櫻貿易株式会社
制度・政策・審議会中級OCCTO:調整力委員会

【予備率2.0%、電力は足りる?】2028年1月、5エリアで3%割れ〜容量市場「補完オークション」案〜予備電源82.3万kWで3%確保の仮試算 〜BESS投資家が見るべき5つの論点〜

電力広域的運営推進機関(OCCTO)は、2026年8月24日の委員会で、2028年1月前半に中部・北陸・関西・中国・九州の5エリアで予備率3%を確保できない見通しを示しました。最大需要時は2.0%、冬季19時の最小予備率時は2.3%です。

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電力広域的運営推進機関(OCCTO)は、2026年8月24日の委員会で、2028年1月前半に中部・北陸・関西・中国・九州の5エリアで予備率3%を確保できない見通しを示しました。最大需要時は2.0%、冬季19時の最小予備率時は2.3%です。予備電源の知多第二発電所2号機、82万2,842kWを供給力に加えた仮試算では3.0%または3.8%まで改善します。
同じ委員会では、高経年電源を実需給1〜3年前に確保する「容量市場(補完オークション)」案も示されました。
本稿では、直近の対策と中期制度を分け、BESS(系統用蓄電池)の投資判断に必要な論点を整理します。

要点まとめ(まずここだけ3行)

・2028年1月前半、中部・北陸・関西・中国・九州の5エリアでは、厳しい寒さを想定した予備率が9時に2.3%、最大需要となる10時に2.0%となる見通しです。

・知多第二発電所2号機を供給力に加えた仮試算では、同じ5エリアが3.8%または3.0%となり、全ての月・エリアで3%以上を確保できます。

・補完オークションは高経年電源を実需給1〜3年前に確保する制度案であり、BESSの参加条件や収入は示されていません。

今回示されたのは「直近の需給対策」と「中期の制度案」

2028年1月前半の需給見通しと補完オークション案

2-1. 2028年1月前半、5エリアで予備率3%未満

資料2が扱う「2027年度の1月」は、暦年では2028年1月です。OCCTOは、過去10年間で最も厳しかった年度並みの気象条件を想定する「厳気象H1需要」に対し、予備率3%以上を確保できるか確認しました。その結果、5エリアで3%未満となりました。地域間連系線による融通や、発電設備が予定外に止まる割合も織り込んだ評価です。

2-2. 補完オークションは別の中期制度案

補完オークションは、2028年1月だけの緊急対策ではありません。メイン・追加オークション後も中期の需給見通しで不足が見込まれる場合に、実需給の1〜3年前から供給力を確保する案です。「2028年1月向けの補完オークション実施が決まった」という理解は誤りです。

2-3. 委員会後、事業者への補修調整依頼を公表

OCCTOは委員会翌日の2026年8月25日、発電事業者・小売電気事業者に既存補修の時期変更と新規補修停止の回避を依頼しました。一般送配電事業者にも、連系線や発電制約に影響する送変電設備の補修調整を求めています。協力依頼は公表済みですが、個別設備の変更が全て確定したわけではありません。

投資家が押さえるべき3つの数字

投資家が押さえるべき予備率と予備電源の数字

3-1. 19時は2.3%、10時は2.0%

2028年1月前半の5エリアは、冬季19時の最小予備率時が2.3%、冬季10時の最大需要時が2.0%です。予備率2.0%は「電気が2%足りない」という意味ではありません。需要100に対し供給力を約102持つ状態を示します。

3-2. 予備電源82.3万kWで3.8%・3.0%

予備電源として落札済みの知多第二発電所2号機82万2,842kWを供給力に加えた仮試算では、5エリアの予備率は19時で3.8%、10時で3.0%まで改善します。ただし、これは同機を供給力に算入した場合の仮試算です。

3-3. 年間評価は基準内で、停電確定ではない

H3需要と年間EUEの評価は基準内です。EUEとは、供給力不足により年間で供給できない可能性がある電力量の期待値です。2%台は厳しい寒さや計画外停止を想定した特定時間帯の評価であり、停電や年度を通じた電力不足が決まったわけではありません。

補完オークションは何を変えるのか

容量市場の補完オークション案の概要

4-1. 追加オークションの1年前では間に合わない電源を確保

容量市場では、メインオークションを実需給4年前、追加オークションを1年前に行います。
しかし、長期休止電源は修繕や人員・燃料の手配に時間がかかり、1年前では再稼働が間に合わない場合があります。補完オークションはこの空白を埋める案です。

