櫻貿易株式会社
制度・政策・審議会上級

経済安保推進法の蓄電池支援に「申出」制度が新設へ——供給確保計画認定省令の改正案、意見提出は9月5日まで

はじめに、正直に距離感を書いておきます。本件は系統用蓄電池の開発事業者にとって、一段間接な話です。手続の当事者はセルメーカー・部素材メーカーであって、蓄電所を建てる側ではありません。

この記事を読む価値(系統用蓄電池の事業者へ)

それでも読む価値があるのは、接点が1つあるからです。蓄電池は、国が「これは国内で確保できないと困る」と決めた特定重要物資11品目のひとつです。その支援制度の手続が、いま書き換えられようとしています。国産セルの供給がどれだけ安定するのか——調達戦略の前提が、この省令の上に乗っています。

この記事でいちばん言いたいこと

国から増産支援の認定を受けた蓄電池メーカーが「約束した増産を続けるのが難しくなりそうだ」と国に正式に申し出られる窓口が、新しくできる。その手続を定める省令の改正案に意見を出せるのは9月5日まで。

くわしく(専門・原典精緻)

e-Gov 全数スクリーニングで検出した経済産業省の意見募集(案件番号595320010・公示2026年8月21日・締切2026年9月5日23:59)。2026年6月10日に成立した改正法(令和8年法律第38号)に伴う下位省令の整備で、内容は2点。①特定重要物資の「供給不可欠役務」の提供に対する支援を新たに可能とする措置を追加。②認定供給確保事業者が安定供給確保の取組継続が困難となるおそれがある場合に、主務大臣へ措置を求める「申出」ができる規定を新設し、様式第十二の二(第11条の2関係)「関係者に対する協力の求めの申出書」を追加する。所管は経済産業省 貿易経済安全保障局 経済安全保障政策課。

意見提出の締切
2026年9月5日 23:59
残14日(2026-08-22時点)
公示日
2026年8月21日
経産省 経済安全保障政策課
意見提出期間
15日
行政手続法第40条第1項で短縮
e-Gov 案件番号
595320010
RSS未掲載・一覧ページで検知

1. 蓄電池は「特定重要物資」——経済安保推進法の枠組みをおさらい

やさしい説明
経済安全保障推進法の特定重要物資11品目のひとつが蓄電池であり、蓄電池セルと正極材・負極材・セパレータ・電解液が供給確保計画の対象になっている一方、系統用蓄電池の開発事業者は認定の当事者ではないことを示したインフォグラフィック
図A:蓄電池は特定重要物資。乗っているのはセルと部素材で、開発事業者は認定の当事者ではない。
出典:経済産業省の意見募集(e-Gov 案件番号595320010・公示2026年8月21日)。

経済安全保障推進法は、「国内で作れない・入ってこないと国民生活や経済がまわらなくなるもの」を国があらかじめリストアップして、その国内供給を厚くしていくための法律です。このリストに載ったものを特定重要物資と呼びます。

蓄電池は、その11品目のひとつです。

企業側は「うちはこういう計画で国内生産を増やします」という供給確保計画を国に出し、認定を受けると助成などの支援が受けられます。認定を受けた企業を認定供給確保事業者といいます。蓄電池でこの枠組みに乗っているのは、蓄電池セルと、その部素材——正極材・負極材・セパレータ・電解液です。

図1:蓄電池は特定重要物資11品目のひとつ 特定重要物資 11品目 蓄 電 池 (灰色は本記事の対象外) 対象となる範囲 蓄電池セル 部素材 正極材 負極材 セパレータ 電解液 供給確保計画の認定・助成の対象 系統用蓄電池の事業者 直接の申請主体ではない =一段間接 ただしセルの供給元が この制度の上で動いている
図1:認定の当事者はセル・部素材メーカー。系統用蓄電池の事業者は、その供給の受け手として一段間接に関係する。
だから何が言いたいか。系統用蓄電池を建てる事業者は、この認定の当事者ではありません。しかし、自分が買うセルの供給元がこの制度の上で動いているという関係にあります。
くわしく(専門・原典精緻)

蓄電池は経済安保推進法の特定重要物資11品目の一つ。蓄電池セル・部素材(正極材・負極材・セパレータ・電解液)の供給確保計画認定・助成はこの省令の手続に乗っている。

