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【令和7年度補正】系統用蓄電池の補助金審査が変わる?!「運用実績」まで確認へ〜申請時だけではない「1つの必須+3つの高評価」を投資判断の5論点で整理〜

資源エネルギー庁は2026年7月28日、令和7年度(2025年度)補正予算による「系統用蓄電池導入支援事業」の公募方針を示しました。今回のポイントは、設備を導入する計画だけでなく、卸電力取引市場での運用、セルの製造拠点、地域共生、将来の系統混雑対策まで審査の視野に入ることです。特に卸市場取引については、申請時の計画だけでなく「活用状況報告書」で運用状況を確認すると明記されました。投資家・事業者にとって重要なのは、採点上の高評価と事業収益が、必ずしも同じ方向を向くとは限らない点です。本記事では、何が公表済みで、何が未定なのかを分けたうえで、設備選定・収支モデル・契約・運用体制にどう落とし込むべきかを整理します。

#制度(総称)#資金スキーム:補助金#資源エネルギー庁#配布資料#段階:決定

要点まとめ(まずここだけ3行)

・将来、系統混雑緩和等の仕組みが整備された場合、必要なエリアで一般送配電事業者との協議に応じることが、必須要件として示されました。

・卸電力取引市場での取引計画、認定メーカーが自社拠点で製造したセル、騒音等への地域共生策は、採点審査で高く評価されます。

・具体的な取引割合、配点、証明書類、協議後の運用条件は未公表であり、現段階で設備・収支・契約を一つの前提に固定するのは早計です。

今回の変更で「運用・調達・地域対応」まで審査の視野が広がる

審査の視野が広がる 設備だけでなく、運用・調達・地域対応まで見る

2-1.公表されたのは「1つの必須+3つの高評価」

直接の根拠は、2026年7月28日の「第3回 再生可能エネルギー主力電源化小委員会」資料1の8ページです。
同ページでは、令和7年度補正の公募で新たに設ける項目として、将来の系統混雑対策に関する協議を必須要件とし、卸市場取引、認定メーカー製セル、地域共生の3項目を採点審査で高く評価するとしています。
公式資料の表現は「加点」ではなく「採点審査において高く評価」です。配点が示されていないため、「この項目を満たせば採択される」「満たさなければ不採択になる」とは、まだ言えません。

2-2.投資家が注目すべきは運用開始後の確認まで含まれる点

資料によると、2025年12月末時点の連系済み量は64万kWである一方、契約申込みは約3,000万kWに達しています。
両者は「稼働済み」と「申込み済み」で段階が異なり、再エネ併設蓄電池も含みませんが、案件形成が急増する中で、支援する案件の運用や社会的な役割をより細かく見る背景がうかがえます。
卸市場取引については、事業計画に沿った運用が行われているかを「活用状況報告書」(補助設備の活用実績を報告する書類)で確認すると明記されています。
つまり、申請書に有利な計画を書くだけでは足りず、運転開始後も実行可能で、実績を説明できる計画が必要です。
未達時の扱いや報告期間は示されていませんが、投資判断では「採択まで」ではなく、「採択後も維持できる運用か」まで見る必要があります。

4つの新項目を正しく読む

4つの新項目を正しく読む 必須は1つ、高評価は3つ

3-1.必須:将来の系統混雑対策について協議に応じる

系統混雑とは、送電線などに電気が集中し、安全に流せる量を超えそうになる状態です。
資料では、将来、系統混雑緩和等に役立つ仕組みが整備された場合、その適用について、必要なエリアで一般送配電事業者(地域の送電線・配電線などを管理する事業者)との協議に応じることを必須要件としています。
ただし、必須なのは、現時点では「協議に応じること」です。
次の内容まで決まったわけではありません。