4-2. 高経年電源を1〜3年、コストベースで確保する案

資料で示された骨格は次のとおりです。

・募集時期:実需給1〜3年前

・主な対象:計画上、休止・廃止となっている高経年(運転開始から長い年数が経過した)の既設電

・適用期間:1〜3年間

・価格方式:コストベースのマルチプライス

・契約:複数年契約を含め、総コストが小さくなる組み合わせを選定

・位置付け:容量市場の一部としてメインオークションを補完

マルチプライスとは、電源ごとの必要コストを踏まえて異なる価格を適用する方式です。市場収益の元も想定されています。

4-3. 予備電源との違いは「準供給力」か「供給力」か

予備電源は、稼働決定までは供給力に数えない「準供給力」です。補完オークションは、実需給年度の「供給力」として確保する案です。両制度の一括募集や移行方法は今後の検討事項です。

BESS投資家が見るべき5つの論点

BESS投資家が見るべき5つの論点

5-1. 現時点ではBESS向けの新市場ではない

主な対象は、計画上、休止・廃止となっている高経年電源です。新設BESSの参加枠や供給力評価は示されていません。
したがって、「BESSも参加できる」「新しい容量収入が得られる」とは言えません。反対に、将来も必ず対象外になるとも現段階では断定できません。

5-2. 事業収支に新収入を入れてはいけない

初回募集年度、BESSの参加資格、支払額、義務は未定です。投資採算の基本ケースには収入を入れず、正式要件の公表後に追加シナリオとして扱うのが妥当です。
複数市場の重複参加、供給義務、収益還元も確認が必要です。これは正式要件ではなく、実務上の注です。

5-3. 一つの大型電源で予備率が動く意味

知多第二発電所2号機の算入で、最大需要時の予備率は2.0%から3.0%へ動きます。需給見通しが大型電源の稼働可否や補修計画に敏感であることを示す数字です。ただし、これを根拠に卸価格や需給調整市場価格の上昇を断定することはできません。
読み取れるのは、厳しい時間帯に確実に使える供給力の有無が、需給評価を左右するという点までです。

5-4. 卸市場・需給調整市場への影響はまだ読めない

高経年火力の維持は将来の市場供給量や価格形成へ影響する可能性がありますが、資料にJEPX(日本卸電力取引所)価格、需給調整市場価格、BESS収益の試算はありません。
「BESS収益が必ず増える、または下がる」との断定はできません。

5-5. 制度詳細で確認すべき5項目

以下は正式要件ではなく、参加可能性を判断する実務チェックです。
1. 対象電源:高経年火力に限定するのか、技術中立とするのか
2. 供給力評価:出力、放電継続時間、SOCをどう評価するのか
3. 契約義務:対象時間、稼働指令、利用可能率、未達時の扱い
4. 他市場との関係:容量市場・需給調整市場・卸市場との重複参加、収益還元
5. 実施条件:初回募集年度、調達基準、対象エリア、調達量

誰に影響し、実務で何をするのか

補完オークション案が各事業者に与える影響

6-1. 発電事業者・小売電気事業者

OCCTOは、予備率が低い期間の補修時期変更と新規補修停止の回避を求めています。高経年電源の保有者は補完オークションが契約機会となるか、小売は容量拠出金による費用負担の設計を確認する必要があります。具体額と条件は未定です。

6-2. 一般送配電事業者

連系線や発電制約に影響する送変電設備の補修時期が確認対象です。

6-3. BESS事業者・投資家・アグリゲーター

アグリゲーター(複数設備を束ねて市場取引する事業者)を含め、新たな申請や入札対応は示されてません。収入を織り込まず、制度詳細を監視する段階です。
実効出力、継続時間、SOC管理、他市場との重複制約の整理は有用ですが、今回定められた義務ではりません。

