櫻貿易株式会社
市場・価格上級

GX-ETSの排出枠取引市場は2027年度秋に開設——板寄せ・約定は1日1回15:00・呼値1円

2026年8月26日の第8回 排出量取引制度小委員会(資料3・事務局案)で、GX-ETSの排出枠取引市場を2027年度秋頃に開設する方針と基本設計が示されました。GX推進機構が設置・運営します。

この記事を読む価値(市場での収益設計を見ている方へ)

先に結論を置きます。BESS単体は直接排出10万t-CO2の制度対象になり得ないため、義務者としての影響はありません。排出枠を買う義務が生じる話ではありません。

それでも読む価値があるのは、炭素価格にレンジが公示されると火力の限界費用が動き、スポット価格のボラティリティ=裁定の余地が構造的に広がるからです。ただし制限値幅は基準値段の±90%と極めて広く、当面の予見性は高くありません。

結論3行
  1. GX-ETSの排出枠取引市場を2027年度秋頃に開設。GX推進機構が設置・運営し、市場運営の専門性を持つ事業者へ業務の一部を委託する。
  2. 基本設計は板寄せ方式・約定1日1回15:00(注文8:00〜14:59)・開設週5日・売買単位1t-CO2・呼値1円・制限値幅は基準値段の±90%。
  3. BESS単体は制度対象になり得ない。効くのは炭素価格経由の間接効果で、スポット価格のボラティリティが構造的に広がる方向に働く。
開設時期
2027年度秋頃
日付は示されていない
約定
1日1回 15:00
注文 8:00〜14:59・板寄せ方式
制限値幅
基準値段の±90%
初期の価格変動は大きくなる想定
参考:2026年度の価格
下限1,700/上限4,300
t-CO2あたり・見通しであり確定値ではない

1. 何が起きたか

要点まとめ 約定は1日1回15:00の板寄せ

開設時期と運営主体、取引のルール、制限値幅の広さを並べた図
株式市場のような連続約定ではない。値が付く回数は1日1回に限られる。
やさしい説明

GX-ETSは、排出量に上限(キャップ)を設け、余った分・足りない分を排出枠として売買させる制度です。その売買の場が「排出枠取引市場」で、今回はその開設時期と取引ルールの骨格が示されました。

図1:排出枠取引市場の基本設計(案) 開設時期 2027年度 秋頃 設置・運営 GX推進機構(業務の一部を専門事業者へ委託) 開設日 週5日 平日 約定 1日1回 15:00 注文 8:00〜14:59 方式 板寄せ方式 連続約定ではない 売買単位 1t-CO2 呼値 1円 制限値幅 基準値段の±90% 極めて広い
図1:基本設計(案)(出所:第8回 排出量取引制度小委員会 資料3、2026年8月26日)。

2026年8月26日に開かれた第8回 排出量取引制度小委員会の資料3で、GX-ETSの排出枠取引市場を2027年度秋頃に開設するという事務局案が示されました。市場を設置・運営するのはGX推進機構で、市場運営の専門性を持つ事業者へ業務の一部を委託する形をとります。

基本設計(案)は、開設日が週5日(平日)、約定が1日1回15:00(注文受付は8:00〜14:59)、売買単位が1t-CO2、呼値が1円、制限値幅が基準値段の±90%、方式は板寄せ方式です。

板寄せ方式は、一定時間に集めた注文を1つの価格でまとめて約定させるやり方で、値が付く回数が1日1回に限られます。株式市場のような連続約定ではありません。

あわせて、2026年8月26日時点で登録確認機関は14件が登録済み(申請は21社)とされています。

2. 誰が参加できるのか

要点まとめ 制度対象者は自己勘定では入れない

市場参加者の2区分と、その要件から導かれる流動性の見立てを示す図
委託売買に限られる。投機的な参加を排除する設計と読める。
やさしい説明

市場に注文を出せる人が誰かで、値の付き方は大きく変わります。参加者が絞られるほど、取引は薄くなります。

図2:市場参加者の2区分 ① 制度対象者 子会社・関連会社である制度対象者から 委託を受けた親会社等も参加できる 自己勘定は不可 委託売買のみ 投機的な参加を排除する設計 ② 取引円滑化に寄与する事業者 カーボン・クレジット市場で前年度に売買双方の 気配提示を午後立会約定時刻まで実施した日数が 年間営業日数の50%以上 直近2年度の取引量が取引実績事業者の平均以上 金商法・商先法取引所の取引資格を保有 値付けを担う参加者が絞られるため、流動性は限定的になる可能性がある
図2:参加者の要件(出所:第8回 排出量取引制度小委員会 資料3)。

