櫻貿易株式会社
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蓄電池の落札枠が170万kW→40万kWへ——長期脱炭素電源オークション第4回、超過落札の廃止と経済安保セルの優先約定

長期脱炭素電源オークション第4回で、蓄電池の募集上限が「a リチウムイオン蓄電池」「b リチウムイオン蓄電池以外の蓄電池」「c 揚水の新設・リプレース等+LDES」の3区分・それぞれ40万kWに分割されます。原文は「募集上限を超えた追加の落札はさせない」と明記しており、超過落札は廃止されます。

この記事を読む価値(第4回に蓄電池で応札する方へ)

第3回は募集上限80万kWに対し、超過落札ルールの適用で落札容量が170万kWに達していました。枠の性格そのものが変わります。

さらに経済安全保障推進法の供給確保計画の認定を受けたメーカー製セルを使う案件が優先的に約定されます。価格競争力だけでは通らない構造です。本件は意見公募(2026年7月17日〜8月16日・意見72件)を終えた確定事項で、結果の公示日は2026年8月31日です。

結論3行
  1. 第4回の蓄電池等の募集上限は3区分×各40万kW。原文「募集上限を超えた追加の落札はさせない」で超過落札は廃止(参考資料2 p11)。
  2. 第3回は募集上限80万kWに対し超過落札ルールの適用で落札容量170万kW。第4回のリチウムイオン枠は40万kW。
  3. 経済安全保障推進法の認定メーカー製セルを使う案件を優先的に約定(同 p36)。セル調達先が落札可否に直結する。
リチウムイオン蓄電池の募集上限
40万kW
区分a・単独枠
第3回の落札容量(実績)
170万kW
募集上限80万kWに超過落札を適用
超過落札
廃止
「上限を超えた追加の落札はさせない」
意見公募の結果公示
2026年8月31日
意見72件・確定事項

1. 何が決まったのか:3区分×各40万kW、超過落札は廃止

やさしい説明

長期脱炭素電源オークションは、20年間の固定収入を約束する代わりに、脱炭素電源の新設・改修を募る入札です。蓄電池もこの対象で、これまで多くの案件がここを収益の柱に据えてきました。今回変わるのは「何kWまで通すか」という枠の切り方と、その枠の効き方です。

図1:募集上限の区分(第3回:2区分 → 第4回:3区分・各40万kW) 第3回(2区分・超過落札あり) 第4回(3区分・超過落札なし) a 揚水リプレース+リチウムイオン蓄電池 40万kW b 揚水新設+非リチウムイオン蓄電池+LDES 40万kW (区分なし) a リチウムイオン蓄電池の案件 40万kW b リチウムイオン蓄電池以外の蓄電池の案件 40万kW c 揚水の新設・リプレース等案件とLDESの案件 40万kW 超過落札:募集上限の2倍まで 超過落札:廃止(追加の落札はさせない)
図1:区分の切り方と超過落札の扱いが同時に変わる(出所:電力安定供給ワーキンググループ 第6回 参考資料2 p11)。

資源エネルギー庁は2026年8月31日、電力安定供給ワーキンググループ(第6回)の配布資料を公表しました。そのうち参考資料2「長期脱炭素電源オークションの第4回募集に向けて」に、蓄電池で応札する事業者にとって前提が変わる内容が入っています。

参考資料2 の記載
第4回の募集上限は「a リチウムイオン蓄電池の案件」「b リチウムイオン蓄電池以外の蓄電池の案件」「c 揚水の新設・リプレース等案件とLDESの案件」の3区分とし、「それぞれ募集上限を40万kWずつ(募集上限を超えた追加の落札はさせない)とした」。— 参考資料2 p11
要点
募集上限が「目安」から「上限」に戻ります。第3回まで機能していた超過落札ルールが明示的に廃止されるためです。

合計の枠は80万kWから120万kWへ増えます。ただしリチウムイオン蓄電池だけを見ると、揚水リプレースと同居していた40万kW枠が、リチウムイオン専用の40万kW枠へ置き換わる形です。

エネ庁が示した理由は2点です。系統接続申込みが大幅に増加している蓄電池について落札ペースを調整すること、そして慣性力・ブラックスタート機能を持つ揚水を一定量確保することです。揚水を独立区分(c)に切り出したのは後者の手当てにあたります。

2. 第3回は170万kW落札できた——なぜ第4回は絞られるのか

要点まとめ 落札難度は一段ではなく二段上がる

第4回で超過落札が廃止され、リチウムイオン蓄電池が区分aの募集上限40万kWに切り出されることを示す図
募集上限が効くようになり、リチウムイオン蓄電池が単独区分に切り出される。落札難度は二段で上がる。(出所:電力安定供給ワーキンググループ 第6回 参考資料2 p9・p10・p11)
やさしい説明

