三次調整力②東京の約定単価が5月に3倍へ急騰 ― 監視委は高値約定にガイドライン準拠の算定見直しを要求
電力・ガス取引監視等委員会は第21回制度設計・監視専門会合(2026年6月19日開催)の配布資料を公表した。需給調整市場(三次調整力②)の東京エリア平均約定単価は5月に3.80→12.20円/ΔkW・30分へ急騰し、事務局は高値約定事業者に対しガイドラインに基づく「一定額」の算定見直しを要求。B種電源37件中に蓄電池4件・蓄電池VPP5件が含まれることも明らかになった。
このページの要点
- 監視委 第21回制度設計・監視専門会合(2026年6月19日)の配布資料が公表された。三次調整力②の東京エリア平均約定単価は5月に3.80→12.20円/ΔkW・30分へ急騰し、6月(1〜10日)は4.66円(資料6)。
- 事務局は高値約定事業者に対し、需給調整市場ガイドラインに基づく「一定額」の算定見直し(他市場収益の控除・想定応札量の使用等)を要求。一部事業者は是正済み、一部は検討中。
- B種電源37件(9社)中に蓄電池4件・蓄電池VPP5件。回収完了分はA種に移行し、未回収分の回収率は約1〜88%。揚水随意契約により東京・中国の募集量は減少傾向。
出典:監視委 第21回制度設計・監視専門会合 配布資料(2026年6月19日開催・資料6ほか)。
BESSの主戦場である需給調整市場の値動きと、運営側の監視の目線が一気に具体化した回である。東京で容量確保の単価が1か月で3倍に跳ね、監視委は「他市場で稼げる分を差し引かずに高値を付ける算定」の是正を要求した。蓄電池がどの収益スキーム(B種電源)に何件入っているかも数字で示された。
目次
- 三次②・複合市場の約定単価と取引量の最新動向
- 高値約定へのヒアリングとガイドライン是正要求
- 揚水随契による募集量減少とB種電源の固定費回収状況
- 系統用蓄電池の需給調整市場収益への示唆
- よくある質問(Q&A)
- 編集部の見立て(独自分析)
- 出典(一次情報)
三次②・複合市場の約定単価と取引量の最新動向
東京エリアの平均約定単価は、1か月で3倍を超える水準へ跳ねた。
電力・ガス取引監視等委員会は2026年6月19日15:00〜18:00、第21回制度設計・監視専門会合をオンラインで開催した。議題は①スポット市場価格高騰、②経過措置料金の指定解除に係る競争状況、③ガス小売価格の監視、④需給調整市場の運用等、⑤2026年度揚水随契、⑥特定地域立地電源の調整力調達の6本で、BESSに最も関わるのは資料6「需給調整市場の運用等について」である。
資料6によれば、三次調整力②の平均約定単価(円/ΔkW・30分)は、東京で4月3.80→5月12.20→6月(1〜10日)4.66と乱高下した。北海道は4月1.90→5月4.26→6月5.69と上昇基調にある。5月の想定費用は東京が9.06→17.40億円へ増加した一方、東北は10.27→0.29億円へ激減した(募集量減が一因)。約定量は5月に全エリアで前月比低下し、最高約定単価は5月に中部・北陸・関西・中国・九州で200円から大幅に低下した。
高値約定へのヒアリングとガイドライン是正要求
単価急騰の背後にある「一定額」の算定手法に、事務局が踏み込んだ。
図1:高値約定の主因3点と「一定額」の算定式 ― 事務局はガイドライン準拠への見直しを要求
出典:電力・ガス取引監視等委員会 第21回制度設計・監視専門会合 資料6(2026年6月19日)。
事務局が高値約定事業者にヒアリングした結果、主因として次の3点が挙げられた。①需給調整市場での運用のみを想定し、卸電力市場等の他市場収益を見込まない、②合理的理由なく想定応札量ではなく想定約定量(保守的約定率)で「一定額」を算定し、実態の高約定率に見直さない、③半年限定の応札なのに1年分の固定費で算定し、非応札期間の他市場収益も未計上、である。
需給調整市場ガイドラインの「一定額」は、(当年度分の固定費−他市場から得られる収益)÷想定応札量で定義され、ΔkW価格=逸失利益(機会費用)+一定額として応札価格を構成する。事務局はガイドラインに準拠した算定への見直しを要求し、一部事業者は是正済み、一部は検討中で、事後監視が継続される。
高値約定の主因は、他市場収益の不算入、合理的理由のない想定約定量ベースの算定、半年応札に対する1年分固定費の算定等であり、事務局はガイドラインの考え方に基づく見直しを要求した。一部事業者で是正を確認し、事後監視を継続する。
