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託送料金の値上げは2026年11月1日から——第77回 料金制度専門会合で審査が大詰め

一般送配電8社が出した託送料金の値上げ申請そのものは、7月に本サイトでも基礎を整理しました。本記事はその続報です。申請から1か月半が経ち、審査が最終段階に入りました。

この記事を読む価値(系統用蓄電池の事業者へ)

2026年8月24日16時から開かれる第77回 料金制度専門会合は、議題4本のうち3本が託送料金です。「国民の声」への見解案、申請の審査、そして小売の約款変更届出。ここまで一括で並ぶということは、個別論点を積み残しなく片づけて承認へ持っていく段取りだと読めます。承認されれば、新しい託送料金は2026年11月1日から動き出します。

そして系統用蓄電池にとって、託送料金は「電気代が上がる」という他人事ではありません。充電するときも、放電するときも、託送のコストを払う側にいるからです。

この記事でいちばん言いたいこと

託送料金の値上げは「これから議論する話」ではなく、11月1日という適用日を持って審査の最終段階に入っている。系統用蓄電池は充電側で接続供給の託送料金を、放電側で発電側課金を負担するため、スプレッドの手取りがエリアごとに削られる。

新託送料金の適用開始
2026年11月1日
承認された場合
東京電力PG 5年合計
7兆6,062億円
現行比 +2,516億円
関西電力送配電 年換算
+1,056億円/年
7,244 → 8,300億円/年
適用期間(関西電力送配電)
17か月
2028年3月31日まで

1. 8月24日の会合で何が決まるのか——議題4本のうち3本が託送料金

やさしい説明
第77回料金制度専門会合の議題4本のうち「国民の声」への見解案・変更承認申請の審査・特定小売供給約款の変更届出の3本が託送料金に関するものであることと、配布資料が未公開であることを示したインフォグラフィック
図A:第77回 料金制度専門会合の議題4本のうち、②〜④の3本が託送料金に関するもの。
出典:経済産業省「電力・ガス取引監視等委員会 第77回 料金制度専門会合」開催案内。本記事の執筆時点で配布資料は未公開。

第77回 料金制度専門会合は、2026年8月24日(月)16時から18時まで、オンラインで開かれます。議題は4本です。

図1:第77回 料金制度専門会合の議題(2026年8月24日 16:00〜18:00・オンライン) ① ガス導管事業者の2024年度託送収支の事後評価(とりまとめ) 本記事の対象外 ② 一送8社の収入の見通しの変更承認申請に係る「国民の声」に対する見解(案) ③ 同申請の審査 ④ 同申請に伴い想定される特定小売供給約款の変更届出について
図1:②〜④がすべて今回の託送料金の話。承認後に起きることまで同じ日の議題に載っている。

注目したいのは、この3本の並び方です。②で寄せられた意見への回答を固め、③で申請そのものを審査し、④で「承認された場合に小売の約款がどう変わるか」まで先に扱う。承認後に起きることを同じ日の議題に載せているということは、承認を前提にした詰めの段階に来ていると読むのが自然です。

執筆時点の限界:会合は8月24日16時開始のため、本記事の執筆時点では配布資料が公開されていません。したがって、査定額がいくらになるのか、事務局案がどこまで踏み込むのかは本記事では書けません。資料の公開を待って追って更新します。
だから何が言いたいか。「まだ議論中だから様子見でよい」という段階は過ぎています。適用日が11月1日と示されている以上、事業計画側では9月中に前提を差し替えられる状態にしておく必要があります。

2. 8社はいくら申請したのか——一次情報で確認できた2社

やさしい説明
東京電力パワーグリッドの5年合計7兆6,062億円・現行比+2,516億円と、関西電力送配電の5年合計3兆7,626億円・年換算7,244億円から8,300億円への増額を並べ、残り6社は一次情報で未確認であることを示したインフォグラフィック
図B:一次情報で確認できたのは東京電力パワーグリッドと関西電力送配電の2社。残り6社と8社合計は未確認。
出典:東京電力パワーグリッド/関西電力送配電の公表資料。2社の単純合計は編集部による2社分の合計であって8社合計ではない。

2026年7月10日、一般送配電8社が電気事業法第17条の2第4項に基づいて、経済産業大臣に「託送供給等に係る収入の見通し」の変更承認を申請しました。レベニューキャップ制度でいう収入上限を、期の途中で引き上げる申請です。

