櫻貿易株式会社
制度・政策・審議会上級

接続が決まる前に送電網を作る——OCCTO貸付の2類型、財投枠は融資総額の3割まで

系統用蓄電池の開発で最大のボトルネックは、たいていの場合「系統の空きがない」ことです。空きを増やすには送電網を増強するしかありませんが、増強には長い時間がかかります。そして従来の順番はこうでした。誰かが接続を申し込む → 必要性が確認できる → 増強する。

この記事を読む価値(系統用蓄電池の事業者へ)

2026年8月24日、第4回 再生可能エネルギー主力電源化小委員会の資料2で、この順番を逆にする枠組みが示されました。接続希望が顕在化する前から送電網を先行整備し、その資金を電力広域的運営推進機関(OCCTO)が貸す。資料は「確認を受けた計画の整備については、電力広域的運営推進機関からの貸付けの対象に加える方向で必要な対応を進める」と明記しています。

本記事の実務価値は、貸付の条件が具体的な数値で出たことにあります。財政投融資を原資とする類型では、貸せるのは融資総額の3割以下(原則)。残りは民間金融機関が取る前提です。

この記事でいちばん言いたいこと

接続が決まる前に送電網を作る枠組みができ、その資金はOCCTOが貸す。ただし財政投融資を原資とする類型で貸せるのは融資総額の3割以下(原則)であり、残る7割は民間金融機関が取る前提。系統整備のプロジェクトファイナンス市場が立ち上がるかどうかが、この制度の成否を決める。

類型②の貸出額(財政投融資)
融資総額の3割以下
原則。残る7割は民間融資
類型①の原資
補助金
接続希望の顕在化前の先行整備
同年度の併用
不可
順に適用することは可能
対象範囲
大規模かつ基幹的な系統
一定以上の容量・電圧が基本

1. なぜ「接続が決まる前」に整備するのか

やさしい説明
従来は接続の申込みで必要性が確認できてから増強していた順番を逆にし、計画の作成と国およびOCCTOによる確認を経て先行整備を進める枠組みと、その2本立ての時間軸を示したインフォグラフィック
図A:計画を作り、国とOCCTOが確認し、貸付けの対象に加える。
出典:第4回 再エネ主力電源化小委 資料2 第1章(貸付制度は第2回 電力事業環境整備WG 資料4からの転載)。

送電網の増強は、必要性が確認できてから着工するのが原則でした。無駄な設備を作らないための建て付けです。ところがこの原則は、需要と電源の増え方が速いときには機能しません。データセンターの立地計画は数年単位で動きますが、送電網の増強は10年規模でかかることがあります。

図1:順番が入れ替わる——「顕在化してから」から「顕在化する前に」へ 従来 接続希望が顕在化 必要性を確認 増強に着工 =待ち時間が長い 今回 整備計画を作成 国・OCCTOが確認 先行整備 =顕在化前に着工 整備の時間軸は起因によって2本立て 再生可能エネルギー起因の系統 2050年カーボンニュートラルを見据える 大規模需要起因の系統 今後10年程度を見据える
図1:需要起因のほうが時間軸が短く切られている。データセンターの立地計画の速さに合わせた設計と読める。

資料2の第1章は、地内系統(エリア内の送電網)について、一般送配電事業者等が整備計画を作り、国とOCCTOがその内容を確認することで、先行的・計画的な整備を進める枠組みを示しました。

だから何が言いたいか。系統の空きは「待っていれば増える」ものから、「計画に載れば先に増える」ものへ変わろうとしています。自社案件のエリアが計画に載るかどうかが、待ち時間を左右することになります。

2. 計画の確認から貸付までの流れ

やさしい説明

流れは3段です。

図2:計画の作成から貸付けまでの3段 1 計画を作成 一般送配電事業者等が 地内系統の整備計画を作る 記載例:工期・工事費・設備構成等 2 国・OCCTOが確認 技術的な内容・ 工事の妥当性等 =ここが貸付の入口 3 貸付けの対象に 確認を受けた計画の整備を OCCTO貸付の対象に加える 地域間連系線の例を参考に 根拠は令和8年度特別国会で成立した改正電気事業法(値差収益の国庫納付とOCCTOへの補助を含む)
図2:エリアをまたぐ連系線の整備で使われてきた仕組みを、エリア内の送電網へ広げる構図。

