櫻貿易株式会社
技術・仕様・EMS中級

蓄電池のフリッカ対策で一次調整力に周波数計測要件 ― PCSの移動平均計測時間幅は初期値0.1秒、既設は1年の経過措置

OCCTOは第62回需給調整市場検討小委員会の資料3で、蓄電池起因の電圧フリッカへの対応案を示した。一次調整力の要件にPCSの周波数計測仕様を新設し、移動平均計測時間幅は初期値0.1秒とする。既設リソースには要件化から1年間の経過措置を置く。

#OCCTO#配布資料#会合種別:小委員会#需給調整#段階:案

このページの要点

  1. 蓄電池起因の電圧フリッカ対策として、一次調整力に周波数計測要件が新設される
  2. PCSを用いた周波数計測時の移動平均計測時間幅は初期値0.1秒、TSO指定があればそれに従う
  3. 既設リソースは要件化から1年間の経過措置。PCS設定の確認と改修計画を今から立てる

出典:OCCTO 第62回需給調整市場検討小委員会(第79回作業会と合同)資料3(2026年7月31日)。

要旨 ― ひと言でいえば

蓄電池が周波数を瞬間の値で見て反応しすぎたため、周辺の電圧がちらついた。そこで「0.1秒ぶんならしてから見なさい」という共通ルールを決める、という話である。

目次

  1. なぜ蓄電池で電圧フリッカが起きたのか ― 瞬時値に追従する周波数計測
  2. 新設される周波数計測要件 ― 初期値0.1秒、TSO指定があればそれに従う
  3. 既設リソースの1年経過措置とPCS改修の進め方
  4. 系統連系要件側へ広がる可能性と、適用時期
  5. よくある質問(Q&A)
  6. 編集部の見立て(独自分析)
  7. 出典(一次情報)

なぜ蓄電池で電圧フリッカが起きたのか ― 瞬時値に追従する周波数計測

原因は制御の思想ではなく、計測の設定にあった。

OCCTOは2026年7月31日の第62回需給調整市場検討小委員会(調整力の細分化及び広域調達の技術的検討に関する作業会 第79回との合同開催)資料3で、一般送配電事業者から課題提起された蓄電池起因の電圧フリッカについて対応案を示した。主な原因は、自端制御向けの周波数計測に関して移動平均計測時間幅が当該機器に設定されておらず、瞬時値に追従する仕様であったことと考えられるとされている。

現行の需給調整市場の要件には、移動平均計測時間幅も計測間隔も定めがない。系統連系時の要件として各社がHPで公表しているのは出力変化速度のみで、周波数計測については要件がなかった。参考として計測間隔は0.1秒以下とされている。

一次資料の記載(要旨)

自端制御向けの周波数計測に関して移動平均計測時間幅が当該機器に設定されておらず、瞬時値に追従する仕様であったことが主な原因と考えられる。需給調整市場の要件における一次調整力の周波数計測仕様として、PCSを用いた周波数計測時の移動平均計測時間幅は初期値を0.1秒とし、別途TSOから指定があればそれに従うことを新たに定める。

— OCCTO 第62回需給調整市場検討小委員会 資料3(2026年7月31日)

新設される周波数計測要件 ― 初期値0.1秒、TSO指定があればそれに従う

PCSの制御パラメータが、市場参加要件として明文化される。

図1:周波数計測に関する現行要件と、新設される一次調整力の計測仕様

蓄電池のフリッカ対策で新設される一次調整力の周波数計測要件と現行要件を比べた図。初期値0.1秒

出典:OCCTO 第62回需給調整市場検討小委員会 資料3(2026年7月31日)。現時点では事務局案。

新設されるのは需給調整市場の要件における一次調整力の周波数計測仕様で、「PCSを用いた周波数計測時の移動平均計測時間幅は初期値を0.1秒とし、別途TSOから指定があればそれに従う」という書き方になっている。数値そのものより、要件が置かれていなかった項目に初期値が入る点が変更の中身である。

一次調整力に応札する蓄電池は、PCSの周波数計測の移動平均計測時間幅を0.1秒、またはTSOから指定された値に設定できることが要件になる。新規調達では、この設定変更が可能なPCSかどうかが仕様確認の項目に加わる。

既設リソースの1年経過措置とPCS改修の進め方

既設にも対応を求めるが、猶予は要件化から1年である。

図2:既設リソースの1年経過措置とPCS改修の進め方

蓄電池の既設リソースに要件化から1年の経過措置を置き、PCSの設定変更と改修計画を示した図

出典:OCCTO 第62回需給調整市場検討小委員会 資料3 p32 まとめ・脚注。

フリッカ発生を防止する観点からは既設リソースにも遡及して対応を求めるべきだが、事業者側の対応に時間を要することから、要件化から1年間を経過措置として認める。ただし経過措置期間中でも電圧フリッカの発生が確認された場合は、周辺需要家への影響も勘案して早期の対応を求めるとされている。

既設側でやることはPCSの設定変更、またはファームウェア更新である。機器によっては改修コストと停止期間が発生する。複数エリアに展開している場合は、エリア別の指定値への追従性も確認の対象になる。