本改正案の根拠法令条項は、経済安保推進法 第9条第1項・第3項第9号・第4項第4号、第10条第1項、第11条の2第1項、第12条。

2. 改正の柱①:認定事業者が国に助けを求められる「申出」制度

やさしい説明
認定供給確保事業者が安定供給確保の取組継続が困難となるおそれがあるときに主務大臣へ措置を求められる申出制度が新設され、様式第十二の二の記載欄が認定番号・対象物資・事由・求める措置の4つであることを示したインフォグラフィック
図B:様式第十二の二「関係者に対する協力の求めの申出書」の記載欄は4つ。
セーフティネットにあたるという整理は編集部のもので、資料にその語があるわけではない。

今回の改正の目玉は、これまで無かった経路がひとつ増えることです。

認定を受けた事業者が、安定供給確保の取組を続けるのが困難となるおそれがあると判断したとき、主務大臣に対して「必要な措置を取ってほしい」と正式に申し出られる規定が新設されます。

そのための書式が、様式第十二の二(第11条の2関係)「関係者に対する協力の求めの申出書」です。書く欄は4つ。

記載欄何を書くか
供給確保計画認定番号どの認定計画の話か
対象特定重要物資等どの物資か(蓄電池セル・部素材など)
困難となるおそれと認めた事由なぜ続けるのが難しくなりそうなのか
求める措置の内容国に何をしてほしいのか
図2:新設される「申出」の経路 認定供給確保 事業者 供給確保計画の 認定を受けた企業 取組継続が 困難となるおそれ 原材料高騰・為替 需要低迷 など 様式第十二の二 (第11条の2関係) 関係者に対する 協力の求めの申出書 主務大臣 措置を求める 記載欄:認定番号/対象物資/困難となるおそれと認めた事由/求める措置の内容
図2:これまで運用上の相談だったものが、書式のある制度上の経路になる。
だから何が言いたいか。これは「困ったら相談する」という運用の話ではなく、書式が用意された制度上の経路です。原材料高騰や需要低迷で認定計画どおりに増産できなくなったとき、国に正式に計画見直しや支援を求める道が初めて開くことになります。国内蓄電池投資の下振れに対する、制度的なセーフティネットにあたります。
くわしく(専門・原典精緻)

認定供給確保事業者が安定供給確保の取組継続が困難となるおそれがある場合に、主務大臣へ措置を求める「申出」ができる規定を新設し、様式第十二の二(第11条の2関係)「関係者に対する協力の求めの申出書」を追加する。記載欄は、供給確保計画認定番号/対象特定重要物資等/困難となるおそれと認めた事由/求める措置の内容。

新設される「申出」制度は、原材料高騰・為替・需要低迷等で認定計画どおりの増産が困難になった蓄電池事業者が、国に計画見直し・支援措置を正式に求める法的経路を初めて持つことを意味する。国内蓄電池投資の下振れリスクに対する制度的セーフティネットにあたる。

3. 改正の柱②:供給不可欠役務への支援拡大——リサイクル・検査は入るか

やさしい説明

もうひとつの柱は、支援の対象を「モノ」から「サービス」へ広げることです。

改正案では、特定重要物資の供給不可欠役務の提供に対する支援を新たに可能とする措置が追加されます。「供給不可欠役務」とは、物資そのものではなく、その物資を供給するうえで欠かせないサービスのことです。

蓄電池で考えると、リサイクル・再資源化、検査・評価、物流といった工程がこれにあたり得ます。

注意:どこまでが「供給不可欠役務」に入るのかは、本記事が根拠とした一次情報からは確定できません。上に挙げた工程は「想定され得る」範囲の例示です。該当し得るかどうかは、自社の事業内容に照らして個別にご確認ください。
図3:支援の射程が「モノ」から「サービス」へ広がる これまで 物資そのもの 蓄電池セル・正極材・負極材 セパレータ・電解液 改正案 物資そのもの + 供給不可欠役務 (新たに支援可能に) 想定され得る例:リサイクル・再資源化/検査・評価/物流 ※範囲は一次情報からは確定できない
図3:物資メーカーでなくても、支援の射程に入る可能性が生まれる。
だから何が言いたいか。セルを作っていない企業でも、支援の射程に入る可能性が出てきます。「うちは物資メーカーではないから関係ない」と切り捨てる前に、自社の役務が該当し得るかを確認する価値があります。
くわしく(専門・原典精緻)

特定重要物資の「供給不可欠役務」の提供に対する支援を新たに可能とする措置を追加。「供給不可欠役務」への支援拡大は、物資そのものでなく物資供給に不可欠なサービスを支援対象化するもの。蓄電池ではリサイクル・再資源化、検査・評価、物流等が想定され得る。

