世界の蓄電池導入は108GW・前年比40%増 ― IEAが“最速成長の電源技術”と位置づけ
国際エネルギー機関(IEA)は年次報告『Global Energy Review 2026』(2026年4月公表)で、2025年に世界で108GWの蓄電池が新規導入され、前年比40%増・2021年比11倍に達したと報告した。LFPが導入の約90%、約80%が系統用(ユーティリティスケール)、中国が約60%を占める。日本の系統用蓄電池の技術選定・放電時間設計・調達戦略の前提となる一次データを読み解く。
このページの要点
- IEA『Global Energy Review 2026』は2025年の世界エネルギー動向の初の包括評価で、蓄電池を最速成長の電源技術と位置づけて専章で分析。2025年に108GWが新規導入され、前年比40%増・2021年比11倍となった。
- LFP(リチウムイオン鉄リン酸)電池が導入の約90%を占め(5年前は50%未満)、新規容量の約80%が系統用(ユーティリティスケール)。中国が約60%の導入シェアで世界をリードし、米国・欧州が続く。
- 放電時間は2時間中心から4時間以上へ徐々に長期化。PV比率上昇に伴う柔軟性の価値増大を反映し、豪州・中東など新興市場でも急拡大している。
出典:IEA『Global Energy Review 2026』(2026年4月公表・全48ページ)蓄電池章。
世界のエネルギー市場の年次総括にあたる報告書で、蓄電池が「今いちばん急成長している電源技術」として独立の章で扱われた。何GW導入されたか・どの化学組成が主流か・どの国が牽引しているかの最新データが揃い、日本の系統用蓄電池の立ち位置を世界比較で測る物差しとなる。
目次
- 2025年の世界の蓄電池導入|108GW・前年比+40%の最速成長
- LFP約90%・放電時間長期化・地域シェア(中国60%)の構造
- 日本の系統用蓄電池への示唆(技術選定・放電時間・調達)
- よくある質問(Q&A)
- 編集部の見立て(独自分析)
- 出典(一次情報)
2025年の世界の蓄電池導入|108GW・前年比+40%の最速成長
世界のエネルギーセクター全体を総括する年次報告の中で、蓄電池は独立した技術章で扱われた。
『Global Energy Review 2026』は、IEAが2026年4月に公表した全48ページの年次報告である。2025年のエネルギーセクター全体(石油・ガス・石炭・再エネ・電力需給・主要技術・CO2排出)の初の包括的評価として、地域別・主要国別データを提供する。この中で蓄電池(Battery storage)は独立した技術章が設けられ、「今日最も急成長している電源技術」と位置づけられた。
2025年に世界で新規導入された蓄電池容量は108GW。2024年比で40%増、2021年比では11倍にあたる。報告書は電力需要全体やEV・ヒートポンプ等の技術動向も扱うが、系統用蓄電池の関係者にとって最重要なのはこの蓄電池章の定量データである。
蓄電池は今日最も急成長している電源技術であり、2025年に世界で108GWの新規容量が導入された。これは2024年比40%増、2021年比では11倍にあたる。
— IEA『Global Energy Review 2026』蓄電池章LFP約90%・放電時間長期化・地域シェア(中国60%)の構造
「何が」「どこで」「どのくらいの時間」導入されているか ― 108GWの中身を3つの軸で分解する。
図1:2025年導入の構造(化学組成・放電時間・地域)
出典:IEA『Global Energy Review 2026』蓄電池章(2026年4月公表・全48ページ)。
導入量の内訳をみると、化学組成・用途・地域のいずれにも明確な偏りがある。LFP(リチウムイオン鉄リン酸)電池が導入の約90%を占め、5年前の50%未満から大きくシェアを伸ばした。新規容量の約80%は系統用(ユーティリティスケール)で、残りは商業・住宅向けの需要家側(behind-the-meter)である。地域では中国が約60%の導入シェアで世界をリードし、米国・欧州が続く。
LFPが約90%へ ― 系統用の事実上の標準に
LFPはEV用の他化学組成と比べてエネルギー密度は低いが、安価で頻繁なサイクルに適するとされる。1日に何度も充放電を繰り返す系統用の使い方に合致した特性であり、5年で50%未満から約90%への急伸は、系統用途におけるLFPの優位が定着したことを示す。
放電時間は2時間中心から4時間以上へ
現在の中心
放電時間は依然2時間中心。短時間の需給調整・価格差取引を主用途とする構成。
増加している構成
4時間以上で導入される案件が増加。PV比率上昇に伴う柔軟性の価値増大を反映し、徐々に長期化。
中国集中と新興市場への広がり
中国が2025年も約60%の導入シェアを維持する一方、ストレージが系統の柔軟性確保手段としてますます重視される豪州や中東の一部など、最大市場以外への展開も広がっている。報告書はデータセンター向けを中心とした蓄電池ベースの無停電電源装置(UPS)にも言及した。
日本の系統用蓄電池への示唆(技術選定・放電時間・調達)
世界の構造変化は、日本の事業者の技術選定・放電時間設計・調達戦略の前提を更新する。
図2:日本の系統用蓄電池への示唆(技術選定・放電時間・調達)
出典:IEA『Global Energy Review 2026』蓄電池章(2026年4月公表)。
108GW(前年比+40%)という導入量、LFP約90%という化学組成の偏り、放電時間の長期化という3つの構造変化は、日本の系統用蓄電池の技術選定(LFP優位)・放電時間設計(4時間以上のトレンド)・市場規模感の前提となる。また、中国の約60%シェアはセル・モジュールのサプライチェーン・コスト動向に直結し、日本の調達戦略にも影響する。
