櫻貿易株式会社
市場・価格上級

関西送配電、揚水発電機の随意契約で約47万kWを確保。需給調整市場の複合市場商品の募集量を4月3日取引分から見直し

関西電力送配電は2026年4月1日、調整力提供事業者と揚水発電機の運用権貸与に関する随意契約を結んだと公表した。契約容量は約47万kW、適用期間は2026年4月4日から2027年3月31日まで。これに合わせて、需給調整市場で募集する複合市場商品の量を、4月3日取引分(4日受渡分)から見直す。随契で確保したΔkWの分は、市場で募集する量から商品ごとに差し引かれる。関西エリアで一次〜三次①や複合商品に応札している蓄電池にとっては、入札できる枠そのものが動く話だ。

読了目安:約7分対象読者:上級(関西エリアで需給調整市場に応札するアグリゲーター・蓄電池の運用事業者)誰向けか:アグリゲーター 必読/投資家は背景として種別:一般送配電事業者のお知らせの解説

要点まとめ

何が起きたか:関西電力送配電が揚水発電機の運用権貸与に関する随意契約(約47万kW、2026年4月4日〜2027年3月31日)を締結し、需給調整市場の複合市場商品の募集量を4月3日取引分から見直すと公表した。

なぜ重要か:随契で押さえたΔkWの分は、一次・二次①・二次②・三次①・複合の募集量から商品ごとに控除される。市場で約定できる量の上限は、契約期間中、随契機が止まる日を除いて小さくなる側に動く。

何をすべきか:関西で応札している事業者は、お知らせのグラフで商品別・日別の募集量を確かめ、入札量を組み直す。10月以降の分は9月頃の公表を待って下期の計画に反映する。

揚水随契と需給調整市場の募集量見直しの全体像

揚水随契は、一般送配電事業者が揚水発電機の運用権を借り、調整力として使う随意契約である。関西電力送配電は2026年3月30日の第19回制度設計・監視専門会合に、2026年度の契約概要を出していた(資料5-3 p.8)。契約容量は47万kWで、発電機2台分。揚水機は一般送配電事業者(TSO)が運用する。

契約額の決め方も同じページにある。対象発電機の固定費(容量市場収入を除く)と、ポンプロス託送料金のように運用に伴って精算が必要な費用について、実績に対して事後に精算する。4月1日のお知らせはこれを受けた契約締結の報告で、容量は「約47万kW」と書いている。

蓄電池事業者にとって大事なのは市場との関係だ。資料5-3は需給調整市場の調達について「複合商品の募集量から、随契により確保したΔ㎾分を商品毎に控除」と書く。市場の外で押さえた分だけ、市場で募集する量が小さくなる、という仕組みである。需給調整市場そのものの仕組みは入門記事「需給調整市場(EPRX)入門」にまとめている。

関西電力送配電が調整力提供事業者と揚水発電機2台分・約47万kWの運用権貸与の随意契約を結び、確保したΔkW分を一次・二次①・二次②・三次①・複合の募集量から商品ごとに控除する仕組みを示す図。
図1:揚水随契と募集量の控除の仕組み。出典=関西電力送配電 2026年4月1日のお知らせ p.1、監視委 第19回 資料5-3 p.8。作図=BESS NEWS編集部。

この控除が市場に効くことは、監視委事務局も前提にしている。同じ第19回の資料4(p.14)は、中部・東北・関西・東京の4社について「2026年度における揚水随契を認めても差し支えない」と整理した。一方で北海道NWは「揚水随契による市場募集量の減少が大きいことから」期初からは継続せず、1〜2か月程度の市場動向等を見てから実施の有無を改めて判断するとした。随契を続けるかどうかを、市場の募集量がどれだけ減るかで分けて判断している。

細かい点を一つ。お知らせは根拠資料(※1)の会合名を「制度検討・監視専門会合」と書いているが、監視委の配布資料ページでの名称は「制度設計・監視専門会合」である。お知らせに載っている資料のURLは、配布資料ページの資料4と同じものだ。