3段目が今回の要点です。資料2は「地域間連系線の例を参考に」と書いています。根拠となるのは、令和8年度特別国会で成立した改正電気事業法です。この法律には、大規模送電線・大規模電源の整備促進のほか、値差収益の国庫納付と、OCCTOへの補助を通じた整備への活用が含まれています。

だから何が言いたいか。貸付の入口は「計画が確認されること」です。事業者が個別に申し込む制度ではなく、一般送配電事業者が作る計画に自社のエリアが入っているかどうかが効いてきます。

3. 類型①と類型②の違い(原資・時期・上限)

やさしい説明
OCCTOの貸付制度の類型①が補助金を原資とし整備開始から民間融資が可能となる時期までを担い、類型②が財政投融資を原資として融資総額の3割以下を貸すこと、同年度に両類型は併用できないことを示したインフォグラフィック
図B:類型①は補助金原資、類型②は財政投融資原資で融資総額の3割以下(原則)。
類型①の対象費目には、工事費のほか調査・測量費用、先行発注関連費用等を含む。

貸付制度は2類型です。ここが本記事でいちばん実務に近い部分なので、表で整理します。

項目類型①類型②
どういう場合か需要や電源の接続希望が顕在化する前から先行整備する場合民間金融機関からの資金調達を行ってもなお必要な資金が不足する場合
原資補助金財政投融資
貸出時期整備開始から、民間融資調達が可能となる時期まで民間融資調達開始から、設備運開まで
貸出額民間金融機関からの資金調達が可能となるまでに必要な額融資総額の3割以下(原則)
対象GX戦略地域(データセンター集積型)など、国が需要立地の蓋然性を確認した地域の計画のみを対象とする予定(類型①のような地域限定の記載はなし)
対象費目工事費のほか、調査・測量費用、先行発注関連費用等を含む
図3:案件のライフサイクル上での類型①・類型②の担当範囲 整備開始 民間融資調達が可能となる時期 設備運開 類型①(原資:補助金) 民間が貸せない段階を立て替える 類型②(原資:財政投融資) 民間で足りない分を埋める 類型②の貸出額の内訳(原則) OCCTO 3割以下 民間金融機関 7割(=この市場が立ち上がるかが鍵)
図3:類型①がいちばんリスクの高い時期を担当し、類型②が運開までを埋める。ただし②の枠は3割以下。

案件のライフサイクルで見ると、類型①がいちばん危ない時期を担当します。まだ接続希望が顕在化しておらず、民間金融機関が貸せる状態にない段階。ここを補助金原資で立て替える。そして民間が貸せる段階になったら類型②に移り、財政投融資を原資として、足りない分を融資総額の3割以下で埋めます。

だから何が言いたいか。3割という数字の意味は、裏返せば残る7割は民間金融機関が取る前提だということです。系統整備のプロジェクトファイナンス市場が実際に立ち上がるかどうかが、この制度の成否を決めます。公的資金が全部面倒を見る制度ではありません。

4. 同年度に両方使えないという制約の意味

やさしい説明

資料2は併用について、はっきり2つのことを書いています。一案件で、初期は類型①・リスクが下がった後は類型②と順に適用することは可能。ただし、同年度に両方の類型で貸し付けることはできない

図4:同年度に両類型は使えない=切替は年度単位で1回 類型① 類型① 類型② 類型② 1年度目 2年度目 3年度目 4年度目 切替はこの1点だけ 同一年度に類型①と類型②を重ねることはできない =切替年度に資金の谷を作らない設計が必要になる
図4:順に適用することは可能。ただし重ねられないため、切替年度の資金計画が要点になる。

前者は自然な設計です。案件のリスクが下がるにつれて資金の出し手が変わっていく。後者が実務に効きます。同年度に併用できないということは、類型①から②への切替が年度単位で1回に制限されるということです。

だから何が言いたいか。制度の使い勝手は年度の切り方に左右されます。工期が年度をまたぐ大型工事では、切替年度をどこに置くかが工事の進み方に影響し得るということです。

5. 対象は「大規模かつ基幹的な系統」に限られる

やさしい説明

ここは期待値を正しく持つために重要な部分です。資料2は対象範囲を限定しています。大規模かつ基幹的な系統に限り、一定以上の容量・電圧に係る設備を計画の対象とすることを基本とする、と。

