の応札不足=蓄電池の収益機会という構図を把握しておくとよい。
EMS・市場参入設計担当は前日取引化・機器個別計測の要件を今月中に確認すべき。
2026年度の制度変更が応札戦略に直結するため今月中に押さえるべき。
よくある質問(Q&A)
需給調整市場では応札不足が起きているのですか?起きています。2024年4月の全商品取引開始(全面運開)後も、全商品で募集量に対する応札量・約定量の未達が継続しており、2025年度開始当初も未達状態は続いています。
応札不足への対応策は何ですか?市場外調整力(自然体余力)や緊急時調整力の見直しによる募集量の控除、一次調整力のΔkWマージンの取扱いの方向性整理、必要量低減などを実施しています。取引実績(〜2026年2月14日)では一定の改善傾向が見られます。
2026年度から何が変わりますか?現週間商品の前日取引化・30分取引化と、機器個別計測(次世代スマートメーター設置の低圧機器点をリスト・パターンで市場参入可、群管理を含む)の導入が開始されます。
前日取引化以降の複合商品の調達量判断はどうなりますか?複合商品の調達量判断の閾値を10%(控除後の下限値600MW)とし、三次②必要量は複合商品の調達量に応じて控除量を使い分ける運用を開始します。
変動性再エネの調整機能活用の対象は何ですか?対象は市場連動型のFIP電源です。技術面・制度面(市場への応札方法・市場取引の対価性)の課題やリソース種別ごとの市場参加方法を整理し、継続検討するとされています。
系統用蓄電池への影響はどうなりますか?需給調整市場は系統用蓄電池の主要な収益源の一つで、慢性的な応札不足は蓄電池の調整力供出機会(収益機会)が大きいことを意味します。前日取引化・30分化は応札余力を増やす方向で、機器個別計測(群管理含む)は低圧・分散型蓄電池の市場参入の門戸を広げます。
編集部の見立て(独自分析)
独自分析
- 全商品の慢性的応札不足は、蓄電池が調整力市場で供出余地・収益機会を持つことの裏返しであり、前日取引化・30分化は蓄電池の応札参加を後押しする方向と読める。
- 機器個別計測(群管理含む)と次世代スマメ低圧機器点のリスト・パターン参入は、低圧・分散型蓄電池(アグリゲーション)の市場参入の門戸を広げる重要な制度変更である。
- 市場連動型FIP電源の調整機能活用は、将来的に蓄電池と変動性再エネの調整力市場での競合・併設(FIP併設蓄電池)の論点に直結する。
※本ブロックは一次資料の事実に基づく編集部の見立てであり、確定情報ではありません(2026年3月時点の報告に基づく)。
この記事のまとめ
需給調整市場は2024年4月の全商品運開後も全商品で応札不足が続いており、市場外調整力・緊急時調整力の見直しによる募集量控除等で対応してきた。2026年度からは現週間商品の前日取引化・30分取引化と機器個別計測(群管理含む)を導入し、前日化後は複合商品の調達量判断閾値10%(控除後下限600MW)などの運用を開始する。将来は市場連動型FIP電源の調整機能活用も継続検討する。慢性的応札不足は系統用蓄電池の収益機会が大きいことの裏返しであり、制度変更は蓄電池の応札参加と低圧・分散型の参入を後押しする方向にある。
編集体制
執筆
BESSNEWS編集部
系統用蓄電池の制度・市場・ファイナンスを一次資料に基づき解説する専門編集チーム。
監修
BESS NEWS編集長
系統用蓄電池の制度・市場運用を専門とする社内専門家。本記事の制度記述・数値を確認。
出典(一次情報)
- 電力広域的運営推進機関(OCCTO)需給調整市場検討小委員会「需給調整市場検討小委員会における検討状況について(2025年度報告)」/第117回 調整力及び需給バランス評価等に関する委員会 資料4(2026年3月16日・全84ページ)
https://www.occto.or.jp/iinkai/jukyuchousei/ - 保存済み一次資料PDF:02.04_蓄電池情報/01_市場制度(OCCTO・EPRX・JEPX)/OCCTO/20260316_OCCTO_需給調整市場検討状況2025年度報告.pdf
本記事は2026年3月16日公表の一次資料のみに基づいています(対象日より後の情報は含みません)。検討状況・課題は今後の審議で変更される可能性があります。
出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/institutional/proffessional/4609703102001/
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