取得価額35億円・投資利益率15%以上の設備投資に税制優遇の入口 ― 産業競争力強化法の省令改正は蓄電所に使えるか
経済産業省が2026年6月22日、産業競争力強化法施行規則等の改正案をe-Govで意見募集した。年平均投資利益率15%以上・取得価額35億円以上の投資計画を大臣が確認し、税制優遇の入口となる確認書を交付する仕組みである。公布・施行は7月31日が予定されている。
このページの要点
- 年平均投資利益率15%以上・取得価額35億円以上(中小企業者等は5億円以上)の投資計画を経済産業大臣が確認し、確認書を交付する仕組みが新設される
- 対象設備区分には機械及び装置とあわせて構築物も入り、蓄電池本体・PCSと基礎・受変電設備の双方が設備区分としては射程に入る
- ただし貸付の用に供する設備は除外されるため、リース・賃貸を前提としたストラクチャーは組み替えの検討が必要になる
出典:経済産業省 産業競争力強化法施行規則等の改正案(e-Gov案件番号595126107、2026年6月22日公示・7月21日締切)の省令案・告示案の概要および意見公募要領。
国が「取得価額35億円以上の設備投資で、しかも年平均15%以上の利益が見込める計画なら税を軽くする」という窓口を新しく作る話である。蓄電所は1か所で数十億円の設備投資になるため、この窓口の射程に入る可能性がある。
目次
- 35億円と15% ― 新しい確認スキームの4要件
- 蓄電所は対象になるのか ― 設備区分は入る、貸付は外れる
- 改正のもう2本 ― 国際経済事情激変事業適応と公庫の社債引受
- 意見提出の機会は終わった ― 確定版で何を読むか
- よくある質問(Q&A)
- 編集部の見立て(独自分析)
- 出典(一次情報)
35億円と15% ― 新しい確認スキームの4要件
新設されるのは補助金ではなく、税制優遇を受けるための確認書を出す手続きである。
図1:特定生産性向上設備等の確認の4要件
出典:経済産業省 産業競争力強化法施行規則等の改正案の概要、経済産業大臣が定める日等を定める告示(案)。
経済産業省は2026年6月22日、産業競争力強化法施行規則の一部を改正する省令案など4本をe-Govで公示し、2026年7月21日23時59分までの意見募集を行った(案件番号595126107、所管は経済産業政策局産業創造課、カテゴリーは経済財政政策)。4本の内訳は、産業競争力強化法施行規則の一部を改正する省令案、経済産業省関係産業競争力強化法施行規則の一部を改正する省令案、経済産業大臣が定める日等を定める告示案、事業適応の実施に関する指針の一部を改正する告示案である。
柱は3つあるが、蓄電所の投資に最も近いのは「特定生産性向上設備等」の確認スキームの新設である。事業者が自ら投資計画を作り、経済産業大臣がその計画を確認して確認書を交付する。この確認書が租税特別措置法第10条の5の6第4項および第42条の12の7第3項の税制適用の入口になる。確認そのものが減税ではなく、減税を受ける資格の証明という組み立てだと理解しておきたい。
対象となる設備区分は、機械及び装置、工具、器具及び備品、建物、建物附属設備、構築物並びにソフトウエア。ただし建物のみの取得等を行おうとするものを除く。
— 経済産業省関係産業競争力強化法施行規則 第5条第2号(改正案)蓄電所は対象になるのか ― 設備区分は入る、貸付は外れる
設備区分の側からは射程に入る。外れる恐れがあるのは保有と運用の形である。
図2:蓄電所の設備区分は入るが、貸付は外れる
出典:経済産業省関係産業競争力強化法施行規則 第5条第2号(改正案)。
対象設備区分に構築物が入っている点が蓄電所には効く。蓄電池本体とPCSは機械及び装置、基礎・受変電設備・架台は構築物として整理できるため、設備区分としては射程内である。系統用蓄電池は1案件で取得価額が数十億円になるのが通常で、取得価額35億円という基準も現実的な射程に入る。
問題は除外設備である。試験研究の用に供するもの、貸付の用に供するもの、風俗営業等の用に供するものが除かれており、このうち貸付の用に供するものが蓄電所の実務に直接当たる。設備をSPCが保有して第三者に賃貸する形やリース会社が保有する形をとると、除外に引っかかる可能性がある。自社保有・自社運用が前提の制度だと読める。
税制メリットの中身は概要に書かれていない
