東北電力NW、需給調整市場の募集量予定を見直し。揚水随契の分を複合商品から控除(2026年4〜9月)
東北電力ネットワークが、需給調整市場で2026年4月から9月に募集する量の予定を出し直した。揚水発電機で調整力を出す随意契約(契約容量 最大23万kW)を結んだためで、2026年4月1日受け渡し分から、複合市場商品の募集量からその調整力相当量を差し引く。予定の資料は5ページあり、一次調整力・二次調整力①・二次調整力②・三次調整力①・複合商品を1ページずつ日別のグラフで示している。数値の表は付いていない。編集部がPDFの線を目盛りに当てはめて読むと、二次調整力②の1日の山は4月の約600MWから7月には約300MWまで下がり、9月に約460MWへ戻る。
CONTENTS目次
何が起きたか:東北電力ネットワークが揚水発電機による調整力の随意契約(最大23万kW、2026年4月1日〜2027年3月31日)を結び、2026年4月1日受け渡し分から複合市場商品の募集量をその分だけ減らす見直しを行った。見直し後の4〜9月の募集量予定を5商品のグラフで出した。
なぜ重要か:東北で蓄電池を複合商品に出す事業者にとって、応札できる枠が揚水の分だけ小さくなる。商品ごとの量の大きさと月ごとの変化も、この資料でしか見られない。
何をすべきか:複合商品の応札量を見込むときは見直し後の値を使う。二次調整力②は月によって山の高さが大きく変わるので、月別に容量配分を組み直す。
何が見直されたか。揚水随契の分を複合商品から控除
需給調整市場は、一般送配電事業者が周波数や需給の調整に使う力(調整力)を、商品ごとに事業者から調達する市場である。仕組みそのものは入門記事「需給調整市場(EPRX)入門」にまとめている。東北エリアでは東北電力ネットワークが買い手になる。
今回の見直しの発端は、一次調整力が思うように集まっていないことにある。お知らせは「需給調整市場の一次調整力の調達率が低水準であることなどから」、国の審議会での整理のとおり、調整力提供事業者との間で揚水発電機による調整力提供の随意契約を協議し、締結を終えたと書いている。審議会として挙げられているのは、第19回 電力・ガス取引監視等委員会 制度設計・監視専門会合の資料4「2026年度における揚水随契について」と資料5-2「東北エリアにおける2026年度の揚水随意契約について」である。
契約の中身は2点だけ公表されている。契約容量は最大23万kW、契約期間は2026年4月1日から2027年3月31日まで。
この契約を受けて、東北電力ネットワークは複合市場商品の募集量を見直した。総合資源エネルギー調査会 制度検討作業部会の第94回資料3「需給調整市場について」の整理に基づき、2026年4月1日受け渡し分から、契約で調達した揚水発電機の調整力相当量を控除する。見直しは契約期間が終わる2027年3月31日まで続く。
需給調整市場における複合市場商品の募集量について、2026年4月1日受け渡し分から、本契約のもと調達した揚水発電機の調整力相当量を控除する見直しを実施いたします
— 東北電力ネットワーク お知らせ(2026年10月4日取得)読むときに気をつけたい点が2つある。まず、差し引かれるのは「調整力相当量」で、契約容量の23万kWがそのまま募集量から消えるとは書かれていない。次に、見直し前の募集量は今回の資料に載っていない。だから、どのコマで何MW減ったのかは、この資料からは計算できない。
もう一つ。きっかけは一次調整力の調達率だが、控除先として名指しされているのは複合市場商品である。一次調整力の募集量から揚水分を引くとは書かれていない。
5商品の募集量をグラフから読む
見直し後の予定は「見直し後の需給調整市場における募集量の予定(2026年4月~2026年9月)」というPDFにまとまっている。5ページで、1ページに1商品。各ページに4月から9月までの6枚のグラフが並ぶ。横軸は日付、縦軸は募集量(MW)である。
縦軸の上限は商品で違う。一次調整力と二次調整力①は300MW、二次調整力②と三次調整力①は700MW、複合商品は900MWまで目盛りが振ってある。これは目盛りの最大値であって、募集量の上限ではない。
数値の表が無いので、編集部はPDFに描かれた線のデータを目盛りに当てはめて読んだ。線は1日あたり48の点でできていて、30分ごとの値を結んだものと読める(資料に時刻の目盛りは無い)。下の表は月ごとの最小と最大を10MW単位に丸めた概数である。
| 商品 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 一次調整力 | 110〜220 | 100〜230 | 100〜200 | 90〜190 | 90〜210 | 90〜200 |
