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制度・政策・審議会上級

容量市場で落札した新設電源の「運開遅延」に新ルール案。表明期限までは月単位の部分退出、期限後は契約金額の110%相当のペナルティ

容量市場のオークションで落札した新設電源が、予定の月に運転を始められなかったらどうなるのか。今の容量確保契約約款には、運開遅延が市場退出にあたるかどうかの記載がない。2026年5月27日の第73回容量市場の在り方等に関する検討会で、資源エネルギー庁と電力広域的運営推進機関(OCCTO)の共同事務局が、この空白を埋める案を出した。実需給前年度の12月末にある市場退出表明期限までに遅延が分かれば、遅れた月の分だけ月単位で部分退出できるようにする。期限を過ぎてから分かった場合は、遅延期間の容量確保契約金額に対して110%相当のペナルティを新たに設ける。2026年度メインオークション(対象実需給年度2030年度)からの適用に向けた、事務局の案である。

読了目安:約7分対象読者:上級(容量市場に新設の蓄電池で応札する開発事業者・投資家・EPCの工程担当)種別:審議会資料の解説

要点まとめ

何が起きたか:第73回容量市場の在り方等に関する検討会(2026年5月27日)の資料5で、共同事務局が新設電源の運開遅延の扱いを2段構えで示した。市場退出表明期限(実需給前年度の12月末)までは月単位の部分退出、期限後は遅延期間の容量確保契約金額の110%相当のペナルティである。

なぜ重要か:当初から年度途中に運開する計画で応札した電源と、遅れて年度途中の運開になった電源とで、kW価値への対価をそろえる狙いがある。資料の設例では、4か月遅れた場合の年間収支はどちらの扱いでも760億円になる。

何をすべきか:新設の蓄電池で容量市場に応札するなら、運開予定月と工程の遅れを、実需給前年度の12月末という期限に照らして管理する。運開を証明する書類の提出も求められる方向である。

運開遅延が生む不公平と、見直しの背景

容量市場は、4年後の実需給年度に必要な供給力(kW価値)をオークションで先に確保する仕組みである。基本は入門記事「容量市場(OCCTO)とは?」にまとめている。まだ建っていない新設電源も、参加登録で運開時期を設定したうえで応札できる。

問題は、落札したあとに工事が遅れる場合だ。資料5は、現行のメインオークションと追加オークションの仕組みでは、実際の運開時期が同じでも、当初の計画どおり年度途中に運開する電源と、運開遅延で年度途中の運開になった電源とで「契約容量に対するkW価値への対価が同一とならないことがある」と書く(p.4)。公平性の点から両者の平仄を合わせるには、募集要綱と約款を見直す必要がある、というのが出発点である。

ルールの側にも穴があった。容量確保契約約款の第12条は、契約容量の一部を市場退出として扱うケースを定めている。ところが運開遅延が市場退出にあたるかどうかは書かれていない(p.5)。

経緯も押さえておく。2025年度の包括的検証では「リクワイアメント、ペナルティ強度の状況」を検証項目に置き、計画停止のリクワイアメントを検証した(p.2)。その結果を受けて、落札した年度の途中に運開する電源(資料は「期中運開電源」と呼ぶ)の容量停止計画などの見直し案を、2026年3月27日の第72回検討会に報告している。今回はその続きで、運開が遅れた場合の扱いが議題になった。

表明期限までは部分退出、期限後は110%ペナルティ

容量市場の新設電源の運開遅延の扱いが、実需給前年度12月末の市場退出表明期限の前後で分かれることを示す図。期限前は月単位の部分退出、期限後は遅延期間の契約金額の110%相当のペナルティ。
図1:市場退出表明期限の前後で分かれる運開遅延の扱い(事務局案)。出典=第73回 容量市場の在り方等に関する検討会 資料5 p.4・p.6〜9。作図=BESS NEWS編集部。

分かれ目は、実需給年度をN年度としたときのN-1年12月にある「市場退出表明期限」である。資料は、事後の容量拠出金の算定などのスケジュールを考えて12月末に設定していると注記している(p.4)。

期限までの時間軸には、もう一つ節目がある。N-1年3月の「追加オークションの実施判断に必要な容量確保契約の変更または解約の確認期限」だ。資料の図では、それより前の市場退出はペナルティ率5%、そこから12月末まではペナルティ率10%、期限後の実需給開始までは「原則退出が認められない期間」とされている(p.4・p.7)。

検討項目① 期限までに分かった遅延は、月単位の部分退出

表明期限までに運開の遅れが分かった電源には、遅延の対象となる期間について、月単位の部分退出(一部市場退出)を認める。ペナルティ率は現行の市場退出の率をそのまま使う。容量確保契約約款を改定して、市場退出の要件に加える方向である(p.6・p.7)。

資料p.7の例では、契約容量120万kWの電源の運開が4月から8月に遅れる。4〜7月のアセスメント対象容量は0、8月以降は120万kWとなり、年間の契約容量は80万kWになる。当初から8月運開の計画で応札した電源と同じ形で、資料はこれを「契約容量が同等となる」と説明している。

検討項目② 期限後に分かった遅延は、110%相当のペナルティを新設

遅れが判明するのが表明期限の後になることもある。その場合は原則として市場退出の扱いにできない(p.8)。そこで事務局は、事前に部分退出した電源との公平性を理由に、部分退出に相当するペナルティを新しく作る案を示した。

