櫻貿易株式会社
制度・政策・審議会上級

地内系統ファイナンスの認定閾値が確定案に——17万V・20万kVA・20万kW以上、金利0.1%程度

2026年8月25日の第3回 電力事業環境整備WG(資料3・論点⑥〜⑧)で、地内系統の先行整備を支える貸付制度の認定閾値が確定案として示されました。対象は送電線17万V以上・変電用電気工作物20万kVA以上、認定要件は電線路の容量増加幅20万kW以上です。

この記事を読む価値(接続検討と系統アクセスを見ている方へ)

先に誤解を潰しておきます。これはBESSの事業者が借りる制度ではありません。借り手は基幹送変電設備を整備する側であり、蓄電所の建設資金が安く調達できる話ではありません。

それでも読む価値があるのは、類型①が「接続が確定する前の先行整備」を金利0.1%程度で後押しする設計だからです。需要地・データセンター集積地の周辺で、空容量が先に生まれる可能性があります。

結論3行
  1. 認定閾値が確定案として提示。送電線17万V以上・変電用電気工作物20万kVA以上・電線路の容量増加幅20万kW以上(複数送電線は合計値)。
  2. 類型①は補助金原資・設定金利0.1%程度。類型②は財政投融資が原資で原則融資総額の3割以下。同一年度の併用は不可。
  3. BESSが直接借りる制度ではない。効くのは系統増強が資金面から進みやすくなる間接効果に限られる。
対象:送電線
17万V以上
170kV以上
対象:変電用電気工作物
20万kVA以上
200MVA以上
認定要件:容量増加幅
20万kW以上
複数送電線の場合は合計値
類型①の設定金利
0.1%程度
補助金原資・接続確定前の先行整備

1. 何が起きたか

要点まとめ 認定閾値は17万V・20万kVA・20万kW

対象となる基幹送変電設備と認定要件、類型①と類型②の設計を示した図
確定案の段階。適用時期は改正電気事業法の12月頃施行に連動する。
やさしい説明

電力事業環境整備WGは、電力インフラの整備をどう進めるかを制度面から詰める資源エネルギー庁の作業部会です。ここで示された「確定案」は、そのまま法令や運用の枠組みに落ちていきます。

図1:対象となる基幹送変電設備と、認定要件の数値 対象① 送電線 17万V 以上 170kV以上 対象② 変電用電気工作物 20万kVA 以上 200MVA以上 認定要件 電線路の容量増加幅 20万kW 以上 複数送電線の場合は合計値で判定 適用時期は改正電気事業法の12月頃施行に連動
図1:対象設備と認定要件(出所:第3回 電力事業環境整備WG 資料3、2026年8月25日)。

2026年8月25日に開かれた第3回 電力事業環境整備WGの資料3(論点⑥〜⑧)で、地内系統の整備に資金を回すための貸付制度について、対象設備と認定要件の具体的な数値が示されました。

対象となる基幹送変電設備は、送電線が17万V(170kV)以上変電用電気工作物が20万kVA(200MVA)以上。認定要件となる電線路の容量増加幅は20万kW以上で、複数の送電線にまたがる場合は合計値で判定します。

適用時期は、改正電気事業法の12月頃の施行に連動するとされています。

類型①と類型②の設計

類型①は、需要や電源の接続が確定する前の段階で先に系統を整備する場合が対象です。想定されているのはGX戦略地域のうちデータセンター集積型。原資は補助金で、設定金利は0.1%程度。返済期限は原則として類型①の要件を充たしている期間中とされています。

類型②は財政投融資(国が財投債などで調達した資金を政策目的で貸し出す仕組み)が原資で、民間融資が始まってから運転開始までを対象とします。融資額は原則として融資総額の3割以下です。

