櫻貿易株式会社
市場・価格上級

中国電力ネットワークが託送料金を届出——2026年11月1日から、蓄電所は充電+0.34円・放電+0.01円/kWh

託送料金の改定は、この夏ずっと「審査中」の話でした。一般送配電8社が7月10日に収入の見通しの変更承認申請を出し、料金制度専門会合で審査が進んでいる——そこまでは制度の話です。

この記事を読む価値(中国エリアに案件を持つ事業者へ)

2026年8月24日、中国エリアではその先へ進みました。中国電力ネットワークが託送供給等約款の変更を届出し、経済産業省が同日「受理」を公表しました。実施日は2026年11月1日。そして届出には、実際の単価が付いています。

系統用蓄電池にとって、託送料金は他人事ではありません。充電するときも、放電するときも、託送を払う側にいるからです。

この記事でいちばん言いたいこと

中国エリアの託送料金の値上げは、審査中の話ではなく届出済みの話になった。届出は行政の裁量的判断を経ずに効力を持つため、実施日2026年11月1日はほぼ動かない。蓄電所は充電側で高圧+0.34円/kWh、放電側で+0.01円/kWhを負担する。

実施日
2026年11月1日
届出日 2026年8月24日
高圧(充電側に効く)
4.62 → 4.96
円/kWh・税抜(+0.34)
発電側(放電側に効く)
0.48 → 0.49
円/kWh・税抜(+0.01)
全体
5.66 → 6.29
円/kWh・税抜(+0.62)

1. 何が決まったのか——届出と認可の違い

やさしい説明
中国電力ネットワークの託送供給等約款の変更が電気事業法第18条第5項の届出であり、一般送配電8社の収入の見通しの変更承認申請とは手続の性質が異なることを示したインフォグラフィック
図A:本件は届出(第18条第5項)。上流の収入見通しの変更承認申請とは手続が違う。
出典:中国電力ネットワークの届出/経済産業省「変更届出を受理しました」(2026年8月24日)。

2026年8月24日、中国電力ネットワークは電気事業法第18条第5項に基づき、託送供給等約款の変更を経済産業大臣へ届出しました。同じ日、経済産業省もニュースリリース「中国電力ネットワーク株式会社から託送供給等約款の変更届出を受理しました」を掲出しています。

図1:申請(審査中)と届出(実施確定)は別の手続 2026年7月10日 一送8社が収入の見通しの 変更承認申請(第17条の2第4項) 中国NWは「検討開始」を告知 2026年8月24日 中国NWが約款変更を届出 (電気事業法 第18条第5項) 経済産業省が同日「受理」を公表 2026年11月1日 実施 適用期間は2028年3月まで 認可申請=行政の判断を待つ 「そうなるかもしれない」の段階 届出=裁量的判断を経ず効力を持つ 「そうなる」の段階=実施日はほぼ動かない 本件は収入の見通し(上流)に沿って自社の約款を書き換える下流の工程
図1:同じ託送料金の話でも、上流の変更承認申請はまだ審査段階。本件はその下流で届出まで進んでいる。

ここで押さえておきたいのが、「届出」であって「認可申請」ではないという点です。届出は、行政の裁量的判断を経ずに効力を持つ手続です。つまり、実施日として示された2026年11月1日はほぼ動きません。

この違いは実務上とても大きい。同じ託送料金の話でも、一般送配電8社が7月10日に出した「託送供給等に係る収入の見通し」の変更承認申請(電気事業法第17条の2第4項)は、いまも審査の段階にあります。収入の枠を国に承認してもらう手続だからです。

一方、本件はその下流にあたります。収入の枠に沿って自社の約款(=実際の料金表)を書き換え、届け出る工程です。中国電力ネットワークは2026年7月10日に「検討開始」を告知したうえで、8月24日に届出しました。

だから何が言いたいか。審査段階の情報は「そうなるかもしれない」ですが、届出済みの情報は「そうなる」です。中国エリアについては、11月1日を前提に数字を直す段階に入りました。

2. 新しい単価はいくらか(区分別の一覧)

やさしい説明
中国電力ネットワークの改定後単価として低圧9.34から10.46円、高圧4.62から4.96円、特別高圧1.75から2.11円、発電側0.48から0.49円、全体5.66から6.29円を区分別に示したインフォグラフィック
図B:低圧・高圧・特別高圧・発電側・全体の区分別単価(2026年11月〜2028年3月)。
出典:届出に添付された別紙2(単価表)。いずれも税抜の平均単価。

