櫻貿易株式会社
制度・政策・審議会上級

需給調整市場の主役は蓄電池だった ― 複合商品の上限約定と前日取引化が示す収益構造(2025年度総括)

電力・ガス取引監視等委員会は第20回制度設計・監視専門会合(2026年5月29日)で、2025年度の需給調整市場を総括した。複合商品の上限単価(19.51円/ΔkW・30分)で約定したリソースの多くが蓄電池であり、大半のエリアで蓄電池の平均約定単価が高位で推移したと明示。前日取引化(2026年3月14日)以降の応札行動の変化と揚水随意契約の影響もあわせて整理した。

このページの要点

  1. 複合商品の上限単価19.51円/ΔkW・30分で約定したリソースの多くが蓄電池で、大半のエリアで蓄電池の平均約定単価が高位で推移したと監視委が明示。2025年度の平均約定単価は三次調整力②が四国0.36円〜北海道2.09円、複合商品が中部1.76円〜北海道5.49円
  2. 北海道では揚水随意契約による募集量削減で蓄電池の応札単価が低下し、2026年2〜3月には蓄電池の平均約定単価が火力を下回る局面も発生。北海道は蓄電池事業者からの調達割合が比較的高い。
  3. 前日取引化(2026年3月14日)以降、三次②比率が大幅低下(東京59.5→27.0%、中部49.8→11.4%等)し、調達率が低く約定確率が高い複合市場へ応札が流入。三次②市場で高値約定機会が高まった。

出典:第20回制度設計・監視専門会合 事務局資料「需給調整市場の運用等について」(2026年5月29日)。

要旨 ― ひと言でいえば

需給調整市場の年間決算レポートである。複合商品で「値段の天井に張り付いて約定していた主役は蓄電池」とはっきり名指しされた一年の振り返りであり、取引ルール変更後に各社の応札行動がどう動いたかを旧一電ヒアリングで追った資料といえる。

目次

  1. 2025年度総括 ― 「複合商品の上限約定の多くが蓄電池」という事実
  2. 揚水随契・火力応札単価が蓄電池の価格を動かす構図
  3. 前日取引化以降の応札配分変化と蓄電池の収益再設計
  4. よくある質問(Q&A)
  5. 編集部の見立て(独自分析)
  6. 出典(一次情報)

2025年度の需給調整市場と「複合商品の上限約定リソースの多くが蓄電池」という事実

蓄電池の主要収益源が複合商品の高値約定にあることが、監視当局の資料で裏付けられた。

図1:複合商品の「上限約定」の多くが蓄電池 ― 2025年度の平均約定単価レンジと応札量

需給調整市場の複合商品で上限単価19.51円/ΔkW・30分の約定の多くが蓄電池だった2025年度総括と平均約定単価レンジの図

出典:第20回制度設計・監視専門会合 事務局資料「需給調整市場の運用等について」(2026年5月29日)。

2025年度(2025年4月1日〜2026年3月31日)の振り返りでは、三次調整力②は年度を通じて全エリアで応札量が募集量を安定的に上回った。複合商品は年度当初は応札量が募集量を下回るエリアが多かったが、自然体余力の確保による募集量減少と揚水随意契約により、最終的に応札超過エリアが増加した。

価格面では、複合商品の上限単価(19.51円/ΔkW・30分)で約定したリソースの多くが蓄電池であり、大半のエリアで蓄電池の平均約定単価が高位で推移したことが明示された。2025年度の平均約定単価は、三次②が四国0.36円〜北海道2.09円、複合商品が中部1.76円〜北海道5.49円で、北海道は年間を通じて複合の平均約定単価が高位だった。

揚水随契・火力応札単価が蓄電池の価格を動かす構図 ― 北海道の事例

募集量の削減は、蓄電池の応札単価と約定価格を直接押し下げる。

図2:揚水随意契約と火力の応札単価が蓄電池の単価を動かす構図(北海道)

