櫻貿易株式会社
制度・政策・審議会上級

需給調整市場の上限価格19.51→15円へ ― 募集量1σ統一・三次②30分コマ化で変わる蓄電池の収益前提

OCCTOの需給調整市場検討小委員会は、2025年度の需給調整市場の取引実績と2026年度以降の課題を報告した(2026年6月30日のOCCTO公表分として捕捉)。週間商品(一次・二次①・複合)の上限価格を19.51→15円/ΔkW・30分へ引き下げ、募集量を1σ相当値に統一する方針に加え、揚水随契・市場外調整力控除による募集量圧縮、三次②の30分コマ化による高調達率維持が整理された。

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このページの要点

  1. OCCTO 需給調整市場検討小委員会が、2025年度取引実績と2026年度以降の課題を報告した。
  2. 第110回制度検討作業部会(2026年1月23日)の方針として、一次・二次①・複合商品の上限価格を19.51→15円/ΔkW・30分へ引下げ、市場での調達上限(募集量)を1σ相当値に統一。2026年度の市場状況で緩和または更なる引締めを行う方向。
  3. 揚水随意契約(中部・東北・北海道・関西・東京と拡大)や市場外調整力(自然体余力)の控除、EPPS動作期待分の考慮で募集量が圧縮され、三次①・複合の不足率は改善(中部・北海道はなお高め)。前日商品の三次②は今年度から30分コマ化し、応札量増加で高い調達率を維持。

出典:OCCTO 需給調整市場検討小委員会 報告資料(2026年6月30日公表分として捕捉)。

要旨 ― ひと言でいえば

BESSの主要収益源である需給調整市場の、1年分の実績報告と来年度以降の方針である。運営側はコスト高騰を抑えるため「買う量(募集量)を絞り、買値の上限(上限価格)を下げる」方向に舵を切っており、調整力で稼げる枠と単価上限が縮む構造変化が確認できる。一方、前日商品の三次②は30分コマ化の効果で応札が増え、引き続き参入しやすい市場である。

目次

  1. 2025年度の需給調整市場 ― 実績報告の概観
  2. 上限価格19.51→15円への引下げと募集量1σ統一
  3. 募集量圧縮の3要因と三次②の30分コマ化
  4. 2026年度以降の商品要件・課題と蓄電池の備え
  5. よくある質問(Q&A)
  6. 編集部の見立て(独自分析)
  7. 出典(一次情報)

2025年度の需給調整市場 ― 実績報告の概観

1年分の商品別実績と、来年度以降の検討課題がまとめて示された。

電力広域的運営推進機関(OCCTO)の需給調整市場検討小委員会は、2025年度の需給調整市場の取引実績と2026年度以降に検討すべき課題を報告した(2026年6月30日のOCCTO公表分として捕捉)。募集量の圧縮策が進んだ結果、三次①・複合の不足率は年度当初比で改善した(中部・北海道はなお高め)。前日商品の三次②は全エリアで概ね充足している(北陸は至近で不足率高め)。

需給調整市場で運用する系統用蓄電池にとっては、応札単価の上限・落札可能量・収益の前提を規定する方針群がこの報告に集約されており、商品区分・アグリ構成の選択がBESSの収益を左右する。

上限価格19.51→15円への引下げと募集量1σ統一

週間商品の「買値の上限」と「買う量」が同時に絞られる。

週間商品(一次・二次①・複合)については、第110回制度検討作業部会(2026年1月23日)で示された方針として、上限価格を現行19.51円から15円/ΔkW・30分へ引き下げ、市場での調達上限(募集量)を1σ相当値に統一する。広域予備率10%閾値未満時は3σ調達+余力確保が行われる。2026年度開始以降の市場状況に応じて、緩和あるいは更なる引締めが行われる。

図1:週間商品(一次・二次①・複合)の上限価格引下げ

現行19.51
引下げ後15

単位:円/ΔkW・30分。出典:OCCTO 需給調整市場検討小委員会 報告資料(第110回制度検討作業部会 2026年1月23日方針)。

週間商品で運用するBESSは、応札単価の上限と落札可能量が同時に縮小するため、高値約定に依存した収益計画の見直しと、卸・容量市場とのマルチユースによる収益補完の設計が一段と重要になる。