① 制度対象者。加えて、子会社・関連会社である制度対象者から委託を受けた親会社等も参加できます。ただし自己勘定での取引は不可で、委託売買に限られます

② 取引円滑化に寄与する事業者。要件は3つで、カーボン・クレジット市場において前年度に売買双方の気配提示を午後立会約定時刻まで実施した日数が年間営業日数の50%以上であること、直近2年度の取引量が取引実績事業者の平均以上であること、金融商品取引法・商品先物取引法上の取引所の取引資格を保有していることです。

制度対象者が自己勘定で入れないという設計からは、投機的な参加を排除する意図が読み取れます。裏を返すと、値付けを担う参加者は②の要件を満たす限られた事業者に絞られ、流動性は限定的になる可能性があります。

3. BESSにどう効くのか

要点まとめ BESS単体は制度対象になり得ない

価格を通じて効く経路と、その効き方の限界、社内で先に効く論点を示す図
直接排出10万t-CO2の対象外。排出枠を買う義務が生じる話ではない。
やさしい説明

蓄電池そのものは排出しないので、制度の当事者にはなりません。関係するのは、電気の値段の動き方が変わるという一点です。

図3:義務者としては無関係、価格経由でのみ効く BESS単体は直接排出10万t-CO2の制度対象になり得ない = 義務者としての影響なし 効く経路(価格) 炭素価格のレンジが公示される ↓ 火力の限界費用に炭素コストが乗る スポット価格のボラティリティ拡大 = BESSの裁定余地が構造的に広がる 効き方の限界 制限値幅±90% = 初期の変動は大きい 炭素価格の予見性は当面低い 約定15:00 > 電力スポット入札締切10:00 当日の電力価格形成に直接は効かない 社内で先に効く論点 親会社の移行計画にBESS投資が載るか 同じパッケージの裏面 ベースロード市場GL改定案(締切 2026年9月24日)
図3:義務ではなく価格を通じて効く(出所:第8回 排出量取引制度小委員会 資料3、e-Gov 案件番号620340006)。

BESS単体は直接排出10万t-CO2の制度対象になり得ないため、義務者としての影響はありません。排出枠を買う義務が生じる話ではありません。

効くのは価格経由の間接効果です。参考として示された上下限価格の見通しは、2026年度が上限4,300円・下限1,700円、2030年度が上限4,840円・下限1,913円(いずれもt-CO2あたり)。炭素価格に下限と上限のレンジが公示されると、火力の限界費用に炭素コストが織り込まれます。その結果、スポット価格のボラティリティ、つまりBESSが取りにいく裁定の余地が構造的に広がる方向に働きます。

ただし当面の予見性は高くありません。制限値幅が基準値段の±90%と極めて広く、初期の価格変動は大きくなる想定です。炭素価格を前提に置いた収益シミュレーションを作るなら、この幅を織り込んでください。

タイミングの設計にも注意が要ります。約定は1日1回15:00の板寄せで、電力スポット市場の入札締切(10:00)より後にあります。当日の電力価格形成に排出枠の値が直接効く順序にはなっていません。

社内では、制度より先に「移行計画」が効く

親会社(電力・ガス・商社)が制度対象である場合、グループのGX投資計画=移行計画にBESS投資が明記されるかどうかが、社内の資金配分に影響します。制度そのものより、この社内プロセスのほうが実務では先に効きます。

あわせて、2026年8月26日に公示されたベースロード市場ガイドライン改定案(e-Gov 案件番号620340006・締切2026年9月24日)は、GX-ETS費用の卸価格転嫁の算定手順を新設しています。市場開設と費用転嫁は、同じ制度パッケージの表と裏です。