— 監視委 第21回制度設計・監視専門会合 資料6(2026年6月19日)なお、複合市場の上限価格は2026年3月14日受渡分以降15円/ΔkW・30分に変更済みで、超過案件は個別確認のうえ15円上限で精算済みであることが確認された。前日取引化(3月14日)の影響で、4月の経済差替に伴う事後精算は全エリア0件だった。
揚水随契による募集量減少とB種電源の固定費回収状況
市場の「買う量」を左右する構造変化と、蓄電池の収益スキーム活用実績が数字で見えた。
図2:揚水随意契約の開始と募集量の見直し ― B種電源37件に蓄電池4件・蓄電池VPP5件
出典:電力・ガス取引監視等委員会 第21回制度設計・監視専門会合 資料6(2026年6月19日)。
揚水随意契約の開始と募集量への影響
応札不足・価格高騰への対応として進む揚水発電の随意契約は、東北・中部で4月1日、関西で4月4日、東京で5月26日、中国で6月10日に開始された。東京は5月26日実需給分から複合商品の募集量が減少し、中国も6月10日実需給分から募集量が見直された。一方、一次調整力は北海道・四国等で充足するものの、多くのエリアで依然未達が続いている。
B種電源の固定費回収 ― 蓄電池4件+VPP5件
B種電源の固定費回収報告では、2025年度に協議済みのB種電源9社37件について、2026年3月までの回収状況が確認された。内訳は電源28件・蓄電池4件・蓄電池VPP5件で、蓄電池関連は合計9件がこのスキームを活用している。回収完了分は終了段階でA種電源へ移行し、未回収分の回収率は約1〜88%。報告は3ヶ月に1回行われる。
B種電源 37件の内訳
電源28件・蓄電池4件・蓄電池VPP5件(9社・2025年度協議済み)。B種は固定費の一定額回収を許容する仕組み。
回収状況
回収完了分は終了段階でA種電源へ移行。未回収分の回収率は約1〜88%。3ヶ月に1回報告。
系統用蓄電池の需給調整市場収益への示唆
マルチユース前提のBESSは、収益配分の整合性そのものが問われる局面に入った。
需給調整市場(三次②・複合)で運用するBESSは、東京エリアの単価乱高下と監視委の高値約定監視の強化を踏まえ、応札価格(ΔkW価格=機会費用+一定額)の算定をガイドライン準拠で行う必要がある。特に卸・容量市場の他市場収益を控除せずに高値を付ける手法は是正対象であり、マルチユース前提のBESSは収益配分の整合性が問われる。
また、揚水随契による東京・中国の募集量減少は、当該エリアの三次②・複合の落札機会・約定単価の前提を切り下げる要因となる。一方で、一次調整力は多くのエリアで未達が続いており、応答性能を満たすBESSには調達余地が残る。B種電源スキームに蓄電池9件(うちVPP5件)が乗っている実績は、固定費の一定額回収を前提とした案件組成(回収完了後A種移行)の実例として、ファイナンス設計の参考になる。
- 資料6(17頁)でエリア別の募集量・応札量・調達率の図表と、自社対象エリアの三次②/複合の単価・約定量推移を確認する。
- 自社の需給調整市場応札の「一定額」算定が、他市場収益控除・想定応札量ベースでガイドライン準拠かを点検する(是正要求の対象とならないか)。
- 揚水随契が進む東京・中国エリアの募集量減少を収益見通しに織り込み、未達が続く一次調整力の調達機会も併せて評価する。
- B種電源での参入を検討する場合、回収率・A種移行のタイミングを踏まえた固定費回収計画をファイナンス側と擦り合わせる。
読者別の緊急度
BESS収益の仕組みを理解する材料として今月中に押さえたい。
市場設計の前提変化を今週中に把握しておくべき。
応札価格算定・エリア戦略に直結するため、直ちに確認すべき。
よくある質問(Q&A)
三次調整力②の東京エリアの約定単価はどれくらい上がりましたか?東京エリアの平均約定単価は2026年4月3.80円→5月12.20円/ΔkW・30分へ急騰し、6月(1〜10日)は4.66円でした。北海道は4月1.90→5月4.26→6月5.69円と上昇基調です。5月の想定費用も東京は9.06→17.40億円へ増加しました。
監視委は高値約定にどう対応しましたか?事務局が高値約定事業者へヒアリングを行い、①他市場収益を見込まない、②合理的理由なく想定約定量で「一定額」を算定する、③半年限定の応札なのに1年分の固定費で算定する等の問題を指摘し、需給調整市場ガイドラインに準拠した算定への見直しを要求しました。一部事業者は是正済み、一部は検討中で、事後監視が継続されます。
