櫻貿易株式会社
制度・政策・審議会上級

再エネ併設蓄電池の系統充電分、非化石価値は「按分」で算定へ ― 高度化法第3フェーズ(第二十四次中間とりまとめ)

総合資源エネルギー調査会 制度検討作業部会の『第二十四次中間とりまとめ』(令和8年5月・全55ページ)が公表された。高度化法第3フェーズ(2026〜2028年度)の制度設計を確定するとともに、FIP併設蓄電池の系統充電解禁を受け、再エネ併設蓄電池の系統充電分の非化石価値を放電量の按分で算定する新ルール(2025年4月発電分から適用)を明記した。

このページの要点

  1. 高度化法第3フェーズは2026〜2028年度の3年間。2026年度の需給バランスは1.05を維持(外部調達比率約12.9%・外部供出量約1,115億kWh)、化石電源グランドファザリング(GF)は約2%漸減、2040年度の非化石電源比率目標を60%以上へ見直す方向を整理した。
  2. 再エネ併設蓄電池の系統充電分の非化石価値は、蓄電池から放電された電気量を系統側からの充電量と発電側からの充電量で按分して算定する。FIPプレミアムの取扱いを参考に2025年4月発電分から適用
  3. 背景は、FIP制度で併設蓄電池の系統充電が新規認定2024年4月・既認定2025年4月から可能になったこと。非FIT再エネ証書の直接取引はFIP電源の運転開始日制限を撤廃した。

出典:制度検討作業部会 第二十四次中間とりまとめ(令和8年5月・2026年5月1日公表)。

要旨 ― ひと言でいえば

再エネの「環境価値の証明書(非化石証書)」を小売事業者がどれだけ買わねばならないかのルールブック改訂版である。蓄電池をかませて充放電すると「どこから来た電気か」が曖昧になるため、系統由来と再エネ由来を割り算で仕分けする算定ルールを新設した。

目次

  1. 高度化法第3フェーズ(2026〜2028年度)の制度設計の全体像
  2. 再エネ併設蓄電池の系統充電分の非化石価値はどう按分されるか
  3. 非化石証書の需給・価格環境と併設BESSの収益への影響
  4. よくある質問(Q&A)
  5. 編集部の見立て(独自分析)
  6. 出典(一次情報)

高度化法第3フェーズ(2026〜2028年度)の制度設計の全体像

第2フェーズの運用評価を踏まえ、需給バランス・GF・長期目標の3点が整理された。

図1:高度化法第3フェーズ(2026〜2028年度)の骨子

高度化法第3フェーズの需給バランス1.05維持・化石電源GF約2%引き下げ・2040年度非化石60%以上を示す図

出典:制度検討作業部会 第二十四次中間とりまとめ(令和8年5月)。長期目標の最終決定は上位小委員会。

第二十四次中間とりまとめは、非化石価値取引市場(高度化法義務達成市場・再エネ価値取引市場)に関する議論を集約したもので、2026年3月2日〜3月31日のパブリックコメントを経て2026年5月1日に公表された。中心は高度化法第2フェーズ(2023〜2025年度)の運用評価と、第3フェーズ(2026年度〜)の制度設計である。

第2フェーズの評価では、2023年度・2024年度とも約9割5分の事業者が中間目標を達成した一方、2024年度は達成率63%の1者に高度化法第8条に基づく非化石証書調達の勧告が実施された。また2024年度は想定需給バランスが結果的に0.99となり(FIT発電量の想定と実績の約10%乖離が主因)、FIT発電量予測を重回帰分析による方法へ見直したうえで、2025年度中間目標値の外部調達比率を17.0%から15.0%へ修正している。

再エネ併設蓄電池の系統充電分の非化石価値はどう按分されるか

放電量を「系統側からの充電量」と「発電側からの充電量」で按分する算定方式が明記された。

図2:系統充電分の非化石価値の按分算定の考え方

再エネ併設蓄電池の系統充電分の非化石価値を放電量の按分で算定し2025年4月発電分から適用する図

出典:制度検討作業部会 第二十四次中間とりまとめ(令和8年5月)。

FIP制度では、併設蓄電池の系統充電が新規認定は2024年4月から、既認定は2025年4月から可能となった。これにより、再エネ発電設備に併設された蓄電池が系統からも充電を行うと、放電される電気に系統由来と再エネ由来が混在し、TSOの託送電力量データだけでは系統充電分の非化石価値を把握できないという課題が生じていた。

本とりまとめは、この場合の非化石価値について、蓄電池から放電された電気量を、系統側から充電された電気量と発電側から充電された電気量を用いて按分した値を蓄電池充電分の非化石価値として取り扱うことを明記した。適用はFIPプレミアムの取扱いを参考に2025年4月発電分からである。

一次資料の記載(要旨)

再エネ発電設備に併設される蓄電池が系統充電を行った場合の非化石価値については、蓄電池から放電された電気量を、系統側から充電された電気量と発電側から充電された電気量を用いて按分した値を蓄電池充電分の非化石価値として取り扱う。FIPプレミアムの取扱いを参考に2025年4月発電分から適用する。

— 第二十四次中間とりまとめ(要旨)

非化石証書の需給・価格環境と併設BESSの収益への影響

按分ルールの確定により、再エネ併設BESSの証書発行量計算の前提が明確になった。

今回のルール確定により、再エネ併設BESS事業者は非化石証書発行量の計算前提を明確に持てるようになった。系統用蓄電池そのものへの直接の証書発行ではないが、FIPからの市場統合・併設蓄電池の稼働率向上という政策方向は、併設BESSの事業性を左右する。