北海道で揚水随意契約による募集量削減と火力の応札単価が蓄電池の平均約定単価を動かす構図を示した図

出典:第20回制度設計・監視専門会合 事務局資料「需給調整市場の運用等について」(2026年5月29日)。中国エリアの揚水随契は事務局の考えの提示、北海道は継続検討。

旧一電シェア・広域調達の分析では、関西・北海道で旧一電シェアが相対的に低く、エリア外・新電力等からの調達割合が高い。特に北海道では蓄電池事業者からの調達割合が比較的高い

その北海道では、2026年2〜3月に蓄電池の平均約定単価が火力を下回る局面が発生した。要因は、揚水随意契約による募集量削減で蓄電池の応札単価が低下したこと、定期点検等で大型火力の応札単価が高水準だったことである(4月には火力が蓄電池を再び下回った)。揚水随契の運用が蓄電池の価格形成に直接作用する構図が示された。

また、2026年度の揚水随契については、第19回で中部・東北・関西・東京の方針が了承済みで、今回新たに中国エリアの揚水随契が報告され、事務局は判断基準に照らし「認めても差し支えない」との考えを提示した。北海道は一次調整力が火力機・蓄電池等で募集量を充足している(2026年4月の複合平均約定単価2.71円、前日商品化前5.28円から大きく低下)ため、揚水随契は慎重判断として継続検討とされた。

前日取引化以降の応札配分変化と蓄電池の収益再設計

三次②から複合市場への応札シフトが、商品間の最適配分を問い直す。

前日取引化(2026年3月14日)以降、三次②は全エリアで4月の平均約定単価が前年度平均比で上昇した。全商品の前日取引化で複合市場に応札が流れ、三次②で高値約定機会が高まったためである。前日取引化前後で三次②比率は大幅に低下(東京59.5→27.0%、中部49.8→11.4%、北海道56.6→23.6%等)し、調達率が低く約定確率が高い複合市場に応札が流入した。

旧一電(JERA含む)へのヒアリングでは、持ち下げ供出や前日化による不確実性低下で応札を増やした事業者がいる一方、スポット市場での先取り・電源作業停止・下げ代不足で応札横ばい/減少の事業者もいることが判明した。30分コマ化に伴う歯抜け約定で起動費等事後精算の件数が増加し、書類申請の締切後ろ倒し等が検討されている。特定地域立地電源については、複数年契約も含めた柔軟な調達方法の検討が続き、蓄電池を含む長期投資の予見性に関わる論点となっている。

実務チェックリスト

  • 蓄電池事業者・アグリゲーターは、複合市場の上限価格引き下げ(19.51→15円・2026年3月14日〜)と揚水随契による募集量削減を前提に、複合・三次②・スポット間の応札配分と収益モデルを再設計する。
  • 高値エリア(北海道等)で複合商品の高位約定に依存する事業者は、揚水随契・火力応札単価の動向による価格低下リスクを織り込む。
  • 歯抜け約定・起動費等事後精算の事務負担増を運用フローに反映し、一送の書類締切後ろ倒し等の動向をフォローする。

読者別の緊急度

初級(投資家・土地オーナー)3/5

蓄電池の主要収益源と上限引き下げの影響を今月中に把握しておきたい。

中級(建設・メーカー・設計)4/5

複合・三次②の価格構造と応札配分変化を今月中に確認すべき。

上級(事業者・アグリゲーター)5/5

収益源と価格天井に直結する内容であり、直ちに押さえて収益再設計すべき。

よくある質問(Q&A)

「複合商品の上限約定の多くが蓄電池」とはどういうことですか?

2025年度の需給調整市場で、複合商品の上限単価(19.51円/ΔkW・30分)で約定したリソースの多くが蓄電池だったと監視委の資料が明示したものです。大半のエリアで蓄電池の平均約定単価が高位で推移しており、蓄電池の主要収益源が複合商品の高値約定にあることを裏付けます。

2025年度の平均約定単価は?