募集量圧縮の3要因と三次②の30分コマ化

市場で買う前に「市場の外」で確保する動きが、募集量を構造的に縮めている。

募集量の圧縮要因は3つ整理されている。

要因①

揚水発電の随意契約による控除。中部(2025年7月20日実需給〜)、東北、北海道・関西(第10回制度設計・監視専門会合 2025年6月27日)、東京(第12回 2025年8月29日)と各エリアへ拡大。

要因②

市場外調整力(自然体余力)の控除。需給調整市場に参入していない電源の自然体余力は現状大宗のエリアでほぼゼロだが、6月中旬から控除を開始。控除の蓋然性・控除量・控除期限は分析中。

要因③

EPPS動作期待分の考慮(4月下旬から)。

三次②は30分コマ化で高調達率を維持

前日商品の三次②は、従来の募集量削減係数・1σ調達(まずもっての市場調達を3σから1σに)に加え、今年度より取引単位時間が3時間ブロック(6コマ)から30分コマ単位へ変更された。募集量適正化(必要量低減)と応札量増加の効果で高い調達率を維持しており、BESSにとって最も参入しやすい前日市場として機能している。

一次資料の記載(要旨)

一次・二次①・複合商品の上限価格を現行19.51円から15円/ΔkW・30分へ引き下げ、市場での調達上限を1σ相当値に統一する。三次②は取引単位時間の30分コマ化と募集量適正化・応札量増加効果により高い調達率を維持している。

— OCCTO 需給調整市場検討小委員会 報告資料

2026年度以降の商品要件・課題と蓄電池の備え

全商品の前日取引化・30分コマ化が進み、中期の論点も並んだ。

図2:2026年度の商品要件(報告内容の整理)

項目2026年度の要件
取引形態全商品が前日取引化・30分コマ化(入札時間単位30分・継続時間30分)
最低入札量・刻み幅各商品1MW・刻み幅1kW
三次②の応動応動時間60分以内
一次の応動応動10秒以内・継続5分以上(オフライン監視時は応動30秒以内・継続なし)
アグリゲーションネガ/ポジ/ネガポジが各商品で段階拡大

出典:OCCTO 需給調整市場検討小委員会 報告資料。

2026年度以降の主要課題としては、①二次①の2027年度広域調達、②三次②必要量の新手法(信頼度階級予測×信頼区間幅予測)の検証、③揚水発電の市場活用(揚水公募等)、④制度的措置(2026年4月導入は見送り・市場状況により再開検討)、⑤市場外調整力の実態調査と募集量控除、⑥将来の変動性再エネの調整機能活用――が挙げられた。いずれもBESSの中期的な参入環境を規定する論点群である。

  • 週間商品の収益モデルを上限価格15円・募集量1σ前提で再計算し、卸・容量市場との収益配分で補完できるか感応度分析を行う。
  • 揚水随契・市場外調整力控除が進むエリア(中部・東北・北海道・関西・東京)の募集量縮小をエリア別収益見通しに反映する。
  • 三次②の30分コマ化・高調達率を活かす前日運用計画を整備し、アグリ構成(ネガ/ポジ/ネガポジ)での参入余地を検討する。
  • 二次①広域調達(2027年度)・三次②必要量の新手法など中期論点を継続フォローする。

読者別の緊急度

初級(投資家・土地オーナー)2/5

調整力収益の縮小トレンドを余裕のあるときに把握したい。

中級(建設・メーカー・設計)3/5

商品要件・参入条件の変化を今月中に把握したい。

上級(事業者・アグリゲーター)5/5

応札単価上限・募集量前提の見直しに直結するため直ちに。

よくある質問(Q&A)

需給調整市場の上限価格はどう変わりますか?

週間商品(一次・二次①・複合)の上限価格を、現行の19.51円から15円/ΔkW・30分へ引き下げる方針が第110回制度検討作業部会(2026年1月23日)で示されました。2026年度開始以降の市場状況に応じて緩和あるいは更なる引締めが行われます。

募集量はどうなりますか?

市場での調達上限(募集量)を1σ相当値に統一します。広域予備率10%閾値未満時は3σ調達+余力確保が行われます。応札単価の上限と落札可能量が同時に絞られる方向です。

三次調整力②はどう変わりましたか?