4. 意見提出期間が15日しかない理由=施行が近い

やさしい説明
パブリックコメントの意見提出期間が通常30日のところ本件は15日であり、行政手続法第40条第1項による短縮の理由が施行時点で申出を行える状態にしておく必要があることだと示したインフォグラフィック
図C:通常30日の意見提出期間が15日に短縮されている。理由は施行に間に合わせるため。
施行時期を9月中〜10月頃とする見立ては編集部の推定であり、一次情報に書かれた日付ではない。

パブリックコメントの意見提出期間は、通常30日です。本件は15日しかありません。

短縮の根拠は行政手続法第40条第1項で、理由も明示されています。「法改正の施行時点で、認定供給確保事業者が申出を行える状態にしておく必要があるため」。

図4:意見提出期間は通常の半分 通常のパブコメ 30日 本件 15日 公示 2026/8/21 締切 2026/9/5 23:59 短縮の理由:施行時点で認定事業者が申出を行える状態にしておく必要があるため(行政手続法第40条第1項)
図4:期間を削った理由が「施行に間に合わせるため」と明示されている点が読みどころ。
だから何が言いたいか。この理由の書きぶりは、そのまま施行が近いというシグナルとして読めます。「施行に間に合わせるために期間を削った」と言っているわけですから、施行日は意見募集の終了から遠くありません。
推定であることの明示:編集部の見立てとして、施行時期は9月中〜10月頃と推定しています。これは一次情報に書かれた日付ではありません。上記の短縮理由から逆算した推定であり、確定した施行日は今後の公布・施行情報でご確認ください。
くわしく(専門・原典精緻)

意見提出期間が15日である理由は、法改正の施行時点で認定供給確保事業者が申出を行える状態にしておく必要があるため(行政手続法第40条第1項による短縮)。

改正の契機は「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律及び株式会社国際協力銀行法の一部を改正する法律」(令和8年法律第38号)が2026年6月10日に成立したこと。

意見提出期間を15日に短縮した理由が「施行時点で申出を行える状態にしておく必要」である点は、施行が9月中〜10月頃と近いことを示唆する(推定)。

5. 系統用蓄電池の事業者にとっての意味(国産セル調達の見通し)

やさしい説明

冒頭に戻ります。系統用蓄電池の開発事業者は、この省令の直接の申請主体ではありません。では何が変わるのか。

供給網の危険信号が、制度の上で見えるようになる可能性があります。

これまで、認定を受けたメーカーが計画どおりに増産できなくなっても、それは各社の内部事情でした。申出制度ができると、「取組継続が困難となるおそれ」を国に申し出るという行為が制度上の手続になります。手続になるということは、そこに記録が生まれるということです。

図5:この省令からの距離 セル・部素材 メーカー 供給不可欠役務 の提供者 (該当し得るか要確認) 周辺 系統用蓄電池の開発事業者 直接の申請主体ではない 国産セル調達の前提として影響を受ける
図5:手続の当事者と、影響を受ける側は別。距離を正しく把握したうえで読む。
だから何が言いたいか。国産セルの調達安定性を経営リスクとして見ているなら、この制度は追う価値があります。逆に、セルメーカー・部素材メーカーにとっては認定・変更・申出の手続様式が直接書き換わるため、9月5日までに意見提出の要否を判断する必要があります。

いま確認すること

  1. 供給確保計画の認定を受けている(または申請予定の)事業者は、様式第十二の二の記載事項と申出の要件を確認し、意見提出の要否を判断する(期限:2026年9月5日 23:59)
  2. 「供給不可欠役務」の範囲に自社事業(リサイクル・検査・物流等)が該当し得るかを確認する
  3. 施行時期を追い、施行後の様式に切り替える
くわしく(専門・原典精緻)

系統用蓄電池の開発事業者にとっては直接の申請主体ではないものの、国産セル・部素材の供給確保計画認定を受けたメーカーが「取組継続が困難」を申し出られるようになることで、供給網の安定性に関する情報が制度的に可視化される可能性がある。セルメーカー・部素材メーカーにとっては認定・変更・申出の手続様式が直接変わるため、9月5日までの意見提出の要否判断が必要。

系統用蓄電池の事業者にとっては直接の手続当事者ではないが、国産セルの供給安定性の見通しに影響する。調達戦略の前提として押さえる価値がある。

補足:この案件はe-GovのRSSに載っていなかった

やさしい説明

本件は e-Gov のRSS 2本(pcm_list.xml・pcm_result.xml)には1件も掲載されておらず、一覧ページでのみ検知できました。8月21日・22日公示の10案件がRSSに1件も載っていない状態でした。

だから何が言いたいか。RSSだけを見ている監視は、この案件を取りこぼします。一覧ページとの和集合を取る運用が実際に効いた事例です。
くわしく(専門・原典精緻)