4. 数値の一覧

やさしい説明

参考値と設計値が混ざりやすい論点です。資料3に示された内容だけを一覧にしました。

図4:参考として示された上下限価格の見通し(円/t-CO2) 4,300 2026年度 上限 1,700 2026年度 下限 4,840 2030年度 上限 1,913 2030年度 下限 参考の見通しであり、確定した価格や取引実績ではない
図4:参考の価格見通し(出所:第8回 排出量取引制度小委員会 資料3)。
表1:資料3に示された内容。事務局案の段階であり、確定した制度設計ではない。
項目内容
開設時期2027年度秋頃
設置・運営GX推進機構(市場運営の専門性を持つ事業者へ業務の一部を委託)
開設日週5日(平日)
約定1日1回 15:00(注文 8:00〜14:59)
売買単位1t-CO2
呼値1円
制限値幅基準値段の±90%
方式板寄せ方式
参考:2026年度の上限価格4,300円/t-CO2
参考:2026年度の下限価格1,700円/t-CO2
参考:2030年度の上限価格4,840円/t-CO2
参考:2030年度の下限価格1,913円/t-CO2
登録確認機関14件を登録(申請21社・2026年8月26日時点)

5. いつまでに何をするか

やさしい説明

市場の開設は2027年度秋頃ですが、期限があるのは別のところです。9月24日締切のパブコメが1件あります。

図5:期限があるのは市場開設ではなく、パブコメのほう いま確認する 自社が制度対象かどうか BESS単体では対象外 判定が要るのは 親会社・グループ側 期限あり ベースロード市場GL改定案 e-Gov 案件番号620340006 締切 2026年9月24日 GX-ETS費用の卸価格転嫁の 算定手順を新設 準備する 炭素価格を織り込んだ 収益シミュレーション 1,700〜4,300円/t-CO2 + 制限値幅±90%の広さも 前提に置く
図5:市場開設は2027年度秋頃、意見提出の締切は2026年9月24日(出所:資料3、e-Gov 案件番号620340006)。
  1. 自社が制度対象かどうかを確定させる。BESS単体では対象になり得ません。判定が要るのは親会社・グループ側です。
  2. 親会社が制度対象なら、移行計画にBESS投資が入るかを社内で確認する。ここが社内の資金配分に直接効きます。
  3. ベースロード市場ガイドライン改定案(e-Gov 620340006)を読む。締切は2026年9月24日。GX-ETS費用の卸価格転嫁の算定手順が新設されており、意見提出の機会があります。
  4. 炭素価格を織り込んだ収益シミュレーションを準備する。参考の上下限(2026年度 1,700〜4,300円/t-CO2)と、制限値幅±90%という広さの両方を前提に置きます。
  5. 市場の基本設計の確定を追う。現時点の内容は事務局案であり、開設は2027年度秋頃です。

6. 未確定・注意点

9月末が制度対象届出・移行計画の提出期限とされていますが、これは二次情報由来で一次情報では未確認です。期限として社内に流す前に、必ず原典で確認してください。
  • 本記事が扱っているのは事務局案です。確定した制度設計ではありません。開設時期も「2027年度秋頃」で、日付は示されていません。
  • 上下限価格は参考として示された見通しであり、確定した価格や取引実績ではありません。
  • BESS単体は制度対象になり得ません。「蓄電池に排出枠の購入義務が生じる」という読み方は誤りです。
  • 市場運営の業務委託先となる事業者は、資料上「市場運営の専門性を持つ事業者」とされるにとどまり、具体名は本記事では確認していません。

7. よくある質問

排出枠取引市場はいつ開設されますか。

2027年度秋頃とされています。日付までは示されていません。GX推進機構が設置・運営し、市場運営の専門性を持つ事業者へ業務の一部を委託する形です。

どんな取引の仕組みですか。

板寄せ方式で、約定は1日1回15:00。注文の受付は8:00から14:59までです。開設日は週5日(平日)、売買単位は1t-CO2、呼値は1円、制限値幅は基準値段の±90%とされています。

