「2年前」に出す蓄電池の停止計画——出力可能容量は「管理容量×調整係数」、重加算はペナルティ1.5倍
何が起きたか:容量停止計画のマニュアル案4本が意見募集された。
なぜ重要か:蓄電池の出力可能容量の算定式が明記された。
何をすべきか:9月16日17時までに意見を出すか算定を確認する。
容量市場に参加している電源は、2年先の停止予定をあらかじめ申告し、系統全体の供給力が足りなくなる時期に停止が重ならないよう調整を受ける。今回意見募集にかかったのは、その調整手続を書いた業務マニュアルの案である。
蓄電池の運用担当にとっての要点は2つに絞られる。申告する量がどう計算されるのかと、いつまでに出して、応じられないと何が起きるのかである。本稿はこの2点を軸に、マニュアル案(2028年度版・調整業務編)に書かれている値だけを並べて整理する。
9月16日17時までに意見を出せる4本のマニュアル案
意見募集期間は2026年9月3日(木)から2026年9月16日(水)17時までである。対象は次の4本で、いずれも実需給年度2028年度版と2027年度版が並ぶ構成になっている。
- 容量市場業務マニュアル 容量停止計画の調整業務編(実需給年度の2年度前に行う容量停止計画の調整)2028年度版
- 同 2027年度版
- 容量市場業務マニュアル 長期脱炭素電源オークション 実需給期間前から発生するリクワイアメント対応編(別冊)容量停止計画の調整業務 2028年度版
- 同 2027年度版
マニュアル案(2028年度版)の章構成は、第1章 はじめに/第2章 容量停止計画の提出手続/第3章 容量停止計画の調整手続/第4章 調整不調電源ペナルティ確定手続/第5章 ペナルティ確定完了以降の業務/Appendix である。提出から調整、ペナルティ確定、その後の業務までが章の順に並んでいるので、自社の関心のある工程から読み始められる。
本稿が引用する数値・条項は、いずれも「容量停止計画の調整業務編 2028年度版」の記載である。2027年度版および長期脱炭素電源オークションの別冊3本は編集部で未精読であり、これらの記載が2028年度版と同一であるかは確認していない。
蓄電池の出力可能容量は「各月の管理容量×調整係数」で決まる
ここが本稿の核である。容量停止計画に申告する量は、電源の種類によって拾う数値が違う。蓄電池について、マニュアル案の注5は次のように書いている。
発電方式の区分が純揚水・蓄電池の出力可能容量は、期待容量等算定諸元一覧の「各月の管理容量」に、作業及び作業を考慮した運転継続時間から求めた調整係数を乗じた値
要点を分解すると、土台になるのは期待容量等算定諸元一覧の「各月の管理容量」であり、そこに調整係数が掛かる。調整係数は「作業及び作業を考慮した運転継続時間」から求めるとされている。つまり、点検などの作業をどう織り込むかで運転継続時間の見積りが変わり、その見積りが係数を通じて申告量に効いてくる構造である。
火力のように定格出力から積む発想ではなく、月ごとの管理容量を出発点にする点が蓄電池・純揚水に固有の扱いである。「各月の」と書かれているとおり、月をまたいで一律の値を使う設計にはなっていない。
調整係数の具体的な算出手順や数値例は、本稿執筆時点でマニュアル案から読み取れていない。確認できているのは「各月の管理容量に、運転継続時間から求めた調整係数を乗じる」という構造そのものまでである。自社の申告量を詰めるには、期待容量等算定諸元一覧に載っている各月の管理容量と、作業計画を踏まえた運転継続時間の2つを先に固めておく必要がある。
提出期限は電源区分で違う(長期固定電源は7月末・それ以外は10月末)
2028年度版の記載では、容量停止計画の提出期限は電源区分で分かれている。
- 長期固定電源:実需給年度の2年度前の7月末日まで
- 長期固定電源以外:実需給年度の2年度前の10月末日まで
差は3か月である。自社電源がどちらに当たるかを確認しないまま10月末を前提に段取りを組むと、長期固定電源だった場合に7月末を過ぎてしまう。期限の特定よりも先に、電源区分の確認が来るという順序になる。
長期脱炭素電源オークションで落札した蓄電池は、今回の別冊マニュアル(実需給期間前から発生するリクワイアメント対応編)の対象にもなる。調整業務編と別冊の2本立てで確認する必要がある点に注意したい。別冊側の期限が調整業務編と同じかどうかは、本稿では未精読のため確認していない。
調整は11〜12月にSTEP1〜4で回る
提出された停止計画は、11〜12月に実施される調整手続にかかる。調整は一度で終わらず、STEP1からSTEP4までの複数ラウンドで回る設計になっている。