本件は e-Gov の RSS 2本(pcm_list.xml・pcm_result.xml)には1件も掲載されておらず、一覧ページ(CLASSNAME=PCMMSTLIST&Mode=0)でのみ検知できた。e-Gov RSS 2本には本案件を含む8/21・8/22公示の10案件が1件も載っていない。

ありがちな勘違い

系統用蓄電池の開発事業者も申出ができる
できません。申出ができるのは供給確保計画の認定を受けた「認定供給確保事業者」です。系統用蓄電池の開発事業者は原則として直接の申請主体ではなく、一段間接な立場です。
意見提出期間が15日しかないのは手続の省略だ
行政手続法第40条第1項に基づく短縮で、理由も明示されています。「法改正の施行時点で認定供給確保事業者が申出を行える状態にしておく必要があるため」です。
申し出れば支援が受けられる
新設されるのは、主務大臣に措置を求める「申出」ができるという規定です。様式に書くのは「求める措置の内容」であり、措置の可否や内容について本記事が根拠とした一次情報の範囲では確認していません。
e-GovのRSSを購読していれば公示を見逃さない
見逃します。本件はRSS 2本に掲載されておらず、一覧ページでのみ検知できました。

よくある質問

意見提出の締切はいつですか。

2026年9月5日23:59です(本記事公開時点で残14日)。公示は2026年8月21日、e-Govの案件番号は595320010です。

蓄電池は経済安保推進法の対象ですか。

対象です。蓄電池は特定重要物資11品目の一つで、蓄電池セル・部素材(正極材・負極材・セパレータ・電解液)の供給確保計画認定・助成がこの省令の手続に乗っています。

新設される「申出」制度とは何ですか。

認定供給確保事業者が安定供給確保の取組継続が困難となるおそれがある場合に、主務大臣へ措置を求めることができる規定です。あわせて様式第十二の二(第11条の2関係)「関係者に対する協力の求めの申出書」が追加されます。

様式第十二の二には何を書くのですか。

記載欄は4つで、供給確保計画認定番号、対象特定重要物資等、困難となるおそれと認めた事由、求める措置の内容です。

なぜ意見提出期間が15日しかないのですか。

法改正の施行時点で認定供給確保事業者が申出を行える状態にしておく必要があるためと説明されており、行政手続法第40条第1項により30日未満に短縮されています。

系統用蓄電池の開発事業者も申出ができますか。

申出ができるのは供給確保計画の認定を受けた事業者です。系統用蓄電池の開発事業者は直接の申請主体ではありませんが、国産セル・部素材の供給安定性に関わるため、調達戦略の前提として押さえる価値があります。

「供給不可欠役務」とは何ですか。

物資そのものではなく、物資の供給に不可欠なサービスを指します。今回の改正案では、この供給不可欠役務の提供に対する支援を新たに可能とする措置が追加されます。蓄電池ではリサイクル・再資源化、検査・評価、物流等が想定され得ます。

この案件はどこで見つけられますか。

e-Govのパブリックコメント案件ページ(案件番号595320010)です。ただし本件はe-GovのRSS 2本には掲載されておらず、一覧ページでのみ検知できました。

まとめ

  • 経済安保推進法の供給確保計画認定省令の改正案が2026年8月21日に公示された。柱は2つで、認定事業者による「申出」制度の新設と、供給不可欠役務への支援拡大。意見提出締切は2026年9月5日23:59(残14日)。
  • 蓄電池は特定重要物資11品目の一つ。セル・部素材メーカーは認定・変更・申出の様式が直接書き換わるため、意見提出の要否判断が必要。
  • 意見提出期間が15日に短縮された理由は「施行時点で申出を行える状態にしておく必要があるため」。施行が近いことを示すシグナルとして読める。

発行・監修

系統用蓄電池(BESS)に関する国内外の一次情報を毎日モニタリングし、制度・市場・安全の3領域で解説しています。
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訂正方針
誤りが判明した場合は本文を修正のうえ、ページ下部の更新ログに訂正内容と日付を残します。記述の差し替えを黙って行いません。

出典(一次情報)

  1. e-Gov 案件ページ(595320010)https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=595320010&Mode=0
  2. 意見募集要領(PDF・135,521B・%PDF検証済)https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000319696
  3. 省令改正案(PDF・910,050B・%PDF検証済)https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000319697
更新ログ:2026-08-22 初版公開

出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/institutional/proffessional/4625603102001/

本記事は BESS media の転載条件(出典明記のうえ全文転載可)にもとづき転載しています。 記事内容の著作権は転載元に帰属します。

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