櫻貿易株式会社
制度・政策・審議会上級

電気事業法改正案の「3つの柱」を議事録で読む。蓄電池の空押さえに触れた委員は1人、事務局は系統WGでの議論を挙げた

2026年3月27日の第5回次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会は、冒頭の議題で電気事業法改正案を扱った。事務局は、3月24日に閣議決定して国会に提出した改正案を「3つの柱」で説明している。その逐語の議事録はPDFで全54ページあり、改正案の議題はそのうち冒頭の7ページ分だ。系統用蓄電池に直接触れた委員の発言は、神山委員による「空押さえ」の指摘1件。事務局は、系統接続の課題は系統ワーキンググループで対応策を議論していると答えた。改正案の概要(資料3-1)に、蓄電池の接続規律は書かれていない。同じ日のヒアリングでは、東京電力パワーグリッドが系統用蓄電池の接続検討申込みの急増を説明している。

読了目安:約8分対象読者:上級(電気事業法改正・系統制度を追う蓄電池の政策・制度担当)この記事は:開発事業者 必読種別:議事録の解説

要点まとめ

何が起きたか:第5回基盤構築小委員会(2026年3月27日)で、事務局が電気事業法改正案を3つの柱で説明した。改正案は3月24日に閣議決定・国会提出済みで、需給調整市場を法律に位置付ける内容も含む。

なぜ重要か:系統用蓄電池の空押さえは委員1人が取り上げただけで、改正案の概要には入っていない。事務局は系統ワーキンググループで議論中と答えており、接続規律は法改正とは別の場で詰められている。

何をすべきか:蓄電池の開発事業者は、空押さえ規律を法改正の条文ではなく系統WGの資料で追う。あわせて、東電PG管内で進める案件は接続検討の申込み方を見直す。

第5回基盤構築小委員会の議事録の位置づけ

会合は2026年3月27日(金)の11時から13時52分まで、オンラインで開かれた。委員長は大橋弘・東京大学大学院経済学研究科教授。議題は5つあり、電気事業法改正案、次世代の電力産業の構築(九電みらいエナジーと東京電力パワーグリッドのヒアリングを含む)、燃料調達と2026年度の電力需給見通し、電力・ガス取引監視等委員会の建議への対応、制度設計ワーキンググループと制度検討作業部会の見直し、の順で進んだ。

議事録はPDFで54ページある。改正案の議題1は1ページ目から7ページ目までで、残りの大半は議題2のヒアリングと質疑に充てられた。同じ会合の議事要旨も掲載されているが、要旨では誰の発言に事務局がどう答えたかまでは追えない。本稿が逐語の議事録を使うのは、その対応関係を確かめるためである。

電気事業法改正案の3つの柱の詳細

電気事業法改正案の3つの柱。送電線・電源の整備、事業環境の整備、太陽電池発電設備の安全と、それぞれの措置を並べた図。
図1:電気事業法改正案の3つの柱。出典=資料3-1、議事録 PDF p.2〜4・p.6。作図=BESS NEWS編集部。

説明したのは電力・ガス事業部政策課の佐久制度企画調整官で、資料3-1から3-4を使った。小委員会と、その下の制度設計ワーキンググループで「昨年から1年ぐらい」議論した内容を踏まえて立案し、政府内の調整を経て「今週の火曜日、24日」に閣議決定、国会に提出した、という経緯がまず語られている(議事録 PDF p.2)。

1つ目の柱は、大規模送電線と大規模電源の整備の促進である。事務局は理由として、脱炭素電源をこれから増やしていくこと、AIやデータセンターといった新しい動きで電気の需要が増える見通しであることを挙げた。そのうえで、資金調達とファイナンスに目詰まりが起きないよう公的な支援の枠組みをつくる、と説明している。事業者が整備計画を立て、経済産業大臣が認定し、電力広域的運営推進機関が必要な資金を貸し付ける。財源は財政投融資を使う。地域間の取引で生じる値差収益を一度国庫に納め、広域機関への補助を通じて送電線整備に回す案も添えられた(PDF p.2〜3)。

同じ柱の中に、性質の違う規定が一つ入っている。大規模発電事業者が大規模電源を休廃止するとき、一般送配電事業者等と事前に協議することを定めるものだ。発電と送配電の情報連携がうまくいっていないという認識から、休廃止の情報をルールとして共有させる狙いだと事務局は話した(PDF p.3)。