・充放電指示へ無条件に従うこと

・無償で系統混雑対策に協力すること

・市場取引より系統対応を常に優先すること

・一定のSOC(蓄電池の充電残量)を常時確保すること

・通信・制御設備を事業者負担で追加すること

対象エリア、対価、逸失利益、設備費用の負担も未定です。
したがって、投資判断へ織り込むべきなのは「充放電が制限されることが確定した」という前提ではなく、将来、協議や運用条件の見直しが発生し得るという制度変更リスクです。

3-2.高評価①:卸電力取引市場を一定割合以上使う計画

評価対象は、電力市場で取引する年間電力量のうち、卸電力取引市場の取引量を一定割合以上とする計画です。
卸電力取引市場とは、事業者間で電気を売買する市場です。蓄電池では、価格が低い時間に充電し、高い時間に放電するアービトラージ(時間帯の価格差を利用する取引)に使われます。
重要なのは、「一定割合」の数値だけでなく、次の内容も未公表であることです。

・割合の分母と分子

・対象となる市場取引

・充電側と放電側のどちらを数えるか

・計画未達時の扱い

・採点審査での配点

需給調整市場(電力の需給を合わせる能力を取引する市場)中心の案件は、卸市場への配分を増やした場合の収益変化を、別ケースで試算する必要があります。

3-3.高評価②:認定メーカーが自社拠点で製造したセル

高く評価されるのは、経済安全保障推進法に基づく蓄電池の供給確保計画(重要物資を安定供給するため国が認定する計画)の認定を受けたメーカーが製造するセルです。
ただし対象は、そのメーカーが自ら保有する製造拠点で製造したセルに限られます。
第三者への委託等により別の拠点で製造したセルは、OEM(他社の工場などに製造を委託する方式)を含め該当しません。
ここでの重要な誤解は、「OEMセルは補助対象外」と読むことです。
資料が示しているのは、OEMセルがこの高評価の対象に該当しないということであり、応募自体ができないとは書かれていません。
また、評価対象として明記されているのはセルです。PCS(直流と交流を変換する装置)、EMS(蓄電池の運転を管理するシステム)、変圧器、コンテナまで同じ条件が適用されるとは示されていません。

3-4.高評価③:騒音等に配慮した地域共生の計画

系統用蓄電池の設置・運用に当たり、騒音等への対策など、地域共生(周辺住民や自治体の生活環境に配慮して事業を進めること)の取組を計画している案件を高く評価します。
一方、次の具体的な採点方法は示されていません。

・騒音予測書が必要か

・住民説明を実施する必要があるか

・敷地境界での数値基準

・防音壁や防振設備の評価方法

・稼働後の騒音測定の要否

「何dB以下なら高評価」といった全国一律の基準が決まったわけでもありません。
実務上は、住宅との距離、夜間の運転、設備配置、冷却設備や変圧器の音を、用地取得と基本設計の段階から確認することが重要です。ただし、これらは現時点の正式な提出要件ではありません。

投資判断で見るべき5つの論点

投資判断で見る5つの論点 高評価と収益は、同じではないこともある

4-1.高評価を取る運用と、収益最大化の運用は同じとは限らない

補助金の高評価を得るために卸市場取引を増やしても、他市場で得られる収入が減れば、事業全体の手残りが改善するとは限りません。
一般的な投資判断では、次の2つを分けて比較します。

実質投資額=設備・工事費+追加対策費-補助金

年間手残り=市場収入-充電電力費-運用委託費-O&M(運転・保守)費-追加対応費

高評価項目を満たすための費用と、補助金による投資額の圧縮を、同じ収支表で比較する必要があります。

4-2.「一定割合」が未定の段階で収支モデルを固定しない

現時点では、卸市場の割合も算定方法も分かりません。
したがって、1ケースだけで投資判断するのではなく、少なくとも次の複数ケースを用意する方が安全です。

・現行の市場運用を続けるケース

・卸市場比率を高めるケース

・将来の系統協議で運用条件が変わるケース

・騒音対策などの追加費用が発生するケース

これは公式な申請要件ではなく、未定事項が多い段階での実務上のリスク管理です。

4-3.セルはブランド名ではなく実製造者・製造拠点で確認する

見積書に認定メーカー名が書かれているだけでは、高評価対象か判断できません。
メーカー・商社・EPC(設計・調達・建設を一括して担う事業者)には、少なくとも次の情報を確認する必要があります。