届出に添付された別紙2(単価表)に区分別の単価が示されています。2026年11月から2028年3月までの平均単価(円/kWh・税抜)は次のとおりです。

図2:区分別の平均単価(円/kWh・税抜/2026年11月〜2028年3月) 区分 現行 → 改定後(橙が増加分・同一縮尺) 低圧 9.34 → 10.46 高圧 4.62 → 4.96 特別高圧 1.75 → 2.11 発電側 0.48 → 0.49 全体 5.66 → 6.29 出典:中国電力ネットワーク 託送供給等約款の変更届出 別紙2 単価表(2026年8月24日)
図2:低圧の増加分(橙)は高圧の3倍以上。発電側の増加分は目視できるかどうかという幅。
区分現行改定後
低圧9.3410.46+1.12
高圧4.624.96+0.34
特別高圧1.752.11+0.36
発電側0.480.49+0.01
全体5.666.29+0.62

変更理由は、レベニューキャップ制度 第1規制期間(2023〜2027年度)の料金収入変動分の反映です。

この表で目を引くのは、上げ幅の偏りです。低圧の+1.12円/kWhは、高圧の+0.34円/kWhの3倍以上にあたります。一方で発電側は+0.01円/kWhにとどまり、充電側(高圧)の30分の1という水準です。

上記は平均単価です。自社案件の受電電圧区分・契約種別ごとの正確な単価は、別紙2の単価表で確認する必要があります。契約種別によって適用される単価は異なります。
だから何が言いたいか。「託送料金が上がる」を一律の話として扱うと見誤ります。どの区分で受電しているかで、影響の大きさが3倍以上違うからです。

3. 蓄電所には「充電側」と「放電側」の両方で効く

やさしい説明
系統用蓄電池が充電側で0.34円/kWh、放電側で0.01円/kWhの上昇を負担し、1MWhの充放電あたり合計約350円の増加になることを示したインフォグラフィック
図C:上げ幅は充電側0.34円、放電側0.01円で34倍の差。1MWhあたり合計約350円。
金額の大小はスプレッドの幅との比較で決まる。需給調整市場の応札採算の前提にも同時に効く。

系統用蓄電池は、電気を買って充電し、価格の高い時間帯に放電して売ります。その差額(スプレッド)が収益の源泉です。そして託送料金は、このスプレッドの入口と出口の両方に噛んでいます。

図3:託送コストは充電側にも放電側にもかかる(中国エリア・2026年11月1日から) 系統用蓄電池 買って貯めて売る 系統から受電 =需要家の立場 充電 接続供給の託送料金 高圧 4.62 → 4.96 系統へ送電 =発電の立場 放電 発電側課金 0.48 → 0.49 送り出すだけの電源と違い、蓄電池は入口でも出口でも託送を負担する ただし上げ幅は充電側 0.34円 / 放電側 0.01円=34倍の差
図3:太陽光のように「送り出すだけ」なら片側にしか効かない。蓄電池は買って売る商売なので両側に効く。

充電するとき

系統から電気を受け取る側、つまり需要家の立場にあります。ここには接続供給の託送料金がかかります。高圧受電なら 4.62 → 4.96円/kWh(+0.34) です。

放電するとき

系統に電気を送り出す側、つまり発電の立場にあります。ここには発電側課金がかかります。0.48 → 0.49円/kWh(+0.01) です。

増え方は対称ではない

太陽光発電のように「送り出すだけ」の電源であれば、託送コストは片側にしか効きません。蓄電池は買って売る商売なので、入口で増え、出口でも増えます。ただし上げ幅で見れば充電側が0.34円、放電側が0.01円で、34倍の差があります。

だから何が言いたいか。託送料金の値上げは、蓄電所にとって「放電コスト」の問題より「充電コスト」の問題です。対策を考える順番も、そこから決まります。

4. 1MWh充放電あたりいくら増えるのか

やさしい説明

単価の差を、事業の単位に換算します。受電電圧が高圧の場合、1MWh(=1,000kWh)の充放電あたりの増加は次のとおりです。

図4:1MWh充放電あたりの託送コスト増(受電電圧が高圧の場合) 充電側(+0.34円/kWh) 約340円 0.34 × 1,000kWh + 放電側(+0.01円/kWh) 約10円 0.01 × 1,000kWh = 1MWh充放電あたり 約350円 効くのはサイクル数の掛け算のあと 1日1サイクルなら年間365MWh分/2サイクルなら倍。稼働率が高い案件ほど影響額は大きい
図4:単価差は0.35円/kWhだが、サイクル数に比例して積み上がる。

