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調整力の公募が不調なら複数年の相対契約へ——監視委が8月27日に建議

2026年8月27日、電力・ガス取引監視等委員会が経済産業大臣に建議を出しました。中身は、調整力の公募調達をやってもなお必要量を確保できなかった場合に、複数年契約を前提とした相対取引での調達を認めるというものです。現行の「長くても1年」という契約期間の原則が外れ、上限年数は設定されません。

この記事を読む価値(需給調整市場に応札している方へ)

調整力(周波数を保つために一般送配電事業者が確保しておく発電・蓄電のリソース)は、いま需給調整市場で取引されています。そこに応札している蓄電池からすると、市場の外に競合の調達チャネルが正式に開いたことになります。

パブリックコメントでは、まさにその点を突いた意見が出ました。結果は修正ゼロ。原案どおりの確定です。

結論3行
  1. 監視委が2026年8月27日、「一般送配電事業者が行う調整力の公募調達に係る考え方」の改定を経産大臣へ建議(電気事業法66条の14第1項)。
  2. 公募で必要量を確保できなかった場合、プロポーザル等にもとづく複数年契約の相対取引を認める。契約期間の上限年数は設定しない。
  3. 需給調整市場に応札する蓄電池は、募集量が市場に出てこなくなるリスクを収益モデルの前提に入れ直す必要がある。
建議日
2026年8月27日
8/26 第616回委員会で議決
契約期間の上限
設定しない
現行は「長くても1年」原則
パブコメ
6件・修正0件
令和8年7/7〜8/5(対象外2件は不掲載)
施行日
未確定
改定履歴欄が「令和8年●月●日」のまま

1. 何が起きたか

要点まとめ 公募で足りなければ複数年の相対取引

改定の対象条項と、変わること・変わらないことを並べた図
現行の「長くても1年」原則が外れ、契約期間の上限年数は設定されない。
やさしい説明

調整力とは、需要と供給のズレをその場で埋めるために、一般送配電事業者があらかじめ確保しておく発電・蓄電のリソースです。確保の方法は公募が原則で、いまは需給調整市場という入札の場が中心になっています。

図1:改定後の調整力 調達フローと、前後の変更点 ① 公募調達 まず必ず実施する ② 必要量を確保できたか 確保できれば従来どおり終了 できなかった 今回の改定で認められるルート プロポーザル等にもとづく 複数年契約を前提とした相対取引 改定の前後(対象:「調整力の公募調達に係る考え方」4.(9)(10)) 改定前|対象の限定 特定地域に立地していることが必要な電源等(電源Ⅰ) 改定後|対象の限定 限定を削除(電源Ⅰに絞らない) 改定前|契約期間 長くても1年を原則とする 改定後|契約期間 上限年数を設定しない
図1:公募が先。それでも足りないときに複数年の相対が使える(出所:監視委 建議 2026-08-27、第616回 資料4)。

建議したのは電力・ガス取引監視等委員会で、日付は2026年8月27日。8月26日の第616回委員会で議決したものです。根拠条文は電気事業法第66条の14第1項。改定の対象は「一般送配電事業者が行う調整力の公募調達に係る考え方」(令和6年3月25日 最終改定)の4.(9)および4.(10)です。

変更点は2つあります。ひとつは、4.(9)から「特定地域に立地していることが必要な電源等(電源Ⅰ)」という限定を削除すること。これまで複数年の枠組みが想定されていたのは立地制約のある電源だけでしたが、その縛りが外れます。

もうひとつは、公募調達を先に実施し、それでも必要量を確保できなかった場合に、発電事業者等からのプロポーザル等にもとづく複数年契約を前提とした相対取引による調達を認めること。現行は契約期間を「長くても1年」とする原則でしたが、改定後は上限年数を設定しません。何年でも組めます。