前日商品の三次②は、今年度より取引単位時間が3時間ブロック(6コマ)から30分コマ単位へ変更されました。募集量適正化と応札量増加の効果で高い調達率を維持しており、全エリアで概ね充足しています(北陸は至近で不足率高め)。

募集量が圧縮される要因は何ですか?

3つあります。①揚水発電の随意契約による控除(中部・東北・北海道・関西・東京と拡大)、②需給調整市場に参入していない電源の自然体余力(市場外調整力)の控除(6月中旬から開始)、③EPPS動作期待分の考慮(4月下旬から)です。

2026年度の商品要件はどうなりますか?

2026年度より全商品が前日取引化・30分コマ化(入札時間単位30分・継続時間30分)されます。最低入札量は各商品1MW、刻み幅1kW。三次②は応動時間60分以内、一次は応動10秒以内・継続5分以上(オフライン監視時は応動30秒以内・継続なし)で、アグリゲーション(ネガ/ポジ/ネガポジ)が各商品で段階拡大します。

2026年度以降の主な課題は何ですか?

①二次①の2027年度広域調達、②三次②必要量の新手法(信頼度階級予測×信頼区間幅予測)の検証、③揚水発電の市場活用(揚水公募等)、④制度的措置(2026年4月導入は見送り・市場状況により再開検討)、⑤市場外調整力の実態調査と募集量控除、⑥将来の変動性再エネの調整機能活用が挙げられています。

編集部の見立て(独自分析)

独自分析

  • 上限価格の引下げと募集量1σ統一は、週間商品の「高値×大量落札」に依存した収益モデルの終わりを示すシグナルと読める。卸・容量市場とのマルチユース設計が実質的な標準になる。
  • 揚水随契・市場外調整力控除が進むエリア(中部・東北・北海道・関西・東京)では募集量が構造的に縮むため、エリア別の調整力収益見通しは引き下げ方向に補正するのが安全側である。
  • 三次②の30分コマ化と高調達率、アグリゲーションの段階拡大は、小型分散BESSを含む前日・短時間運用の主戦場化を後押しする方向に働くとみられる。

※本ブロックは一次資料の事実に基づく編集部の見立てであり、確定情報ではありません(2026年7月時点)。

この記事のまとめ

OCCTOの需給調整市場検討小委員会は、2025年度の取引実績と2026年度以降の課題を報告した。週間商品(一次・二次①・複合)は上限価格を19.51→15円/ΔkW・30分へ引き下げ、募集量を1σ相当値に統一する方針(第110回制度検討作業部会 2026年1月23日)で、揚水随契・市場外調整力控除・EPPS動作期待分の考慮により募集量は圧縮され、三次①・複合の不足率は改善した(中部・北海道はなお高め)。前日商品の三次②は30分コマ化と応札量増加で高い調達率を維持。2026年度は全商品の前日取引化・30分コマ化が進み、2027年度には二次①の広域調達が予定される。BESSの応札単価上限・落札可能量・収益前提を縮小方向に動かす構造変化であり、商品区分とアグリ構成の選択が収益を左右する。

編集体制

執筆

BESSNEWS編集部

系統用蓄電池の制度・市場・ファイナンスを一次資料に基づき解説する専門編集チーム。

監修

BESS NEWS編集長

系統用蓄電池の制度・系統運用を専門とする社内専門家。本記事の制度記述・数値を確認。

出典(一次情報)

  1. 電力広域的運営推進機関(OCCTO)需給調整市場検討小委員会 「2025年度の需給調整市場の取引実績と2026年度以降の課題」報告資料(2026年6月30日のOCCTO公表分として捕捉)
    https://www.occto.or.jp/iinkai/chouseiryoku/index.html

本記事は2026年6月30日公表の一次資料のみに基づいています(対象日より後の情報は含みません)。方針は市場状況に応じて緩和・引締めなど変更される可能性があります。

出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/institutional/proffessional/4621003102001/

本記事は BESS media の転載条件(出典明記のうえ全文転載可)にもとづき転載しています。 記事内容の著作権は転載元に帰属します。

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