長期脱炭素電源オークションの応札価格監視(2025年度応札) ― 減額約4億円・取下げ約80億円と査定基準
電力・ガス取引監視等委員会は、2026年1月に広域機関が実施した長期脱炭素電源オークション(応札年度:2025年度)について、落札候補全件(23者34電源)の応札価格を監視した結果を公表した。18者26電源に不認容項目を通知し、監視対象の当初約定総額約6,276億円/年に対し減額は約4億円/年、応札取下げ1件に伴う減額は約80億円/年である。
このページの要点
- マルチプライス方式のため落札候補全件(23者34電源)が監視対象。18者26電源に不認容項目を通知し、17者25電源は再算定後の応札価格が適切と確認、1者1電源は投資回収困難として応札を取下げた。
- 監視対象(23者33電源)の当初約定総額は約6,276億円/年で、減額は約4億円/年、取下げに伴う減額は約80億円/年。
- 査定は証憑主義が基本。競争入札・相見積りは原則認容、未実施・特命発注は「発電コスト検証諸元の2倍の水準」超過部分を原則不認容とし、系統接続費・発電側課金・資本コスト等はガイドラインの算出ルール準拠を確認する。
出典:電力・ガス取引監視等委員会「長期脱炭素電源オークションに係る応札価格の監視結果について(応札年度:2025年度)」(2026年5月13日公表)。
20年固定収入の入札に出された「見積書の中身」を国の監視当局が1件ずつ検査した結果報告である。証憑のない高値・過大計上は削られ、1件は採算が合わなくなり取下げに至った。蓄電池応札のコスト積算も同じ物差しで査定される。
目次
- 応札価格監視の枠組み(証憑主義・2倍水準ルール)
- 2025年度の監視結果 ― 減額4億円・取下げ80億円と不認容項目
- 蓄電池応札に効く査定基準と実務対応
- よくある質問(Q&A)
- 編集部の見立て(独自分析)
- 出典(一次情報)
長期脱炭素電源オークションの応札価格監視の枠組み
マルチプライス方式ゆえに、落札候補の全件が監視対象になる。
図1:応札価格監視の枠組み ― 証憑主義と「2倍水準」ルール
出典:電力・ガス取引監視等委員会「長期脱炭素電源オークションに係る応札価格の監視結果について(応札年度:2025年度)」(2026年5月13日公表)。
長期脱炭素電源オークションはマルチプライス方式(応札価格で約定)のため、落札候補全件の応札価格が監視対象となる。監視は、建設費・人件費・修繕費・その他コスト・可変費について代表印の押された証憑等の必要書類を前提に行われる。
競争入札・相見積りあり
原則としてその金額を認容する。
未実施(予定価格のみ)・特命発注
「直近の発電コスト検証諸元の上限価格算定に用いた諸元の2倍の水準」を超える部分は、合理的理由がない限り不認容。2倍以下でも他案件比で明らかに高額な特異額は監視対象。
系統接続費・廃棄費用・固定資産税・発電側課金・事業税・資本コストについては、ガイドラインの算出ルールへの準拠が確認される。
2025年度の監視結果 ― 減額4億円・取下げ80億円と不認容項目
18者26電源への不認容通知のうち、1件は投資回収困難で応札取下げに至った。
図2:2025年度の監視結果 ― 査定による減額約4億円/年と応札取下げに伴う減額約80億円/年
出典:同監視結果(2026年5月13日公表)。監視対象は追加監視を除く23者33電源。
監視の結果、落札候補全件(23者34電源)のうち18者26電源に不認容項目が通知された。17者25電源は再算定後の応札価格がいずれも適切と確認された一方、1者1電源は一部費用の不認容により投資回収が困難と判断し、応札取下げを申し出た(追加監視は不要とされた)。
不認容項目の例としては、供給力提供開始年度に発生する運転維持費、土地・電話加入権等の非償却資産の残存簿価、ガイドライン認容予備費の超過分、賃金統計と乖離し合理性を欠く人件費の2倍超過分、過大算定分、消費税込み計上における消費税分等が挙げられている。
蓄電池応札に効く査定基準(2倍水準ルール・認容コスト)と実務対応
証憑に裏付けられた積算が、応札成否と収益確定の前提になる。
長期脱炭素電源オークションは系統用蓄電池を対象電源に含み、20年固定の容量収入を得る主要な投資回収手段である。応札価格の監視基準(証憑主義・2倍水準ルール・認容コスト項目)は、蓄電池応札時のコスト積算と査定リスクを直接左右する。応札取下げが実際に1件生じたことは、不認容通知が事業性を覆しうる実効性を持つことを示す。