契約容量約47万kW・適用期間と商品別の募集量推移

お知らせ(全6ページ)の1ページ目と資料5-3から、契約の中身を並べるとこうなる。

項目内容根拠
契約の相手調整力提供事業者(事業者名・発電所名は示されていない)お知らせ p.1
契約の中身揚水発電機の運用権貸与に関する随意契約お知らせ p.1
契約容量約47万kW(資料5-3では47万kW・2台分)お知らせ p.1/資料5-3 p.8
適用期間2026年4月4日〜2027年3月31日お知らせ p.1
募集量の見直し2026年4月3日取引分(4日受渡分)から2027年3月31日までお知らせ p.1
揚水機の運用TSO運用資料5-3 p.8
需給調整市場の調達複合商品の募集量から、随契で確保したΔkW分を商品ごとに控除資料5-3 p.8

取引日と受渡日が1日ずれている点に注意したい。適用期間の初日は4月4日だが、その日に受け渡す分は前日の4月3日に取引される。だから見直しは「4月3日取引分」から始まる。

見直し後の募集量は、お知らせの2〜6ページにグラフで載っている。一次・二次①・二次②・三次①・複合の5商品それぞれについて、2026年4月から9月までを1か月1枚で並べた形だ。数値の表は付いていない。

2026年3月30日の第19回会合から、4月1日の契約締結、4月3日取引分からの募集量見直し、4月4日の適用開始、9月頃の下期分のお知らせ予定、2027年3月31日の適用終了までを並べた時系列図。
図2:見直しの日程。出典=関西電力送配電 2026年4月1日のお知らせ p.1〜6、監視委 第19回制度設計・監視専門会合 配布資料。作図=BESS NEWS編集部。

グラフの読み方には注記がある。募集量は、発電情報公開システムで確認した揚水随契機の停止計画を反映したもので、今後の稼働状況によっては変わる場合がある。実際、グラフには月の途中で募集量の水準が段差のように上下する箇所がいくつもある。お知らせは個々の段差の理由を書いていない。ただ、停止計画を反映しているという注記と合わせると、随契機が止まる期間は控除が外れて募集量が戻る形だと読める(編集部の解釈)。

2026年10月から2027年3月までの推移は、2026年9月頃に知らせる予定とされている。見直し後の募集量の考え方については、お知らせは第94回制度検討作業部会の資料3「需給調整市場について」を根拠に挙げている。この資料は本稿の作成時に取得できず、中身は確認していない。

蓄電池の調整力応札枠への影響と入札計画への反映

募集量は、その商品で約定しうる量の上限にあたる。関西エリアで一次〜三次①や複合商品に応札している系統用蓄電池からみると、随契で控除された分だけ、同じ入札価格でも約定できる余地が小さくなる。どれだけ小さくなるかは商品と日によって違い、お知らせのグラフで確かめるしかない。

実務で確かめる順番を挙げておく。

#確かめること根拠
1自社の応札が、関西エリアの一次・二次①・二次②・三次①・複合のどれにかかっているかお知らせ p.2〜6
24月3日取引分以降の募集量を、該当商品のグラフで日ごとに見たかお知らせ p.2〜6
3募集量が揚水随契機の停止計画で動く前提で、日ごとの入札量を組んでいるかお知らせ p.1【補足】
410月以降の募集量(9月頃の公表予定)を受けて、下期の計画を直す段取りがあるかお知らせ p.1【補足】
投資判断の担当者へ

約47万kWは契約容量であって、募集量の減少幅ではない。商品ごとに控除されるΔkWの量は、お知らせに数値で示されていない。また本契約による見直しは2027年3月31日までで、2027年度以降に揚水随契が続くかどうかは、このお知らせからは分からない。収益の前提を置き直すなら、年度ごとの扱いを分けて見ておきたい。

