系統運営ルールの大型アップデート ― OCCTO規程変更(2026年8月施行予定)、蓄電池に効く4つの変更点
電力広域的運営推進機関(OCCTO)は、定款・業務規程・送配電等業務指針を一括変更する。地内基幹系統の運用容量を緊急拡大できる承認スキーム、長期脱炭素電源オークションへのCCS付火力追加(CO2貯蔵率年7割以上)、需給調整市場ΔkW向け連系線利用枠拡大、そして系統用蓄電池を含む非FIT/FIP電源への使用権原書類の提出要件化――原則2026年8月1日施行予定の改正は、蓄電池の接続・市場参加に複線で影響する。
このページの要点
- OCCTOは2026年6月8日の評議員会で、定款・業務規程・送配電等業務指針の一部変更を審議(5月19日評議員会で審議、理事会・総会・経産大臣認可を経て原則2026年8月1日施行予定)。
- 主な変更は(1)地内基幹系統の運用容量を緊急的に拡大する承認スキームの導入、(2)長期脱炭素電源オークションへのCCS付火力電源追加とCO2貯蔵率(年間7割以上)リクワイアメント、(3)需給調整市場ΔkW向けの連系線利用枠拡大の運用開始。
- その他、系統アクセスの契約申込みプロセスで、FIT/FIP電源を除く発電設備等(系統用蓄電池を含む)に事業用地の使用権原を証する書類の提出を要件として追加した。
出典:OCCTO 評議員会 第1〜3号議案・別紙第1〜3号議案補足資料(2026年6月8日)。
電力系統の運営ルールブックの大型アップデートである。混雑時に送電線の運用容量を一時的に拡大する承認スキームの追加、脱炭素オークションへのCCS付火力の追加、蓄電池の契約申込みへの土地使用権原書類の要件化といった複数の重要改正が一度に行われる。
目次
- 2026年8月施行のOCCTO規程変更の全体像(3つのポイント)
- 地内系統運用容量の緊急拡大と調整力連系線利用枠拡大
- 系統用蓄電池への影響(使用権原書類要件化・市場機会)
- よくある質問(Q&A)
- 編集部の見立て(独自分析)
- 出典(一次情報)
2026年8月施行のOCCTO規程変更の全体像(3つのポイント)
国の審議会の議論等に対応した一括改正で、定款・業務規程・送配電等業務指針が同時に変わる。
OCCTOは、国の審議会の議論等に対応するため、定款・業務規程・送配電等業務指針を一括で変更する議案(第1〜3号議案)を評議員会で審議した。理事会・総会の議決および経済産業大臣の認可を経て、原則2026年8月1日(又は認可日のいずれか遅い日)から施行を予定する。変更のポイントは次の3点に、系統アクセス手続きの改正が加わる。
① 地内系統の運用容量の緊急拡大
安定供給に支障が生じるおそれがあるとき、一般送配電事業者の地内基幹系統(最上位電圧から2階級)の運用容量をOCCTO承認で緊急的に拡大できる規定を追加(業務規程第113・117条、指針第208条の2)。
② 長期脱炭素オークションにCCS付火力
既設LNG・石炭火力のCCS付火力電源への改修分を第3回入札の対象に追加し、年間CO2貯蔵率7割以上のリクワイアメントにOCCTOがアセスメントを実施(業務規程第32条の34)。
③ 需給調整市場ΔkWの連系線利用枠拡大
反対方向の計画潮流を考慮してΔkW取引に使える連系線利用枠を拡大し、マージンが運用容量を超えることを許容する改正(業務規程第2・130条)。
+ 系統アクセス:使用権原書類の要件化
契約申込みプロセスで、FIT/FIP電源を除く発電設備等(系統用蓄電池を含む)に事業用地の使用権原を証する書類の提出を要件化(指針第97・105条、附則第2条新設)。
地内系統運用容量の緊急拡大と調整力連系線利用枠拡大
連系線中心だった広域機関の容量管理が、地内系統と調整力の広域調達へ踏み込む。
図1:改正3本の中身(地内基幹系統の緊急拡大・ΔkW連系線利用枠拡大・CCS付火力追加)
出典:OCCTO 評議員会 第1〜3号議案(2026年6月8日)。
地内基幹系統の運用容量を「緊急拡大」できる承認スキーム
