需給調整市場の上限価格を15円から10円へ―2026年9月1日実需給分から適用、蓄電池は値を下げても応札を続ける
電力安定供給ワーキンググループ第4回の資料6で、事務局は一次・二次①・複合商品の上限価格を現行15円/ΔkW・30分から10円へ引き下げ、2026年9月1日実需給分から適用する案を示した。前日取引化から約3か月たっても応札未達が続いていることが根拠である。
このページの要点
- 電力安定供給ワーキンググループ第4回 資料6で、一次・二次①・複合商品の需給調整市場上限価格を15円/ΔkW・30分から10円へ引き下げる事務局案が示された。
- 適用は2026年9月1日実需給分から。判断根拠は、前日取引化から約3か月でも応札未達が続き、14円超の約定が調達費用の約17%を占めることである。
- 蓄電池・VPPは価格を下げても応札を継続すると回答した。上限10円下での応札可否と収益性の再試算が9月までの実務になる。
出典:資源エネルギー庁 電力安定供給ワーキンググループ 第4回 資料6「需給調整市場について」(電力需給調整力取引所提供資料より事務局作成・速報値、2026年7月14日)。
電気の瞬間的な調整力を売買する市場で、値札の天井そのものを15円から10円へ下げるという案であり、天井付近に並んでいた蓄電池は値段を下げてでも出品を続ける、という行動の違いが確認された。
目次
- 事務局案の中身 ― 一次・二次①・複合商品の上限価格を15円から10円へ
- 判断根拠 ― 前日取引化から約3か月、応札未達と上限価格付近の約定が続いた
- 電源種別で分かれる応札行動 ― 蓄電池が上限価格付近に並ぶ理由
- 9月1日実需給分までに何を組み替えるか
- よくある質問(Q&A)
- 編集部の見立て(独自分析)
- 出典(一次情報)
事務局案の中身 ― 一次・二次①・複合商品の上限価格を15円から10円へ
7月14日の資料6で示されたのは、上限価格そのものを引き下げる案である。
図1:上限価格15円→10円の事務局案 ― 対象3商品・価格水準・適用時期
出典:資源エネルギー庁 電力安定供給ワーキンググループ 第4回 資料6「需給調整市場について」p22 まとめ(速報値)。
資源エネルギー庁の電力安定供給ワーキンググループ第4回に提出された資料6「需給調整市場について」のまとめ(p22)で、事務局は一次調整力・二次調整力①・複合商品の上限価格を、現行の15円/ΔkW・30分から10円へ引き下げる案を示した。適用は2026年9月1日実需給分から。第110回制度検討作業部会で示された段階的引下げ(15円→10円→7.21円等)の方針に沿った内容である。
引下げが一度で終わる話でもない。事務局は引下げ後も競争状況と調達コスト全体を継続して確認し、必要に応じて募集量・上限価格を再検討するとしている。段階的引下げの次の目安として7.21円という水準が置かれていることも、収益前提を組むうえで見落とせない。
一次・二次①・複合商品の上限価格を現行の15円/ΔkW・30分から10円へ引き下げ、2026年9月1日実需給分から適用する。引下げ後も競争状況・調達コスト全体を継続確認し、必要に応じ募集量・上限価格を再検討する。
— 電力安定供給ワーキンググループ第4回 資料6「需給調整市場について」p22 まとめ判断根拠 ― 前日取引化から約3か月、応札未達と上限価格付近の約定が続いた
引下げの理屈は、前日取引化しても競争が生まれなかったという実績にある。
前日取引化から約3か月が経った時点でも応札未達は継続し、上限価格付近では一定量が約定していた。事務局はさらに、14円超の約定が調達費用の約17%を占める(p14)ことを示している。高価格帯のわずかな約定が調達費用の全体を押し上げている、という整理である。
事業者ヒアリング(p9)では、高需要期でも競争環境の形成は見込み難いという回答が示された。競争によって価格が下がるのを待つのではなく、上限価格という制度側の天井を動かす。今回の案はその選択をとっている。
資料6の数値は、電力需給調整力取引所(EPRX)の提供資料をもとに事務局が作成した速報値である。
電源種別で分かれる応札行動 ― 蓄電池が上限価格付近に並ぶ理由
同じ引下げに対して、火力・揚水と蓄電池・VPPは逆向きの反応を示す。
図2:電源種別で分かれる応札行動 ― 蓄電池・VPPは価格を下げても応札を継続
出典:電力安定供給ワーキンググループ 第4回 資料6(事業者ヒアリング結果 p9・速報値)。
資料6は需給調整市場(三次調整力等)の応札状況を、火力・水力・蓄電池・VPP/DRの電源種別に分析している。現行の上限価格は15円/ΔkW・30分で、これを超える応札は便宜的に15円として取り扱われる。その上限価格付近の高価格帯には、蓄電池の応札が多く見られる。
事務局は事業者ヒアリングで蓄電池の高価格応札の要因を整理した。固定費の占める割合が大きいこと、とくに償却期間を短く設定している場合に当該年度の減価償却費が大きくなることである。火力は事情が違い、スポット市場の状況や追加起動量によって応札単価が高水準になる。
この非対称性の読み方が、引下げ判断の土台になっている。上限価格を下げても蓄電池・VPPは市場に残るという前提に立てば、引下げは調整力の確保量を大きく損なわずに調達コストを下げる手段に見える。
9月1日実需給分までに何を組み替えるか
上限10円を前提にした再試算が、9月までの実務になる。
上限価格の水準は蓄電池のΔkW収益に直結する。上限15円を織り込んで組んだ応札価格と収益計画は、10円の天井では成立しない場合が出てくる。適用時期が2026年9月1日実需給分と明示されているため、逆算できる期間はそれほど長くない。