よくある質問

Q1. 揚水随契とは何ですか。
一般送配電事業者が、調整力提供事業者から揚水発電機の運用権を借りる随意契約です。関西電力送配電の2026年度の契約は契約容量47万kW(2台分)で、揚水機は一般送配電事業者(TSO)が運用します。契約額は、発電機の固定費(容量市場収入を除く)と、ポンプロス託送料金などの運用に伴う費用の実績に対して事後に精算します(監視委 第19回 資料5-3 p.8)。
Q2. 募集量はどれだけ減るのですか。
商品ごとの減少量は、数値では示されていません。資料5-3は「複合商品の募集量から、随契により確保したΔ㎾分を商品毎に控除」と書いています。関西電力送配電のお知らせは見直し後の4〜9月の推移を5商品の月別グラフで示していますが、数値の表は付いていません。約47万kWは契約容量で、そのまま各商品の募集量が47万kW減るという意味ではありません。
Q3. 見直しはいつから、いつまでですか。
2026年4月3日取引分(同月4日受渡分)からです。契約の適用期間は2026年4月4日〜2027年3月31日で、本契約による募集量の見直しも2027年3月31日まで実施するとされています。
Q4. お知らせのグラフの募集量は確定値ですか。
確定値ではありません。お知らせは、募集量に発電情報公開システムで確認した揚水随契機の停止計画を反映しており、今後の稼働状況によって変更となる場合がある、と注記しています。
Q5. 2026年10月以降の募集量はどうなりますか。
2026年4月1日のお知らせでは、2026年10月〜2027年3月の推移は2026年9月頃に知らせる予定とされています。下期の入札計画は、その公表を待って組み直すことになります。
Q6. 関西以外のエリアでも揚水随契はありますか。
2026年3月30日の第19回制度設計・監視専門会合の資料4は、中部・東北・関西・東京の4社について2026年度の揚水随契を認めても差し支えないと整理しました。北海道NWは、揚水随契による市場募集量の減少が大きいことから期初は継続せず、1〜2か月程度の市場動向等を分析・評価したうえで実施の有無を改めて判断するとしています。
Q7. 契約の相手先や発電所名は公表されていますか。
関西電力送配電のお知らせは、相手先を「調整力提供事業者」とだけ書いており、事業者名や発電所名は示していません。資料5-3も「2台分」とするにとどまります。

編集部の見立て

  1. 関西の約47万kWは、市場の外で1年間押さえる調整力である。蓄電池から見れば、募集枠のうちその分は最初から入札の対象にならない。問題は量そのものより、控除が停止計画にあわせて日ごとに変わることで、毎日の入札量を固定値で組んでいる運用ほど、約定の取りこぼしと応札の空振りが出やすくなる。
  2. 監視委事務局が北海道で随契を期初から続けなかった理由は「市場募集量の減少が大きい」ことだった。随契を続けるかどうかを市場への影響で判断する、という物差しが資料4で示されたことになる。関西の2027年度以降の扱いも、同じ物差しで議論されるとみておくのが自然だろう。
  3. 下期の数字は9月頃まで出ない。上期のグラフを手元で数値に起こし、どの商品でどれだけ枠が動いたかを記録しておくと、下期の公表が出たときに比べやすい。

編集体制と事実確認プロセス

BESS NEWSの記事はこう作っています

  • BESS NEWSは一次情報主義を採ります。官公庁・電力広域的運営推進機関・一般送配電事業者などが自ら公表した文書とページのみを出典とし、業界紙・ニュースサイト・プレスリリース配信の二次情報は出典に用いません。
  • 本稿の数値・日付は、関西電力送配電のお知らせ(PDF、全6ページ)を2026年10月4日に取得し、1ページ目の本文と2〜6ページのグラフの見出しを確認して突合しました。グラフはページ画像に描画して目で見ています。
  • 監視委 第19回の資料4・資料5-3は、取得元のサーバーがPDFの直接ダウンロードを拒否したため、ウェブ取得ツールによるテキスト抽出で該当ページの文言を確認しました。ページ画像での確認はしていません。第94回制度検討作業部会の資料3は取得できず、本稿ではお知らせが根拠に挙げていることだけを書いています。
  • 本稿は2026年4月1日公表の資料にもとづく遡及記事で、2026年10月4日に作成しました。本文は4月1日時点までに公表された資料だけで書いています。
  • グラフの段差の読み方、入札実務で確かめる順番、編集部の見立ては、一次情報の事実にもとづく編集部の解釈です。確定的な見通しではありません。