租税特別措置法側の内容として、令和8年度税制改正大綱ベースの情報では即時償却(特別償却)または税額控除7%(建物・建物附属設備・構築物は4%)の選択制とされ、税額控除は法人税額の20%が上限で超過分は3年繰越とされている。経済産業大臣の確認は改正法施行日から2029年3月31日まで、設備の取得等・事業供用も2029年3月31日までとされる。ただしこれは二次情報で、率は省令案の概要には記載がない。
業種の限定は概要に見当たらず、電気供給業を明示的に除外する記載も確認されなかった。確認できたのは概要のみで、条文本体と租税特別措置法側の対象事業の限定は未確認である。
改正のもう2本 ― 国際経済事情激変事業適応と公庫の社債引受
残る柱は、急な外部環境の変化に対応する計画認定と、資金調達手段の追加である。
国際経済事情激変事業適応は、為替や貿易条件の急変等により売上高が5%以上減少した、または売上高営業利益率が20%以上低下した事業者を対象とする新設の枠である。計画の実施期間は8年以内で、適合証明書の交付に関する規定も置かれる。
資金調達の側では、日本政策金融公庫の事業適応促進円滑化業務に社債引受が追加される。条件は必要資金50億円以上・償還期間5年以上等である。
意見提出の機会は終わった ― 確定版で何を読むか
締切は過ぎている。ここから先は確定版の条文をどう読むかという作業になる。
意見の受付は2026年7月21日に終了し、公布・施行は改正法施行日である2026年7月31日が予定されている。2026年7月31日0時40分の時点では、e-Govの案件詳細ページは受付締切の表示のみで結果公示は掲載されておらず、公布も経済産業省の報道発表では確認できていない。確定版の条文と結果公示(提出意見に対する考え方)は、いずれも追う必要がある。
読む順番は決まっている。まず経済産業省関係産業競争力強化法施行規則第5条第2号で設備区分が改正案どおりか、次に除外設備の貸付の用に供するものの書き方、そして租税特別措置法側の対象事業の限定である。この3点が固まれば、取得価額35億円以上の蓄電所投資について確認申請を出すかどうかを判断できる。
- 公布(2026年7月31日予定)後に確定版の省令・告示を精読し、施行規則第5条第2号の設備区分、除外設備の書き方、租税特別措置法側の対象事業の限定を特定する。
- 取得価額35億円以上(中小企業者等は5億円以上)の蓄電所投資計画について、年平均投資利益率15%基準への適合性と確認申請の要否を税理士等と検討する。
- SPC保有+賃貸やリースを前提にした案件は、貸付の用に供する設備の除外に当たるかどうかをストラクチャー設計の段階で確認する。
- e-Govの結果公示(提出意見に対する考え方)の掲載を監視する。
読者別の緊急度
大型の蓄電所投資の税負担が変わり得る。投資判断中の案件は今週中に税務確認を入れたい。
設計・施工の基準への影響はない。設備区分の該当性のみ後追いで確認する。
即時償却と税額控除の選択、貸付除外を踏まえたストラクチャーの見直しを今週中に。
よくある質問(Q&A)
特定生産性向上設備等の確認とは何ですか?事業者が策定した投資計画を経済産業大臣が確認し、確認書を交付する手続きです。この確認書が租税特別措置法第10条の5の6第4項および第42条の12の7第3項の税制適用の入口になります。確認そのものが減税ではなく、減税を受ける資格の証明という組み立てです。
確認を受けるための要件は何ですか?4つあります。年平均の投資利益率が15%以上であること、取得価額の合計額が35億円以上(中小企業者等は5億円以上)であること、確認から5年以内に取得等および事業供用を行うこと、取締役会その他これに準ずる機関の決議・決定であることです。決議日は経済産業大臣が定める日である令和7年12月26日以後でなければなりません。
系統用蓄電池は対象になりますか?対象設備区分は機械及び装置、工具、器具及び備品、建物、建物附属設備、構築物、ソフトウエアで、蓄電池本体・PCSは機械及び装置、基礎・受変電設備・架台は構築物として設備区分の射程内にあたります。ただし貸付の用に供するものは除外設備で、租税特別措置法側の対象事業の限定も未確認です。
リースやSPC保有・賃貸のスキームでも使えますか?除外設備に「貸付の用に供するもの」が挙げられているため、蓄電池を賃貸・リースする形は除外され得ます。自社保有・自社運用が前提の制度と読めるので、ストラクチャーの設計段階で確認の対象になるかを検討する必要があります。