2つ目の柱は、電気事業の環境整備である。小売電気事業者は足元で800社ほどあり、そのうち250社程度が休止状態にある。これを是正するため、登録取消の事由に一定期間の休止等を加える(PDF p.3)。もう一つは市場の扱いで、翌日市場に加えて中長期市場を法律に位置付ける。需給調整市場についても、事務局は「これまで法律に基づかない自主的な市場ということで運営してきた」市場を、このタイミングで法律に位置付けると説明した(PDF p.4)。資料3-1は、こうした市場を開設する卸電力取引所を経済産業大臣が指定・監督できるようにする、と書く。

3つ目の柱は、太陽電池発電設備などの安全性の向上で、この小委員会で議論してきた内容ではないと事務局自身が断っている。支持物などについて工事前に第三者機関が技術基準への適合性を確認する仕組みと、製造・輸入販売事業者や工事業者に協力を求める措置の2つである。田中委員の質問に、事務局は確認の中心は構造だと答えた(PDF p.4〜6)。

蓄電池の系統接続規律の上位文脈

蓄電池の空押さえをめぐる3つの発言。神山委員の指摘、事務局の回答(系統ワーキンググループで議論中)、東京電力パワーグリッドの説明(1事業者で数百件の接続検討)を並べた図。
図2:蓄電池の「空押さえ」をめぐる発言。出典=議事録 PDF p.5〜7・p.21〜22、資料6 スライド10・11。作図=BESS NEWS編集部。

議題1で質問や意見を述べた委員は、田中委員と神山委員の2人だった。系統用蓄電池に触れたのは神山委員である。資金面の環境整備に謝意を述べたあと、こう続けた。

昨今、自由化の中で蓄電池やデータセンター増設のための空押さえや、新電力の急な撤退等がございます。系統接続にはそれなりの負担が伴うにもかかわらず、取り消しや申請取り下げに対しての違約金やペナルティーというものがあまり定着していない分野なのかなと思っておりました

— 議事録 PDF p.5(神山委員)

神山委員はこの問題意識から、場面は異なるとしつつ、休廃止前の事前協議と、休止した小売事業者の登録取消に賛成した。空押さえそのものへの規律を改正案に求めたわけではない。事務局の回答は短い。系統接続に関する課題は「系統ワーキンググループという場でさまざまな対応策を今まさに議論されている」ところで、いずれこの小委員会にも報告があるだろう、というものだった(PDF p.7)。

遅れて参加した竹内委員は、議題2の質疑で資料3-1にも触れている。休廃止の事前協議について、情報が開示されても送配電事業者が取れる手は限られ、電源を維持するならコストの補償をどうするかの議論とセットであるべきだ、と指摘した(PDF p.22)。

東京電力パワーグリッドが示した接続検討の急増

蓄電池について具体的な数字を出したのは、議題2でヒアリングに立った東京電力パワーグリッドの大石取締役常務執行役員である。系統用蓄電池の接続検討の申込みは月を追うごとに増え、回答に時間がかかっている。適地を探すために接続検討を多数申し込む事業者がいて、どう向き合うかが課題だ、と説明した(PDF p.21)。

資料6のスライド10は、申込みが栃木・群馬・茨城・千葉の系統混雑エリアに集まり、事業者が土地や負担金、工期の条件のよい場所を探すため「1事業者で数百件」の接続検討を申し込んでいると書く。スライド11の対応策は2つで、2026年4月以降の新規申請分から概算工期を示して申込みの要否を判断してもらうこと、そして審議会で議論中の規律として土地登記・事業用地の使用権原の確認と、接続検討の事業者の上限数を挙げている。大石氏は口頭でも「系統用蓄電池に関する規律パッケージみたいなもの」の議論を進めてほしいと述べた(PDF p.22)。

会合の最後の議題5では、小委員会の下の制度設計ワーキンググループと制度検討作業部会を改組し、電力安定供給、電力事業環境整備、中長期取引市場検討の3つのワーキンググループを置くことが決まった。大規模電源の休廃止の事前協議は、容量市場や長期脱炭素電源オークションと並んで電力安定供給ワーキングの論点とされている(PDF p.53〜54)。

