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市場・価格初級容量市場:結果

【蓄電池約13.8万kWが全量落札】容量市場で「落選ゼロ」〜なぜ応札した全電源が選ばれた?〜約定価格10,361円/kWの意味と、投資家・事業者が確認すべき収益・契約の注意点

電力広域的運営推進機関(OCCTO)は2026年8月6日、2027年度を対象とする容量市場の追加オークション結果を公表しました。約定総容量は4,578,545kW、北海道から九州までの全9エリアの約定価格は10,361円/kWです。発電方式別では、安定電源として登録された蓄電池約13.8万kWが応札しました。OCCTOは蓄電池単独の落札率を直接示していませんが、安定電源の落札率が100%で、落札されなかった電源もなかったことから、蓄電池の応札分も全量落札したと整理できます。ただし、「全量落札=蓄電池事業の採算が確定した」ではありません。約定価格と実際の契約金額は同じとは限らず、落札後には供給力を維持する義務やペナルティもあります。本記事では、なぜ落選ゼロになったのか、投資家・事業者はどの数字を収支表へ入れるべきか、何がまだ分からないのかを整理します。

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要点まとめ(まずここだけ3行)

・2027年度向けの追加オークションでは4,578,545kWが約定し、全9エリアの価格は10,361円/kW、全電源区分の落札率は100%でした。

・安定電源として応札された蓄電池約13.8万kWも、公表結果から全量落札したと整理できます。

・ただし、実収入は契約容量や経過措置、実需給年度の達成状況で変わるため、10,361円/kWをそのまま定格出力へ掛けるだけでは判断できません。

今回何が決まったのか

蓄電池約13.8万kWが全量落札 まずここだけ3点 容量市場の追加オークションで落選ゼロ。ただし、採算が決まったわけではない

2-1.約458万kWが約定し、全電源区分の落札率は100%

容量市場は、実際に売買した電力量であるkWhではなく、将来必要なときに電気を出せる供給力であるkWを取引する市場です。
追加オークションは、4年前に行うメインオークション後の需要見通しや供給力の変化を踏まえ、必要な場合に実需給年度の1年前に行われます。今回は供給力を追加で確保する「調達オークション」が全国で実施されました。
安定電源、変動電源(単独)、変動電源(アグリゲート)、発動指令電源の4区分は、すべて落札率100%でした。OCCTO資料にも「落札されなかった電源はなし」と記載されています。約定結果資料の12〜13ページには、全国とエリア別の約定結果が示されています。

2-2.全9エリアの約定価格は10,361円/kW

今回決定した主な内容は、次のとおりです。

・対象実需給年度:2027年度

・供給力提供期間:2027年4月1日から2028年3月31日

・約定総容量:4,578,545kW

・エリアプライス:全9エリア10,361円/kW

・経過措置控除後の約定総額:42,514,195,797円

・非落札容量:0kW

約定とは、入札が成立し、落札する容量と価格が決まることです。
エリアプライスとは、各エリアの落札電源に適用される基準価格です。今回は北海道、東北、東京、中部、北陸、関西、中国、四国、九州のすべてで同額となりました。
沖縄地域と、本土の電力系統につながっていない離島は対象外です。

蓄電池約13.8万kWが全量落札といえる理由

なぜ『全量落札』といえる?判断の根拠3つ OCCTOの公表数字を組み合わせると、蓄電池約13.8万kWは全量落札と整理できる

3-1.根拠は「蓄電池13.8万kW」「安定電源100%」「非落札なし」

OCCTO資料に「蓄電池の落札率は100%」という直接の記載はありません。
全量落札という結論は、次の3点を組み合わせたものです。

・安定電源として登録された蓄電池の応札容量は約13.8万kW

・安定電源の落札率は100%

・落札されなかった電源はなし

したがって、安定電源として応札された蓄電池約13.8万kWも、全量落札したと整理できます。
情報機関としては、「OCCTOが蓄電池単独の落札率100%を発表した」のではなく、「OCCTOの公表数値から全量落札と確認できる」と書くのが正確です。