償却設定の見直しも論点になる。事務局が蓄電池の高価格応札の要因として挙げたのは、償却期間を短く設定した場合の当該年度の減価償却費の大きさだった。償却期間の設定が応札価格の下限を決めているのなら、収益計画の側から設定を点検する余地がある。
- 上限価格10円のもとでの応札可否と収益性を再試算し、2026年9月1日実需給分の適用に間に合わせる。
- 自社蓄電池の償却設定と減価償却費の年度配分が応札価格に与える影響を再確認する。
- 需給調整市場と他市場(容量市場・卸・調整力)の収益性を比較し、応札戦略を点検する。
- 上限価格見直しの確定状況を、今後の電力安定供給ワーキンググループ・EPRX資料で追跡する。
読者別の緊急度
収益前提を左右する制度変更。BESS投資の採算前提が変わりうる。
需給調整市場運用の前提。9月1日適用に向け設計・収益計画の見直しが必要。
上限価格15円→10円・9月1日適用は収益に直結。即時の応札戦略見直しが必要。
よくある質問(Q&A)
需給調整市場の上限価格はいくらに引き下げられるのか。事務局案では、一次調整力・二次調整力①・複合商品の上限価格を現行の15円/ΔkW・30分から10円へ引き下げる。電力安定供給ワーキンググループ第4回 資料6のまとめ(p22)で示された案である。
引下げはいつから適用されるのか。2026年9月1日実需給分からの適用が案として示されている。
対象となる商品はどれか。一次調整力、二次調整力①、複合商品である。資料6のまとめでは、この3区分が引下げの対象として示されている。
なぜ上限価格を引き下げるのか。前日取引化から約3か月たっても応札未達が継続し、上限価格付近で一定量が約定していること、14円超の約定が調達費用の約17%を占めること(p14)が根拠として挙げられている。高需要期でも競争環境の形成は見込み難いという事業者ヒアリング結果(p9)も示された。
上限価格が下がると蓄電池は応札しなくなるのか。事業者ヒアリングでは、蓄電池・VPPは他市場との収益性を比較したうえで応札価格を引き下げてでも応札を継続するとの回答が多かった。火力・揚水は機会費用ベースで応札価格を算定し、上限を超える場合は応札を控えるとの回答が多い。
10円よりさらに下がる可能性はあるのか。第110回制度検討作業部会で示された段階的引下げの方針では、15円→10円→7.21円等の水準が挙げられている。事務局は引下げ後も競争状況・調達コスト全体を継続確認し、必要に応じて募集量・上限価格を再検討するとしている。
編集部の見立て(独自分析)
独自分析
- 上限価格の引下げは、競争が生まれるのを待たない選択である。前日取引化から約3か月でも応札未達が続き、高需要期でも競争環境の形成は見込み難いという事業者回答が出た段階で、制度側の天井を動かす方向に舵が切られた。競争環境の改善を前提にした収益計画は置きにくい。
- 14円超の約定が調達費用の約17%という数字は、高価格帯の少量の約定が費用全体に効いていることを示す。引下げの効果は調達費用側に出やすく、この構図が続くかぎり段階的引下げの次の水準(7.21円等)へ進む圧力は残ると読む。
- 蓄電池・VPPが価格を下げてでも応札を継続すると回答したことは、制度側には調整力確保の安心材料になる。一方で事業者側では、ΔkW収益の単価低下を受け入れる前提が公式に記録されたことになる。他市場との収益比較を持たないまま応札を続ける運用は、引下げ局面で不利になりやすい。
- 償却期間を短く設定すると当該年度の減価償却費が大きくなり、応札価格の下限が上がる。上限10円の天井の下では、この下限が天井に届く案件が出てくる。償却期間と収益計上の設計は、応札戦略と切り離せない論点になった。
※本ブロックは一次資料の事実に基づく編集部の見立てであり、一次資料に記載された決定事項ではありません。
この記事のまとめ
電力安定供給ワーキンググループ第4回の資料6で、一次・二次①・複合商品の上限価格を15円/ΔkW・30分から10円へ引き下げ、2026年9月1日実需給分から適用する事務局案が示された。前日取引化から約3か月でも応札未達が続き、14円超の約定が調達費用の約17%を占めることが根拠である。蓄電池・VPPは価格を下げても応札を続けると回答しており、上限10円下での収益再試算が9月までの実務になる。
編集体制
執筆
BESSNEWS編集部
系統用蓄電池の制度・市場・ファイナンスを一次資料に基づいて解説する編集部。審議会資料・約款・公募要領を原文で確認して記事化しています。
監修
BESS NEWS編集長
需給調整市場と容量市場の制度設計、系統運用の実務を担当。本記事の数値は電力安定供給ワーキンググループ第4回 資料6の記載と突き合わせて確認した。
出典(一次情報)
- 電力安定供給WG 第4回(配布資料一覧)
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/jisedai_kiban/stable_power_supply_wg/004.html - 資料6 需給調整市場について
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/jisedai_kiban/stable_power_supply_wg/pdf/004_06_00.pdf
本記事は2026年7月14日時点で公表された一次資料に基づきます。以後の改訂・追加公表は反映していません。
出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/market/proffessional/4621703001001/
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