・セルの実製造者

・セルの製造工場

・製造工場の保有者

・OEM・委託製造の有無

・セル型式

・認定された供給確保計画との関係

どの証明書が正式に必要かは未公表です。
そのため、現段階では「必要な証明を取得できるか」を確認し、提出書類の形式は公募要領に合わせて確定するのが現実的です。

4-4.騒音対策は追加工事費だけでなく用地評価にも関わる

地域共生の評価が入ることで、同じ設備でも、周辺住宅との距離や配置条件によって必要な対策が変わります。
価格の安い土地でも、防音対策や配置変更で有効面積が減れば、案件全体の優位性が低下する可能性があります。
騒音は「設備発注後に考える項目」ではなく、用地のデューデリジェンス(投資前調査)に組み込むべき論点です。

4-5.申請者・EPC・アグリゲーターの責任分界を先に決める

活用状況報告に必要な運用実績、セルの製造情報、地域対応、将来の系統協議は、1社だけでは完結しません。
実務では、次の責任分界を整理しておく必要があります。

・申請者が事業計画と報告に責任を持つ範囲

・EPCがセル製造情報や設備仕様を証明する範囲

・アグリゲーター(蓄電池の市場取引や制御を担う事業者)が保存する市場データ

・O&Mが対応する設備音や地域からの問い合わせ

・一般送配電事業者との協議窓口

ただし、正式なデータ保存期間や提出形式は、公募要領等の公表待ちです。

誰にどのような影響があるのか

誰にどんな影響がある?立場ごとに見る点が違う

5-1.事業者・投資家:採択評価と事業収益を別々に検証する

投資委員会では、「高評価項目を何件満たすか」だけでなく、「その条件を稼働後も維持した場合に収益が成立するか」を別軸で確認する必要があります。
特に卸市場取引と将来の系統協議は運用に関わるため、補助金取得後の運用の自由度にも影響し得ます。
ただし、具体的な運用制約はまだ決まっていません。現段階では、一つの前提を採用するのではなく複数ケースで収益性を検証することが重要です。

5-2.メーカー・EPC:セル証明と騒音設計の説明力が問われる

設備価格や保証年数に加え、セルの製造経路を説明できること、設置後の騒音を立地条件に応じて検討できることが重要になります。
「認定メーカー品」「低騒音型」という表示だけでなく、何を根拠に説明できるかが案件選定の差になります。

5-3.アグリゲーター・O&M:実績管理と将来協議への対応が必要

アグリゲーターには、市場別取引量を把握し、計画と実績を説明できるデータ管理が求められると考えられます。
O&Mには、設備音の変化や地域からの問い合わせへの対応も関係します。
これらは現時点の正式要件ではなく、公表された方針からみた実務上の準備事項です。

今すぐ確認できること、公募要領を待つべきこと

今すぐ確認できること/待つべきこと 準備は進める。未定事項は決め打ちしない

6-1.今すぐ進められる4つの準備

・市場別の年間運用を複数ケースで試算する

・セルの実製造者・製造拠点・委託関係を照会する

・周辺住宅と設備音を踏まえ、用地・配置を再確認する

・申請者、EPC、アグリゲーター、O&Mの役割分担を整理する

いずれも現時点の正式提出物ではありませんが、公募後の手戻りを減らす準備になります。

6-2.現段階で確定させてはいけない事項

次の事項は、7月28日の資料だけでは判断できません。

・卸市場の一定割合と算定方法

・各項目の配点と採択への影響

・計画未達時の扱い

・活用状況報告の期間・頻度

・セル製造拠点の証明書類と判定時点

・地域共生の具体的な採点基準

・系統協議の対象エリア、対価、設備費、運用条件

・必須要件に対応できなかった場合の扱い

これらを独自解釈で契約条件や投資前提に固定するのは避けるべきです。
また、今回示された要件は令和7年度補正予算における取扱いです。資料には、次年度以降も予算措置が続く場合、要件が変更される可能性があると明記されています。