3-2.13.8万kWは蓄電容量でも案件数でもない

約13.8万kWは、容量市場で供給力として応札された出力です。蓄電池にためられる電力量を示すkWhやMWhではありません。
また、次の数字を示すものでもありません。

・国内にある蓄電池全体の設備規模

・蓄電池の落札案件数

・PCSなどの定格出力の単純合計

・発動指令電源の構成設備として使われる蓄電池の容量

別紙の落札電源一覧には204件の電源IDがありますが、掲載項目は応札事業者名、電源ID、落札容量です。発電方式は記載されていないため、この一覧だけでは、どの電源が蓄電池なのか、蓄電池が何件落札したのかは特定できません。

なぜ「落選ゼロ」になったのか

なぜ『落選ゼロ』になった?背景を3つで整理 蓄電池だけの特別扱いではなく、市場全体の条件が重なった

4-1.需要曲線と供給曲線が交差しなかった

容量市場では、必要な供給力と価格の関係を示す「需要曲線」と、事業者の応札容量・価格を積み上げた「供給曲線」を使って約定処理を行います。
約定結果資料16ページのグラフでは、この2本の曲線が交差していません。そのため、供給曲線の終端の直上にある需要曲線上の点を「仮想交点」として処理しています。
簡単にいえば、応札された供給力をすべて積み上げても、通常の交点ができなかった状態です。これが、すべての電源区分で落札率100%となった重要な背景です。

4-2.北海道では追加できる電源がないまま処理が終了

目標とする全国の供給信頼度は0.059kWh/kW・年でしたが、仮想交点での全国値は0.088kWh/kW・年、北海道は0.265kWh/kW・年でした。
供給信頼度とは、将来の供給力不足リスクを示す計画上の指標です。この資料では、数値が小さいほど不足リスクが低いことを意味します。
北海道は不足エリアと判定されましたが、追加できる電源がなかったため、それ以上の追加処理をせずに終了しました。
ただし、この結果だけで「2027年度に停電する」とは言えません。供給信頼度は、実際の停電を直接予測する数字ではありません。

4-3.蓄電池だけが特別扱いされた結果ではない

蓄電池約13.8万kWの全量落札は、蓄電池が容量価値を提供する電源として参加していることを示す前向きな結果です。
一方、100%落札したのは蓄電池だけではありません。全電源区分が100%だったため、今回の結果から「蓄電池だけに特別な価格や優先枠が与えられた」と判断することはできません。
正確には、供給力全体の状況から、応札された電源を広く確保する結果になったと読むべきです。

投資家は10,361円/kWをどう読むべきか

10,361円/kWをどう読む?収支に入れる前の3点 見出しの価格と、実際の受取額は同じとは限らない

5-1.1,000kWなら年約1,036万円は控除前の参考額

契約容量を1,000kWと仮定すると、単純な基準額は次のとおりです。
10,361円/kW×1,000kW=10,361,000円
つまり、2027年度の控除前参考額は約1,036.1万円です。
ただし、これは定格出力ではなく、実際の契約容量が1,000kWで、個別の控除やペナルティがないと仮定した参考計算です。
今回のNet CONEは10,343円/kWで、約定価格は18円/kW上回りました。Net CONEとは、新規電源の固定費から他市場収益を差し引いた指標価格です。
ただし、OCCTO資料はNet CONEを蓄電池固有の採算ラインとして示していません。約定価格がNet CONEを上回っただけで、蓄電池事業の採算が確保されたとは判断できません。