同一年度に両類型を併用することはできません。類型①で先行整備を進めるか、類型②で民間融資に上乗せするかを、年度ごとに選ぶ設計です。

2. BESSに効くのは間接効果だけ

要点まとめ BESSに効くのは間接効果だけ

制度が効く経路と効かない範囲、GX戦略地域との関係を示した図
借り手は基幹送変電設備を整備する側。蓄電所が直接借りる制度ではない。
やさしい説明

「系統ファイナンス」という名前から、蓄電所の資金調達が楽になると読み違えやすいところです。誰が借り手なのかを最初に確認してください。

図2:効く経路と、効かない範囲 枠の中(効く経路) 国が金利0.1%程度で先行整備を後押し ↓ 資金制約で止まっていた区間の増強が進む ↓ 周辺の空き容量が増える(間接効果) 枠の外(効かない範囲) 上位2電圧クラス未満の系統 容量増加幅20万kW未満の増強 BESSの多くが接続する領域 従来どおり工事費負担金の世界が続く 借り手は誰か 基幹送変電設備を整備する側であって、蓄電所の事業者ではない
図2:制度名から誤解しやすい点(出所:第3回 電力事業環境整備WG 資料3)。

制度名から誤解しやすいので、先に潰しておきます。この貸付は蓄電所の事業者が借りる制度ではありません。対象は基幹送変電設備の整備であって、BESSの建設費を安く調達できる話ではありません。

効き方は間接的です。系統増強が資金の制約で止まっていた区間について、国が金利0.1%程度で先行整備を後押しする。増強が進めば、その周辺の空き容量が増えます。とくに類型①は「接続が確定する前」の整備を支援する設計なので、需要地・データセンター集積地の周辺で空容量が先に生まれる可能性があります。

逆に言えば、支援の対象は上位2電圧クラスの基幹系統かつ20万kW以上の増強に絞られます。BESSの多くが接続する下位電圧・小規模な増強はこの枠の外にあり、従来どおり工事費負担金を誰がどう負担するかという世界が続きます。ここを取り違えると、接続検討の回答に対する見立てを誤ります。

GX戦略地域の認定と直結している

類型①の対象想定が「GX戦略地域=データセンター集積型」である点も見逃せません。GX戦略地域は、2026年8月26日のパワーGX(第17回GX実行会議)で「近日中に順次認定」とされた枠組みで、候補にはデータセンター集積型9地域・脱炭素電源活用型23地域が含まれます。認定が出た地域が、そのまま金利0.1%の先行整備が効く候補地図になります。

なお同じ8月25日の資料群では、電源側の認定要件として50万kWという別の閾値も扱われています。系統側と電源側で数字が違うので、社内で共有する際は混同しないでください。

3. 北海道・本州間海底直流送電の事業報酬率

要点まとめ 事業報酬率は通常の1.5倍以上を検討

北海道・本州間海底直流送電の規模と事業報酬率の検討状況を示した図
概算工費1.5〜1.8兆円・約800kmは資料に示された規模で、確定した事業費ではない。
やさしい説明

事業報酬率とは、送配電事業者が投資額に対して回収を認められる利回りのことです。これを高く設定すると、事業者は投資判断を前に進めやすくなります。

図3:北海道・本州間海底直流送電の規模と、事業報酬率の検討 概算工費 1.5〜1.8兆円 確定した事業費ではない こう長 約800km 事業報酬率 通常の1.5倍以上 レベニューキャップの追加報酬 水準として検討中 考え方は2026年12月の実施案提出までに公知化 BESSへの効き方 北海道の余剰を本州へ送れる量が増えれば、地元で吸収する必要は減る方向
図3:連系設備の前提が動けば、出力制御吸収を前提とした収益モデルの前提も動く(出所:第3回 電力事業環境整備WG 資料3)。

もう一点、BESSの収益モデルに直接触れる論点があります。北海道・本州間の海底直流送電について、概算工費1.5〜1.8兆円・約800kmという規模が示されたうえで、事業報酬率をレベニューキャップ制度の追加報酬水準=通常の1.5倍以上とすることが検討されています。そして2026年12月の実施案提出までに、その考え方を公知化するとされました。

この海底直流送電が動くかどうかは、北海道側の再エネ余剰をどれだけ本州へ送れるかを左右します。北海道の出力制御を吸収して稼ぐという蓄電所の収益モデルは、この連系設備の前提の上に立っています。送電で運べる量が増えれば、地元で吸収する必要は減る方向に働きます。