三次調整力②が四国0.36円〜北海道2.09円、複合商品が中部1.76円〜北海道5.49円(いずれも円/ΔkW・30分)です。北海道は年間を通じて複合の平均約定単価が高位でした。

北海道で蓄電池の単価が火力を下回ったのはなぜですか?

2026年2〜3月に、揚水随意契約による募集量削減で蓄電池の応札単価が低下したこと、定期点検等で大型火力の応札単価が高水準だったことが要因です。4月には火力が蓄電池を再び下回りました。

前日取引化で応札行動はどう変わりましたか?

前日取引化(2026年3月14日)前後で三次②比率が大幅に低下し(東京59.5→27.0%、中部49.8→11.4%等)、調達率が低く約定確率が高い複合市場に応札が流入しました。三次②では高値約定機会が高まり、4月の平均約定単価は全エリアで前年度平均比上昇です。

揚水随意契約は今後どうなりますか?

第19回で中部・東北・関西・東京の2026年度方針が了承済みで、今回新たに中国エリアについて事務局が「認めても差し支えない」との考えを提示しました。北海道は一次調整力が募集量を充足しているため慎重判断・継続検討です。

蓄電池の収益にはどのような影響がありますか?

複合市場の上限価格は2026年3月14日から15円へ引き下げられており、上限張り付き約定に依存した収益の天井が下がる方向です。揚水随契による募集量削減も応札単価を押し下げるため、商品間の応札配分と収益モデルの再設計が必要になります。

編集部の見立て(独自分析)

独自分析

  • 監視委による「複合商品の上限約定リソースの多くが蓄電池」という公式明示は、上限価格引き下げ(19.51→15円)が蓄電池収益に直撃することの一次的裏付けである。
  • 揚水随契による募集量削減が蓄電池の応札単価を押し下げる構図(北海道)は、揚水随契の横展開(中国エリア追加)が蓄電池の価格形成に直接作用することを示す。
  • 前日取引化による三次②→複合への応札シフトは、スポット市場との余力配分を含む商品間の最適応札配分の再設計を蓄電池に迫る。

※本ブロックは一次資料の事実に基づく編集部の見立てであり、確定情報ではありません(2026年7月時点)。

この記事のまとめ

監視委の第20回制度設計・監視専門会合は、2025年度の需給調整市場を総括し、複合商品の上限単価19.51円で約定したリソースの多くが蓄電池であり、大半のエリアで蓄電池の平均約定単価が高位で推移したと明示した。北海道では揚水随契による募集量削減で蓄電池単価が火力を下回る局面も生じ、前日取引化以降は三次②比率が大幅低下して複合市場へ応札が流入した。上限価格の15円への引き下げ・揚水随契の拡大・前日取引化という3つの変化を織り込んだ収益再設計が、蓄電池事業者の急務である。

編集体制

執筆

BESSNEWS編集部

系統用蓄電池の制度・市場・ファイナンスを一次資料に基づき解説する専門編集チーム。

監修

BESS NEWS編集長

系統用蓄電池の制度・系統運用を専門とする社内専門家。本記事の制度記述・数値を確認。

出典(一次情報)

  1. 電力・ガス取引監視等委員会 第20回制度設計・監視専門会合 事務局資料「需給調整市場の運用等について」ほか資料4〜6(2026年5月29日)
    https://www.emsc.meti.go.jp/activity/emsc/
  2. 保存済み一次資料PDF:02.04_蓄電池情報/02_政策・制度(経産省・エネ庁・監視委)/監視委/(2026-05-29 第20回制度設計・監視専門会合)

本記事は2026年5月29日公表の一次資料のみに基づいています(対象日より後の情報は含みません)。制度内容は今後の審議等で変更される可能性があります。

出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/institutional/proffessional/4617103102001/

本記事は BESS media の転載条件(出典明記のうえ全文転載可)にもとづき転載しています。 記事内容の著作権は転載元に帰属します。

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