事業者向けの結論――補助金前提で案件を固めすぎない

事業者向けの結論 補助金前提で案件を固めすぎない

今回の公募方針は、系統用蓄電池を単に「設置する設備」としてではなく、稼働後も電力システムや地域に貢献する運用資産として評価する方向を示しています。
投資家・事業者が今行うべきことは、高評価項目を無条件にすべて盛り込むことではありません。
まず、各項目が設備費、運用収入、契約、用地へ与える影響を分けて見積もり、公募要領が出た後に選択できる余地を残すことです。
特に、卸市場取引の割合と系統協議の詳細が未定である以上、単一の収益ケースや固定的な運用条件だけで案件を完成させるのは早計です。

補助金審査での評価と、中長期の事業性を同じものとして扱わないこと。

これが、今回の公募方針を投資家・事業者の立場から読むうえで、最も重要なポイントです。

よくある誤解(Q&A)

Q

卸電力取引市場の利用は必須ですか?

A: 必須ではありません。一定割合以上を取引する計画が、採点審査で高く評価されます。

Q

OEMセルを使うと補助金へ応募できませんか?

A: そのようには書かれていません。OEMセルは、認定メーカー製セルに関する高評価の対象に該当しないという整理です。

Q

一般送配電事業者の指示どおりに運転する義務が決まったのですか?

A: 現時点で必須なのは、将来の仕組みについて、必要なエリアで協議に応じることです。具体的な充放電義務や対価は未定です。

Q

騒音は一定の数値以下なら高評価になりますか?

A: 7月28日の資料に具体的な数値基準はありません。騒音等への対策を含む地域共生の計画を高く評価すると示されています。

Q

NITE安全ガイドラインも今回の高評価項目ですか?

A: 今回の3つの高評価には含まれていません。資料では、次年度以降も予算措置が続く場合に、詳細設計後、実施可能なものから評価へ盛り込む方向としています。

出典(一次情報のみ)

記事は、2026年7月28日開催の「第3回 再生可能エネルギー主力電源化小委員会」資料1「分散型エネルギー推進戦略ワーキンググループでの議論について」を参照しています。
主な参照箇所は、2ページの導入状況・課題、4ページの施策の方向性、7〜8ページの令和7年度補正における要件設定です。

資料発行日:2026-07-28

対象範囲:令和7年度補正予算における系統用蓄電池導入支援事業の公募方針

開催日:2026-07-28

経済産業省「第3回 再生可能エネルギー主力電源化小委員会」

https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saiene_shuryoku/003.html

開催日:2026-07-28

資源エネルギー庁「分散型エネルギー推進戦略ワーキンググループでの議論について」資料1

https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saiene_shuryoku/pdf/003_01_00.pdf

監修者

監修者 青栁 福雄

青栁 福雄
Aoyagi fukuo

Energy Link 取締役 COO

系統運用・需要側制御・スマートグリッド分野の実務家。東京電力にて変電所の建設・運用・保守および大口顧客向けエネルギーソリューションに従事。マイエナジー出向時には2002年日韓ワールドカップの複数会場および国際放送センターの電源責任を担当。東光高岳では執行役員としてスマートグリッド事業を統括し、NEDO事業等に参画。2019年にEnergy Linkを創業し、分散型電源の導入・利活用を推進。

出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/institutional/standard/4624002102010/

本記事は BESS media の転載条件(出典明記のうえ全文転載可)にもとづき転載しています。 記事内容の著作権は転載元に帰属します。

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