5-2.0円応札でも満額受取とは限らない

全応札容量の74.9%は0円/kWで応札されました。それでも約定価格が10,361円/kWとなったのは、原則として共通の約定価格を使うシングルプライス方式だからです。
ただし、0円で応札した電源が必ず10,361円/kWを満額受け取るわけではありません。安定電源などには、電源の経過年数や入札内容に応じて容量確保契約金額を減らす経過措置があります。
実際、10,361円/kWに約定総容量を掛けた単純計算額は約474.4億円ですが、公表された経過措置控除後の約定総額は約425.1億円です。
約49.2億円の差があるため、収支表にはエリアプライスをそのまま入れるのではなく、個別の容量確保契約金額を使う必要があります。

5-3.今回決まったのは2027年度の1年分

今回の供給力提供期間は、2027年4月1日から2028年3月31日までです。
これは長期脱炭素電源オークションのような長期固定収入ではありません。今回確認できたのは2027年度の1年分であり、翌年度以降も同じ価格・同じ落札率が続く前提で事業計画を組むのは危険です。

落札事業者が確認すべき実務

落札後に確認すべき実務 契約・義務・要件 落札はゴールではなく、その後の契約と運用が大事

6-1.約定結果と容量確保契約の結果は別

2026年8月6日に公表されたのは、オークションの約定結果です。落札後は、容量確保契約書または変更契約書の締結手続きを行います。

・追加オークションで初めて落札した事業者:容量確保契約書を締結

・メインオークションで落札済みの電源が追加分を落札した場合:容量確保契約を変更

・契約手続期間:約定結果公表日から2026年9月30日まで

・容量確保契約の結果公表:2026年10月頃の予定

つまり、現時点で決定したのは約定結果であり、契約締結後の結果は別に公表される予定です。

6-2.落札後は運用義務とペナルティがある

容量市場は、落札すれば無条件で収入が確定する仕組みではありません。
実需給年度には、容量確保契約に基づくリクワイアメント(供給力を提供する義務)があり、その達成状況がアセスメント(評価)されます。
募集要綱では、毎月の支払額は容量確保契約金額から経済的ペナルティを差し引いて算定し、結果がマイナスなら事業者への支払いではなく、事業者がOCCTOへ支払う請求額になるとされています。
投資家は「落札価格」だけでなく、運用未達時の減額・請求リスクまで収支へ反映する必要があります。

6-3.蓄電池は期待容量1,000kW以上・連続3時間以上が基本

蓄電池が安定電源として参加する基本要件は、次のとおりです。

・期待容量が1,000kW以上

・1日1回以上、連続3時間以上の運転継続が可能

・放電可能時間などに応じた調整係数を反映して期待容量を登録

期待容量とは、設備容量のうち、実際に供給力として期待できる容量です。同じPCS出力でも、放電継続時間や調整係数によって、容量市場で評価されるkWは変わり得ます。

まだ分からないことと、次回に向けた判断

まだ分からないこと 次回に向けた見方 今回の数字だけで、将来まで決めつけない

7-1.蓄電池の案件数・地域別内訳・個別契約額は非公表

今回の一次情報から確認できない主な項目は、次のとおりです。

蓄電池の落札案件数 蓄電池のエリア別落札容量 各蓄電池案件の所在地 各案件の控除後契約金額 蓄電池全体の契約総額 メーカー、型番、蓄電容量
たとえば、九州の約定容量は全エリアで最大ですが、これは火力、再生可能エネルギー、蓄電池、発動指令電源などを含む全電源の合計です。
そのため、「九州の蓄電池が最も多く落札した」とは言えません。

7-2.次回も全量落札・同価格になるとは限らない

追加オークションの開催有無、調達量、応札量、約定価格は、年度ごとの需要見通しや確保済み供給力で変わります。
今回の全量落札は、容量市場が蓄電池の収益源になり得ることを示しますが、将来の落札を保証するものではありません。
事業計画では、全量落札を標準ケースにせず、価格低下や非落札を含む複数ケースで検証する必要があります。

7-3.事業者が収支表で確認すべき5項目

・契約容量:定格出力ではなく、実際に契約するkWはいくらか

・契約金額:経過措置控除後の個別金額はいくらか

・対象期間:2027年度の1年分として計上しているか

・運用義務:3時間継続や供給力提供を他市場運用と両立できるか

・下振れリスク:ペナルティ、未達、次年度の価格低下・非落札を反映しているか

今回のニュースを投資判断へ使う際は、「全量落札」という見出しよりも、この5項目を案件別に埋められるかが重要です。

よくある誤解(Q&A)

Q

国内にある蓄電池がすべて落札したのですか?