マニュアル案には「調整期間は、供給力の確保状況により必要により延長する場合」がある旨の記載もある。つまり11〜12月という枠は固定ではなく、供給力の確保状況によっては後ろに伸びうる。
調整が不調に終わった電源については、2月末頃に調整不調電源ペナルティ確定手続が行われる。提出から確定までを1本の線で見ると、2年度前の7月末または10月末に出し、同じ年の11〜12月に調整され、翌2月末頃に不調分の扱いが確定するという流れになる。
STEP1からSTEP4のそれぞれで何が行われ、どう期間が割り振られるのかは、本稿執筆時点で確認できていない。確認できているのは「11〜12月にSTEP1〜4の複数ラウンドで調整する」「必要により延長する場合がある」という2点である。
調整不調のペナルティは減額率0.3%相当、重加算は1.5倍
調整が不調に終わった場合の経済的ペナルティについて、マニュアル案の表3-1には減額率「0.300015」と記載され、「減額率を0.3%相当で固定」とされている。算定基礎は「約定時点ブロック構成における作業停止量で算定」である。
さらに重加算の規定がある。「調整期間終了以降に容量提供事業者の事由による停止期間の追加、変更を行ったことで供給信頼度確保へ影響を与える場合には…経済的ペナルティ金額を1.5倍したものを科す場合」があるとされている。
実務的な意味は明快である。調整期間が終わった後に自社の事情で停止期間を動かすと、通常のペナルティに1.5倍が乗りうる。停止計画は「出したら動かせない」前提で組むのが安全側の設計になる。
経済的ペナルティの具体的な計算式、減額率0.3%の根拠、上限値・段階設定は、マニュアル案から読み取れていない。減額率0.300015という値、0.3%相当で固定という記述、算定基礎が約定時点ブロック構成における作業停止量であることまでが確認できている範囲であり、実際の金額水準を本稿から試算することはできない。
専門家の視点
- 注5の算定式が明文化されたことが、今回のいちばんの実務インパクトである。「発電方式の区分が純揚水・蓄電池の出力可能容量は、期待容量等算定諸元一覧の『各月の管理容量』に、作業及び作業を考慮した運転継続時間から求めた調整係数を乗じた値」とあり、蓄電池は管理容量ベースに調整係数を適用する。定格出力から積む発想では申告量が合わない。
- 提出期限が電源区分で違う点は、社内の段取りに直結する。長期固定電源は実需給2年度前の7月末日まで、それ以外は実需給2年度前の10月末日までである。区分の確認を後回しにすると、3か月分の準備期間を取り違える。
- ペナルティは率が固定されている一方、重加算の条件は事業者側の行動に紐づく。表3-1に減額率「0.300015」と記載され「減額率を0.3%相当で固定」とされる。調整期間終了以降に事業者の事由で停止期間を追加・変更し供給信頼度に影響を与えた場合は1.5倍の重加算がある。率が固定である以上、金額を抑える余地は「停止量を減らす」か「調整期間内に収める」かの2つに限られる。
提出の実務(容量市場システム・CSVの命名規則)
提出は容量市場システム経由である。登録方法は2通りで、一括登録は「容量停止計画設定CSV」のCSVアップロード、個別は直接登録となる。あわせて、流通設備作業通知はEXCELファイル(様式1)である。
CSVのファイル名形式は次のように定められている。
容量停止計画_事業者コード(4桁)_対象実需給年度_電源等識別番号(10桁)_R変更回数.CSV
命名規則に桁数が指定されている点は見落としやすい。事業者コードは4桁、電源等識別番号は10桁で、末尾には変更回数を示す「R」付きの連番が入る。複数電源をまとめて登録する運用では、ファイル名の生成をテンプレート化しておかないと取り違えが起きる。
意見の出し方
意見は所定の意見提出様式(Excel)を電子メールに添付し、OCCTO需給計画部(youryou_ikenboshuu@occto.or.jp)へ送付する。日本語限定で、1件あたり理由も含め原則1,000文字以内とされている。締切は2026年9月16日17時である。
文字数の上限が決まっているため、算定係数の扱いのように論点が複数ある場合は、件を分けて出す形になる。様式と提出先は意見募集ページから確認できる。
いま取るべきアクション
| # | アクション | 期限 |
|---|---|---|
| 1 | 自社電源の区分(長期固定電源か否か)を確認し、容量停止計画の提出期限を特定する | 2026-09-16 |
