櫻貿易株式会社
制度・政策・審議会上級

系統用蓄電池の導入促進策を読み解く ― ストレージ式運用への誘導・立地誘導・順潮流側ノンファームと補助の評価軸

資源エネルギー庁は、第6回次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会の資料6で、分散型エネルギー推進戦略ワーキンググループでの議論を整理した。系統用蓄電池は連系済み64万kW・契約申込み約3,000万kW(2025年12月末)、2040年度導入見通しは系統用・再エネ併設で750〜1,500万kW。ストレージ式運用への誘導や順潮流側ノンファーム型接続の検討など、蓄電池政策の中核となる具体策が示された。

このページの要点

  1. 系統用蓄電池は連系済み64万kW・契約申込み約3,000万kW(2025年12月末・再エネ併設含まず)。2040年度導入見通しは系統用・再エネ併設で750〜1,500万kW、需要側蓄電池800〜3,300万kW、DR 280〜1,000万kW(外部機関試算・目標とは異なる)。
  2. 導入支援で高く評価される要件が具体化:ストレージ式運用(TSOと余力活用契約)、系統混雑緩和に資する立地、経済安保計画認定メーカーのセル(長期脱炭素第4回で優先約定)、NITE安全ガイドライン準拠、地域共生。
  3. 系統接続では、土地使用権原の要件化・保証金引上げ等の規律確保、N-1充電停止装置等を前提とした早期連系追加対策に加え、順潮流側(充電側)ノンファーム型接続の導入を目指す検討が明記された。

出典:第6回次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会 資料6(資源エネルギー庁・全6ページ)。

要旨 ― ひと言でいえば

系統用・家庭用・再エネ併設の蓄電池を国がどう増やし・どう使わせたいかを一枚に集約した「蓄電池政策の設計図」である。アービトラージへの誘導、混雑緩和の立地、安全・サイバー・地域共生まで、補助の評価軸が示された。

目次

  1. 系統用・再エネ併設蓄電池の導入状況と2040年度見通し
  2. 補助で高く評価される要件(運用・立地・調達・安全・地域共生)
  3. 系統接続の規律確保と順潮流側ノンファーム型接続の検討
  4. よくある質問(Q&A)
  5. 編集部の見立て(独自分析)
  6. 出典(一次情報)

系統用・再エネ併設蓄電池の導入状況と2040年度見通し

契約申込み約3,000万kWに対し連系済みは64万kW。需給ギャップが政策の出発点である。

資料6は、分散型エネルギーリソースを需要側リソース(需要側蓄電池・DR)と供給側リソース(系統用蓄電池・再エネ併設蓄電池)に整理し、施策の方向性を示す。足下の導入量は、需要側蓄電池等が約400万kW程度、系統用蓄電池が連系済み64万kW(契約申込みは約3,000万kW、2025年12月末時点・再エネ併設は含まず)である。

施策の方向性は、系統用蓄電池が「電力システムに貢献する蓄電池の重点導入と効果的運用の促進による多様な機能の発揮」、再エネ併設蓄電池が「FITからFIPへの移行等による再エネの市場統合の観点から実態を把握しつつ導入促進」である。

補助で高く評価される要件 ― ストレージ式運用・立地・サプライチェーン・安全・地域共生

導入支援の「高評価」要件が具体化され、案件設計の指針となった。

図1:導入支援で高く評価される要件 ― ストレージ式運用・混雑緩和の立地・サプライチェーン・安全と地域共生

系統用蓄電池の導入支援で高く評価される要件。ストレージ式運用・混雑緩和の立地・経済安保認定セル・NITE安全ガイドライン準拠を示す図

出典:第6回次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会 資料6(全6ページ)。経済安保計画認定メーカーのセル使用案件は長期脱炭素電源オークション第4回入札で優先約定。

具体策の第一はアービトラージ運用への誘導である。ストレージ式運用(TSOと余力活用契約を締結し、余力の範囲でTSOが柔軟にSoCを運用できる方式。長期脱炭素電源オークション落札案件は適用対象)の対象蓄電池を、導入支援で高く評価する。

運用

ストレージ式運用(TSOと余力活用契約)の対象蓄電池を高評価。アービトラージと系統貢献の両立を誘導。

立地

系統混雑緩和に資する立地・運用を高評価。空き容量マップ・ウェルカムゾーンマップの公開と連動。

サプライチェーン

経済安保計画認定メーカーのセル使用案件を長期脱炭素オークション第4回入札で優先約定。

安全・地域共生・サイバー

NITE『公共調達・重要インフラ向け蓄電池システムの安全ガイドライン』準拠を高評価。地域共生ガイドラインの作成、JC-STAR★2以上の基準整備・導入。

一次資料の記載(要旨)

ストレージ式運用の対象となる蓄電池、系統混雑緩和に資する立地・運用、経済安全保障推進法に基づく計画認定を受けたメーカーのセルを使用する案件、NITE安全ガイドラインに準拠する案件等を、導入支援において高く評価する。

— 第6回次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会 資料6(要旨)

再エネ併設蓄電池についてはFIP案件等の支援を継続し、導入ポテンシャルと実態の把握を進める。需要側蓄電池はDR対応機器の導入・IoT化支援等を継続する。

系統接続の規律確保と順潮流側ノンファーム型接続の検討

接続の「規律」と「拡大」を同時に進める二正面の設計である。

図2:系統接続の規律確保と接続拡大 ― 土地使用権原の要件化・早期連系の追加対策・順潮流側ノンファーム型接続の検討

系統用蓄電池の系統接続。土地使用権原の要件化・保証金引上げと順潮流側(充電側)ノンファーム型接続の検討を示す図

出典:第6回次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会 資料6(全6ページ)。順潮流側ノンファーム型接続は導入を目指す検討段階。