| 二次調整力① | 100〜210 | 90〜230 | 80〜190 | 70〜180 | 70〜210 | 80〜190 |
| 二次調整力② | 170〜600 | 160〜650 | 160〜460 | 150〜300 | 150〜390 | 150〜460 |
| 三次調整力① | 70〜470 | 70〜610 | 70〜490 | 50〜510 | 40〜570 | 70〜410 |
| 複合商品 | 290〜760 | 280〜870 | 260〜600 | 270〜630 | 280〜780 | 270〜690 |
単位MW。PDFのグラフの線を目盛り線に当てはめた編集部の読み取り(10MW単位に丸め)。資料に数値の記載は無い。5月・8月の最大値は、形の違う数日の山を含む。
表から見えることを3つ挙げる。
一つ目は、月の中ではほぼ同じ形の線が毎日繰り返されることだ。形が違うのは5月8〜9日ごろと8月1〜2日ごろの数日で、5商品ともこの日に山が高くなる。たとえば二次調整力②の5月は、ふだんの日の山が約570MWなのに、この数日は約650MWまで上がる。理由は資料に書かれていない。
二つ目は、二次調整力②の月ごとの変化が大きいこと。1日の山は4月に約600MW、6月に約460MW、7月に約300MWと下がり、9月に約460MWへ戻る。1日の中の底は150〜170MW前後でほとんど動かない。変わるのは山の高さのほうである。
三つ目は、三次調整力①の1日の振れ幅だ。底は40〜70MW台、山は410〜610MWで、1日のうちに数百MWの差がある。一次調整力と二次調整力①は70〜230MWの帯に収まり、月による差は小さい。
5商品の値を足し合わせて東北エリア全体の調達量とする読み方は、資料からは支えられない。複合商品と他の商品との関係や、同じ容量が重ねて数えられていないかは、この資料に書かれていないためだ。本稿の表も商品ごとに読むためのものである。
蓄電池の応札計画で確かめること
この資料は、どの商品にどれだけの枠があるかを半年先まで見通す材料になる。東北で蓄電池を需給調整市場に出している、あるいは出す予定のアグリゲーターなら、次の順で手元の計画と突き合わせておきたい。
| # | 確かめること | 根拠 |
|---|---|---|
| 1 | 複合商品の応札量を見込むとき、揚水随契の控除が入った見直し後の予定値を使っているか | お知らせ・PDF p.5 |
| 2 | 二次調整力②に出す容量を4〜5月と7月で同じにしていないか。山の高さが月によって倍近く違う | PDF p.3(編集部の読み取り) |
| 3 | 三次調整力①は1日の振れ幅が大きい。時間帯ごとに応札量を変える組み方になっているか | PDF p.4(編集部の読み取り) |
| 4 | 5月8〜9日ごろ・8月1〜2日ごろのように形の違う日を、月の平均で均してしまっていないか | PDF p.1〜5(編集部の読み取り) |
| 5 | 取引ごとに公表される実際の募集量と、この予定値のずれを記録しているか | 資料の題名が「予定」であること |
募集量は買い手が用意する枠の大きさで、蓄電池がどれだけ落札できるか、いくらで約定するかは示さない。表のMWも概数の読み取りである。案件の収益見込みにそのまま掛け算で使える数字ではない。
よくある質問
編集部の見立て
- 複合商品に出している蓄電池にとって、今回の見直しは枠が小さくなる方向の変更である。ただ、減った量は資料から計算できない。見直し前の予定値を手元に残している事業者は、今回の版と並べてコマごとの差を取っておくと、揚水随契が終わる2027年4月以降の変化も追いやすい。
- 二次調整力②の山が7月に約300MWまで下がる点は、容量配分を考えるうえで見逃せない。4月と同じ配分のまま夏を迎えると、二次調整力②では小さくなった枠に応札が集まる場面が出てくると編集部はみている。どの商品に振り向けるかは、月ごとに決め直す前提で計画を組みたい。
- 一次調整力の調達率の低さがきっかけの随意契約で、控除が複合商品に入る理由は、お知らせからは読み取れない。根拠として挙げられた第19回 制度設計・監視専門会合の資料と第94回 制度検討作業部会の資料3に、整理の中身が書かれているはずなので、あわせて確認したい。
編集体制と事実確認プロセス
BESS NEWSの記事はこう作っています
- BESS NEWSは一次情報主義を採ります。官公庁・電力広域的運営推進機関・一般送配電事業者などが自ら公表した文書とページのみを出典とし、業界紙・ニュースサイト・プレスリリース配信の二次情報は出典に用いません。
