需給調整市場の全商品前日取引化で何が変わったか ― 複合上限15円・30分取引化と蓄電池への影響
電力・ガス取引監視等委員会は第19回制度設計・監視専門会合(2026年3月30日)で、2026年3月14日の全商品前日取引化・30分取引化・複合市場上限価格15円への見直し直後の市場動向を報告した。あわせてB種電源の固定費回収状況と、最小約定希望量の過剰設定への是正も示された。
このページの要点
- 2026年3月14日受渡分から全商品の前日取引化・30分取引化が始まり、複合市場の上限価格が19.51円から15円/ΔkW・30分へ引き下げられた(監視委資料)。
- 前日取引化後1週間(3/14〜3/20)で複合市場の平均約定単価が東京4.91→2.31円・中部3.49→1.89円へ低下。三次調整力②は多くのエリアで上昇し、一次調整力は依然未達(監視委資料)。
- 最小約定希望量の部分約定回避目的の過大設定を是正指示・確認。B種電源36件の固定費回収率は0〜91%とばらつくが適切に管理と確認(監視委資料)。
出典:監視委 第19回制度設計・監視専門会合 資料「需給調整市場の運用等について」(2026年3月30日)。
需給調整市場の取引ルールが2026年3月14日に大きく切り替わった(前日取引化・30分コマ化・値段の天井引き下げ)直後の経過観察報告である。あわせて、部分約定を避けるために最低落札量を過大に設定する行為へ是正指示が出され、蓄電池の入札行動に直接ブレーキがかかる。
目次
- 2026年3月14日の市場ルール変更(前日取引化・30分化・上限15円)
- 変更直後の市場動向とB種電源の固定費回収状況
- 最小約定希望量の是正と蓄電池の入札・収益への影響
- よくある質問(Q&A)
- 編集部の見立て(独自分析)
- 出典(一次情報)
2026年3月14日の市場ルール変更 ― 前日取引化・30分化・上限15円
需給調整市場の取引タイミング・コマ幅・価格上限が同時に切り替わった。
電力・ガス取引監視等委員会の第19回制度設計・監視専門会合(2026年3月30日)事務局資料「需給調整市場の運用等について」によれば、2026年3月14日受渡分から全商品の前日取引化と30分取引化が開始された。あわせて、複合市場の上限価格が従前の19.51円/ΔkW・30分から15円/ΔkW・30分に変更された。
複合市場は、複数商品を組み合わせて調達する需給調整市場の一区分である。前日取引化により、需給調整市場はスポット市場後の取引となり、事業者は受渡日前日に調整力を約定できるようになった。取引コマが30分単位に細分化されたことともあわせ、蓄電池を含む市場参加者の応札設計に直接影響する変更である。
2026年3月14日受渡分から全商品前日取引化・30分取引化を開始した。あわせて複合市場の上限価格を19.51円から15円/ΔkW・30分に変更した。
— 監視委 第19回制度設計・監視専門会合 資料「需給調整市場の運用等について」変更直後の市場動向とB種電源の固定費回収状況
前日取引化後の1週間で、複合市場は単価低下、三次②は単価上昇という対照的な動きになった。
図1:前日取引化直後の市場動向とB種電源の固定費回収状況
出典:監視委 第19回制度設計・監視専門会合 資料「需給調整市場の運用等について」(2026年3月30日)。2026年3月14日〜3月20日の速報値。
前日取引化以降1週間(2026年3月14日〜3月20日)の速報では、複合市場の平均約定単価が東京で4.91円から2.31円、中部で3.49円から1.89円へ低下した。安価な札の応札量が増加したことが要因とされる。東京の一次調整力の調達率も改善傾向を示した。
一方、三次調整力②市場は多くのエリアで平均約定単価が上昇し、一次調整力は依然として多くのエリアで未達だった。募集量には、揚水随契(中部2024年度〜、北海道・関西2025年7月〜、東京2025年10月〜)や自然体余力控除・EPPS動作期待分控除が影響している。
B種電源の固定費回収状況