図5:恩恵は「系統階層」と「地域」の2軸で絞られる 対象地域に該当しない GX戦略地域等に該当 大規模・基幹的 それ以外の階層 計画の対象になり得る 類型①の地域要件は満たさない 類型①の対象になり得る(最も恩恵が大きい) 国が需要立地の蓋然性を確認した地域の計画のみ(予定) 枠組みの対象外 地域が該当しても、階層が外れれば対象外 配電系統に近い階層への直接の効果は記載なし
図5:地域が当たっても階層が外れれば対象にならない。2軸のANDで見る必要がある。

さらに類型①の対象は、GX戦略地域(データセンター集積型)など、国が需要立地の蓋然性を確認した地域の計画のみを対象とする予定と書かれています。つまり恩恵は2つの意味で偏ります。系統の階層(基幹系統かどうか)と、地域(GX戦略地域等かどうか)です。

期待値の注意:配電系統に近い階層で接続を待っている案件に、この枠組みが直接効くとは資料に書かれていません。「国が先行整備してくれるから待てばよい」という一般化はできません。
だから何が言いたいか。自社案件が基幹系統に接続する規模なのか、所在エリアが対象地域なのかを、分けて見る必要があります。

6. 蓄電池の立地戦略にどう効くか

やさしい説明
先行整備が系統用蓄電池の接続可能量の中期見通しとGX戦略地域と連動した立地判断に効くこと、値差収益の国庫納付がOCCTOへの補助を通じて整備の原資になることを示したインフォグラフィック
図C:効くのは短期の収支ではなく、接続可能量・立地・原資という中期の判断材料。
貸付制度の詳細は第3回 電力事業環境整備ワーキンググループ(2026年8月25日)の資料で更新される可能性がある。

短期の案件収支に直接効く要素は、この資料にはありません。効くのは中期の系統見通しと立地戦略です。

図6:系統用蓄電池に効く3つの経路 ① 接続可能量の見通し 基幹系統が先に整備されれば 接続できる余地が中期的に 広がる 工事費負担金の水準にも影響し得る ② 立地戦略 先行整備が起きる場所は あらかじめ絞られる (GX戦略地域等) 需要が集まる場所は系統も太くなる ③ 値差収益の国庫納付 エリア間の価格差に由来する 収益が整備の原資に回る =市場参加者の間接負担という構造 いずれも収支表に入れる数字ではなく、開発地点の選び方に入れる情報
図6:短期の収支ではなく、どこに開発地点を置くかという判断に効く。

接続希望の顕在化前に基幹系統が整備されれば、系統用蓄電池が接続できる余地は中期的に広がり、系統増強工事費負担金の水準にも影響し得ます。また類型①の対象が「国が需要立地の蓋然性を確認した地域の計画のみ」に絞られる予定であるなら、先行整備が起きる場所はあらかじめ絞られます。データセンターが集積する地域は、送電網が先に太くなる地域でもあるということです。

もう一つ、値差収益の国庫納付という論点があります。改正電気事業法には値差収益の国庫納付が含まれており、OCCTOへの補助を通じて整備に活用されます。値差収益とは、エリアをまたぐ電力取引で生じる価格差に由来する収益です。間接的には、市場参加者が系統整備の原資を負担する構造になっているとも読めます。

  1. GX戦略地域(データセンター集積型)の指定地域を確認し、自社案件の所在エリアとの重なりを整理する。
  2. 所在エリアの一般送配電事業者が地内系統の整備計画を策定・提出しているかを、同社公表とOCCTO公表で追跡する。
  3. 系統増強工事費負担金の見通しを、先行整備が進む前提と進まない前提の2本で持つ。
  4. 第3回 電力事業環境整備ワーキンググループ(2026年8月25日)の配布資料で、貸付制度の実施方針の詳細を確認する。今回の詳細は第2回(2026年7月28日)資料4の転載として示されたものなので、第3回の資料で更新される可能性があります。
だから何が言いたいか。この情報は収支表に入れる数字ではなく、どこに開発地点を置くかという判断に入れる情報です。

よくある質問

地内系統とは何ですか。

エリア内の送電網のことです。エリアをまたぐ地域間連系線と対比される呼び方で、資料2の第1章はこの地内系統の計画的な整備を扱っています。

OCCTOの貸付には2つの類型があるとのことですが、何が違うのですか。

類型①は需要や電源の接続希望が顕在化する前から先行整備する場合で、原資は補助金、貸出時期は整備開始から民間融資調達が可能となる時期まで、貸出額は民間金融機関からの資金調達が可能となるまでに必要な額です。類型②は民間金融機関からの資金調達を行ってもなお必要な資金が不足する場合で、原資は財政投融資、貸出時期は民間融資調達開始から設備運開まで、貸出額は融資総額の3割以下(原則)です。