開発事業者が確かめること

議事録から読める範囲で、系統用蓄電池の開発事業者が手元で点検することを並べておく。

#確かめること根拠
1空押さえ・接続検討の規律は、電気事業法改正案ではなく系統ワーキンググループの資料で追っているか議事録 PDF p.7、資料3-1
2東電PG管内の案件で、適地探索のための接続検討を多数出していないか。2026年4月以降は概算工期を見てから申し込む流れになる資料6 スライド10・11
3土地登記と事業用地の使用権原を、接続検討の前に示せる状態にあるか資料6 スライド11(審議会で議論中の規律)
4需給調整市場の法定化と取引所の指定・監督が、自社の収益計画の前提にどう関わるか議事録 PDF p.4、資料3-1
投資判断の担当者へ

この議事録は改正案の国会提出直後のもので、規律の中身はまだ決まっていない。資料6の規律案は東京電力パワーグリッドが「審議会で議論中」として挙げたもので、国の決定事項ではない。案件評価に織り込むなら、系統ワーキンググループの資料で正式な案を確かめてからにしたい。

よくある質問

Q1. 電気事業法改正案に、系統用蓄電池の空押さえを防ぐ規律は入っていますか。
資料3-1の法律案の概要には、系統用蓄電池や空押さえの規律は書かれていません。議事録では、神山委員が蓄電池やデータセンター増設のための空押さえに触れ、事務局は系統接続の課題を系統ワーキンググループで議論中と答えています。
Q2. 需給調整市場は、改正案でどう変わりますか。
事務局は、これまで法律に基づかない自主的な市場として運営してきた需給調整市場を、法律に位置付けると説明しました。資料3-1では、中長期市場や需給調整市場を開設する卸電力取引所を経済産業大臣が指定・監督できるようにするとしています。
Q3. 大規模送電線・大規模電源への支援は、どんな仕組みですか。
事業者が整備計画をつくり、経済産業大臣が認定し、電力広域的運営推進機関が整備等に必要な資金を貸し付ける仕組みです。財源は財政投融資等とされています。値差収益を国庫納付し、広域機関への補助を通じて送電線整備に充てる案も示されました。
Q4. 東京電力パワーグリッドは、系統用蓄電池について何を説明しましたか。
接続検討の申込みが月を追うごとに増え、回答に時間がかかっていると説明しました。資料6には、適地探索のため1事業者で数百件の申込みがあること、2026年4月以降の新規申請分から概算工期を示すこと、審議会で議論中の規律として土地登記や事業用地の使用権原の確認、接続検討の事業者の上限数が挙げられています。
Q5. 大規模電源の休廃止の事前協議は、蓄電池にも関係しますか。
資料3-1の対象は、大規模発電事業者が大規模電源を休廃止する場合です。蓄電池が対象に入るかは、議事録と資料3-1からは分かりません。具体化は、この日に設置が決まった電力安定供給ワーキングで議論するとされています。
Q6. この議事録の時点で、改正案は成立していますか。
成立していません。事務局は3月24日に閣議決定して国会に提出したと説明し、この後、国会の中で審議が行われていくものと承知していると述べています。

編集部の見立て

  1. 蓄電池事業者がこの改正案で直接受ける変化は、空押さえの規律よりも需給調整市場の法定化のほうだと読む。自主的な市場が法律上の市場になり、開設する取引所を国が指定・監督する。市場のルールを誰が決め、誰が監督するかという前提が変わる。
  2. 空押さえへの対応は、改正法案ではなく系統ワーキンググループの議論に委ねられている。神山委員の指摘に事務局が示したのもその場であり、東電PGが挙げた規律案(土地の権原確認、申込み数の上限)も「審議会で議論中」とされていた。条文を待つより、系統WGの資料を追うほうが早い。
  3. 議事録で蓄電池に触れた発言は、議題1と議題2を通じても数か所にとどまる。「系統接続規律を逐語で詳しく議論した会合」と受け取ると読み違える。蓄電池の論点としては、東電PGの資料6のほうが具体的である。