A: いいえ。今回、安定電源として実際に応札した蓄電池約13.8万kWが対象です。

Q

13.8万kWは蓄電池にためられる電気の量ですか?

A: いいえ。供給力として応札された出力です。ためられる電力量はkWhやMWhで表します。

Q

1,000kWなら年約1,036万円が確定しますか?

A: 確定ではありません。控除前の参考額であり、契約容量、経過措置、運用実績によって実際の受取額は変わります。

Q

落札電源一覧の204件はすべて蓄電池ですか?

A: いいえ。別紙は全電源の一覧で、発電方式が掲載されていないため、蓄電池件数は特定できません。

Q

全量落札なら次回も安心ですか?

A: いいえ。次回の開催有無、調達量、競争状況、価格は変わる可能性があります。

出典(一次情報のみ)

・容量市場追加オークション約定結果:2026年8月6日付

・落札電源一覧:2026年8月6日付

・容量市場追加オークション募集要綱:第2版、2026年5月1日発行

・容量市場業務マニュアル:第2版、2026年5月1日発行

・対象実需給年度:2027年度

・供給力提供期間:2027年4月1日から2028年3月31日

・一次情報参照日:2026年8月7日

OCCTOの公表ページでは更新年が2025年と表示されていますが、約定結果PDFの表紙とファイル名は2026年8月6日です。本稿ではPDF記載日を公表日として整理しています。

電力広域的運営推進機関「容量市場追加オークション約定結果(対象実需給年度:2027年度)の公表について」

https://www.occto.or.jp/news/012931.html

電力広域的運営推進機関「容量市場 追加オークション約定結果(対象実需給年度:2027年度)」

https://www.occto.or.jp/assets/assets/news/capacity-market/260806_tsuikaauction_youryouyakujokekka_kouhyou_jitsujukyu2027.pdf

電力広域的運営推進機関「容量市場追加オークション約定結果 別紙:落札電源一覧」

https://www.occto.or.jp/assets/assets/news/capacity-market/260806_tsuikaauction_youryouyakujokekka_kouhyou_besshi_jitsujukyu2027.pdf

電力広域的運営推進機関「容量市場 追加オークション募集要綱(対象実需給年度:2027年度)」第2版

https://www.occto.or.jp/assets/various/capacity-market/jitsujukyukanren/2027_jitsujukyu_kanren/20260501_tsuikaauction_boshuyoukou_jitsujukyu2027.pdf

電力広域的運営推進機関「容量市場業務マニュアル 追加オークションの参加登録・応札・容量確保契約書の締結 編」第2版

https://www.occto.or.jp/assets/various/capacity-market/jitsujukyukanren/2027_jitsujukyu_kanren/20260529_tsuikaauction_manual_jitsujukyu2027.pdf

監修者

監修者 青栁 福雄

青栁 福雄
Aoyagi fukuo

Energy Link 取締役 COO

系統運用・需要側制御・スマートグリッド分野の実務家。東京電力にて変電所の建設・運用・保守および大口顧客向けエネルギーソリューションに従事。マイエナジー出向時には2002年日韓ワールドカップの複数会場および国際放送センターの電源責任を担当。東光高岳では執行役員としてスマートグリッド事業を統括し、NEDO事業等に参画。2019年にEnergy Linkを創業し、分散型電源の導入・利活用を推進。

出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/market/beginner/4624701001010/

本記事は BESS media の転載条件(出典明記のうえ全文転載可)にもとづき転載しています。 記事内容の著作権は転載元に帰属します。

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