数値照合表

本文に出した主要な数値と事実を、一次情報の該当箇所と1対1で対照した表である。

#本文の数値・事実一次情報の記載出典(該当箇所)
1契約容量 約47万kW「契約容量:約47万kW」お知らせ p.1
2適用期間 2026年4月4日〜2027年3月31日「適用期間:2026年4月4日~2027年3月31日」お知らせ p.1
34月3日取引分(4日受渡分)から見直し「2026年4月3日取引分(同年同月4日受渡分)から、国の審議会※2の整理に基づいた募集量に見直します」お知らせ p.1
4見直しは2027年3月31日まで「本契約による複合市場商品の募集量の見直しは、2027年3月31日まで実施いたします」お知らせ p.1
5募集量は停止計画を反映・変更の場合あり「発電情報公開システムより確認した揚水随契機の停止計画を反映しており、今後の稼働状況によっては変更となる場合があります」お知らせ p.1【補足】
610月〜3月分は9月頃に知らせる予定「2026年10~2027年3月までにおける複合市場商品の募集量の推移は、2026年9月頃にお知らせする予定です」お知らせ p.1【補足】
75商品の4〜9月の月別グラフ見出し【一次】【二次①】【二次②】【三次①】【複合】、各ページに4月〜9月のグラフお知らせ p.2〜6
847万kW・2台分「47万kW(2台分)」第19回 資料5-3 p.8
9随契ΔkW分を商品ごとに控除「複合商品の募集量から、随契により確保したΔ㎾分を商品毎に控除」第19回 資料5-3 p.8
10揚水機はTSO運用「TSO運用」第19回 資料5-3 p.8
11契約額は固定費(容量市場収入を除く)等の実績で事後精算「契約対象発電機の固定費(容量市場収入を除く)、運用に伴い、精算が必要な費用(ポンプロス託送料金等)の実績に対し、事後精算」第19回 資料5-3 p.8
124社の揚水随契を認めても差し支えない「中部、東北、関西及び東京」…「2026年度における揚水随契を認めても差し支えない」第19回 資料4 p.14
13北海道NWは期初から継続せず、1〜2か月程度の市場動向を見て判断「揚水随契による市場募集量の減少が大きいことから、2026年度期初から揚水随契を継続はせず、1~2ヶ月程度の市場動向等を分析・評価した上で、揚水随契実施の有無を改めて判断する」第19回 資料4 p.14
14第19回会合 2026年3月30日表紙「2026年3月30日(月)」第19回 資料4 p.1

出典(一次情報)

  1. 関西電力送配電「揚水発電機を用いた随意契約の締結に伴う需給調整市場における複合市場商品の募集量の見直しについて」(2026年4月1日 公表。PDF全6ページ)
  2. 関西電力送配電「資料5-3 関西エリアにおける2026年度の揚水随意契約について」(第19回制度設計・監視専門会合)(2026年3月30日 開催の会合資料。本稿はp.8を参照)
  3. 電力・ガス取引監視等委員会 事務局「資料4 2026年度における揚水随契について」(第19回制度設計・監視専門会合)(2026年3月30日 開催の会合資料。本稿はp.1・p.14を参照)
  4. 電力・ガス取引監視等委員会「制度設計・監視専門会合(第19回)‐配布資料」(2026年3月30日 開催)
  5. 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス基本政策小委員会 制度検討作業部会(第94回)資料3「需給調整市場について」(お知らせが根拠に挙げる資料。本稿の作成時に取得できず、内容は未確認)

※二次情報(業界紙・ニュースサイト・プレスリリース配信)は出典に用いていません。出典2・3の文言はテキスト抽出で確認しています(編集体制の項を参照)。

出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/market/proffessional/4611303001005/

本記事は BESS media の転載条件(出典明記のうえ全文転載可)にもとづき転載しています。 記事内容の著作権は転載元に帰属します。

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