編集体制と事実確認プロセス

BESS NEWSの記事はこう作っています

  • BESS NEWSは一次情報主義を採ります。官公庁・電力広域的運営推進機関・一般送配電事業者などが自ら公表した文書とページのみを出典とし、業界紙・ニュースサイト・プレスリリース配信の二次情報は出典に用いません。
  • 本稿の引用と数値は、資源エネルギー庁の第5回会合ページから議事録(PDF、全54ページ)・資料3-1・資料6・資料2を2026年10月4日に取得し、議事録はページ単位で該当箇所を特定して突合しました。ページ番号はPDFのページ順です。対照結果は「数値照合表」に示しました。
  • 資料6のスライド10にあるグラフの数値は、文字として取り出せなかったため本稿に転記していません。本文で使ったのはスライドの文章部分だけです。
  • 需給調整市場の法定化の受け止め方、空押さえ規律の検討の場についての整理は、一次情報の事実にもとづく編集部の解釈です。確定的な見通しではありません。

数値照合表

本文に出した主要な数値と事実を、一次情報の該当箇所と1対1で対照した表である。

#本文の数値・事実一次情報の記載出典(該当箇所)
1開催 2026年3月27日 11時〜13時52分・オンライン「日時 令和8年3月 27 日(金)11:00~13:52 場所 オンライン会議」議事録 PDF p.1
2議事録の分量 全54ページPDFのページ数 54議事録(PDFの文書情報)
3議題は5つ「5つ議題がございまして」議事録 PDF p.1
4委員長 大橋弘・東京大学大学院経済学研究科教授「◎大橋 弘 東京大学大学院経済学研究科 教授、副学長」資料2 委員等名簿
53月24日に閣議決定・国会提出「今週の火曜日、24 日ですけれども、閣議決定をし、国会にこの一部改正法案を提出した」議事録 PDF p.2
6議論の期間 約1年「昨年から1年ぐらい時間をかけて小委員会、そして…制度設計ワーキンググループにおける議論」議事録 PDF p.2
73つの柱・財源は財政投融資「大きく3つの柱ということで整理」「財源といたしましては財政投融資を活用する」議事録 PDF p.2、資料3-1
8小売電気事業者 約800社、うち約250社が休止「足元 800 社ぐらいの事業者がいる…そのうち 250 社程度が休止状態にある」議事録 PDF p.3
9需給調整市場を法律に位置付け「これまで法律に基づかない自主的な市場ということで運営してきた…このタイミングで新たに法律に位置付けていく」議事録 PDF p.4
10神山委員の空押さえの指摘「蓄電池やデータセンター増設のための空押さえや、新電力の急な撤退等がございます」議事録 PDF p.5
11事務局の回答 系統WGで議論中「系統ワーキンググループという場でさまざまな対応策を今まさに議論されているところ」議事録 PDF p.7
12接続検討 1事業者で数百件・系統混雑エリア4県「再エネによる系統混雑エリアへの申し込みが旺盛(栃木・群馬・茨城・千葉)…接続検討申込を多数(1事業者で数百件)行っている」資料6 スライド10
132026年4月以降の新規申請分から概算工期を提示「2026年4月以降の新規申請分から、概算工期提示し、接続検討前に申込要否判断を実施して頂く」資料6 スライド11
14議論中の規律 土地登記・使用権原の確認、事業者の上限数「系統用蓄電池の規律(審議会で議論中) 土地登記、事業用地使用権原の確認 接続検討の事業者の上限数 等」資料6 スライド11
153つのワーキンググループの設置「電力安定供給ワーキング、電力事業環境整備ワーキング、中長期取引市場検討ワーキング、この3つを設置したい」議事録 PDF p.53

出典(一次情報)

  1. 資源エネルギー庁「次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会」(2026年10月4日 取得)
  2. 資源エネルギー庁「第5回 次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会」配布資料ページ(2026年3月27日 開催)
  3. 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 第5回次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会 議事録(PDF、全54ページ。本稿はp.1〜7・p.21〜23・p.53〜54を参照)
  4. 資料3-1「電気事業法の一部を改正する法律案の概要」(2026年3月27日 開催の会合資料)
  5. 資料6「ヒアリング資料(東京電力パワーグリッド株式会社)」(2026年3月27日 開催の会合資料。本稿はスライド10・11を参照)
  6. 資料2「委員等名簿」(2026年3月27日 開催の会合資料)

※二次情報(業界紙・ニュースサイト・プレスリリース配信)は出典に用いていません。出典1は随時更新されるページで、本稿は取得時点の掲載にもとづきます。

出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/institutional/proffessional/4611503102002/

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