財政投融資を原資とする類型②では、いくらまで貸してもらえるのですか。

融資総額の3割以下が原則とされています。残りは民間金融機関からの融資で調達する前提です。

類型①と類型②は同時に使えますか。

一案件で初期は類型①・リスク低減後は類型②と順に適用することは可能ですが、同年度に両方の類型で貸し付けることはできないと整理されています。

どの系統でも先行整備の対象になるのですか。

なりません。対象は大規模かつ基幹的な系統に限られ、一定以上の容量・電圧に係る設備を計画の対象とすることが基本とされています。さらに類型①については、GX戦略地域(データセンター集積型)など、国が需要立地の蓋然性を確認した地域の計画のみを対象とする予定と示されています。

系統用蓄電池の事業計画には、いつどう反映すればよいですか。

短期の案件収支に直接効く数値は資料2に示されていません。反映先は中期の系統見通しと立地戦略です。GX戦略地域の指定状況と自社案件の所在エリアの重なりを整理し、系統増強工事費負担金の見通しを先行整備が進む前提と進まない前提の2本で持つのが現実的です。

値差収益の国庫納付とは何ですか。

令和8年度特別国会で成立した改正電気事業法に含まれる仕組みで、値差収益を国庫に納付し、OCCTOへの補助を通じて系統整備に活用するものです。値差収益はエリアをまたぐ電力取引で生じる価格差に由来する収益であり、間接的には市場参加者が系統整備の原資を負担する構造になっているとも読めます。

まとめ

  • 2026年8月24日の第4回 再生可能エネルギー主力電源化小委員会 資料2 第1章で、地内系統の計画的な整備をOCCTO貸付の対象に加える方向が示された。一般送配電事業者等が計画を作成し、国とOCCTOが内容を確認する枠組み。
  • 貸付は2類型。類型①=接続希望の顕在化前の先行整備・原資は補助金・貸出時期は整備開始から民間融資調達が可能となる時期まで。類型②=民間調達でも不足する場合・原資は財政投融資・貸出額は融資総額の3割以下(原則)。
  • 一案件で順に適用することは可能だが、同年度に両類型で貸し付けることはできない。
  • 対象は大規模かつ基幹的な系統に限られ、類型①はGX戦略地域(データセンター集積型)など国が需要立地の蓋然性を確認した地域の計画のみを対象とする予定。
  • 時間軸は、再エネ起因の系統が2050年カーボンニュートラル、大規模需要起因の系統が今後10年程度。
  • 短期収支ではなく立地戦略に効く情報。第3回 電力事業環境整備ワーキンググループ(2026年8月25日)の配布資料で詳細を追う。

発行・監修

系統用蓄電池(BESS)に関する国内外の一次情報を毎日モニタリングし、制度・市場・安全の3領域で解説しています。
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訂正方針
誤りが判明した場合は本文を修正のうえ、ページ下部の更新ログに訂正内容と日付を残します。記述の差し替えを黙って行いません。

出典(一次情報)

  1. 第4回 再生可能エネルギー主力電源化小委員会 開催資料ページ(2026年8月24日)https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saiene_shuryoku/004.html
  2. 資料2「電力ネットワークの次世代化について」(PDF)https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saiene_shuryoku/pdf/004_02_00.pdf
  3. 資料1「事業用太陽光発電におけるFIT/FIP制度の支援重点化について」(PDF・系統用蓄電池への言及はなし)https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saiene_shuryoku/pdf/004_01_00.pdf

※ 貸付制度の類型・原資・貸出時期・貸出額は、資料2に【参考】として転載された第2回 電力事業環境整備ワーキンググループ(2026年7月28日)資料4の内容です。

更新ログ:2026-08-24 初版公開(貸付制度の詳細は資料2に転載された第2回 電力事業環境整備WG 資料4の内容。第3回同WG〔2026年8月25日〕の配布資料での更新を待つ)

出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/institutional/proffessional/4625803102004/

本記事は BESS media の転載条件(出典明記のうえ全文転載可)にもとづき転載しています。 記事内容の著作権は転載元に帰属します。

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