4. 数値の一覧

やさしい説明

社内で共有するときに数字が独り歩きしやすい論点です。資料3に示された内容だけを一覧にしました。

図4:類型①と類型②の設計の違い 類型① 接続確定前の先行整備 原資:補助金 設定金利 0.1%程度 返済期限は原則として要件充足期間中 対象想定:GX戦略地域=DC集積型 類型② 民間融資への上乗せ 原資:財政投融資 原則 融資総額の3割以下 対象期間:民間融資開始から運転開始まで 同一年度に両類型の併用は不可
図4:年度ごとにどちらかを選ぶ設計(出所:第3回 電力事業環境整備WG 資料3)。
表1:資料3に示された数値。確定案の段階であり、施行時の内容を確認すること。
項目数値・内容
対象:送電線17万V(170kV)以上
対象:変電用電気工作物20万kVA(200MVA)以上
認定要件:電線路の容量増加幅20万kW以上(複数送電線の場合は合計値)
類型①の原資・金利補助金原資・設定金利0.1%程度
類型①の対象需要・電源の接続確定前の先行整備(GX戦略地域=データセンター集積型を想定)
類型①の返済期限原則として類型①要件の充足期間中
類型②の原資・対象期間財政投融資・民間融資開始から運転開始まで
類型②の融資額原則として融資総額の3割以下
併用同一年度に両類型の併用は不可
適用時期改正電気事業法の12月頃施行に連動
北海道・本州間海底直流送電概算工費1.5〜1.8兆円・約800km
同・事業報酬率レベニューキャップの追加報酬水準=通常の1.5倍以上を検討
同・公知化の期限2026年12月の実施案提出まで

5. いつまでに何をするか

やさしい説明

申請の締切がある話ではありません。やるべきことは、自社の案件がこの枠に入るかどうかを先に判定しておくことです。

図5:締切はないが、判定の順番はある いま判定する 接続先は17万V以上/ 20万kVA以上に該当するか 増強規模は20万kW以上か 複数送電線は合計で判定 単線では届かなくても該当し得る 追いかける GX戦略地域の認定公表 DC集積型は類型①の対象想定 改正電気事業法の12月頃施行 認定要件の最終形を確認する 北海道案件があるなら 2026年12月の実施案提出 事業報酬率の考え方は それまでに公知化される 現時点では検討段階
図5:判定→追跡の順で進める(出所:第3回 電力事業環境整備WG 資料3)。
  1. 自社の接続先が「17万V以上/20万kVA以上」に該当するかを確認する。該当しないなら、この制度の効果は当面及びません。従来どおり工事費負担金の枠で検討を進めます。
  2. 増強規模が20万kW以上になる区間かどうかを見る。複数送電線の合計で判定されるため、単線では届かなくても合算で該当する場合があります。
  3. GX戦略地域の認定公表を待ち構える。データセンター集積型に認定された地域は、類型①の対象想定に重なります。認定日は明示されていません。
  4. 改正電気事業法の12月頃施行に合わせて、認定要件の最終形を確認する。いま示されているのは確定案であって、施行時の内容が最終形です。
  5. 北海道案件を持っているなら、2026年12月の実施案提出を見る。事業報酬率の考え方はそれまでに公知化されます。

6. 未確定・注意点

これは確定した制度ではなく、審議会に示された確定案です。適用時期は改正電気事業法の12月頃施行に連動するとされており、施行時点の内容を必ず確認してください。
  • 貸付の借り手はBESS事業者ではありません。「系統用蓄電池向けの低利融資が始まる」という読み方は誤りです。
  • 類型①の対象想定として挙がっているのは「GX戦略地域=データセンター集積型」です。個別の地域名は本記事では確認していません。
  • 北海道・本州間海底直流送電の事業報酬率は検討段階であり、「通常の1.5倍以上」という水準の検討にとどまります。確定値ではありません。
  • 概算工費1.5〜1.8兆円・約800kmは資料に示された規模であって、確定した事業費ではありません。
  • 電源側で扱われている50万kWは別の要件です。地内系統の20万kWと同じ枠の数字ではありません。

7. よくある質問

蓄電所の建設資金をこの制度で借りられますか。

借りられません。対象は基幹送変電設備の整備で、借り手は蓄電所の事業者ではありません。BESSへの効き方は「系統増強が資金面から進みやすくなる」という間接的なものに限られます。