募集上限の数字だけを追うと「80万kW→120万kWで枠が増えた」と読めます。しかし実績と並べると逆の絵になります。

図2:第3回の落札実績(170万kW)と第4回のリチウムイオン枠(40万kW) 80万kW 第3回 募集上限 a・b 各40万kW 170万kW 第3回 落札容量(実績) 超過落札ルールを適用 40万kW 第4回 区分a 募集上限 リチウムイオン蓄電池・超過落札なし 枠の性格が変わる
図2:第3回の実績と第4回の区分a上限。棒の高さは容量に比例(出所:参考資料2 p11)。

参考資料2 p11によれば、第3回は募集上限80万kWに対し、超過落札ルールの適用により落札容量が170万kWに達していました。上限の2倍以上が通っていたことになります。募集上限は事実上の目安にすぎず、価格競争力があれば枠を超えて約定できました。

第4回はこの仕組みが消えます。リチウムイオン蓄電池の案件は区分aの40万kWで打ち止めとなり、それを超えた落札は行われません。第3回実績170万kWの大半がリチウムイオン蓄電池であったことを踏まえれば、リチウムイオンが獲得できる容量は実質的に大きく絞られる計算になります。

落札難度は一段ではなく二段上がると考えるのが妥当です。募集上限そのものが効くようになったこと(超過落札の廃止)と、リチウムイオンが単独区分に切り出されたこと(他電源と枠を分け合えなくなったこと)が、同時に起きるためです。

募集量そのものは、脱炭素電源枠で500万kWと第3回と同水準です(p9)。上限価格は閾値である20万円/kW/年を超える水準で設定されます(p10)。

誤読しやすい点:同資料ではLNG専焼火力について別枠で600万kWを募集するとされています(p9)。「第4回の募集量は500万kW」と単独で表記すると、火力分を含めた総量と取り違えられます。

3. 経済安保認定セルの「優先約定」が落札可否を左右する

要点まとめ 枠の中の順番が変わる

経済安保の認定メーカー製セルの案件を募集上限40万kWの枠内で価格の低い順に約定する順序を示す図
同じ価格を出しても認定メーカー製セルの案件が先に通る。セル調達先が落札可否に直結する。(出所:電力安定供給ワーキンググループ 第6回 参考資料2 p36、脚注37・38)
やさしい説明

枠の広さに加えて、枠に入る順番も変わります。同じ価格を出しても、先に呼ばれる案件と後に回される案件ができます。

図3:第4回の約定順序(区分aの募集上限40万kWの枠内で) 1 認定メーカー製セル 経済安全保障推進法に基づく 供給確保計画の認定を受けた メーカーが製造するセル → 価格の低い順に約定 枠が余れば 2 認定外メーカー製セル 1で募集上限が埋まらなかった 場合にのみ対象となる → 価格の低い順に約定 募集上限 40万kW に達した時点で 残りは落札されない 認定メーカーの範囲:当該メーカーが株式・持分50%超の支配力を持つ国内外の子会社・孫会社を含む 優先約定・セル製造国30%制限の不適用は、いずれもリチウムイオン蓄電池が対象(脚注37・38)
図3:優先約定は「枠の中の順番」を決める仕組み(出所:参考資料2 p36、脚注37・38)。

参考資料2 p36は、経済安全保障推進法に基づく供給確保計画の認定を受けているメーカー(当該メーカーが株式・持分50%超の支配力を持つ国内外の子会社・孫会社を含む)が製造するセルを使用する蓄電池の案件を、優先的に約定するとしています。

順序はこうなります。まず募集上限の枠内で、認定メーカー製セルを使う案件を価格の低い順に約定する。それで枠が埋まらなかった場合に、はじめて認定外セルの案件が拾われる。

これは価格だけの勝負ではなくなったことを意味します。同じ価格を出しても、認定メーカー製セルを積んでいる案件が先に通ります。逆にいえば、非認定セルを前提にした案件は、枠が余らない限り約定に届かない可能性があります。セル調達先の選定が、そのまま落札可否に直結します。

4. セル製造国30%制限はどこへ行ったのか(リチウムイオンには不適用)