B種電源(容量市場の長期脱炭素電源等)は固定費回収状況を3か月に1回報告する。12月までに協議が整ったB種電源36件の第3四半期(2025年10〜12月)の回収状況が確認され、リソースごとに累積回収率は0〜91%とばらつくものの、約定実績に基づき適切に管理されていると確認された。回収率0%のリソースは、点検や応札方針変更による未応札等が理由とされる。
最小約定希望量の是正と蓄電池の入札・収益への影響
部分約定を避けるために最低落札量を過大に設定する入札手法に、監視委が是正指示を出した。
図2:最小約定希望量の適切な設定と是正対象の切り分け
出典:監視委 第19回制度設計・監視専門会合 資料「需給調整市場の運用等について」(2026年3月30日)。
最小約定希望量とは、入札時に事業者が指定する「約定可能な最低ΔkW」である。監視委は、技術的制約(アセスメントⅡ違反回避。指令値の±10%を超えると違反となる)に基づく適切な設定は問題ないとしつつ、技術的制約がないのに部分約定回避を目的として応札量と同値等に過大設定する事案は本来の趣旨に反し、過調達・競争阻害を招くと指摘。ヒアリングを行い、該当事業者へ適切な設定を指示し是正を確認した。今後、需給調整市場ガイドライン・取引規程にも明示される予定である。
適切な設定
アセスメントⅡ違反回避など技術的制約に基づく設定は問題なし。指令値±10%超で違反となるリスクへの対応。
是正対象
技術的制約がないのに部分約定回避目的で過大設定する事案。過調達・競争阻害を招くとして是正指示・確認。
技術的制約に基づかない、部分約定回避目的の最小約定希望量の過大設定は本来の趣旨に反し、過調達・競争阻害を招く。該当事業者へ適切な設定を指示し是正を確認した。今後ガイドライン・取引規程にも明示する。
— 監視委 第19回制度設計・監視専門会合 資料「需給調整市場の運用等について」複合市場の上限価格が19.51円から15円へ下がったことは、上限価格張り付きで約定していた蓄電池の高値収益の天井を直接引き下げる。前日取引化でスポット市場後の取引となり不確実性が減る一方、スポット市場で余力が先取りされる影響も生じる。蓄電池事業者はこれらのルール変更を織り込んだ入札・収益の再設計が必須になる。
- 蓄電池事業者・アグリゲーターは、複合市場の上限価格15円・全商品前日取引化・30分取引化を織り込んだ入札ロジックと収益モデルを再設計する。
- 最小約定希望量は技術的制約(アセスメントⅡのリスク)に基づき適切に設定し、部分約定回避目的の過大設定を是正する(監視・ガイドライン明示の対象)。
- 前日取引化後の市場動向(複合・三次②の約定単価・調達率)を継続モニタリングし、スポット市場との余力配分戦略を最適化する。
読者別の緊急度
需給調整市場のルール変更の方向性を把握しておく程度でよい。
前日取引化・30分取引化・上限15円を制御ロジックに今月中に反映すべき。
収益・入札に直結するルール変更で、最小約定希望量是正含め絶対に今押さえるべき。
よくある質問(Q&A)
2026年3月14日から需給調整市場は何が変わりましたか?2026年3月14日受渡分から全商品の前日取引化と30分取引化が開始されました。あわせて複合市場の上限価格が従前の19.51円から15円/ΔkW・30分に変更されています。
複合市場の上限価格はいくらになりましたか?15円/ΔkW・30分です。従前は19.51円/ΔkW・30分でした。
ルール変更直後の市場はどう動きましたか?前日取引化以降1週間(2026年3月14日〜3月20日)の速報では、複合市場の平均約定単価が東京で4.91円から2.31円、中部で3.49円から1.89円へ低下しました(安価な札の応札量増加が要因)。東京の一次調整力の調達率も改善傾向です。一方、三次調整力②市場は多くのエリアで平均約定単価が上昇し、一次調整力は依然として多くのエリアで未達です。