図2:一次情報で確認できた2社の申請額 5年合計(第1規制期間 2023年度〜2027年度) 東京電力パワーグリッド 7兆6,062億円 現行比 +2,516億円 関西電力送配電 3兆7,626億円 2023年11月承認分比 +1,496億円 ※2社の棒は同一縮尺。橙が増額分。 関西電力送配電の年換算 7,244 現行 8,300 申請 +1,056億円/年(単位:億円/年)
図2:5年合計で見ると増額分は薄く見えるが、年換算に直すと関西電力送配電で年あたり1,056億円にあたる。

東京電力パワーグリッド

第1規制期間(2023年度〜2027年度)の5年合計で 7兆6,062億円。現行の承認額と比べて +2,516億円 です。新しい託送料金の適用は 2026年11月1日 を予定しています。

関西電力送配電

同じく5年合計で 3兆7,626億円。2023年11月に承認された額と比べて +1,496億円 です。関西電力送配電は年換算での内訳も公表していて、7,244億円/年 から 8,300億円/年 へ、年あたり +1,056億円 としています。適用期間は 2026年11月1日から2028年3月31日までの17か月 です。

年あたり1,056億円という数字は、この改定の重さを実感するのにちょうどよい単位です。5年合計の1,496億円という表現だと薄く見えますが、実際に効くのは残り17か月に圧縮された分であって、年ベースでは約14.6%の増にあたります(8,300 ÷ 7,244・編集部試算)。

残り6社は未確認

北海道電力ネットワーク、東北電力ネットワーク、中部電力パワーグリッド、四国電力送配電、九州電力送配電、沖縄電力の申請額は、本記事の執筆時点で一次情報から確認できていません。業界紙などが8社合計の数字を報じていますが、本サイトは一次情報主義をとっているため、原典で確認できていない合計値は掲載しません。

参考までに、確認できた2社だけを単純に足すと +4,012億円(5年合計ベース)になります。これは編集部による2社分の合計であって、8社合計ではありません。

だから何が言いたいか。エリアによって上がり幅は違います。東京と関西で数字の出し方(5年合計か年換算か)すら揃っていない以上、自社の案件がどのエリアにあるかで、影響の見積もり方を変える必要があります。

3. なぜ値上げなのか——レベニューキャップ制度と、2025年12月の整理変更

やさしい説明

ここは制度の作りを押さえておかないと腑に落ちない部分です。

レベニューキャップ制度では、一般送配電事業者があらかじめ5年分の収入上限(レベニューキャップ)を国に承認してもらい、その範囲内で託送料金を設定します。上限は期初に決めるので、途中で原価が動いてもすぐには反映されない——これが制度の建て付けでした。効率化のインセンティブを効かせるための設計です。

第1規制期間の収入上限が算定されたのは2021年度です。そこから、銅・アルミ・鋼材といった原材料費が上がり、工事の担い手を確保するための労務費が上がり、金利も上がりました。いずれも2021年度の算定時点では織り込めなかった変動です。送配電設備の工事は資材と人が大半を占めますから、ここが動くと必要な費用が積み上がります。

図3:値上げ申請にたどりつくまでの経緯 2021年度 収入上限を算定 (第1規制期間) その後 原材料費・労務費・ 金利が上昇 2025年12月16日 第72回 料金制度専門会合 物価・労務費を反映できるよう整理 2026年7月10日 一送8社が 変更承認申請 8月24日 第77回で審査
図3:制度の側が反映経路を開いたのが2025年12月16日。8社が同じ日に申請を出したのはそのためと読める。

問題は、制度設計時の整理では物価や労務費の変動を原価に反映しないことになっていた点でした。つまり、上がったコストを収入上限に持ち込む道がそもそも塞がっていたわけです。

この整理が変わったのが 2025年12月16日の第72回 料金制度専門会合です。ここで物価・労務費の変動を反映できるよう整理し直され、その先に今回の変更承認申請があります。

だから何が言いたいか。今回の値上げは、事業者が個別に「苦しいから上げたい」と言い出した話ではありません。制度の側が反映経路を開いたことによって初めて可能になった申請です。裏を返せば、第2規制期間以降も同じ経路で改定が起きうるということでもあります。