やさしい説明

第3回にあった「どこで作られたセルか」の縛りは、第4回では別の形に置き換わります。緩んだのではなく、効き方が変わったと読むのが正確です。

図4:セル調達の規律は「製造国の比率」から「メーカーの認定有無」へ 第3回 セル製造国30%制限 製造国の比率で規律 → 第4回はリチウムイオンに不適用(脚注38) 置き換え 第4回 認定メーカー製セルの優先約定 メーカーの認定有無で規律 → 適用はリチウムイオンのみ(脚注37) この置換関係は本文ではなく脚注に置かれている。第3回の30%制限を前提にした調達仕様は前提が差し替わっている
図4:規律の軸の移動(出所:参考資料2 脚注37・38)。
参考資料2 脚注38 の記載
「これに伴い、第3回入札で導入したセル製造国30%制限ルールは、リチウムイオン蓄電池については適用しない」— 参考資料2 脚注38
要点
リチウムイオン蓄電池については、規律の形が「製造国の比率」から「メーカーの認定有無による優先順位」へ置き換わったと読めます。優先約定もリチウムイオンのみに適用されます(脚注37)。

この置換関係は本文ではなく脚注に置かれているため、資料を通しで読まないと見落としやすい箇所です。第3回の30%制限を前提に調達仕様を組んでいる案件は、前提の条件そのものが差し替わっている点に注意が必要です。

5. 応札を検討している事業者が今週やるべき3つの確認

やさしい説明

本件は検討段階の案ではありません。意見公募を終えた確定事項であり、準備を後ろ倒しにする理由はありません。

図5:確認の順序(1→2→3) 1 セルの認定有無 採用予定セルのメーカーが 供給確保計画の認定を 受けているか 子会社・孫会社の扱いも含めて 2 非認定なら切替の試算 認定メーカーへの切替可否 コスト差・納期影響を試算 枠が余らない限り拾われないため 3 区分の確定 a リチウムイオン蓄電池 b それ以外の蓄電池 c 揚水の新設・リプレース等+LDES 区分別の競争密度を見積もる あわせて:落札確度の低下は融資条件・エクイティIRRの前提に直結する。金融機関との条件協議も早期に
図5:応札検討中の案件で先に潰しておく3点(出所:参考資料2 p11・p36、参考資料4 p1)。
  1. 採用予定セルのメーカーの認定有無を確認する。経済安全保障推進法の供給確保計画の認定を受けているか。子会社・孫会社の扱い(株式・持分50%超支配)も含めて確認します。
  2. 非認定の場合、調達先変更の可否・コスト差・納期影響を試算する。優先約定の下では、非認定セルのままでは枠が余った場合しか拾われません。
  3. 自社案件がa/b/cのどの区分に属するかを確定する。リチウムイオンならa、それ以外の蓄電池ならb、揚水・LDESならc。区分ごとに競争密度がまったく異なります。

あわせて、落札確度が下がる前提での事業計画の見直しも必要になります。40万kW枠に申込みが集中すれば、落選を織り込んだ計画が要ります。落札確度の低下は融資条件・エクイティIRRの前提に直結するため、金融機関との条件協議も早い段階で始めておきたいところです。

6. 未確定・注意点

  • 応札受付期間と約定結果の公表日は、本ワーキンググループの資料には記載がありません。ガイドライン(案)では「約定結果の公表時期は応札の受付期間終了時点から3か月後を目途」とされ、改定日は「2026年 月 日(後日掲載予定)」=未確定です。具体日程はOCCTOの「長期脱炭素電源オークション募集要綱(応札年度:2026年度)」側で確定します。
  • 参考までに、第3回は2026年1月入札・2026年5月結果公表でした。第4回が同じ間隔になるとは限りません。
  • 優先約定とセル製造国30%制限の不適用は、いずれもリチウムイオン蓄電池が対象です(脚注37・38)。非リチウムイオンや揚水・LDESに同じ扱いが及ぶとは読めません。
  • 上限価格は「閾値20万円/kW/年を超える水準で設定」とされているのみで、具体の金額は本資料からは確定できません。
  • 本記事は2026年8月31日公表の一次資料に基づきます。同日以降の続報は反映していません。

7. よくある質問

第4回で蓄電池はどれくらい落札できますか。

区分a(リチウムイオン蓄電池)の募集上限は40万kWで、これを超えた落札は行われません。第3回は募集上限80万kWに対し超過落札ルールの適用で落札容量170万kWに達していましたが、第4回はこの超過落札が廃止されます。

募集上限の区分は具体的にどう分かれますか。

「a リチウムイオン蓄電池の案件」「b リチウムイオン蓄電池以外の蓄電池の案件」「c 揚水の新設・リプレース等案件とLDESの案件」の3区分で、それぞれ40万kWずつです。第3回は「a 揚水リプレース+リチウムイオン蓄電池」「b 揚水新設+非リチウムイオン蓄電池+LDES」の2区分でした。

