三次調整力②の募集量削減係数、5月分は東北・中部で「0.000」が15〜16コマ。EPRXが4月28日に公表
三次調整力②の募集量は、送配電側が算定した必要量をそのまま市場に出しているわけではない。30分ごとに「募集量削減係数」を掛け、削った後の量が実際の募集量になる。電力需給調整力取引所(EPRX)は2026年4月28日、その5月分の係数と、3σ相当値・1σ相当値の必要量テーブルを公表した。係数は9エリア×48コマで、0.000から1.000の値をとる。東北は15コマ、中部は16コマ、関西は12コマが0.000で、これらのコマは募集量がゼロになる。一方、東京は23コマ、四国は22コマが1.000だった。
CONTENTS目次
何が起きたか:EPRXが2026年4月28日、三次調整力②の5月分の必要量テーブル(3σ相当値・1σ相当値)と募集量削減係数を公表した。
なぜ重要か:需給調整市場システムに登録される30分単位の調整力必要量は、必要量に削減係数を適用した値である。係数が0.000のコマは募集量がゼロになる。
何をすべきか:入札の前に、システムに登録された調整力必要量を確かめる。係数表は、エリアと時間帯の見当をつける材料として使う。
三次調整力②の募集量削減係数とは|必要量との関係
お知らせの本文は短い。5月分の三次調整力②について、3σ相当値の必要量テーブル、1σ相当値の必要量テーブル、募集量削減係数の3つをウェブサイトに公表した、という内容だ。
募集量の決まり方も1文で書かれている。需給調整市場システムには、各30分ブロックの再エネ予測と各テーブルの必要量にもとづいて30分単位で算定した調整力必要量に、削減係数を適用した値が登録される。そのうえでEPRXは、入札にあたっては登録されている調整力必要量を「必ずご確認ください」と求めている。必要量テーブルの数字だけで募集量を見込むと、係数で削られる分を見落とす。
係数の計算方法は、表の下の注記(※1)にある。
募集量削減係数 = 直近約1ヶ月の応札量(過去一定期間の各エリア余力平均単価以下)÷ 直近約1ヶ月分募集量(削減前)
— EPRX お知らせ(2026年4月28日)p.2 ※15月分の「直近約1ヶ月」は3月21日〜4月20日の実需給分、「過去一定期間」は11月〜1月である。余力平均単価には0.39円/ΔkW・30分の下限がある。
式を読み下すと、直近1か月に、各エリアの余力平均単価以下で入った応札が、削減前の募集量のどれだけを埋めていたか、という比率になる。安い応札で埋まっていたコマほど係数は1に近づき、そうした応札がほとんど無かったコマは0に近づく(この段落は式からの編集部の解説)。
制度の根拠として、お知らせは4つの資料を挙げている。1σ相当値の注に2024年5月30日の「三次調整力②の募集量の見直し…のお知らせ」。削減係数の注に2024年6月28日の「三次調整力②の効率的な調達の開始および募集量削減の継続のお知らせ」と、第96回制度検討作業部会 資料3(2024年9月27日)、第97回 資料6(2024年10月30日)。※2では、システムトラブル等で募集量・約定量が正しく公表されていない場合、国とも連携のうえで補正するとしている。
三次調整力②という商品の位置づけは、入門記事「需給調整市場(EPRX)入門」にまとめている。
エリア別・時間帯別の係数の読み方(0.000〜1.000)
5月分の係数表をエリアごとに整理した。0.000と1.000のコマ数、最小と最大は、編集部が原本の表から数えた。平均は48コマの単純平均で、募集量で重み付けした値ではない。
| エリア | 0.000のコマ | 1.000のコマ | 最小〜最大 | 単純平均(参考) |
|---|---|---|---|---|
| 北海道 | 0 | 0 | 0.095〜0.606 | 0.343 |
| 東北 | 15 | 9 | 0.000〜1.000 | 0.197 |
| 東京 | 0 | 23 | 0.057〜1.000 | 0.823 |
| 中部 | 16 | 10 | 0.000〜1.000 | 0.279 |
| 北陸 | 5 | 11 | 0.000〜1.000 | 0.321 |
| 関西 | 12 | 11 | 0.000〜1.000 | 0.478 |
| 中国 | 0 | 10 | 0.021〜1.000 | 0.368 |
| 四国 | 0 | 22 | 0.508〜1.000 | 0.865 |
| 九州 | 0 | 11 | 0.024〜1.000 | 0.357 |
東京と四国は全体に高い。東京は23コマが1.000で、いちばん低いのは17:30〜18:00の0.057。四国は最も低いコマでも12:00〜12:30の0.508だった。