4. 2026年11月1日から何が変わるか——適用期間は2028年3月31日まで

やさしい説明

承認された場合、新しい託送料金は2026年11月1日から適用されます。関西電力送配電が示している適用期間は2026年11月1日から2028年3月31日まで。2028年3月31日は第1規制期間(2023年度〜2027年度)の最終日ですから、改定分は第1規制期間の残りにそのまま乗るという構造です。

図4:改定分が乗るのは第1規制期間の残り17か月 現行の託送料金 改定後(17か月) 2026年11月1日 2023年4月1日 2028年3月31日 第1規制期間(2023年度〜2027年度)
図4:適用開始は2026年11月1日。第1規制期間の最終日である2028年3月31日までが適用期間となる。

ここで一つ、実務上の注意があります。8月24日の議題4番目に「特定小売供給約款の変更届出について」が入っている点です。託送料金は小売各社の原価に入りますから、託送が変われば小売の規制料金メニューも連動して届出が必要になります。託送側の改定は、小売側の約款という形で末端まで波及するということです。

自社で小売事業を持たない蓄電池事業者にとっても、これは他人事ではありません。充電電力を小売から買っている場合、その調達契約の中に託送相当分が織り込まれているからです。

だから何が言いたいか。11月1日をまたぐ契約は、託送分の転嫁条項がどう書かれているかを確認しておく価値があります。改定分を誰が飲むのかが契約書のどこにも書かれていないケースは、実務上めずらしくありません。

5. 系統用蓄電池の収支にどう効くか——充電側と放電側の両方に効く

やさしい説明
系統用蓄電池が充電側では接続供給の託送料金を、放電側では発電側課金を負担し、新託送料金の適用が2026年11月1日から2028年3月31日までの17か月であることを示したインフォグラフィック
図C:蓄電池は充電側で接続供給の託送料金を、放電側で発電側課金を負担する。適用は2026年11月1日から。
本記事で確認できたのは収入上限(レベニューキャップ)の申請額であって、kWhあたり・kWあたりの託送単価ではない。

ここが本記事の本題です。系統用蓄電池は、電気を買って充電し、価格の高い時間帯に放電して売る。この差額(スプレッド)が収益の源泉です。そして託送料金は、このスプレッドの入口と出口の両方に噛んでいます。

図5:託送コストは充電側にも放電側にもかかる 系統用蓄電池 買って貯めて売る 系統から受電 =需要家の立場 充電 接続供給の託送料金 系統へ送電 =発電の立場 放電 発電側課金 送り出すだけの電源と違い、蓄電池は入口でも出口でも託送を負担する=手取りが両側から削られる
図5:太陽光のように「送り出すだけ」の電源であれば託送コストは片側にしか効かないが、蓄電池は買って売る商売なので両側に効く。

充電側:接続供給の託送料金

充電するとき、蓄電所は系統から電気を受け取る側、つまり需要家の立場にあります。ここには接続供給の託送料金がかかります。託送料金が上がれば、同じ量を充電するのに払う額が増えます。

放電側:発電側課金

放電するとき、蓄電所は系統に電気を送り出す側、つまり発電の立場にあります。ここには発電側課金がかかります。送り出す側でも託送のコストを負担するという構造です。

両方に効くということの意味

太陽光発電のように「送り出すだけ」の電源であれば、託送コストは片側にしか効きません。ところが蓄電池は買って売る商売なので、入口で増え、出口でも増えます。

これは、スプレッドの絶対幅が変わらないなら、手取りだけが両側から削られることを意味します。しかも改定幅はエリアごとに違いますから、同じ入札戦略を全国に横展開している事業者ほど、エリア別に採算が割れていくことになります。

単価はまだ書けません。本記事で確認できたのは収入上限(レベニューキャップ)の申請額であって、kWhあたり・kWあたりの託送単価がいくらになるかではありません。収入上限の増加率がそのまま単価の増加率になるわけでもありません。単価が公表されるまで、具体的な円/kWhの試算は控えます。
だから何が言いたいか。11月1日以降、エリアごとに手取りの前提が変わります。単価が公表された段階で、充電側・放電側の両方を織り込んでエリア別に採算を引き直す作業が要ります。