対象になる設備の条件は何ですか。

送電線は17万V(170kV)以上、変電用電気工作物は20万kVA(200MVA)以上です。あわせて、認定要件として電線路の容量増加幅が20万kW以上であることが求められます。複数の送電線にまたがる場合は合計値で判定します。

類型①と類型②はどう違いますか。

類型①は需要・電源の接続が確定する前の先行整備が対象で、原資は補助金、設定金利は0.1%程度です。返済期限は原則として類型①の要件を充たしている期間中。類型②は財政投融資が原資で、民間融資の開始から運転開始までを対象とし、融資額は原則として融資総額の3割以下です。同一年度に両方を使うことはできません。

いつから使える制度ですか。

適用時期は改正電気事業法の12月頃の施行に連動するとされています。現時点で示されているのは確定案であり、施行時点の内容を確認する必要があります。

20万kWという閾値は電源側の要件と同じですか。

違います。ここでの20万kW以上は地内系統の電線路の容量増加幅に対する認定要件です。電源側では50万kWという別の要件が扱われており、混同しないでください。

北海道・本州間の海底直流送電はどうなりますか。

概算工費1.5〜1.8兆円・約800kmという規模が示され、事業報酬率をレベニューキャップ制度の追加報酬水準(通常の1.5倍以上)とすることが検討されています。その考え方は2026年12月の実施案提出までに公知化されるとされています。あくまで検討段階です。

GX戦略地域に認定されると何が変わりますか。

類型①の対象として想定されているのがGX戦略地域のデータセンター集積型です。認定された地域は、接続確定前の先行整備を金利0.1%程度で支援する枠の対象になり得ます。ただし認定日は明示されていません。

まとめ

  • 2026年8月25日の第3回 電力事業環境整備WG 資料3(論点⑥〜⑧)で、地内系統の先行整備向け貸付の認定閾値が確定案として示された。
  • 対象は送電線17万V(170kV)以上・変電用電気工作物20万kVA(200MVA)以上。認定要件は電線路の容量増加幅20万kW以上で、複数送電線は合計値で判定。
  • 類型①は接続確定前の先行整備が対象。補助金原資・設定金利0.1%程度・返済期限は原則として要件充足期間中。対象想定はGX戦略地域のデータセンター集積型。
  • 類型②は財政投融資が原資。民間融資開始から運転開始までを対象とし、原則として融資総額の3割以下。同一年度の併用は不可。
  • 適用時期は改正電気事業法の12月頃施行に連動。
  • 北海道・本州間海底直流送電は概算工費1.5〜1.8兆円・約800km。事業報酬率を通常の1.5倍以上とすることを検討し、2026年12月の実施案提出までに考え方を公知化。
  • BESSが直接借りる制度ではない。下位電圧・小規模増強は枠の外で、従来どおり工事費負担金の世界が続く。

発行・監修

系統用蓄電池(BESS)に関する国内外の一次情報を毎日モニタリングし、制度・市場・安全の3領域で解説しています。
一次情報主義
官公庁・送配電事業者・市場運営機関が公表した原典のみを根拠とし、業界紙・ブログ等の二次情報は本文に採録しません。
数値は原典から
電圧・容量・金利・工費はすべて資料3から直接取得しています。原典に記載のない条件は「未確認」と明示し、推測で補いません。
訂正方針
誤りが判明した場合は本文を修正のうえ、ページ下部の更新ログに訂正内容と日付を残します。記述の差し替えを黙って行いません。

出典(一次情報)

  1. 第3回 電力事業環境整備WG 資料3(論点⑥〜⑧・2026年8月25日)https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/jisedai_kiban/electric_power_wg/pdf/003_03_00.pdf
  2. 資源エネルギー庁 第3回 電力事業環境整備WG 会議ページ(2026年8月25日)https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/jisedai_kiban/electric_power_wg/003.html
更新ログ:2026-08-28 初版公開(確定案の段階。改正電気事業法の12月頃施行時に認定要件の最終形を確認して追記する)

出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/institutional/proffessional/4626203102005/

本記事は BESS media の転載条件(出典明記のうえ全文転載可)にもとづき転載しています。 記事内容の著作権は転載元に帰属します。

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