需給調整市場ガイドラインの「一定額」とは何ですか?「一定額」=(当年度分の固定費−他市場から得られる収益)÷想定応札量で、ΔkW価格=逸失利益(機会費用)+一定額として応札価格を構成します。卸・容量市場とのマルチユースが前提のBESSでは、他市場収益の控除が応札価格の妥当性判断の核心となります。
B種電源に蓄電池は何件含まれていますか?2025年度に協議済みのB種電源9社37件のうち、電源28件・蓄電池4件・蓄電池VPP5件です。回収完了分は終了段階でA種電源へ移行し、未回収分の回収率は約1〜88%でした。回収状況は3ヶ月に1回報告されます。
揚水随意契約は需給調整市場の募集量にどう影響しますか?揚水随意契約は東北・中部で4月1日、関西で4月4日、東京で5月26日、中国で6月10日に開始されました。東京は5月26日実需給分から複合商品の募集量が減少し、中国も6月10日実需給分から募集量が見直されています。一方、一次調整力は多くのエリアで未達が続いています。
複合市場の上限価格はいくらですか?2026年3月14日受渡分以降、15円/ΔkW・30分に変更済みです。上限を超過した案件は個別確認のうえ15円上限で精算済みであることが確認されました。
編集部の見立て(独自分析)
独自分析
- 東京の単価は5月12.20円から6月(1〜10日)4.66円へ低下しており、事務局の是正要求と並行して価格が落ち着く動きが確認できる。高値約定の是正は「上限価格の引下げ」ではなく「算定手法の監視」で進む段階に入ったと読める。
- 「一定額」の算定で他市場収益の控除が是正の核心とされたことは、収益スタッキング(卸・容量・調整力のマルチユース)の設計そのものが監視対象になったことを意味する。応札価格の根拠資料の整備が実務上の防御線になる。
- B種電源に蓄電池9件(うちVPP5件)が入っている実績は、固定費の一定額回収を前提とした蓄電池ファイナンスが制度上機能している実証データであり、今後の案件組成の参考になり得る。
※本ブロックは一次資料の事実に基づく編集部の見立てであり、確定情報ではありません(2026年7月時点)。
この記事のまとめ
監視委 第21回制度設計・監視専門会合(2026年6月19日)の資料6で、三次調整力②の東京エリア平均約定単価が4月3.80→5月12.20→6月(1〜10日)4.66円/ΔkW・30分と乱高下したことが示された。事務局は高値約定事業者に対し、他市場収益の控除や想定応札量の使用など需給調整市場ガイドラインに基づく「一定額」の算定見直しを要求し、一部事業者で是正を確認した。揚水随意契約の開始(東京5月26日・中国6月10日等)により当該エリアの募集量は減少傾向にあり、B種電源9社37件中に蓄電池4件・蓄電池VPP5件が含まれることも明らかになった。需給調整市場で運用するBESSは、応札価格算定のガイドライン準拠とエリア別の募集量前提の見直しが急務である。
編集体制
執筆
BESSNEWS編集部
系統用蓄電池の制度・市場・ファイナンスを一次資料に基づき解説する専門編集チーム。
監修
BESS NEWS編集長
系統用蓄電池の制度・系統運用を専門とする社内専門家。本記事の制度記述・数値を確認。
出典(一次情報)
- 電力・ガス取引監視等委員会 第21回制度設計・監視専門会合(2026年6月19日開催)配布資料
https://www.egc.meti.go.jp/activity/emsc_systemsurveillance/021.html - 同会合 資料6「需給調整市場の運用等について」
https://www.egc.meti.go.jp/activity/emsc_systemsurveillance/pdf/021_06_00.pdf
本記事は2026年6月19日開催の会合の一次資料のみに基づいています(対象日より後の情報は含みません)。市場データ・監視方針は今後更新される可能性があります。
出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/institutional/proffessional/4620203102001/
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