金額として大きいか小さいかは、スプレッドの幅との比較で決まります。1MWhの充放電で稼げる差額が何千円の単位であれば、350円は無視できない比率です。しかもサイクル数に比例して積み上がる性質を持ちます。1日1サイクルなら年間で365MWh分、2サイクルなら倍です。

需給調整市場に応札している場合は、応札採算の前提にも直接効きます。アービトラージのスプレッド前提と、需給調整市場の採算が、同時に動くということです。

だから何が言いたいか。単価の差は0.35円/kWhですが、効くのはサイクル数の掛け算のあとです。運転計画の稼働率が高い案件ほど、影響額は大きくなります。

5. 他エリアはどうなっているのか

やさしい説明

託送料金の改定は中国エリアだけの話ではありません。エリアごとに手続の進み方が違います。

図5:エリアごとに手続の進み方が違う 2026年7月22日 認可 先行している5社 北陸 / 関西 / 四国 / 沖縄 / 中部 2026年8月24日 届出 本記事の対象 中国電力ネットワーク (7月10日に「検討開始」を告知したうえで届出) 未確認 執筆時点 上記以外のエリアの届出状況は一次情報で確認できていない
図5:全国一律のスケジュールではない。案件の所在エリア単位で確認する作業が要る。

2026年7月22日に認可を得た 北陸・関西・四国・沖縄・中部 の各社が先行しています。中国電力ネットワークは2026年7月10日に検討開始を告知したうえで、8月24日に届出を行いました。

それ以外のエリアは未確認です。本記事の執筆時点で、上記以外のエリアの届出状況は一次情報から確認できていません。一次情報で確認できていない事項を推測で埋めることはしません。複数エリアに案件を持つ事業者は、自社の関係エリアについて各社の公表ページを個別に追う必要があります。
だから何が言いたいか。全国一律のスケジュールではありません。エリアごとに「いつから・いくら」が違うため、案件の所在エリア単位で確認する作業が要ります。

6. 11月1日までにやるべきこと

やさしい説明

実施日が確定しているため、やることは明確です。

図6:2026年11月1日までの実務 1 別紙2(単価表)で自社案件の受電電圧区分・契約種別の新単価を確認する 2 託送費を収支モデルへ反映し、スプレッド前提を再計算する 期限:2026年10月31日 3 他エリア(未届出社)の託送供給等約款変更届出の有無を追跡する 4 オフテイク契約・需要家契約に託送料金改定のパススルー条項があるかを確認する
図6:2だけが明確な期限を持つ。4は単価の確認とは別の作業になる。
  1. 別紙2(単価表)をダウンロードし、自社案件の受電電圧区分・契約種別の新単価を確認する。本記事に載せた数値は平均単価です。契約種別によって適用される単価は異なります。
  2. 2026年11月1日以降の託送費を収支モデルへ反映し、スプレッド前提を再計算する。期限の目安は2026年10月31日です。
  3. 他エリア(未届出社)の託送供給等約款変更届出の有無を追跡する。複数エリアに案件がある場合は、エリア単位で確認します。
  4. オフテイク契約・需要家契約に託送料金改定のパススルー条項があるかを確認する。改定分を誰が負担するのかが契約書のどこにも書かれていないケースは、実務上めずらしくありません。
だから何が言いたいか。4のパススルー条項の確認だけは、単価の確認とは別の作業です。数字を直しても、契約で誰が飲むのかが決まっていなければ、収支は確定しません。

よくある質問

中国電力ネットワークの託送料金はいつから上がりますか。

実施日は2026年11月1日です。2026年8月24日に電気事業法第18条第5項に基づく託送供給等約款の変更届出が行われ、経済産業省も同日「中国電力ネットワーク株式会社から託送供給等約款の変更届出を受理しました」というニュースリリースを掲出しています。

新しい平均単価はいくらですか。

2026年11月から2028年3月までの平均単価(円/kWh・税抜)は、低圧が9.34から10.46(+1.12)、高圧が4.62から4.96(+0.34)、特別高圧が1.75から2.11(+0.36)、発電側が0.48から0.49(+0.01)、全体が5.66から6.29(+0.62)です。