経過措置は「1年」という相対期間で置かれており、起点となる要件化の時期はEPRXの取引規程改定後から順次とされている。

系統連系要件側へ広がる可能性と、適用時期

事務局は、市場参加の有無を問わず一律に対応すべき課題だという認識も示している。

本要件変更は、EPRXの取引規程改定後から順次適用される(資料3 p32 まとめ・脚注)。現時点では事務局案の段階である。

資料3では、本事象は電力品質の維持に係る課題であり、本来は需給調整市場への参入有無に関わらず系統に連系するリソースが一律に対応すべきとも考えられるとして、今後も関係各所と連携して検討を進めるとしている。対象範囲がどこまで広がるかは、その検討の結果を待つことになる。

  • 自社BESSのPCSについて、周波数計測の移動平均計測時間幅の設定値と、0.1秒への変更可否をメーカーへ確認する。
  • 既設リソースは要件化から1年の経過措置を前提に、設定変更・ファーム更新の計画と停止調整を立てる。
  • 新規調達のPCS仕様書に、移動平均計測時間幅の可変設定(TSO指定値への追従)を要求事項として追加する。
  • EPRX取引規程の改定内容と要件化の時期を継続監視する。

読者別の緊急度

初級(投資家・土地オーナー)1/5

機器仕様の話で、投資判断への即時影響はない。

中級(建設・メーカー・設計)5/5

PCSの設定可否をメーカーへ即確認し、改修要否を今週中に判定すべき。

上級(事業者・アグリゲーター)4/5

応札中リソースの適合性確認と、改修時の停止調整を今月中に計画する。

よくある質問(Q&A)

蓄電池でなぜ電圧フリッカが起きたのですか?

自端制御向けの周波数計測に関して移動平均計測時間幅が当該機器に設定されておらず、瞬時値に追従する仕様であったことが主な原因と考えられるとされている。

新しく定められる周波数計測の要件は何ですか?

需給調整市場の要件における一次調整力の周波数計測仕様として、PCSを用いた周波数計測時の移動平均計測時間幅を初期値0.1秒とし、別途TSOから指定があればそれに従うと定める案である。

現行の要件はどうなっていましたか?

需給調整市場の現行要件では移動平均計測時間幅・計測間隔ともに要件がなく、系統連系時の要件は各社がHPで公表する出力変化速度のみで、周波数計測については要件がなかった。参考として計測間隔は0.1秒以下とされている。

既設の蓄電池はいつまでに対応が必要ですか?

要件化から1年間が経過措置として認められる。ただし経過措置期間中でも電圧フリッカの発生が確認された場合は、周辺需要家への影響も勘案して早期の対応を求めるとされている。

エリアによって設定値が変わることはありますか?

「別途TSOから指定があればそれに従う」とされているため、初期値0.1秒とは異なる値が指定される場合がある。指定の有無と値は属地の一般送配電事業者に確認することになる。

この要件はいつから適用されますか?

EPRXの取引規程改定後から順次適用される(資料3 p32 まとめ・脚注)。現時点では事務局案の段階である。

編集部の見立て(独自分析)

独自分析

  • 電圧フリッカは周辺需要家の照明のちらつき等として顕在化するため、発生すると系統側から強い是正圧力がかかる。需給調整市場の要件として計測仕様が明文化されるのは、蓄電池のPCS制御パラメータが市場参加要件のレベルで規定される初めての類型に近い。機器選定と受入試験の項目が1つ増えることを意味する。
  • 「初期値0.1秒・TSO指定があればそれに従う」という書き方は、エリアごとに異なる値が指定され得ることを含意している。複数エリアに展開する事業者は、エリア別のPCS設定管理が必要になる可能性が高いと見ている。
  • 本要件は需給調整市場の参加要件として入るが、事務局は参入有無に関わらず一律に対応すべきという認識も示している。将来的に系統連系技術要件側へ移る可能性があり、市場に出さない自家消費用途のBESSにも波及し得る論点である。
  • 既設への遡及を1年の経過措置で緩めた一方、フリッカが確認された場合は期間中でも早期対応を求める建て付けになっている。実質的には、フリッカを出した設備から順に前倒しで対応が求められる運用になると読める。

※本ブロックは一次資料の事実に基づく編集部の見立てであり、一次資料に記載された決定事項ではありません。

この記事のまとめ

蓄電池起因の電圧フリッカへの対応として、需給調整市場の一次調整力に周波数計測要件が新設される。PCSを用いた周波数計測時の移動平均計測時間幅は初期値0.1秒、TSOから指定があればそれに従う。現行要件には移動平均計測時間幅も計測間隔も定めがなかった。既設リソースは要件化から1年間の経過措置が認められるが、期間中にフリッカが確認されれば早期対応を求められる。適用はEPRXの取引規程改定後から順次。

編集体制

執筆

BESSNEWS編集部

系統用蓄電池の制度・市場・ファイナンスを一次資料に基づいて解説する編集部。審議会資料・約款・公募要領を原文で確認して記事化しています。

監修

BESS NEWS編集長

需給調整市場の商品要件と系統運用を担当。本記事の要件値・経過措置期間の記述は資料3の記載と突き合わせて確認した。

出典(一次情報)

  1. 第62回 需給調整市場検討小委員会(OCCTO)
    https://www.occto.or.jp/iinkai/jukyuchousei/62.html
  2. 資料3 一部商品要件等の見直しに関する検討について(PDF)
    https://www.occto.or.jp/assets/iinkai/jukyuchousei/62/jukyu_shijyo_62_03.pdf

本記事は2026年7月31日時点で公表された一次資料に基づきます。以後の改訂・追加公表は反映していません。

出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/technology/standard/4623402405001/

本記事は BESS media の転載条件(出典明記のうえ全文転載可)にもとづき転載しています。 記事内容の著作権は転載元に帰属します。

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