0.000が多いのは東北・中部・関西である。0.000のコマは、0:00〜3:00の深夜と、4:30〜7:30の早朝、21:00以降に集まっている。東北は日中も低く、7:00〜17:00の20コマが0.005〜0.031にとどまる。関西は形が違い、9:00〜16:30の15コマが0.630〜0.677にそろう。
3:00〜4:30と18:30〜21:00の2つの時間帯は、北海道を除く8エリアがそろって1.000だった。北海道は48コマすべてが0.095〜0.606の間にあり、0.000も1.000も無い。全体では432コマのうち48コマが0.000、107コマが1.000である。
同じ時刻でも、エリアによって結果は割れる。00:00〜00:30を見ると、東京1.000・四国0.998に対し、東北・中部・北陸・関西は0.000だった。
蓄電池の入札時間帯・エリア選択への活用
係数0.000のコマは募集量がゼロになる。5月の三次②では、そのエリア・時間帯に落札される枠が無い。入札計画から外す前に、まずシステムに登録された調整力必要量で確かめておきたい。
注意したいのは、係数が高いコマほど落札しやすい、とは言い切れない点だ。※1の式のとおり、係数が1に近いのは、直近1か月に余力平均単価以下の応札が募集量を埋めていたコマである。枠は大きいが、安い応札が多く集まっていたコマでもある。係数の低いコマは、その逆で枠が小さい(この段落は編集部の解釈)。
係数は月ごとに更新され、算定のもとは直近約1か月の取引実績だ。5月の表を、6月以降もそのまま続く前提にはしないほうがよい。
| # | 確かめること | 根拠 |
|---|---|---|
| 1 | 入札するエリア・コマの係数が0.000でないか | 5月分の係数表(p.1〜2) |
| 2 | 必要量テーブルではなく、需給調整市場システムに登録された調整力必要量を見たか | お知らせ本文(p.1) |
| 3 | 係数1.000のコマは、直近1か月に安い応札が募集量を埋めていたコマでもあると織り込んだか | ※1の算定式(p.2) |
| 4 | 翌月分の更新で係数が変わる前提で計画しているか | 月次の更新(本件は「5月分更新」) |
この係数は1か月分の運用データである。年間の収益見通しにそのまま延ばせる数字ではない。募集量のMWも、係数だけでは出ない。
よくある質問
編集部の見立て
- 削減係数は、過去1か月に安い応札がどれだけ募集量を埋めたかで、翌月の枠を決める仕組みである。枠の大きさと、安い応札の集まり具合が同じ向きに動きやすい。「係数の高いコマを狙えばよい」という読み方は単純すぎる。
- 同じ時刻でもエリアで0.000と1.000に割れる(00:00〜00:30の東京1.000と東北0.000など)。複数エリアに資源を持つアグリゲーターほど、この表をエリア横断で見る意味がある。
- 本稿は係数表だけを扱い、3σ・1σの必要量テーブルの数値は確認していない。募集量のMWは、必要量テーブルと再エネ予測から算定した必要量に係数を掛けて決まる。係数だけでMWは出ない。
編集体制と事実確認プロセス
BESS NEWSの記事はこう作っています
- BESS NEWSは一次情報主義を採ります。官公庁・電力広域的運営推進機関・電力需給調整力取引所などが自ら公表した文書とページのみを出典とし、業界紙・ニュースサイト・プレスリリース配信の二次情報は出典に用いません。
- 本稿の数値は、EPRXのお知らせPDF(2026年4月28日、全2ページ)を2026年10月4日に取得し、本文・表・注記から転記しました。9エリア×48コマの値はPDFのテキストから読み取り、48行の時刻欄が原本と一致することを確かめたうえで、コマ数・最小・最大・単純平均を集計しています。対照結果は「数値照合表」に示しました。
- EPRXの「調整力必要量」のページは取得時に内容が返らなかったため、3σ・1σの必要量テーブルの数値は本稿で扱っていません。
- 本稿は2026年4月28日の公表を対象とする記事で、10月4日に事実確認をやり直して更新しました。4月28日より後に公表された資料は使っていません。
- 係数の式の読み下し、係数の高低と落札しやすさの関係、入札前の確認項目は、一次情報の事実にもとづく編集部の解釈です。
数値照合表
本文に出した主要な数値と事実を、一次情報の該当箇所と1対1で対照した表である。
| # | 本文の数値・事実 | 一次情報の記載 | 出典(該当箇所) |
|---|---|---|---|
| 1 | 公表日 2026年4月28日 | 「2026 年 4 月 28 日 一般社団法人 電力需給調整力取引所」 | EPRX お知らせ p.1 |