PV比率の上昇が長時間ストレージの価値を高めるというIEAの分析は、日本の長期脱炭素電源オークション等における長時間蓄電池の位置づけを補強する国際的な裏付けとなる。夕方のピークシフト需要への対応で長時間化が進む世界のトレンドは、PV導入が進む日本の系統でも同じ方向に働くと考えられる。
- 蓄電池事業者・投資家は、世界の導入量108GW・LFP約90%・放電時間長期化のトレンドを自社の技術選定・放電時間設計・市場規模想定の前提に反映する。
- 中国の約60%シェアを踏まえ、セル・モジュールの調達戦略とサプライチェーンリスクを評価する。
- PV比率上昇に伴う長時間ストレージの価値増大という分析を、長期脱炭素電源オークション等での長時間蓄電池の事業性評価に活用する。
読者別の緊急度
世界の蓄電池成長トレンドを今月中に把握しておきたい。
LFP優位・放電時間長期化のトレンドを今月中に確認すべき。
世界比較での日本の立ち位置とサプライチェーン動向を今月中に押さえるべき。
よくある質問(Q&A)
2025年に世界でどれだけの蓄電池が導入されましたか?108GWの蓄電池が新規導入されました。2024年比で40%増、2021年比では11倍にあたり、IEAは蓄電池を今日最も急成長している電源技術と位置づけています。
LFP電池のシェアはどのくらいですか?2025年の導入の約90%をLFP(リチウムイオン鉄リン酸)電池が占めました。5年前は50%未満でした。EV用の他化学組成よりエネルギー密度は低いものの、安価で頻繁なサイクルに適するとされています。
系統用(ユーティリティスケール)の割合はどのくらいですか?2025年の新規容量の約80%が系統用(ユーティリティスケール)で、残りは商業・住宅向けの需要家側(behind-the-meter)です。
どの国・地域が導入を牽引していますか?中国が2025年も約60%の導入シェアで世界をリードし、米国・欧州が続きます。ストレージが系統の柔軟性確保手段として重視される豪州や中東の一部など、最大市場以外への展開も広がっています。
放電時間にはどのようなトレンドがありますか?放電時間は依然2時間中心ですが、4時間以上で導入される案件が増加し、徐々に長期化しています。PV比率の上昇に伴う柔軟性の価値増大を反映した動きです。
日本の系統用蓄電池にはどのような示唆がありますか?LFP約90%は技術選定の、放電時間の長期化は放電時間設計の、108GWの導入量は市場規模感の前提となります。中国の約60%シェアはサプライチェーン・調達戦略に関わり、PV比率上昇が長時間ストレージの価値を高めるという分析は長期脱炭素電源オークション等での長時間蓄電池の位置づけを補強する国際的な裏付けとなります。
編集部の見立て(独自分析)
独自分析
- LFPが導入の約90%を占めるという事実は、頻繁なサイクル・コスト・安全性(熱安定性)の観点から、系統用ではLFPが事実上の標準になったことを示すと読める。
- 放電時間が2時間中心から4時間以上へ長期化する傾向は、PV普及に伴う夕方ピークシフト需要への対応で長時間ストレージの価値が増していることの反映と考えられる。
- 中国が約60%の導入シェアという集中は、セル・モジュールのサプライチェーンとコスト競争力の偏在を示し、日本の調達・経済安全保障上の論点となる。
※本ブロックは一次資料の事実に基づく編集部の見立てであり、確定情報ではありません(2026年7月時点)。
この記事のまとめ
IEAの年次報告『Global Energy Review 2026』(2026年4月公表)は、2025年に世界で108GWの蓄電池が新規導入され(前年比40%増・2021年比11倍)、蓄電池を最速成長の電源技術と位置づけた。LFPが導入の約90%(5年前は50%未満)、約80%が系統用、中国が約60%のシェアで米国・欧州が続き、豪州・中東など新興市場でも急拡大している。放電時間は2時間中心から4時間以上へ徐々に長期化し、PV比率上昇に伴う柔軟性の価値増大を反映する。日本の系統用蓄電池にとっては、技術選定(LFP優位)・放電時間設計・市場規模感・調達戦略の前提を世界比較で更新できる一次データである。
編集体制
執筆
BESSNEWS編集部
系統用蓄電池の制度・市場・ファイナンスを一次資料に基づき解説する専門編集チーム。
監修
BESS NEWS編集長
系統用蓄電池の制度・系統運用を専門とする社内専門家。本記事の数値・記述を確認。
出典(一次情報)
- IEA『Global Energy Review 2026』(2026年4月公表・全48ページ)蓄電池(Battery storage)章
https://www.iea.org/reports/global-energy-review-2026 - 保存済み一次資料PDF:02.04_蓄電池情報/06_国際機関(IEA・IRENA・他)/IEA/20260424_IEA_GlobalEnergyReview2026.pdf
本記事は2026年4月24日時点で確認した一次資料のみに基づいています(対象日より後の情報は含みません)。詳細な数値・地域別データは一次資料を参照してください。
出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/market/standard/4613602001001/
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