櫻貿易株式会社
制度・政策・審議会上級

改正電気事業法のファイナンス支援、対象電源は「合計50万kW以上」で確定——系統用蓄電池の単独利用は事実上できない

改正電気事業法にもとづくファイナンス支援(OCCTO=電力広域的運営推進機関が電源の建設資金を貸し付ける仕組み)の対象は、出力合計50万kW以上の電源で決まりました。

結論3行

事前相談は2026年8月末ごろ目途に資源エネルギー庁で受付が始まり、12月頃に法・政省令が施行令和9年3月頃に1号案件の融資実行という日程です。

系統用蓄電池だけで50万kWに届く案件は国内で現実的でなく、単独での利用は事実上できません。使い道があるとすれば、大型の脱炭素電源との一体計画に蓄電池部分を組み込む形です。

この記事でいちばん言いたいこと

「改正電事法の財投融資でBESSも資金調達できる」という理解は誤りになる。単独案件を進めているなら、この制度を資金計画に織り込んではいけない。

出力要件
合計50万kW以上
発電等用電気工作物整備等計画
融資総額の上限
全体の3割程度
単年度で全額は貸さない
事前相談 受付開始
2026年8月末ごろ目途
資源エネルギー庁
1号案件の融資実行
令和9年3月頃
施行は12月頃

1. 何が決まったのか

改正電気事業法のファイナンス支援の対象電源の規模が合計50万kW以上であること、対象電源、認められない束ね方の3点を示した図
図1-A:対象要件の全体像。規模(対象電源の出力の合計50万kW以上)・対象電源・認められない束ね方。

出典:資源エネルギー庁 第3回 電力事業環境整備ワーキンググループ 資料3(2026-08-25)。条文として確定するのは12月頃の法・政省令の施行時。

やさしい説明

2026年8月25日の15時から18時にかけて、資源エネルギー庁が第3回 電力事業環境整備ワーキンググループを開きました。この日の資料3で、改正電気事業法にもとづくファイナンス支援の設計が、具体的な数字とともに示されました。

図1:対象になるための要件と、束ね方の制限 出力要件(決定済) 発電等用電気工作物整備等計画の出力 合計50万kW以上 優先される電源 長期脱炭素電源オークションの対象となる脱炭素電源 事務局の締め 下位法令等の整備を進めることとしたい 認められない束ね方 ① 互いに無関係な案件を寄せ集めて50万kWにする 認められない束ね方 ② 時間的に隔絶した案件をひとつの計画として申請
図1:出力要件と束ね方の制限。出所=資源エネルギー庁 第3回 電力事業環境整備WG 資料3(2026-08-25)。

まず対象電源の規模。発電等用電気工作物整備等計画——これがこの制度で認定を受けるための計画の正式名称です——の出力が、合計50万kW以上。対象電源は「長期脱炭素電源オークションの対象となる脱炭素電源を優先」とされました。

ここで釘が刺されているのが束ね方の制限です。互いに無関係な案件を寄せ集めて50万kWにすることも、時間的に隔絶した案件をひとつの計画として申請することもできません。数字を満たすためだけの帳尻合わせは通らない、という設計です。

原典の記載
本WGの7月28日および本日の議論を踏まえ、下位法令等の整備を進めることとしたい

事務局案として通ったということで、この50万kWという線引きは今後の政省令に落ちていきます。

2. 融資の条件——3割までと、金利の決め方

いくら借りられるのかは、はっきり示されました。融資の総額上限はプロジェクト全体の3割程度。しかも単年度で全額をOCCTO融資でまかなう形にはしない、と明記されています。残り7割は自己資金と民間金融で組む前提です。

図2:資金の出どころと、金利の組み立て プロジェクト全体の資金 OCCTO融資 上限=全体の3割程度 自己資金・民間金融 残りはここで組成する ※ 単年度で全額をOCCTO融資にはしない 金利の組み立て(資料3の例示) 参照社債利回り 3.5% + 期間差補正(国債イールドカーブ) 1.0% = 貸出金利(例) 4.5% 下限:財投金利+業務経費 —— これを下回る金利は付かない
図2:融資上限と金利の決め方。3.5%+1.0%=4.5%は資料3の例示であり、実際の適用金利ではありません。出所=同資料3。

金利は、参照社債利回りに国債イールドカーブ(残存年数ごとの国債利回りをつないだ曲線)による期間差補正を加えて決めます。資料の例示は3.5%+1.0%=4.5%。あわせて貸出金利には下限が置かれ、財投金利(財政投融資の調達金利)に業務経費を足した水準を下回りません。

読み違えに注意。4.5%はあくまで計算の仕組みを説明するための例示です。市場金利と案件の期間で動くため、確定した適用金利ではありません。

3. 系統用蓄電池にどう効くのか

系統用蓄電池の単独ルートが要件の規模に届かず、大型脱炭素電源との一体計画ルートに余地が残ることと、一体性の立証3点を示した図
図3-A:単独ルートと一体計画ルート。分かれ目は地理的な近接性・一体運用・同一の投資判断主体の立証。