| 2 | 期待容量等算定諸元一覧の「各月の管理容量」と、運転継続時間から求める調整係数の算定根拠を整理する | 2026-09-16 |
| 3 | 長期脱炭素電源オークションの落札電源がある場合は別冊マニュアル(2028年度版・2027年度版)も確認する | 2026-09-16 |
| 4 | 意見がある場合は意見提出様式(Excel)でOCCTO需給計画部へ提出する(1件あたり原則1,000文字以内) | 2026-09-16 17時 |
数値照合表
本文に出た主要数値と一次情報を1対1で対照した表である。
| # | 項目 | 本文の値 | 一次情報(出典) |
|---|---|---|---|
| 1 | 意見募集期間 | 2026年9月3日(木)〜9月16日(水)17時 | OCCTO 意見募集ページ |
| 2 | 対象マニュアル案の本数 | 4本(2028年度版・2027年度版) | 同 意見募集ページ |
| 3 | 蓄電池・純揚水の出力可能容量 | 期待容量等算定諸元一覧の「各月の管理容量」×(作業及び作業を考慮した運転継続時間から求めた)調整係数 | 調整業務編 2028年度版 PDF(注5) |
| 4 | 提出期限(長期固定電源) | 実需給2年度前の7月末日まで | 同 2028年度版 PDF |
| 5 | 提出期限(長期固定電源以外) | 実需給2年度前の10月末日まで | 同 2028年度版 PDF |
| 6 | 調整手続の時期・ラウンド | 11〜12月/STEP1〜4の複数ラウンド | 同 2028年度版 PDF |
| 7 | 調整不調電源ペナルティ確定手続 | 2月末頃 | 同 2028年度版 PDF |
| 8 | 経済的ペナルティの減額率 | 0.300015(「減額率を0.3%相当で固定」) | 同 2028年度版 PDF(表3-1) |
| 9 | 経済的ペナルティの算定基礎 | 約定時点ブロック構成における作業停止量で算定 | 同 2028年度版 PDF |
| 10 | 重加算措置 | 経済的ペナルティ金額の1.5倍を科す場合 | 同 2028年度版 PDF |
| 11 | 提出方法 | 容量市場システム経由(一括=容量停止計画設定CSVのアップロード/個別=直接登録/流通設備作業通知=EXCEL様式1) | 同 2028年度版 PDF |
| 12 | CSVのファイル名形式 | 容量停止計画_事業者コード(4桁)_対象実需給年度_電源等識別番号(10桁)_R変更回数.CSV | 同 2028年度版 PDF |
| 13 | 意見の文字数上限 | 1件あたり理由も含め原則1,000文字以内(日本語限定) | OCCTO 意見募集ページ |
| 14 | 経済的ペナルティの計算式・0.3%の根拠・上限値/段階設定 | 未確認(マニュアル案から読み取れていない) | 同 2028年度版 PDF |
| 15 | 2027年度版・長期脱炭素版3本の記載 | 未確認(編集部で未精読) | OCCTO 意見募集ページ |
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- 本文に登場した主要数値は「数値照合表」で出典と1対1で対照できるようにしています。
- 事実確認の限界(原本の一部が未精読である、第三者検証ができない等)は、隠さず本文に記載します。本稿では2027年度版および長期脱炭素電源オークション別冊3本が未精読であることを明記しています。
出典(一次情報)
- OCCTO:「容量市場業務マニュアル 容量停止計画の調整業務編」等に関する意見募集について(2026-09-03)
- 容量停止計画の調整業務編(2028年度版・PDF)
- 容量停止計画の調整業務編(2027年度版・PDF)
- 長期脱炭素電源オークション 別冊 容量停止計画の調整業務(2028年度版・PDF)
- 長期脱炭素電源オークション 別冊 容量停止計画の調整業務(2027年度版・PDF)
- OCCTO:容量停止計画調整業務に関する情報
※二次情報(業界紙・ニュースサイト・プレスリリース配信)は出典に用いていません。本稿の数値は出典2(2028年度版・調整業務編)の記載に基づき、出典3〜5は編集部で未精読です。
出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/market/proffessional/4627203001001/
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