エリア間補正融通では、連系線の空容量に余裕があっても地内基幹系統の混雑で融通量に制約が生じる事象が発生している。今回の改正は、安定供給に支障が生じるおそれがあるとき、一般送配電事業者の地内基幹系統(最上位電圧から2階級)の運用容量を緊急的に拡大することをOCCTOが承認できる規定を追加するものである。広域予備率に基づく追加供給力対策や連系線マージン使用を先に行い、なお不足する場合に実施される。
連系線の空容量に余裕があっても地内基幹系統の混雑で融通量に制約が生じる事象が発生しているため、安定供給に支障が生じるおそれがあるとき、地内基幹系統(最上位電圧から2階級)の運用容量を緊急的に拡大することを本機関が承認できる規定を追加する(業務規程第113・117条、送配電等業務指針第208条の2)。
— OCCTO 評議員会 第1〜3号議案 補足資料需給調整市場ΔkW向けの連系線利用枠拡大
需給調整市場向けの連系線利用枠拡大の運用開始に伴い、反対方向の計画潮流を考慮することでΔkW取引に使える連系線利用枠を拡大し、マージンが運用容量を超えることを許容する改正が行われる(業務規程第2・130条)。蓄電池が主力となる調整力の広域調達余地を広げる変更である。
長期脱炭素電源オークションへのCCS付火力追加
第7次エネルギー基本計画を踏まえ、第3回入札(応札年度2025年度、2026年2月終了)に向け、既設LNG・石炭火力のCCS付火力電源への改修分が対象に追加された。年間CO2貯蔵率7割以上を求めるリクワイアメントに対し、OCCTOがアセスメントを実施する(業務規程第32条の34)。バイオマス・石油火力は対象外である。蓄電池の直接対象ではないが、容量市場の競合構図に関わる変更といえる。
系統用蓄電池への影響(使用権原書類要件化・市場機会)
接続要件・市場機会・運用環境の3方向から、蓄電池事業に複線で効いてくる。
図2:系統用蓄電池への影響経路(接続要件・市場機会・運用環境)
出典:OCCTO 評議員会 第1〜3号議案・別紙第1〜3号議案補足資料(2026年6月8日)を基に編集部整理。
系統アクセス業務では、国の審議会の整理を踏まえ、契約申込みプロセスでFIT/FIP電源を除く発電設備等(系統用蓄電池を含む)に事業用地の使用権原を証する書類の提出が要件化された(送配電等業務指針第97・105条、附則第2条新設)。用地確保のエビデンス整備が連系手続の前提となるため、開発事業者は2026年8月施行に向けた書類準備が必要になる。
- 系統用蓄電池の開発事業者は、契約申込み前に事業用地の使用権原を証する書類を整備し、2026年8月施行に備える。
- 調整力で需給調整市場に参加する蓄電池事業者は、連系線利用枠拡大による広域調達余地の拡大を収益機会として織り込む。
- 混雑エリアで運用する事業者は、地内系統運用容量の緊急拡大スキームの発動条件・情報公表を継続フォローする。
読者別の緊急度
系統運営ルールが蓄電池に有利・不利どちらに動くか、方向性を把握しておきたい。
開発・設計担当は使用権原書類要件化を今週中に確認し申込準備に反映すべき。
市場参加者・開発者は接続・調整力・混雑緩和に複線で効く改正を直ちに押さえるべき。
よくある質問(Q&A)
施行はいつですか?原則2026年8月1日、又は経済産業大臣の認可日のいずれか遅い日から施行予定です。ただし需給調整市場の連系線利用枠拡大関連(業務規程第2・130条、指針第266条)は、システム運用開始日等を考慮した別施行とされています。
主な変更点は何ですか?(1)地内基幹系統の運用容量を緊急的に拡大することをOCCTOが承認できる規定の追加、(2)長期脱炭素電源オークションへのCCS付火力電源の追加(年間CO2貯蔵率7割以上のリクワイアメント)、(3)需給調整市場ΔkW向け連系線利用枠拡大の運用開始、これに加えて(4)系統アクセスの契約申込みにおける事業用地の使用権原を証する書類の提出要件化です。
使用権原書類はどの案件が対象ですか?FIT/FIP電源を除く発電設備等(系統用蓄電池を含む)の契約申込みが対象です。送配電等業務指針第97・105条の改正と附則第2条の新設により要件化されました。