- 本稿は、東北電力ネットワークのお知らせページと、募集量の予定のPDF(全5ページ)を2026年10月4日に取得して書きました。契約容量・契約期間・控除の対象と開始日は、お知らせの本文と1件ずつ突き合わせています。
- PDFにはMWの数値が書かれていません。グラフの線はベクターデータとして埋め込まれているため、各グラフの目盛り線の位置から縮尺を求め、線の点を値に換算しました。表の値はその最小・最大を10MW単位に丸めたもので、ページ画像でも目盛りとの位置関係を目で確かめています。
- お知らせページは取得時点で「2026年9月28日(更新)」と表示されており、最初の掲載日はページ上で確かめられませんでした。PDFの作成日時の記録は2026年4月2日です。本稿は資料の公表日を採録データの2026年4月1日として扱っています。
- お知らせが根拠として挙げる第19回 制度設計・監視専門会合の資料と第94回 制度検討作業部会の資料は、取得を試みましたが本稿の作成環境から開けなかったため、中身には触れていません。
- 表から読める傾向と、応札計画で確かめることの整理は、一次情報の事実にもとづく編集部の解釈です。確定的な見通しではありません。
数値照合表
本文に出した主要な数値と事実を、一次情報の該当箇所と1対1で対照した表である。
| # | 本文の数値・事実 | 一次情報の記載 | 出典(該当箇所) |
|---|---|---|---|
| 1 | 契約容量 最大23万kW | 「契約容量:最大23万kW」 | 東北電力NW お知らせ 本文 |
| 2 | 契約期間 2026年4月1日〜2027年3月31日 | 「契約期間:2026年4月1日~2027年3月31日」 | 東北電力NW お知らせ 本文 |
| 3 | 控除は2026年4月1日受け渡し分から、対象は複合市場商品 | 「複合市場商品の募集量について、2026年4月1日受け渡し分から、本契約のもと調達した揚水発電機の調整力相当量を控除する見直し」 | 東北電力NW お知らせ 本文 |
| 4 | 見直しは2027年3月31日まで | 「本契約に基づく募集量の見直しは、契約期間が満了する2027年3月31日まで実施」 | 東北電力NW お知らせ 本文 |
| 5 | きっかけは一次調整力の調達率 | 「需給調整市場の一次調整力の調達率が低水準であることなどから」 | 東北電力NW お知らせ 本文 |
| 6 | 資料は5ページ・5商品 | 各ページ見出し「【一次調整力】」「【二次調整力①】」「【二次調整力②】」「【三次調整力①】」「【複合商品】」 | 募集量の予定(2026年4月~9月) p.1〜5 |
| 7 | 縦軸の上限 300MW(一次・二次①)/700MW(二次②・三次①)/900MW(複合) | 各グラフの目盛り「【MW】」「300」「700」「900」 | 募集量の予定 p.1・2(300)、p.3・4(700)、p.5(900) |
| 8 | 各ページ4月〜9月の6枚 | グラフ題「4月」〜「9月」 | 募集量の予定 p.1〜5 |
| 9 | 二次調整力②の山 約600MW(4月)→約300MW(7月)→約460MW(9月) | 数値の記載なし。グラフの線を目盛り線に当てはめた編集部の読み取り(10MW単位) | 募集量の予定 p.3 |
| 10 | 複合商品 4月 約290〜760MW | 数値の記載なし。同上の読み取り | 募集量の予定 p.5 |
| 11 | 形の違う日 5月8〜9日ごろ・8月1〜2日ごろ | 数値・注記の記載なし。線の形の読み取り(5商品とも) | 募集量の予定 p.1〜5 |
出典(一次情報)
- 東北電力ネットワーク「揚水発電機を用いた随意契約の締結に伴う需給調整市場複合市場商品における募集量の見直しについて」(2026年10月4日 取得)
- 東北電力ネットワーク「見直し後の需給調整市場における募集量の予定(2026年4月~2026年9月)」(PDF、全5ページ。2026年10月4日 取得)
- 東北電力ネットワーク「調整力募集」(2026年10月4日 取得)
※二次情報(業界紙・ニュースサイト・プレスリリース配信)は出典に用いていません。採録時に記録していたリンク先(https://www.tohoku-epco.co.jp/nw/)は2026年10月4日の時点で表示されなかったため、上の掲載ページを示しました。出典1は更新されるページで、本稿は取得時点の掲載にもとづきます。
出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/market/proffessional/4611303001006/
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