B種電源の固定費回収状況はどうでしたか?12月までに協議が整ったB種電源36件の第3四半期(2025年10〜12月)の回収状況が確認されました。リソースごとに累積回収率は0〜91%とばらつきますが、約定実績に基づき適切に管理されていると確認されています。回収率0%は点検や応札方針変更による未応札等が理由です。
最小約定希望量の是正とは何ですか?最小約定希望量(約定可能な最低ΔkW)について、技術的制約(アセスメントⅡ違反回避)に基づく適切な設定は問題ないものの、技術的制約がないのに部分約定回避を目的として応札量と同値等に過大設定する事案は本来の趣旨に反し、過調達・競争阻害を招くとして、該当事業者へ適切な設定を指示し是正を確認しました。今後、需給調整市場ガイドライン・取引規程にも明示される予定です。
この変更は蓄電池の収益にどう影響しますか?複合市場の上限価格が19.51円から15円へ引き下げられたことで、上限価格張り付きで約定していた蓄電池の高値収益の天井が下がります。前日取引化によりスポット市場後の取引となるため、スポットと需給調整の余力配分(アービトラージ)を一日のなかで最適化する設計が必要になります。最小約定希望量の是正により、部分約定回避という入札手法にもブレーキがかかります。
編集部の見立て(独自分析)
独自分析
- 複合市場の上限価格が19.51円→15円へ引き下げられたことは、上限張り付きで約定する蓄電池の高値収益の天井を直接下げる重要な制度変更であり、収益モデルの前提を書き換える。
- 全商品前日取引化により需給調整市場がスポット市場後の取引となるため、蓄電池はスポットと需給調整の余力配分(アービトラージ)を一日のなかで最適化する設計が必要になる。
- 最小約定希望量の過剰設定への是正・ガイドライン明示は、部分約定回避という入札テクニックを封じるもので、蓄電池を含む事業者の約定戦略に直接影響する監視強化である。
※本ブロックは一次資料の事実に基づく編集部の見立てであり、確定情報ではありません(2026年7月時点)。
この記事のまとめ
監視委は第19回制度設計・監視専門会合(2026年3月30日)で、2026年3月14日の全商品前日取引化・30分取引化・複合市場上限価格15円への見直し(従前19.51円)直後の市場動向を報告した。前日取引化後1週間で複合市場の平均約定単価は東京4.91→2.31円・中部3.49→1.89円へ低下、三次調整力②は多くのエリアで上昇、一次調整力は依然未達。B種電源36件の固定費回収率は0〜91%とばらつくが適切に管理と確認された。あわせて、部分約定回避目的の最小約定希望量の過大設定に是正指示が出され、ガイドライン・取引規程への明示が予定される。蓄電池事業者は上限15円・前日取引化・最小約定希望量是正を織り込んだ入札・収益の再設計が必須になる。
編集体制
執筆
BESSNEWS編集部
系統用蓄電池の制度・市場・ファイナンスを一次資料に基づき解説する専門編集チーム。
監修
BESS NEWS編集長
系統用蓄電池の制度・電力市場を専門とする社内専門家。本記事の制度記述・数値を確認。
出典(一次情報)
- 電力・ガス取引監視等委員会 第19回制度設計・監視専門会合(2026年3月30日)資料「需給調整市場の運用等について」
https://www.emsc.meti.go.jp/activity/emsc/ - 保存済み一次資料PDF:02.04_蓄電池情報/02_政策・制度(経産省・エネ庁・監視委)/監視委/20260330_監視委_需給調整市場の運用.pdf
本記事は2026年3月30日公表の一次資料のみに基づいています(対象日より後の情報は含みません)。速報値・回収率等は今後の確定値・審議で変更される可能性があります。
出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/institutional/proffessional/4611103102001/
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