蓄電池の事業者は排出枠を買う義務を負いますか。

負いません。BESS単体は直接排出10万t-CO2の制度対象になり得ないため、義務者としての影響はありません。効いてくるのは炭素価格を通じた間接的な影響です。

誰が市場に参加できますか。

制度対象者(および子会社・関連会社である制度対象者から委託を受けた親会社等。ただし自己勘定は不可で委託売買のみ)と、取引円滑化に寄与する事業者です。後者はカーボン・クレジット市場で前年度に売買双方の気配提示を午後立会約定時刻まで実施した日数が年間営業日数の50%以上であること、直近2年度の取引量が取引実績事業者の平均以上であること、金融商品取引法・商品先物取引法上の取引所の取引資格を保有していることが要件とされています。

炭素価格はどのくらいの水準が想定されていますか。

参考として、2026年度が上限4,300円・下限1,700円、2030年度が上限4,840円・下限1,913円(いずれもt-CO2あたり)という見通しが示されています。参考値であり、確定した価格ではありません。

電力のスポット価格にはどう影響しますか。

炭素価格が公示されることで火力の限界費用に炭素コストが織り込まれ、スポット価格のボラティリティが構造的に広がる方向に働きます。ただし約定が1日1回15:00の板寄せで、電力スポット市場の入札締切(10:00)より後にあるため、当日の電力価格形成に直接効く設計にはなっていません。

9月末が届出の期限だと聞きましたが本当ですか。

9月末が制度対象届出・移行計画の提出期限とされていますが、これは二次情報由来で、一次情報では未確認です。期限として扱う前に原典で確認してください。

まとめ

  • 2026年8月26日の第8回 排出量取引制度小委員会 資料3(事務局案)で、GX-ETSの排出枠取引市場を2027年度秋頃に開設する方針が示された。
  • 設置・運営はGX推進機構。市場運営の専門性を持つ事業者へ業務の一部を委託する。
  • 基本設計は開設週5日(平日)・約定1日1回15:00(注文8:00〜14:59)・売買単位1t-CO2・呼値1円・制限値幅は基準値段の±90%・板寄せ方式。
  • 参加者は制度対象者(自己勘定不可・委託売買のみ)と、取引円滑化に寄与する事業者の2区分。後者は気配提示日数が年間営業日数の50%以上ほか3要件。
  • 参考の上下限価格は2026年度 上限4,300円/下限1,700円、2030年度 上限4,840円/下限1,913円(t-CO2)。登録確認機関は14件を登録(申請21社)。
  • BESS単体は直接排出10万t-CO2の制度対象になり得ず、義務者としての影響はない。効くのは炭素価格経由でスポット価格のボラティリティが広がる間接効果。
  • ベースロード市場ガイドライン改定案(e-Gov 620340006・締切2026年9月24日)がGX-ETS費用の卸価格転嫁の算定手順を新設している。

発行・監修

系統用蓄電池(BESS)に関する国内外の一次情報を毎日モニタリングし、制度・市場・安全の3領域で解説しています。
一次情報主義
官公庁・送配電事業者・市場運営機関が公表した原典のみを根拠とし、業界紙・ブログ等の二次情報は本文に採録しません。
数値は原典から
開設時期・取引ルール・価格見通しはすべて資料3から直接取得しています。一次情報で確認できていない事項は「未確認」と明示し、推測で補いません。
訂正方針
誤りが判明した場合は本文を修正のうえ、ページ下部の更新ログに訂正内容と日付を残します。記述の差し替えを黙って行いません。

出典(一次情報)

  1. 経済産業省 第8回 排出量取引制度小委員会 会議ページ(2026年8月26日)https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/emissions_trading/008.html
  2. 第8回 排出量取引制度小委員会 資料3(2026年8月26日)https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/emissions_trading/pdf/008_03_00.pdf
  3. e-Gov パブリックコメント:ベースロード市場ガイドライン改定案(案件番号620340006・公示2026年8月26日・締切2026年9月24日)https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620340006&Mode=0
更新ログ:2026-08-28 初版公開(事務局案の段階。9月末の提出期限は一次情報で未確認のため、確認でき次第追記する)

出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/market/proffessional/4626203001002/

本記事は BESS media の転載条件(出典明記のうえ全文転載可)にもとづき転載しています。 記事内容の著作権は転載元に帰属します。

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