一次調整力の異常時必要量から需要減少量を控除 ― 東エリア3社は2026年10月1日から、調達量は減る方向
OCCTOは第62回需給調整市場検討小委員会の資料4で、一次調整力の異常時必要量から需要減少量を控除する見直しを事務局案として示した。需要減少量は負荷の周波数特性×周波数低下幅×系統容量で算出する。まず東エリア3社に適用し、運用開始は2026年10月1日。
このページの要点
- 一次調整力の異常時必要量から、応動後の残分である需要減少量を控除する見直しが示された
- 適用は東エリア3社(北海道・東北・東京)が先行し、運用開始は2026年10月1日
- 一次調整力の調達量は減る方向。東エリアの応札戦略と収益見通しを組み替える必要がある
出典:OCCTO 第62回需給調整市場検討小委員会(第79回作業会と合同)資料4(2026年7月31日)。
電源が抜けたときに備えて確保しておく予備の力を計算するとき、これまで数えていなかった「周波数が下がれば需要側も自然に減る分」を差し引く、という話である。差し引いた分だけ、市場から買う量が減る。
目次
- 異常時必要量の何が変わるのか ― 一次調整力応動後の残分を控除する
- 数値の中身 ― 3.0%MW/Hz、0.4Hzと0.2Hz、前年度の各月最小需要
- 東エリア3社が先行、中西エリアは別途検討
- 蓄電池の収益に何が起きるか ― 下期の前提を月次で組み替える
- よくある質問(Q&A)
- 編集部の見立て(独自分析)
- 出典(一次情報)
異常時必要量の何が変わるのか ― 一次調整力応動後の残分を控除する
確保する量の算定に、控除項がひとつ足される。
OCCTOは2026年7月31日の第62回需給調整市場検討小委員会(調整力の細分化及び広域調達の技術的検討に関する作業会 第79回との合同開催)資料4で、一次調整力の異常時必要量(異常時一次必要量)の見直しについて事務局案を示した。これまでは50Hz・60Hzそれぞれの最大電源脱落量を各エリアの系統容量で按分した量を、一次調整力の事故時対応分としてきた。
見直し後は、異常時一次必要量について一次調整力応動後の残分、すなわち需要減少量を控除する。需要減少量は「負荷の周波数特性×周波数低下幅×系統容量」で算出する。
論点そのものは新しくない。第15回作業会(2018年6月20日)で事故時対応分は小さくできる可能性があると整理されて以降、継続検討とされていたものである。
異常時一次必要量について一次調整力応動後の残分(需要減少量)を控除することとし、需要減少量は「負荷の周波数特性×周波数低下幅×系統容量」で算出する。電源脱落時に必要とされる異常時一次必要量を保守的に算定するため、50Hz系統では負荷の周波数特性に最小値である3.0%MW/Hzを用いる。
— OCCTO 第62回需給調整市場検討小委員会 資料4(2026年7月31日)数値の中身 ― 3.0%MW/Hz、0.4Hzと0.2Hz、前年度の各月最小需要
算定式の3つの項に、それぞれ具体値が置かれた。
図1:需要減少量の算定に用いる3つの項と、置かれた値
出典:OCCTO 第62回需給調整市場検討小委員会 資料4(2026年7月31日)。現時点では事務局案。
負荷の周波数特性は、50Hz系統(北海道・東北・東京)では最小値である3.0%MW/Hzを用いる。電源脱落時に必要とされる異常時一次必要量を保守的に算定するためである。
周波数低下幅は2種類ある。異常発生エリアはEPPS動作条件を考慮して0.4Hz。健全側(EPPS送電)エリアは、EPPS動作条件の下限(-0.2Hz)で送電した後に周波数低下によって異常発生エリアとならないようにすることを考慮し、0.2Hz(=-0.2Hz-(-0.4Hz))とする。
系統容量に前年度の各月の最小需要を用いる以上、必要量は月次で動く。年間ひとつの値を置いて済ませる算定ではなくなる。
東エリア3社が先行、中西エリアは別途検討
適用範囲は50Hz系統の3社にとどまる。
この運用は東エリア3社(北海道・東北・東京)については問題なく導入可能と考えられるため、まず同3社に適用する。運用開始時期は各TSOや事業者の準備期間を考慮し、2026年度下期(2026年10月1日)からとする。
中西エリア(60Hz系統)での導入可否は、60Hz系統における周波数制御体系の見直しを行った際などに別途検討するとされている。導入の可否も時期も、現時点では示されていない。
蓄電池の収益に何が起きるか ― 下期の前提を月次で組み替える
調達量が減る方向であり、一次調整力の市場規模に直結する。
図2:東エリア3社の先行適用と、収益前提の月次への組み替え
出典:OCCTO 第62回需給調整市場検討小委員会 資料4(2026年7月31日)。現時点では事務局案。
2026年10月1日以降、東エリア3社で一次調整力の異常時必要量が減少し、需給調整市場における一次調整力の調達量が縮小する方向となる。一次調整力を主戦場とする蓄電池・アグリゲーターは、東エリアの約定量見通しと価格前提を下期から引き下げて再計算する必要がある。