また、第3フェーズの需給バランス1.05・GF約2%漸減・2040年度非化石60%以上目標は、非化石証書市場の価格・需給環境を中長期で規定し、再エネ併設案件の収益見通しに波及する。あわせて、非FIT再エネ証書の直接取引はFIP電源について運転開始日の制限が撤廃され、発電事業者の証書販路が広がる方向にある。

実務チェックリスト

  • 再エネ併設蓄電池(特にFIP併設)の事業者は、系統充電分の非化石価値の按分算定方式を収益モデルに織り込む(2025年4月発電分から適用)。
  • 高度化法対象の小売電気事業者は、需給バランス1.05・外部調達比率約12.9%・GF約2%漸減を証書調達計画に反映する。
  • 発電事業者は、非FIT再エネ証書の直接取引拡大(FIP電源の運転開始日制限撤廃)を踏まえ、証書販路の拡大可能性を確認する。

読者別の緊急度

初級(投資家・土地オーナー)2/5

非化石証書市場の方向性として概観すればよい。

中級(建設・メーカー・設計)4/5

再エネ併設BESSの設計・収益検討では系統充電分の非化石価値按分を今月中に確認すべき。

上級(事業者・アグリゲーター)4/5

第3フェーズの需給バランス・GFと併設蓄電池ルールを今月中に押さえるべき。

よくある質問(Q&A)

再エネ併設蓄電池の系統充電分の非化石価値はどう算定されますか?

蓄電池から放電された電気量を、系統側から充電された電気量と発電側から充電された電気量を用いて按分した値を、蓄電池充電分の非化石価値として取り扱います。

按分算定はいつから適用されますか?

FIPプレミアムの取扱いを参考に、2025年4月発電分から適用されます。

なぜこの按分ルールが必要になったのですか?

FIP制度で併設蓄電池の系統充電が新規認定2024年4月・既認定2025年4月から可能となり、放電される電気に系統由来と再エネ由来が混在するためです。TSOの託送電力量データでは系統充電分の非化石価値を把握できないという制約に対応しています。

高度化法第3フェーズの期間と需給バランスは?

第3フェーズは2026〜2028年度の3年間です。2026年度の需給バランスは精緻化効果の見極めのため1.05を維持し、外部調達比率は約12.9%(外部供出量約1,115億kWh)です。

グランドファザリング(GF)はどう変わりますか?

化石電源GFは、2021〜2024年度の非化石電源比率増加分(約2%)を第3フェーズ開始時に引き下げ、フェーズ期間中は同一とされます。

2040年度の非化石電源比率目標はどうなりますか?

2040年度のエネルギー需給見通し(再エネ4〜5割・原子力2割・火力3〜4割)を受け、「2040年度における非化石電源比率を60%以上」とする目標見直しの方向が整理されました。最終決定は上位の次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会で行われます。

編集部の見立て(独自分析)

独自分析

  • 系統充電分の非化石価値を「放電量を系統充電量と発電充電量で按分」する算定方式が2025年4月発電分から適用と明記された点が、併設BESSの収益設計上の最重要ポイントである。
  • FIP併設蓄電池の系統充電解禁(新規2024年4月・既認定2025年4月)が本ルール整備の背景であり、託送電力量データでは把握できない技術的制約への制度的対応と読める。
  • 2040年度非化石電源比率60%以上目標とGF約2%漸減は、非化石証書の需給と価格を中長期で規定し、再エネ併設BESSの環境価値収益の前提となる。

※本ブロックは一次資料の事実に基づく編集部の見立てであり、確定情報ではありません(2026年7月時点)。

この記事のまとめ

制度検討作業部会の第二十四次中間とりまとめ(令和8年5月・全55ページ)は、高度化法第3フェーズ(2026〜2028年度)について需給バランス1.05維持(外部調達比率約12.9%)・GF約2%漸減・2040年度非化石電源比率60%以上への目標見直し方向を整理した。BESS関連では、再エネ併設蓄電池の系統充電分の非化石価値を、放電量を系統充電量と発電充電量で按分して算定する取扱いを2025年4月発電分から適用すると明記し、FIP併設蓄電池の収益計算の前提が明確になった。

編集体制

執筆

BESSNEWS編集部

系統用蓄電池の制度・市場・ファイナンスを一次資料に基づき解説する専門編集チーム。

監修

BESS NEWS編集長

系統用蓄電池の制度・系統運用を専門とする社内専門家。本記事の制度記述・数値を確認。

出典(一次情報)

  1. 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会 制度検討作業部会『第二十四次中間とりまとめ』(令和8年5月・全55ページ・2026年5月1日公表)
    https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/system_kentou/
  2. 保存済み一次資料PDF:02.04_蓄電池情報/02_政策・制度(経産省・エネ庁・監視委)/(2026-05-01 第二十四次中間とりまとめ)

本記事は2026年5月1日公表の一次資料のみに基づいています(対象日より後の情報は含みません)。制度内容は今後の審議等で変更される可能性があります。

出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/institutional/proffessional/4614303102001/

本記事は BESS media の転載条件(出典明記のうえ全文転載可)にもとづき転載しています。 記事内容の著作権は転載元に帰属します。

お気軽にご相談ください

系統用蓄電池事業についてなど、まずはお気軽にお話しください。

メールでお問い合わせいただいたお問い合わせには、2〜3営業日以内に担当者よりご返信いたします。
些細なことでも、まずはお気軽にご相談ください。
お問い合わせはこちら

NEWS

お知らせ