2. 何が変わらないか

やさしい説明

変わらない部分も、実務では同じくらい重い。とくに「外から見えるかどうか」に関わる3点は据え置きです。

図2:改定されずに維持される3点 OCCTOの検証協力 脚注21の「必要に応じて」 という表現を維持 第三者検証は義務化しない 二重取り防止 容量市場から当該電源に 支払われる対価相当額を BS機能公募の支払額から控除 現行の扱いを維持 価格の公表範囲 個別の落札価格は非公表 公表されるのは エリア別 平均調達単価のみ
図2:外部から検証する手がかりは、エリア別平均調達単価と専門会合の報告に限られる(出所:監視委 第616回 資料4)。
  • 広域機関(OCCTO)への検証協力は「必要に応じて」のまま。脚注21の表現が維持され、第三者検証は義務化されません。
  • 二重取り防止の扱いは現行維持。容量市場から当該電源に支払われる対価に相当する額を、ブラックスタート機能公募の支払額から控除します。
  • 個別の落札価格は非公表のまま。公表されるのはエリア別の平均調達単価です。

3. パブコメは6件、修正はゼロ

要点まとめ 意見は6件、修正はゼロ

意見公募の結果と主な論点、市場参加者からの指摘を示す図
原案どおり確定している。事前の縛りではなく事後の監視で対応するという整理。
やさしい説明

意見公募は令和8年7月7日から8月5日まで行われました。提出は6件、うち対象外2件は不掲載。そして意見を踏まえた改定案の修正は行われていません。原案どおりの確定です。

図3:意見公募の処理結果(令和8年7月7日〜8月5日) 提出 6件 うち対象外(不掲載) 2件 意見を踏まえた改定案の修正 0件(原案どおり確定) 提出意見の主な論点——いずれも改定案に反映されず 事実上の任意指名にあたり談合的である 不採用 経緯・理由の公表と委員会報告を義務化すべき/OCCTOの第三者検証を原則義務化すべき 不採用 契約年数の上限と再公募義務を課すべき/落札価格を匿名化・統計化して事後公表すべき 不採用
図3:5つの論点はいずれも改定案に反映されなかった(出所:e-Gov 意見公募結果)。

提出された意見の主な論点は、次のとおりです。

  • 事実上の任意指名にあたり談合的である
  • 相対取引に至った経緯と理由の公表、委員会への報告を義務化すべき
  • OCCTOによる第三者検証を原則義務化すべき
  • 相対契約に契約年数の上限と再公募の義務を課すべき
  • 落札価格を匿名化・統計化して事後公表すべき

とくに事業者提出とみられる意見6は、市場参加者にとって核心を突いています。

提出意見6(原文)
需給調整市場では上限価格の引下げや募集量の削減が進む一方、特定電源のみ複数年契約で固定費回収の予見性が確保されると、市場参加リソースとの競争条件の差が拡大する

この意見は、2026年7月14日の電力安定供給WG第4回で決まった上限価格の引下げ(15円→10円)を明示的に引用しています。片方で市場の稼ぎの天井を下げ、もう片方で市場外の電源に複数年の予見性を与えるのは筋が通らない、という指摘です。

監視委の回答は、「厳正な事後監視」と、制度設計・監視専門会合での結果報告で担保するというもの。事前に縛りを入れるのではなく、事後の監視で対応する整理になりました。

4. 蓄電池事業にどう効くか

要点まとめ 市場の外に競合の調達チャネルが開いた

募集量が細るリスク、見るべき指標、施行日が未確定である点を示す図
公募で足りなかったぶんを相対で埋めるなら、その量はもう市場に出てこない。
やさしい説明

効き方は逆方向の2つがあります。ただし、片方には手続き上の入口がまだありません。

図4:蓄電池への効き方は逆方向の2つ マイナス側|市場外の競合チャネル 公募で足りなかったぶんが相対で埋まると その量は需給調整市場に出てこない 募集量が細るリスク 上限価格 15円→10円(9/1実需給分から)と重なる プラス側|長期収入の道 自励式PCS等でブラックスタート機能を 提供しうる蓄電池には 複数年契約による固定費回収の道 ただし、プラス側にはまだ入口がない 現行のBS2031要綱案に蓄電池用の提出様式は存在せず、単独応札は想定されていない
図4:制度上の道が開いても、様式がなければ応札できない(出所:監視委 建議、第616回 資料4)。