よくある質問

託送料金の値上げはいつから適用されますか。

承認された場合、2026年11月1日からの適用が予定されています。関西電力送配電が示している適用期間は2026年11月1日から2028年3月31日までの17か月です。

東京電力パワーグリッドと関西電力送配電はいくら申請したのですか。

東京電力パワーグリッドは第1規制期間(2023年度〜2027年度)の5年合計で7兆6,062億円、現行比+2,516億円です。関西電力送配電は5年合計3兆7,626億円、2023年11月承認分比+1,496億円で、年換算では7,244億円/年から8,300億円/年(+1,056億円/年)としています。

8社合計の申請額はいくらですか。

本記事の執筆時点では、一次情報から確認できていません。確認できたのは東京電力パワーグリッドと関西電力送配電の2社分のみです。本サイトは一次情報主義をとっているため、原典で確認できていない合計値は掲載しません。

なぜレベニューキャップ制度なのに、期の途中で収入上限を増やせるのですか。

制度設計時の整理では物価・労務費の変動を原価に反映しないことになっていましたが、2025年12月16日の第72回 料金制度専門会合で反映できるよう整理し直されました。今回の変更承認申請はその整理を前提にしています。

8月24日の会合で結論は出るのですか。

議題には「国民の声」に対する見解(案)、申請の審査、承認された場合の特定小売供給約款の変更届出の3本が並んでいます。ただし本記事の執筆時点では配布資料が公開されていないため、審議結果や査定額については記載していません。

系統用蓄電池の収支にはどう影響しますか。

蓄電池は充電時に接続供給の託送料金を、放電時に発電側課金を負担します。託送料金が上がると、充電側でコストが増え、放電側でもコストが増えるため、充放電のスプレッドの手取りが両側から削られます。

具体的に1kWhあたりいくら上がるのですか。

本記事で確認できたのは収入上限の申請額であり、kWhあたり・kWあたりの単価ではありません。単価が公表されるまで、具体的な試算は掲載しません。

まとめ

  • 一般送配電8社が2026年7月10日に出した託送供給等に係る収入の見通しの変更承認申請は、8月24日の第77回 料金制度専門会合で「国民の声」への見解案・審査・小売約款の変更届出まで一括で審議される段階に入った。
  • 一次情報で確認できたのは東京電力パワーグリッド(5年合計7兆6,062億円・現行比+2,516億円)と関西電力送配電(同3兆7,626億円・2023年11月承認分比+1,496億円、年換算7,244→8,300億円/年)の2社分。残り6社と8社合計は未確認。
  • 値上げの背景は、2021年度の算定時点で織り込めなかった原材料費・労務費・金利の上昇と、2025年12月16日の第72回会合で物価・労務費の反映経路が開かれたこと。
  • 適用は2026年11月1日から。関西電力送配電の適用期間は2028年3月31日まで(17か月)。
  • 系統用蓄電池は充電側で接続供給の託送料金、放電側で発電側課金を負担するため、スプレッドの手取りが両側から削られる。単価公表後にエリア別で採算を引き直す必要がある。

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系統用蓄電池(BESS)に関する国内外の一次情報を毎日モニタリングし、制度・市場・安全の3領域で解説しています。
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出典(一次情報)

  1. 東京電力パワーグリッド 託送供給等に係る収入の見通しの変更承認申請に関する公表資料(PDF)https://www.tepco.co.jp/pg/company/press-information/press/2026/pdf/26x2301.pdf
  2. 関西電力送配電 託送供給等に係る収入の見通しの変更承認申請に関する公表ページhttps://www.kansai-td.co.jp/new-consignment-fee/detail_20260710.html
  3. 関西電力送配電 変更承認申請書(PDF・上記ページの添付資料)https://www.kansai-td.co.jp/new-consignment-fee/pdf/detail_20260710_02.pdf
  4. 経済産業省 第77回 料金制度専門会合 開催案内(2026年8月24日)https://www.meti.go.jp/shingikai/information/2026/20260824_3k.html
  5. 電力・ガス取引監視等委員会「託送料金とレベニューキャップ制度」https://www.egc.meti.go.jp/info/revenue_cap/
更新ログ:2026-08-24 初版公開(第77回 料金制度専門会合の配布資料は未公開のため、審議結果・査定額は未記載)

出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/market/proffessional/4625803001001/

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