出典:同 資料3。一体計画で認められる範囲の具体的な線引きは資料3の記載からは読み取れず未確認。

系統用蓄電池は長期脱炭素電源オークションの対象電源に含まれています。だから「改正電事法の財投融資でBESSも資金調達できるようになる」と読んでしまいがちですが、それは誤りになります。50万kW=500MWの蓄電所は国内に存在せず、当面現実的でもありません。単独プロジェクトでこの制度の融資を引くという道は、実質的に閉じています。

図3:BESSにとっての2つのルート ルートA:蓄電池の単独プロジェクト 計画出力が合計50万kWの水準に届かない 50万kWの線 事実上、利用できない 資金計画に織り込まないこと ルートB:大型脱炭素電源との一体計画 脱炭素電源(橙)+蓄電池(緑)で合計50万kW以上 立証が要る3点 ① 地理的な近接性 ② 一体運用 ③ 同一の投資判断主体 ※ 無関係案件の束ね・時間的に隔絶した案件は不可
図3:単独は閉じ、一体計画に余地が残る。棒の長さは要件の考え方を示す模式であり、実案件の出力を表すものではありません。

残っているのは一体計画のルートです。洋上風力や原子力といった大型の脱炭素電源と組み、計画全体で合計50万kW以上になる構成であれば、そのなかにBESS部分が含まれる余地はあります。ただし束ね方の制限がかかっているため、地理的な近接性・一体運用・同一の投資判断主体という一体性を立証できるかどうかが分かれ目になります。系統側に置く蓄電池を「隣接する電源と一体の設備」として説明できる案件かどうか、という話です。

もうひとつ実務的に効くのが、償還確実性の要件が「オークション落札または投資適格先との長期PPA(電力の長期売買契約)」と、選択肢になっている点。落札していなくてもPPAで道が開くという設計は、オフテイカーを先に固めるタイプの案件には有利に働きます。

だから何が言いたいか。BESS単独では入口に立てない一方で、大型電源に付く蓄電池は「一体性の立証」という別の勝負になります。

4. スケジュールと、いつまでに何をするか

窓は短いです。事前相談が8月末に始まり12月に施行という日程なので、ここを外すと令和8年度の枠を逃します。

図4:事前相談から1号案件の融資実行まで 2026年8月末ごろ目途 事前相談 受付開始 資源エネルギー庁 2026年12月頃 法・政省令の施行 2026年内 目途 計画認定 令和9年3月頃 1号案件 融資実行 令和9年度に融資を希望する案件も、あわせて受け付けるとされている。
図4:制度の立ち上がり日程。出所=同資料3。日付が特定されているのは「令和9年3月頃」等の目途表現までです。
時期できごと
2026年8月末ごろ目途資源エネルギー庁への事前相談 受付開始
2026年12月頃法・政省令の施行
2026年内 目途計画認定
令和9年3月頃1号案件の融資実行

あなたが取るべき行動

  1. 大型のハイブリッド案件(脱炭素電源+蓄電池)を持つ事業者は、9月上旬までに該当性を経済産業省へ照会する。照会前に、①計画全体の出力合計が50万kWに届くか ②蓄電池と電源の一体性を地理・運用・投資判断主体の3点で説明できるか ③償還確実性をオークション落札とPPAのどちらで立てるか、を整理しておくと話が早く進みます。
  2. 系統用蓄電池の単独案件を進めている事業者は、この制度を資金計画から外す。IRやレンダーへの説明資料に「改正電事法のファイナンス支援を活用」と書くと、後で撤回する話になります。
  3. すでにレンダーと交渉中なら、残り7割の組成を先に固める。融資上限がプロジェクト全体の3割程度に留まる前提で資本構成を引き直します。
  4. 12月頃の政省令の公布を待って、条文で要件を再確認する。50万kWの数え方や一体性の判定は、条文と解釈通知で最終的に決まります。

5. 負担の出口と、未確定なこと

償還の確実性をどう確認するかも示されました。長期脱炭素電源オークションの落札案件であること、または投資適格先との長期PPAがあること。そして万一、国庫への償還が難しくなった場合は、一般送配電事業者から特別会費で回収する枠組みが用意されています。

図5:償還確実性の2ルートと、回収の最終経路 償還確実性の確認 ① 長期脱炭素電源オークション 落札案件 償還確実性の確認 ②(または) 投資適格先との長期PPA — 万一、国庫への償還が困難になった場合 — 一般送配電事業者 特別会費で回収 託送料金 原資はここに乗る 需要家 最終的な負担 受益者と負担者がずれる構造。今後の議論で対象や条件が動く可能性がある。
図5:償還確実性の確認方法と、国庫償還が困難になった場合の回収経路。出所=同資料3。