「届出」と「認可」はどう違うのですか。

届出は行政の裁量的判断を経ずに効力を持つ手続です。認可申請とは異なるため、実施日として示された2026年11月1日はほぼ動きません。

系統用蓄電池にはどのように効きますか。

蓄電池は放電時に発電側課金、充電時に接続供給の託送料金を負担します。したがって高圧受電の案件では、充電側で+0.34円/kWh、放電側で+0.01円/kWhのコスト増が同時に効きます。

1MWhの充放電あたりいくら増えるのですか。

受電電圧が高圧の場合、1MWh充放電あたり約340円(充電側)と約10円(放電側)の増加に相当します。

なぜ託送料金が上がるのですか。

変更理由はレベニューキャップ制度の第1規制期間(2023〜2027年度)における料金収入変動分の反映です。上流には2026年7月10日に一般送配電8社が行った「託送供給等に係る収入の見通し」の変更承認申請(電気事業法第17条の2第4項)があります。

他のエリアはどうなっていますか。

2026年7月22日に認可を得た北陸・関西・四国・沖縄・中部の各社が先行しています。中国電力ネットワークは2026年7月10日に検討開始を告知したうえで、8月24日に届出を行いました。それ以外のエリアの届出状況は本記事の執筆時点で確認できていません。

自社案件の正確な単価はどこで確認できますか。

中国電力ネットワークが公表した別紙2の単価表(PDF・424,250バイト)に区分別の単価が掲載されています。受電電圧区分・契約種別ごとの単価は同資料で確認してください。本記事に記載しているのは平均単価です。

まとめ

  • 中国電力ネットワークが2026年8月24日、電気事業法第18条第5項に基づき託送供給等約款の変更を届出した。経済産業省も同日、受理を公表している。
  • 実施日は2026年11月1日。届出は行政の裁量的判断を経ずに効力を持つため、実施日はほぼ動かない。
  • 2026年11月〜2028年3月の平均単価(円/kWh・税抜)は、低圧9.34→10.46、高圧4.62→4.96、特別高圧1.75→2.11、発電側0.48→0.49、全体5.66→6.29。
  • 変更理由はレベニューキャップ制度 第1規制期間(2023〜2027年度)の料金収入変動分の反映。上流は2026年7月10日の一般送配電8社による収入の見通しの変更承認申請。
  • 系統用蓄電池は充電時に接続供給の託送料金、放電時に発電側課金を負担する。高圧受電なら1MWh充放電あたり約340円+約10円の増加。
  • 他エリアは2026年7月22日に認可を得た北陸・関西・四国・沖縄・中部が先行。それ以外の届出状況は執筆時点で未確認。

編集部の見立て・今後の展望

独自分析
  • 上げ幅の配分が示唆的です。発電側+0.01円/kWhに対し低圧+1.12円/kWh——負担は需要側に厚く配分されています。蓄電所は充電時に需要側の立場に立つため、この配分は蓄電所に不利な方向に働きます。
  • 低圧の上げ幅が高圧の3倍以上という点は、低圧の系統用蓄電池を検討している事業者にとって重い数字です。中国エリアでは、低圧BESSの事業性が相対的に厳しくなる方向です。
  • 「審査中の申請」と「届出済みの約款」を同じ確度で扱うと、事業判断を誤ります。同じ制度ラインでも手続段階で確度が違うという点は、他エリアの情報を読むときにも効く見方です。

上記は届出資料および経済産業省の公表に基づく編集部の解釈であり、確定情報ではありません。2026年8月24日時点の見立てです。

発行・監修

系統用蓄電池(BESS)に関する国内外の一次情報を毎日モニタリングし、制度・市場・安全の3領域で解説しています。
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誤りが判明した場合は本文を修正のうえ、ページ下部の更新ログに訂正内容と日付を残します。記述の差し替えを黙って行いません。

出典(一次情報)

更新ログ:2026-08-24 初版公開(届出資料の記載に基づく。中国電力ネットワーク以外の未届出エリアの状況は未確認のため未記載)

出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/market/proffessional/4625803001002/

本記事は BESS media の転載条件(出典明記のうえ全文転載可)にもとづき転載しています。 記事内容の著作権は転載元に帰属します。

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