優先約定とは何ですか。

経済安全保障推進法に基づく供給確保計画の認定を受けているメーカー(株式・持分50%超支配の国内外の子会社・孫会社を含む)が製造するセルを使用する蓄電池の案件を、優先的に約定する仕組みです。募集上限内で認定案件を価格の低い順に約定し、それで埋まらない場合に非認定案件が約定されます。

セル製造国30%制限はまだ有効ですか。

脚注38により、第3回入札で導入したセル製造国30%制限ルールは、リチウムイオン蓄電池については適用しないとされています。優先約定もリチウムイオン蓄電池のみに適用されます(脚注37)。

これは決定事項ですか、それとも検討段階の案ですか。

決定事項です。意見公募手続を終えており、意見募集期間は令和8年7月17日〜令和8年8月16日、意見提出件数は72件、結果の公示日は令和8年8月31日です(参考資料4 p1)。資料の記述も「〜とした」という確定形です。

第4回の募集量と上限価格を教えてください。

脱炭素電源枠の募集量は500万kWで第3回と同水準です。上限価格は閾値である20万円/kW/年を超える水準で設定されます。なおLNG専焼火力は別枠で600万kWが募集されるため、「第4回の募集量は500万kW」と単独で表記すると誤読を招きます。

応札の受付期間と結果公表はいつですか。

本ワーキンググループの資料には具体日の記載がありません。ガイドライン(案)は「約定結果の公表時期は応札の受付期間終了時点から3か月後を目途」としており、改定日も「2026年 月 日(後日掲載予定)」で未確定です。具体日程はOCCTOの募集要綱(応札年度:2026年度)側で確定します。

なぜ枠を絞るのですか。

資料では2つの理由が示されています。系統接続申込みが大幅に増加している蓄電池について落札ペースを調整すること、および慣性力・ブラックスタート機能を持つ揚水を一定量確保することです。

8. まとめ

  • 第4回の募集上限は「a リチウムイオン蓄電池」「b リチウムイオン蓄電池以外の蓄電池」「c 揚水の新設・リプレース等+LDES」の3区分・各40万kW。
  • 原文は「募集上限を超えた追加の落札はさせない」と明記。超過落札は廃止される。
  • 第3回は募集上限80万kWに対し超過落札ルールの適用で落札容量170万kW。第4回のリチウムイオン枠は40万kW。
  • 経済安全保障推進法の認定メーカー製セルを使う案件を優先的に約定。募集上限内で認定案件を価格の低い順に約定し、埋まらない場合に非認定案件を約定する。
  • 脚注38によりセル製造国30%制限はリチウムイオン蓄電池には不適用。優先約定もリチウムイオンのみ(脚注37)。
  • 募集量は脱炭素電源枠500万kW(第3回と同水準)、上限価格は閾値20万円/kW/年を超える水準。LNG専焼火力は別枠600万kW。
  • 意見公募(令和8年7月17日〜8月16日・意見72件)を終え、結果の公示日は令和8年8月31日。確定事項である。
  • 応札受付期間・約定結果公表日は本資料に記載がなく、OCCTOの募集要綱側で確定する。

発行・監修

系統用蓄電池(BESS)に関する国内外の一次情報を毎日モニタリングし、制度・市場・安全の3領域で解説しています。
一次情報主義
官公庁・送配電事業者・市場運営機関が公表した原典のみを根拠とし、業界紙・ブログ等の二次情報は本文に採録しません。
数値は原典から
募集上限・区分・落札容量・意見公募の件数と日付は、すべて電力安定供給ワーキンググループ 第6回の配布資料から直接取得しています。資料に記載がない事項は「記載なし」と明示し、推測で補いません。
訂正方針
誤りが判明した場合は本文を修正のうえ、ページ下部の更新ログに訂正内容と日付を残します。記述の差し替えを黙って行いません。

出典(一次情報)

  1. 資源エネルギー庁 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力安定供給ワーキンググループ(第6回)配布資料(2026年8月31日)https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/jisedai_kiban/stable_power_supply_wg/006.html
  2. 同 参考資料2「長期脱炭素電源オークションの第4回募集に向けて」(PDF・54頁)https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/jisedai_kiban/stable_power_supply_wg/pdf/006_s02_00.pdf
  3. 同 参考資料3(PDF・24頁)https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/jisedai_kiban/stable_power_supply_wg/pdf/006_s03_00.pdf
  4. 同 参考資料4 意見公募結果(PDF・56頁)https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/jisedai_kiban/stable_power_supply_wg/pdf/006_s04_00.pdf
更新ログ:2026-08-31 初版公開(応札受付期間・約定結果公表日はOCCTOの募集要綱で確定次第追記する)

出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/institutional/proffessional/4626503102001/

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