地内系統の運用容量の緊急拡大とは何ですか?エリア間補正融通において連系線の空容量に余裕があっても、地内基幹系統(最上位電圧から2階級)の混雑で融通量に制約が生じる事象が発生しているため、安定供給に支障が生じるおそれがあるとき、OCCTOの承認により一般送配電事業者の地内基幹系統の運用容量を緊急的に拡大できる規定です(業務規程第113・117条、送配電等業務指針第208条の2)。広域予備率に基づく追加供給力対策や連系線マージン使用を先に行い、なお不足する場合に実施します。
長期脱炭素電源オークションはどう変わりますか?第7次エネルギー基本計画を踏まえ、既設LNG・石炭火力のCCS付火力電源への改修分が第3回入札(応札年度2025年度)の対象に追加され、年間CO2貯蔵率7割以上を求めるリクワイアメントに対しOCCTOがアセスメントを実施します(業務規程第32条の34)。バイオマス・石油火力は対象外です。
蓄電池の市場機会にはどう影響しますか?需給調整市場ΔkW向けの連系線利用枠拡大は、反対方向の計画潮流を考慮することでΔkW取引に使える連系線利用枠を広げ、マージンが運用容量を超えることを許容する改正です(業務規程第2・130条)。蓄電池が主力となる調整力の広域調達余地が広がり、応札・収益機会の拡大要因となります。
編集部の見立て(独自分析)
独自分析
- 地内基幹系統の運用容量を「緊急拡大」できる承認スキームは、これまで連系線中心だった広域機関の容量管理を地内系統にも広げる制度的転換であり、混雑エリアの蓄電池運用環境に影響すると読める。
- ΔkW向け連系線利用枠拡大は「反対方向の計画潮流を考慮しマージンが運用容量を超えることを許容」という踏み込んだ整理で、調整力の広域調達拡大=蓄電池の市場機会拡大に直結する。
- 系統用蓄電池を含む非FIT/FIP電源への使用権原書類の要件化は、投機的な接続申込みを抑制し用地確保済み案件を優先する効果があり、開発の確度・スピードに差がつく。
※本ブロックは一次資料の事実に基づく編集部の見立てであり、確定情報ではありません(2026年7月時点)。
この記事のまとめ
OCCTOは定款・業務規程・送配電等業務指針を一括変更し、原則2026年8月1日(又は経産大臣認可日のいずれか遅い日)の施行を予定する。地内基幹系統の運用容量をOCCTO承認で緊急拡大できる規定、長期脱炭素電源オークションへのCCS付火力追加(年間CO2貯蔵率7割以上・バイオマス/石油火力は対象外)、需給調整市場ΔkW向け連系線利用枠の拡大に加え、系統アクセスの契約申込みではFIT/FIP電源を除く発電設備等(系統用蓄電池を含む)に事業用地の使用権原を証する書類の提出が要件化された。蓄電池事業者は使用権原書類の整備を前倒しし、調整力の広域調達拡大を収益機会として織り込む対応が求められる。
編集体制
執筆
BESSNEWS編集部
系統用蓄電池の制度・市場・ファイナンスを一次資料に基づき解説する専門編集チーム。
監修
BESS NEWS編集長
系統用蓄電池の制度・系統運用を専門とする社内専門家。本記事の制度記述・数値を確認。
出典(一次情報)
- 電力広域的運営推進機関 評議員会 第1〜3号議案「定款・業務規程・送配電等業務指針の一部変更」および別紙第1〜3号議案補足資料(2026年6月8日)
https://www.occto.or.jp/iinkai/hyougiinkai/index.html - 保存済み一次資料PDF:02.04_蓄電池情報/01_市場制度(OCCTO・EPRX・JEPX)/OCCTO/20260608_OCCTO_別紙第1~3号議案補足資料(2722KB).pdf
本記事は2026年6月8日公表の一次資料のみに基づいています(対象日より後の情報は含みません)。施行日・内容は理事会・総会の議決および経済産業大臣の認可により確定します。
出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/institutional/proffessional/4618103102001/
本記事は BESS media の転載条件(出典明記のうえ全文転載可)にもとづき転載しています。 記事内容の著作権は転載元に帰属します。