マイナス側:市場外の競合チャネルが開いた

需給調整市場に応札している蓄電池にとって、複数年の相対契約は競合する調達手段です。一般送配電事業者が公募で足りなかったぶんを相対で埋めるなら、その量はもう市場に出てきません。募集量そのものが細る可能性を、収益モデルの前提に入れる必要があります。上限価格が15円→10円に下がったところに、募集量の不確実性が乗る形です。

プラス側:ブラックスタート機能を出せるなら長期収入の道がある

自励式PCSを備えた蓄電池のように、ブラックスタート機能(停電から系統を立ち上げ直すときの起動電源となる機能)を提供しうる設備には、複数年契約という長期の固定費回収手段が開いたことになります。

ただし、いますぐ使える話ではありません。現行のBS2031要綱案には蓄電池用の提出様式が存在せず、蓄電池の単独応札は想定されていません。様式がなければ出せません。制度上の道が開いても、手続き上の入口がまだ用意されていない状態です。

5. いつまでに何をするか

やさしい説明

施行日が決まっていないので「いつまでに」は引けません。決まっていないことを前提にした手を打ちます。

図5:施行日が未確定でも打てる手 いま着手 需給調整市場の収益を 織り込んだ案件は 募集量の下振れシナリオを作る 上限価格10円(9/1実需給分〜) と合わせて効かせる 継続監視 個別落札価格は非公表のため エリア別 平均調達単価 制度設計・監視専門会合の報告 をウォッチ対象に加える 待ち 官報での施行日の告示 BS2031要綱案への 蓄電池用 提出様式の追加 出るまで応札できない
図5:施行日は8月25日〜28日の官報に未掲載(目次全件確認済み)。
  1. 施行日を待つ。改定履歴欄が「令和8年●月●日」のままで、施行日は未確定。2026年8月25日から28日までの官報(本紙1775〜1778号、号外189〜192号、特別号外46号)の目次を全件確認し、当該告示の掲載がないことは確認済みです。
  2. 募集量の前提を見直す。需給調整市場の収益を織り込んでいる案件は、募集量が計画どおり出てくるという前提を一度外して下振れシナリオを作る。上限価格10円(2026年9月1日実需給分から適用)と合わせて効かせます。
  3. エリア別平均調達単価をウォッチ対象に加える。個別の落札価格は非公表なので、相対調達がどれだけ使われているかを外から見る手がかりは、この平均単価と制度設計・監視専門会合での結果報告しかありません。
  4. ブラックスタート機能を狙うなら要綱案の様式追加を待つ。現時点で蓄電池用の提出様式はありません。要綱の改定を追いかけます。

6. 未確定・注意点

施行日は未確定です。改定履歴欄は「令和8年●月●日」のままです。2026年8月25日〜28日の官報(本紙1775〜1778号、号外189〜192号、特別号外46号)を目次全件で確認し、当該告示の掲載がないことを実測しています(推測ではありません)。

契約期間の上限年数が設定されないため、実際に何年の契約が結ばれるかは事前には分かりません。また、相対取引に至った経緯・理由の公表は義務化されていないので、個別案件がどう決まったかは、事後監視と専門会合の報告を通してしか見えません。

7. よくある質問

何が改定されるのですか。

「一般送配電事業者が行う調整力の公募調達に係る考え方」(令和6年3月25日最終改定)の4.(9)(10)です。4.(9)から「特定地域に立地していることが必要な電源等(電源Ⅰ)」の限定を削除し、公募調達を実施してもなお必要量を確保できなかった場合に、発電事業者等からのプロポーザル等にもとづく複数年契約を前提とした相対取引による調達を認めます。