決まったこと・案・未定事項

補完オークションに関する公表済み事項と未定事項

7-1. 公表済みの事実

・2028年1月前半の5エリアで、厳気象H1需要に対する予備率が2%台となる見通し

・知多第二発電所2号機は予備電源として落札済み

・事業者に対する補修停止計画の調整依頼は2026年8月25日に公表済み

・H3需要と年間EUEの評価は基準内

7-2. 制度案として示された内容

・補完オークションを容量市場の一部とする

・実需給1〜3年前を対象に募集する

・高経年電源を主な対象とする

・1〜3年の契約を可能とする

・コストベースのマルチプライスで調達する

7-3. まだ決まっていないこと

・正式な制度開始時期と初回募集年度

・実施を判断する調達基準と具体的な調達量

・予備電源・追加オークションとの役割分担

・リクワイアメント、ペナルティ、収益還元の詳細

・BESSを含む正式な対象電源

OCCTO資料は、これらを引き続き国と連携して検討するとしています。

まとめ:BESSの新収益ではなく、供給力価値の再設計を読む

BESS投資家が補完オークション案から読み取るべきポイント

重要なのは予備率2%台だけではありません。容量市場で確保しにくい高経年電源を、コストベースで残す方向も示されました。
BESSの参加権や新収入は示されていません。実務的には、「必要な年度・時間帯に確実に供給力を出せるか」を重視する方向が重要です。
投資家・事業者は収益を先取りせず、対象電源、供給力評価、契約義務、他市場との関係を追うべきです。BESSの新市場ではなく、供給力価値の再設計を示す初期資料と読むのが適切です。

よくある誤解(Q&A)

Q1. 2028年1月に停電することが決まったのですか?

A. 決まっていません。2%台は厳しい気象や計画外停止を織り込んだ特定時間帯の評価で、H3需要と年間EUEは基準内です。

Q2. 知多第二発電所2号機は稼働決定済みですか?

A. 予備電源としては落札済みですが、3.8%・3.0%は同機を供給力に加えた場合の仮試算です。

Q3. 5エリアにBESSを設置すれば有利ですか?

A. 判断できません。予備率は地域間融通後の値であり、立地点だけで市場収益や参加条件は決まりません。

Q4. 需給が厳しいならBESSの市場収益は上がりますか?

A. 今回の資料に価格・収益試算はありません。需給見通しと市場価格の予測は分けて考える必要があります。

Q5. 補完オークションへBESSは参加できますか?

A. 参加条件は示されていません。参加可能とも、将来も対象外とも断定できない段階です。

出典(一次情報のみ)

第121回委員会は2026年8月24日に開催され、公式ページは8月26日に更新されました。資料1は委員会後差替版で、12頁の引用元誤りが修正されています。
資料2は2026年8月24日付です。需給見通しは現時点の評価で、2027年3月の供給計画取りまとめに向けて見直されます。本記事の情報基準日は2026年8月31日です。

電力広域的運営推進機関「第121回 調整力及び需給バランス評価等に関する委員会」

https://www.occto.or.jp/iinkai/chousei_jukyu/121.html

開催日:2026-08-24 更新日:2026-08-26 参照日:2026-08-31

電力広域的運営推進機関「中長期の需給見通しを踏まえた供給力確保策について」資料1

https://www.occto.or.jp/assets/iinkai/chousei_jukyu/121/chousei_121_01.pdf

発行日:2026-08-24 参照版:委員会後差替版 参照日:2026-08-31

電力広域的運営推進機関「2027年度の需給見通しについて」資料2

https://www.occto.or.jp/assets/iinkai/chousei_jukyu/121/chousei_121_02.pdf

発行日:2026-08-24 参照日:2026-08-31

電力広域的運営推進機関「2027年度のさらなる供給力確保について」

https://www.occto.or.jp/news/kyoukei_oshirase_260825_2027kyoukyuryokukakuho.html

更新日:2026-08-25 参照日:2026-08-31

電力広域的運営推進機関「2025年度予備電源募集 落札結果の公表について」

https://www.occto.or.jp/assets/news/yobidengen/yobidengen_kekka_202603.pdf

公表日:2026-03-10 参照日:2026-08-31

監修者

監修者 青栁 福雄

青栁 福雄
Aoyagi fukuo

Energy Link 取締役 COO

系統運用・需要側制御・スマートグリッド分野の実務家。東京電力にて変電所の建設・運用・保守および大口顧客向けエネルギーソリューションに従事。マイエナジー出向時には2002年日韓ワールドカップの複数会場および国際放送センターの電源責任を担当。東光高岳では執行役員としてスマートグリッド事業を統括し、NEDO事業等に参画。2019年にEnergy Linkを創業し、分散型電源の導入・利活用を推進。

出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/institutional/standard/4626602102012/

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