国庫への償還が困難になったときに一般送配電事業者から特別会費で回収するということは、最終的には託送料金を通じて需要家が負担する構造になっています。制度の受益者と負担者がずれる設計なので、今後の議論で対象や条件が動く可能性は頭に入れておきたいところです。

未確定・注意点

  1. 50万kW以上という要件は資料3で「決定済」と示されたものですが、条文として確定するのは12月頃の法・政省令の施行時です。文言レベルの詰めは残っています。
  2. 一体計画で認められる範囲の具体的な線引き(どこまでの距離・どういう運用形態なら一体とみなすか)は、資料3の記載からは読み取れません。未確認です。
  3. 事前相談の開始日は「8月末ごろ目途」であって、日付は特定されていません。
  4. 同WGの資料5「卸取引等における排出量取引制度の取扱い」(3,001KB)は、本記事の作成時点で回収できていません。web_fetchを2回、Jina Reader を1回試みましたが、いずれも失敗しました。排出量取引制度側の取扱いは本記事の射程外であり、内容には触れていません。原典を取得しだい別稿で扱います。

よくある質問

系統用蓄電池はこのファイナンス支援を使えますか。

単独では事実上使えません。対象は発電等用電気工作物整備等計画の出力が合計50万kW以上の案件で、蓄電池単独でこの規模に達する国内案件は現実的でないためです。大型の脱炭素電源との一体計画に蓄電池部分が含まれる形であれば、余地は残ります。

50万kWは1か所での出力ですか、複数地点の合計でもよいのですか。

「合計」50万kW以上とされています。ただし互いに無関係な案件を束ねること、時間的に隔絶した案件を一体で申請することは認められません。一体性を説明できる構成である必要があります。

融資はプロジェクト費用のどこまで出ますか。

融資総額の上限はプロジェクト全体の3割程度です。加えて、単年度で全額をOCCTO融資にはしないとされています。残りは自己資金と民間金融での組成が前提になります。

金利はどう決まりますか。

参照社債利回りに、国債イールドカーブによる期間差補正を加えて決めます。資料3の例示は3.5%+1.0%=4.5%です。あわせて、財投金利に業務経費を足した水準が貸出金利の下限として設定されます。

長期脱炭素電源オークションに落札していないと申請できませんか。

償還確実性の確認方法は「長期脱炭素電源オークション落札案件、または投資適格先との長期PPA」とされています。落札していなくても、投資適格先との長期PPAがあれば道はあります。

いつまでに動けばよいですか。

事前相談の受付が2026年8月末ごろ目途に始まり、12月頃に法・政省令が施行、令和9年3月頃に1号案件の融資実行という日程です。令和8年度の枠を狙うなら、9月上旬までに該当性の照会を済ませたいところです。

まとめ

  • 改正電気事業法にもとづくファイナンス支援の対象は、発電等用電気工作物整備等計画の出力が合計50万kW以上で決まった。対象電源は長期脱炭素電源オークションの対象となる脱炭素電源を優先する。
  • 無関係案件の束ね、時間的に隔絶した案件の一体申請は不可。数字合わせの寄せ集めは通らない。
  • 融資総額の上限はプロジェクト全体の3割程度で、単年度で全額をOCCTO融資にはしない。金利は参照社債利回り+期間差補正(例:3.5%+1.0%=4.5%)、下限は財投金利+業務経費。
  • 償還確実性は、長期脱炭素電源オークション落札案件または投資適格先との長期PPAで確認する。国庫償還が困難な場合は一般送配電事業者から特別会費で回収する。
  • 事前相談は2026年8月末ごろ目途に開始、12月頃に法・政省令施行、年内目途に計画認定、令和9年3月頃に1号案件の融資実行。令和9年度の希望案件もあわせて受付。
  • 系統用蓄電池の単独プロジェクトでは要件に届かず、この制度は事実上使えない。大型脱炭素電源との一体計画に組み込む場合のみ余地がある。

発行・監修

系統用蓄電池(BESS)に関する国内外の一次情報を毎日モニタリングし、制度・市場・安全の3領域で解説しています。
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出典(一次情報)

  1. 資源エネルギー庁 第3回 電力事業環境整備ワーキンググループ 会議ページ(2026年8月25日 15:00〜18:00開催)https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/jisedai_kiban/electric_power_wg/003.html
  2. 同 資料3(改正電気事業法にもとづくファイナンス支援)https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/jisedai_kiban/electric_power_wg/pdf/003_03_00.pdf
更新ログ:2026-08-28 初版公開(同WG資料5「卸取引等における排出量取引制度の取扱い」は取得できず未収録。取得しだい別稿で扱う)

出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/institutional/proffessional/4626203102002/

本記事は BESS media の転載条件(出典明記のうえ全文転載可)にもとづき転載しています。 記事内容の著作権は転載元に帰属します。

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