もうひとつ効くのが月次化である。系統容量に前年度の各月最小需要を用いるため必要量は月次で変動し、年間一律前提の収益モデルは月次モデルへ組み替えが要る。中西エリアは当面現行のままのため、東西でリソース配分を見直す判断もあり得る。
- 東エリア3社(北海道・東北・東京)の一次調整力の約定量・価格見通しを、2026年度下期以降について再計算する。
- 前年度の各月最小需要に基づく月次の必要量変動を、収益モデルへ織り込む。
- 東西でリソース配分・応札戦略の見直しが必要かを検討する(中西エリアは当面現行のまま)。
- 中西エリアへの展開時期を継続監視する(60Hz系統の周波数制御体系見直しに連動)。
読者別の緊急度
市場の需給構造の話で、個人の投資判断への即時影響は小さい。
設備要件の変更はない。収益前提の変化として把握しておく。
東エリアの下期収益計画を即座に再計算すべき(10月1日開始)。
よくある質問(Q&A)
異常時一次必要量の何が変わるのですか?一次調整力応動後の残分(需要減少量)を控除する算定に変わる。需要減少量は「負荷の周波数特性×周波数低下幅×系統容量」で算出する。
需要減少量の算定に使う数値は何ですか?50Hz系統(北海道・東北・東京)では負荷の周波数特性に最小値である3.0%MW/Hz、周波数低下幅は異常発生エリア0.4Hz・健全側(EPPS送電)エリア0.2Hz、系統容量は前年度の各月の最小需要を用いる。
いつから適用されますか?東エリア3社(北海道・東北・東京)について、各TSOや事業者の準備期間を考慮し、2026年度下期(2026年10月1日)から運用を開始する。
中西エリアはどうなりますか?60Hz系統における周波数制御体系の見直しを行った際などに、別途検討するとされている。導入の可否も時期も現時点では示されていない。
一次調整力の調達量は減るのですか?需要減少量を控除する見直しであるため、東エリア3社では異常時必要量が減少し、需給調整市場における一次調整力の調達量は縮小する方向となる。
必要量は年間で一定ですか?系統容量に前年度の各月の最小需要を用いるため、必要量は月ごとに変動する。2025年度の沖縄を除く9エリア合計の各月最小需要を検討した結果、各月の最小需要は年間一律とは言えないことが根拠として示されている。
編集部の見立て(独自分析)
独自分析
- 需要減少量の控除は異常時一次必要量を減らす方向に働く。つまり一般送配電事業者が需給調整市場で調達する一次調整力の量が東エリア3社で減少する。一次調整力は蓄電池が得意とする商品区分であり、調達量の減少は約定量・約定価格の双方に下押し圧力となり得る。
- 負荷の周波数特性に最小値3.0%MW/Hzを採用したのは保守的な、すなわち控除量を小さくする側の選択である。必要量の削減幅は理論上の最大よりは抑えられる。今後の実測データ蓄積で特性値が見直されれば、さらに調達量が減る方向へ動く余地が残る点が中期の論点になる。
- 系統容量に前年度の各月の最小需要を用いるため、必要量が月ごとに変動する設計になる。年間一律の前提で収益モデルを組んでいる事業者は、月次の必要量変動を織り込んだ再計算が要る。
- 東エリア3社先行・中西エリアは別途検討という段階的導入のため、同一事業者が東西にリソースを持つ場合は、当面エリアで異なる必要量算定が併存することになる。
※本ブロックは一次資料の事実に基づく編集部の見立てであり、一次資料に記載された決定事項ではありません。
この記事のまとめ
一次調整力の異常時必要量から、一次調整力応動後の残分である需要減少量を控除する事務局案が示された。需要減少量は負荷の周波数特性×周波数低下幅×系統容量で、50Hz系統では特性値に最小値3.0%MW/Hz、周波数低下幅は異常発生エリア0.4Hz・健全側0.2Hz、系統容量は前年度の各月最小需要を用いる。東エリア3社が先行し、運用開始は2026年10月1日。中西エリアは別途検討である。
編集体制
執筆
BESSNEWS編集部
系統用蓄電池の制度・市場・ファイナンスを一次資料に基づいて解説する編集部。審議会資料・約款・公募要領を原文で確認して記事化しています。
監修
BESS NEWS編集長
需給調整市場の商品要件と系統運用を担当。本記事の算定式・周波数の数値・適用エリアの記述は資料4の記載と突き合わせて確認した。
出典(一次情報)
- 第62回 需給調整市場検討小委員会(OCCTO)
https://www.occto.or.jp/iinkai/jukyuchousei/62.html - 資料4 一次調整力(異常時分必要量)の見直しについて(PDF)
https://www.occto.or.jp/assets/iinkai/jukyuchousei/62/jukyu_shijyo_62_04.pdf
本記事は2026年7月31日時点で公表された一次資料に基づきます。以後の改訂・追加公表は反映していません。
出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/institutional/proffessional/4623403102002/
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