系統接続については、空き容量マップ・ウェルカムゾーンマップの公開による立地誘導に加え、土地使用権原の要件化・契約申込時の保証金引上げ等の規律確保が整理された。契約申込み約3,000万kWに対し連系済み64万kWという需給ギャップを踏まえ、事業確度による選別を進める文脈である。

接続拡大の側では、N-1充電停止装置等を前提とした早期連系の追加対策と、順潮流側(充電側)のノンファーム型接続の導入を目指す検討が明記された。これまで逆潮流側で導入されてきたノンファームの仕組みを充電側へ拡張するもので、系統用蓄電池の接続容量・スケジュールを左右する重要論点である。

実務チェックリスト

  • 系統用蓄電池事業者は、高評価要件(ストレージ式運用対応・混雑緩和立地・経済安保認定メーカーのセル・NITE安全GL準拠・地域共生)を案件設計に織り込む。
  • 接続を検討する事業者は、順潮流側ノンファーム型接続の検討と早期連系追加対策(N-1充電停止装置等)、規律確保(土地使用権原要件化・保証金引上げ)の動向を確認する。
  • 再エネ併設蓄電池事業者は、FIP案件等の支援継続の方針を踏まえ事業計画を検討する。

読者別の緊急度

初級(投資家・土地オーナー)3/5

系統用蓄電池の市場規模見通しと政策方向を今月中に把握しておきたい。

中級(建設・メーカー・設計)4/5

補助の評価軸(ストレージ式運用・安全GL・サプライチェーン)を今週中に確認すべき。

上級(事業者・アグリゲーター)5/5

立地・接続・運用に直結する施策であり、案件設計のため直ちに押さえるべき。

よくある質問(Q&A)

系統用蓄電池の現在の導入量は?

連系済み量は64万kW、契約申込みは約3,000万kWです(2025年12月末時点・再エネ併設は含まず)。需要側蓄電池等は約400万kW程度です。

2040年度の導入見通しは?

系統用・再エネ併設蓄電池で750〜1,500万kW、需要側蓄電池800〜3,300万kW、DR 280〜1,000万kWです。広域機関・McKinsey・三菱総研の試算であり、目標とは異なります。

ストレージ式運用とは何ですか?

TSO(一般送配電事業者)と余力活用契約を締結し、余力の範囲でTSOが柔軟にSoC(充電状態)を運用できる方式です。長期脱炭素電源オークション落札案件は適用対象で、この運用の対象蓄電池が導入支援で高く評価されます。

補助で高く評価される要件は何ですか?

ストレージ式運用の対象蓄電池、系統混雑緩和に資する立地・運用、経済安保計画認定メーカーのセル使用(長期脱炭素第4回で優先約定)、NITE安全ガイドライン準拠、地域共生の取組等です。

順潮流側ノンファーム型接続とは?

これまで逆潮流(発電)側で導入されてきたノンファーム型接続の仕組みを、充電(順潮流)側へ拡張するものです。資料6では導入を目指す検討が明記され、系統用蓄電池の接続可能性を広げる論点となっています。

サイバーセキュリティの要件は?

JC-STAR★2以上の基準整備・導入と、適切な機器利用ガイドラインの整備が示されています。

編集部の見立て(独自分析)

独自分析

  • 「高く評価する」評価軸(ストレージ式運用・混雑緩和立地・経済安保認定メーカーのセル・NITE安全GL準拠・地域共生)は補助の優先順位に直結し、案件設計の実質的な指針となる。
  • 順潮流側(充電側)ノンファーム型接続の導入検討は、系統用蓄電池の接続容量・早期連系の鍵となる拡張である。
  • ストレージ式運用への誘導は、アービトラージと系統貢献を両立させる運用モデルの政策的方向性を示しており、長期脱炭素オークション落札案件との接続が明確になった。

※本ブロックは一次資料の事実に基づく編集部の見立てであり、確定情報ではありません(2026年7月時点)。

この記事のまとめ

資料6は蓄電池政策の中核資料として、系統用蓄電池の連系済み64万kW・契約申込み約3,000万kW、2040年度導入見通し750〜1,500万kW(系統用・再エネ併設)を示し、ストレージ式運用への誘導、系統混雑緩和の立地誘導、経済安保認定メーカーのセル優先約定、NITE安全ガイドライン準拠、地域共生、JC-STAR★2以上、順潮流側ノンファーム型接続の導入検討までを整理した。補助の評価軸と接続ルールの方向が具体化したことで、案件設計・調達・立地選定の実務指針となる。

編集体制

執筆

BESSNEWS編集部

系統用蓄電池の制度・市場・ファイナンスを一次資料に基づき解説する専門編集チーム。

監修

BESS NEWS編集長

系統用蓄電池の制度・系統運用を専門とする社内専門家。本記事の制度記述・数値を確認。

出典(一次情報)

  1. 資源エネルギー庁 第6回次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会 資料6「分散型エネルギー推進戦略ワーキンググループでの議論について」(全6ページ)
    https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/
  2. 保存済み一次資料PDF:02.04_蓄電池情報/02_政策・制度(経産省・エネ庁・監視委)/(2026-05-02 資料6 分散型エネルギー推進戦略WGでの議論について)

本記事は2026年5月2日公表の一次資料のみに基づいています(対象日より後の情報は含みません)。制度内容は今後の審議等で変更される可能性があります。

出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/institutional/proffessional/4614403102001/

本記事は BESS media の転載条件(出典明記のうえ全文転載可)にもとづき転載しています。 記事内容の著作権は転載元に帰属します。

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