| 2 | 公表されたもの:3σ・1σの必要量テーブルと削減係数(5月分) | 「5 月分の三次調整力②の 3σ相当値の必要量テーブル、1σ相当値の必要量テーブルおよび募集量削減係数を弊所ウェブサイトに公表」 | EPRX お知らせ p.1 |
| 3 | システム登録値=30分単位の調整力必要量×削減係数 | 「各 30 分ブロックの再エネ予測と、各テーブルの必要量に基づき、30 分単位で算定された調整力必要量に削減係数を適用して登録」 | EPRX お知らせ p.1 |
| 4 | 入札時はシステム登録値を確認 | 「需給調整市場システムに登録されている調整力必要量を必ずご確認ください」 | EPRX お知らせ p.1 |
| 5 | 係数は9エリア×48コマ、0.000〜1.000 | 表「○5 月募集量削減係数更新分」(北海道〜九州、00:00~00:30〜23:30~00:00) | EPRX お知らせ p.1〜2 |
| 6 | 0.000のコマ:東北15・中部16・関西12・北陸5 | 同表の該当セル(編集部が数えた) | EPRX お知らせ p.1〜2 |
| 7 | 1.000のコマ:東京23・四国22 | 同表の該当セル(編集部が数えた) | EPRX お知らせ p.1〜2 |
| 8 | 東京の最小 0.057(17:30〜18:00)/四国の最小 0.508(12:00〜12:30) | 「17:30~18:00 … 東京 0.057」「12:00~12:30 … 四国 0.508」 | EPRX お知らせ p.2 |
| 9 | 北海道は48コマすべて0.095〜0.606 | 最小「02:00~02:30 北海道 0.095」、最大「10:30~11:00 北海道 0.606」 | EPRX お知らせ p.1〜2 |
| 10 | 3:00〜4:30と18:30〜21:00は北海道以外の8エリアが1.000 | 「03:00~03:30」〜「04:00~04:30」、「18:30~19:00」〜「20:30~21:00」の各行 | EPRX お知らせ p.1〜2 |
| 11 | 東北 7:00〜17:00の20コマが0.005〜0.031/関西 9:00〜16:30の15コマが0.630〜0.677 | 同表の該当行(編集部が数えた) | EPRX お知らせ p.1〜2 |
| 12 | 00:00〜00:30 東京1.000・四国0.998、東北・中部・北陸・関西0.000 | 「00:00~00:30 0.188 0.000 1.000 0.000 0.000 0.000 0.344 0.998 0.183」 | EPRX お知らせ p.1 |
| 13 | 全432コマのうち0.000が48、1.000が107 | 同表の全セル(編集部が数えた) | EPRX お知らせ p.1〜2 |
| 14 | 算定式:直近約1ヶ月の応札量(余力平均単価以下)÷直近約1ヶ月分募集量(削減前) | 「募集量削減係数 = 直近約 1 ヶ月の応札量(過去一定期間の各エリア余力平均単価以下)÷ 直近約 1 ヶ月分募集量(削減前)」 | EPRX お知らせ p.2 ※1 |
| 15 | 3/21〜4/20実需給分・11月〜1月・下限0.39円/ΔkW・30分 | 「直近約 1 ヶ月(3/21~4/20 実需給分)…過去一定期間(11 月~1 月)の各エリアの余力平均単価(0.39 円/ΔkW・30 分を下限)」 | EPRX お知らせ p.2 ※1 |
| 16 | 根拠:2024.5.30・2024.6.28のお知らせ、第96回 資料3(2024.9.27)・第97回 資料6(2024.10.30) | 注1・注2の記載 | EPRX お知らせ p.1 注1・注2 |
| 17 | システムトラブル等の場合は国とも連携のうえ補正 | 「システムトラブル等の問題により募集量・約定量が正しく公表されていない場合には、国とも連携の上で補正を実施」 | EPRX お知らせ p.2 ※2 |
出典(一次情報)
- 電力需給調整力取引所「三次調整力②の必要量および募集量削減係数の5月分更新について」(2026年4月28日 公表。PDF 2ページ。本稿は本文・表・注1・注2・※1・※2を参照)
- 電力需給調整力取引所 ウェブサイト(お知らせの掲載元)
※二次情報(業界紙・ニュースサイト・プレスリリース配信)は出典に用いていません。注1・注2に挙がる2024年のお知らせと制度検討作業部会の資料は、お知らせ本文の記載として紹介したもので、本稿では原本を開いていません。
出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/market/proffessional/4614003001001/
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