実務チェックリスト
- 蓄電池応札を検討する事業者は、認容コスト項目・証憑要件・2倍水準ルールを応札価格積算の前提として整備する。
- 建設費・修繕費等は競争入札・相見積りで価格根拠を確保し、特命発注部分は合理性説明を準備する。
- 系統接続費・発電側課金・資本コストはガイドラインの算出ルールに厳密に準拠して計上し、消費税の二重計上等の算定誤りを排除する。
読者別の緊急度
査定の厳格さと市場規模の伸びの目安として把握すればよい。
コスト積算担当は認容コスト項目・証憑要件を今月中に確認すべき。
次回応札に向け査定基準と取下げ事例を今週中に押さえるべき。
よくある質問(Q&A)
監視の対象は何ですか?マルチプライス方式のため、落札候補となった応札案件全件(23者34電源、取下げに備えた1電源を追加監視)が対象です。2026年1月実施分の応札価格が監視されました。
監視の結果はどうなりましたか?18者26電源に不認容項目が通知され、17者25電源は再算定後の応札価格が適切と確認されました。1者1電源は一部費用の不認容で投資回収困難と判断し、応札を取下げました。
減額の金額規模は?監視対象(23者33電源)の当初約定総額約6,276億円/年に対し、査定による減額は約4億円/年、応札取下げに伴う減額は約80億円/年です。
2倍水準ルールとは何ですか?競争入札・相見積りを実施していない(予定価格のみ・特命発注の)費用について、直近の発電コスト検証諸元の上限価格算定に用いた諸元の2倍の水準を超える部分を、合理的理由がない限り不認容とするルールです。
不認容とされた項目の例は?供給力提供開始年度に発生する運転維持費、土地・電話加入権等の非償却資産の残存簿価、ガイドライン認容予備費の超過分、合理性を欠く人件費の2倍超過分、過大算定分、消費税込み計上の消費税分等です。
蓄電池の応札にはどう関係しますか?系統用蓄電池は本オークションの対象電源であり、同じ査定基準(証憑主義・2倍水準ルール・ガイドライン準拠)でコスト積算が審査されます。相見積りの整備と算定誤りの排除が応札の前提となります。
編集部の見立て(独自分析)
独自分析
- 応札取下げが1者1電源生じた点は、不認容通知が事業性を覆しうる実効性を持つことを示し、蓄電池応札でも証憑に裏付けられた保守的な積算が不可欠である。
- 発電側課金・系統接続費・資本コスト等がガイドライン算出ルールで縛られるため、蓄電池の応札価格積算もこの枠組みへの厳密な準拠が求められる。
- 「2倍水準」超の特命発注・予定価格は原則不認容であり、相見積り・競争入札の整備が応札価格の正当性確保に直結する。
※本ブロックは一次資料の事実に基づく編集部の見立てであり、確定情報ではありません(2026年7月時点)。
この記事のまとめ
監視委は長期脱炭素電源オークション(2025年度応札)の落札候補全件23者34電源の応札価格を監視し、18者26電源に不認容項目を通知した。17者25電源は再算定後に適切と確認された一方、1者1電源は投資回収困難として応札を取下げた。当初約定総額約6,276億円/年に対し減額は約4億円/年、取下げに伴う減額は約80億円/年。証憑主義・2倍水準ルール・ガイドライン準拠という査定基準は、蓄電池応札のコスト積算の前提となる。
編集体制
執筆
BESSNEWS編集部
系統用蓄電池の制度・市場・ファイナンスを一次資料に基づき解説する専門編集チーム。
監修
BESS NEWS編集長
系統用蓄電池の制度・系統運用を専門とする社内専門家。本記事の制度記述・数値を確認。
出典(一次情報)
- 電力・ガス取引監視等委員会「長期脱炭素電源オークションに係る応札価格の監視結果について(応札年度:2025年度)」(2026年5月13日公表)
https://www.emsc.meti.go.jp/ - 保存済み一次資料PDF:02.04_蓄電池情報/02_政策・制度(経産省・エネ庁・監視委)/監視委/(2026-05-13 応札価格の監視結果)
本記事は2026年5月13日公表の一次資料のみに基づいています(対象日より後の情報は含みません)。制度内容は今後の審議等で変更される可能性があります。
出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/market/proffessional/4615503001001/
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