いつから適用されますか。

未確定です。改定履歴欄が「令和8年●月●日」のままで、施行日が記載されていません。2026年8月25日から28日までの官報(本紙1775〜1778号、号外189〜192号、特別号外46号)の目次を全件確認し、当該告示の掲載がないことを確認しています。

契約期間に上限はありますか。

設定されません。現行は「長くても1年」を原則としていましたが、改定後は上限年数を置かない扱いになります。

パブリックコメントで改定案は修正されましたか。

されていません。令和8年7月7日から8月5日まで実施され、提出は6件(うち対象外2件は不掲載)でしたが、意見を踏まえた改定案の修正は行われず原案どおり確定しています。

公平性への懸念はどう処理されたのですか。

提出意見には「事実上の任意指名で談合的」「経緯・理由の公表と委員会報告を義務化すべき」「OCCTOの第三者検証を原則義務化すべき」「契約年数上限と再公募義務を課すべき」「落札価格を匿名化・統計化して事後公表すべき」といった論点がありましたが、いずれも改定案には反映されていません。監視委は厳正な事後監視と、制度設計・監視専門会合での結果報告で担保するとしています。

需給調整市場に応札している蓄電池にはどう影響しますか。

市場の外に複数年の相対契約という調達チャネルが正式に開くため、公募で足りなかったぶんが相対で埋められると、その量は市場に出てきません。募集量が細るリスクを収益モデルの前提に入れる必要があります。2026年7月14日の電力安定供給WG第4回で決まった上限価格の15円→10円引下げと重なる形になります。

蓄電池がブラックスタート機能で長期契約を取ることはできますか。

制度上の道は開きますが、現行のBS2031要綱案には蓄電池用の提出様式が存在せず、蓄電池の単独応札は想定されていません。応札するには様式の追加を待つ必要があります。

落札価格は公表されますか。

個別の落札価格は非公表です。公表されるのはエリア別の平均調達単価です。

まとめ

  • 監視委が2026年8月27日、調整力の公募調達に係る考え方の改定を経産大臣へ建議した(8月26日 第616回委員会で議決、電気事業法66条の14第1項)。
  • 公募が不調のとき、複数年契約を前提とした相対取引での調達を認める。電源Ⅰの限定を削除し、契約期間の上限年数は設定しない。
  • OCCTOの検証協力は「必要に応じて」のまま義務化せず。二重取り防止(容量市場対価の控除)は現行維持。個別落札価格は非公表。
  • パブコメ6件(対象外2件は不掲載)はすべて不採用で、原案どおり確定した。
  • 市場参加リソースとの競争条件の差の拡大を指摘した意見6に対し、監視委は事後監視と専門会合での報告で担保すると回答した。
  • 施行日は未確定。8月25日〜28日の官報に当該告示の掲載はない(目次全件確認済み)。

発行・監修

系統用蓄電池(BESS)に関する国内外の一次情報を毎日モニタリングし、制度・市場・安全の3領域で解説しています。
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出典(一次情報)

  1. 電力・ガス取引監視等委員会 建議(2026-08-27)https://www.egc.meti.go.jp/info/public/pdf/20260827b.pdf
  2. 第616回 電力・ガス取引監視等委員会 資料4https://www.egc.meti.go.jp/activity/emsc/pdf/616_04_00.pdf
  3. 第616回 電力・ガス取引監視等委員会 会議ページ(2026-08-26)https://www.egc.meti.go.jp/activity/emsc/616_haifu.html
  4. e-Gov 意見公募結果(令和8年7月7日〜8月5日)https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCM1040&id=595226031&Mode=1
更新ログ:2026-08-28 初版公開(施行日は未確定。官報での告示掲載を確認しだい追記する)

出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/institutional/proffessional/4626203102001/

本記事は BESS media の転載条件(出典明記のうえ全文転載可)にもとづき転載しています。 記事内容の著作権は転載元に帰属します。

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