減税の中身(特別償却か税額控除か)は決まっていますか?省令案の概要には率の記載がなく、この時点では確定していません。令和8年度税制改正大綱ベースの情報では、即時償却(特別償却)または税額控除7%(建物・建物附属設備・構築物は4%)の選択制で、税額控除は法人税額の20%が上限、超過分は3年繰越とされていますが、二次情報です。
意見提出はまだできますか?できません。受付は2026年7月21日23時59分で締め切られています。以後は2026年7月31日に予定される公布・施行後の確定版の条文と、e-Govの結果公示(提出意見に対する考え方)を確認する段階になります。
編集部の見立て(独自分析)
独自分析
- 「特定生産性向上設備等」は業種を限定せず、設備区分と投資利益率15%・取得価額35億円(中小企業者等は5億円)という数値で切る設計になっている。系統用蓄電池は1案件の取得価額が数十億円になるのが通常で、要件面では射程に入り得る。ただし租税特別措置法第42条の12の7等の対象事業の限定は、確定版と税制側の規定を突き合わせないと確定しない。
- 実務で先に潰すべきはストラクチャーの側だと考える。貸付の用に供する設備が除外されるため、SPC保有+賃貸やリース組成を前提にした案件は、そのままでは確認の対象外になりかねない。自社保有・自社運用に寄せるか、確認を使わない前提で採算を組むかの二択を早めに置いた方がよい。
- 国際経済事情激変事業適応は関税・為替の急変への対応枠である。電池セルや部材の輸入コストが急変して収益が落ちた局面で、計画認定から税制・金融支援へつなぐ経路になり得る。公庫の社債引受(必要資金50億円以上・償還期間5年以上)も、蓄電所のプロジェクトファイナンスにおける調達手段の拡張として見ておきたい。
- この案件はe-Govのカテゴリーが「経済財政政策」で、案件名に蓄電池や電力の語が一切ない。蓄電池のキーワードで追う監視では構造的に見つからない型で、実際に当プロジェクトも公示から締切までの全期間で取りこぼした。制度の入口が産業政策側に置かれている案件は、キーワードではなく所管課と法律名で追う必要がある。
※本ブロックは一次資料の事実に基づく編集部の見立てであり、一次資料に記載された決定事項ではありません。
この記事のまとめ
産業競争力強化法施行規則等の改正案は、年平均投資利益率15%以上・取得価額35億円以上(中小企業者等は5億円以上)の投資計画を経済産業大臣が確認し、租税特別措置法の税制優遇の入口となる確認書を交付する仕組みを新設する。対象設備区分には機械装置と構築物が入り、蓄電所は要件面では射程に入りうる。一方で貸付の用に供する設備は除外される。意見募集は7月21日に締め切られ、公布・施行は7月31日予定である。
編集体制
執筆
BESSNEWS編集部
系統用蓄電池の制度・市場・ファイナンスを一次資料に基づいて解説する編集部。審議会資料・約款・公募要領を原文で確認して記事化しています。
監修
BESS NEWS編集長
産業政策と電力制度の接点を担当。本記事の要件・数値は省令案および告示案の概要と突き合わせて確認した。
出典(一次情報)
- e-Govパブリック・コメント(案件詳細 595126107)
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=595126107&Mode=0 - 省令案・告示案の概要 PDF
https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000316482 - 意見公募要領 PDF
https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000316481
本記事は2026年6月22日時点で公表された一次資料に基づきます。以後の改訂・追加公表は反映していません。
出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/institutional/beginner/4619501102001/
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