水準は、遅延期間の容量確保契約金額に対して110%相当である。資料は根拠として、直前の部分退出と、実需給期間中のペナルティ上限(容量確保契約金額の110%)の二つを挙げている(p.8)。供給力の提供を始められない事象に対応するためのもので、ペナルティの新設に伴う詳細設計もあわせて行うとした(p.6)。

4か月遅れた設例。収支はどちらも760億円

資料5の設例で、4月運開予定の電源が8月運開に4か月遅れた場合、表明期限までに部分退出した電源も、期限後に遅延が分かった電源も、年間の収支が760億円になることを月別に示す図。
図2:4か月遅延の設例(容量確保契約金額は月100億円)。出典=第73回 容量市場の在り方等に関する検討会 資料5 p.8・p.9。上段の合計760億円は、資料の800億円と退出ペナルティ40億円から編集部が算出。作図=BESS NEWS編集部。

110%という数字の意味は、資料の設例を追うとつかみやすい。容量確保契約金額が月100億円、年1,200億円の電源が、4月の運開予定から8月の運開に4か月遅れたとする(p.8)。

表明期限までに部分退出した電源は、4〜7月の分が契約から外れ、受け取る額は8月以降の800億円になる。これとは別に、実需給期間の前に40億円の退出ペナルティがかかる。資料の注記では、ペナルティ率10%の場合の額である(p.8)。

期限を過ぎてから遅れが分かった電源は、契約上は1,200億円のままだ。そこへ、遅延期間の契約金額400億円の110%、つまり440億円のペナルティがかかる。資料はこの額を「部分退出と同等に収支が▲40億円となるよう」設計したと書いている(p.8)。月ごとに見ると、未運開の4か月は交付100億円に対してペナルティ110億円で、各月マイナス10億円。運開後の8か月は100億円ずつで、年間の合計は760億円になる(p.9)。

上段も800億円から40億円を引けば760億円で、二つの扱いの収支はそろう(編集部の算出)。期限を過ぎても、先に退出していた場合と比べて得も損もしないように作られている、と読める。設例の金額は仮の数字で、実際の額は電源ごとの契約で決まる。

運開証明と、運開後に適用されるルール

期限後の遅延ペナルティには、いつ運開したかをはっきりさせる手続きが要る。資料p.9は詳細設計として次の4点を示した。

  • 新規に運開する安定電源と変動電源に、「供給力提供開始の証明等」(資料の略称は「運開証明」)の提出を求める
  • 未運開の期間は、容量確保契約金額の月額の110%の経済的ペナルティが発生する
  • 未運開の期間はアセスメント対象容量をゼロとみなし、他のリクワイアメントやアセスメントの対象外とする
  • このペナルティは、実需給期間中の経済的ペナルティとして扱う

運開証明を出したあとは、第72回検討会で整理した期中運開電源の扱いがそのまま適用される(p.10)。具体的には、運開時期に応じた容量停止計画の控除日数(コマ数)、容量停止計画のペナルティレート、実需給期間中の経済的ペナルティの月間上限額レートの3つである。

運開証明の様式や、どの書類で運開を認めるかは、資料5には書かれていない。

新設蓄電池の工程管理で見直すところ

資料5は電源の種類を区切らず、「新設電源」として整理している。系統用蓄電池への言及はない。ただ、建設前の蓄電池が運開時期を設定して容量市場に応札するなら、この案の対象になる立場にある(編集部の解釈)。

案が通った場合に、応札前と工事中に確かめておきたいことを並べる。

#確かめること根拠
1参加登録で設定する運開時期が、系統連系や機器納期の工程と合っているか資料5 p.4
2実需給前年度の12月末までに、運開が遅れるかどうかを判断できる工程の節目を置いているか資料5 p.4・p.11
3部分退出を選ぶ場合のペナルティ率が、N-1年3月の前か後かで5%か10%かに分かれることを把握しているか資料5 p.4・p.7
4期限後に遅れが出たとき、未運開の月ごとに月額の110%がかかる前提で資金繰りを組んでいるか資料5 p.8・p.9
5運開した月を示す書類を、EPC事業者との間で誰がいつ用意するか決めているか資料5 p.9
対象範囲についての注意

資料5は、メインオークションと追加オークションの仕組みを前提に検討している(p.4)。長期脱炭素電源オークションで落札した新設電源に同じ扱いを当てはめるかどうかには触れていない。長期脱炭素電源オークションの案件は、この案がそのまま適用されると決めつけないほうがよい。

よくある質問

Q1. この新しいルールはいつから適用されますか。
資料5は、2026年度(対象実需給年度2030年度)のメインオークションからの適用に向けて検討したと書いています。第73回検討会の時点では、事務局が「〜としてはどうか」と示した案の段階です。
Q2. 部分退出をすると、退出のペナルティはかかりますか。
かかります。資料5は、現行で設定されている市場退出のペナルティ率を用いるとしています。資料の図では、N-1年3月の確認期限より前は5%、そこから12月末の市場退出表明期限までは10%です。
Q3. 市場退出表明期限を過ぎてから遅れが分かったら、退出できますか。
原則として市場退出としては扱えません。その代わりに、遅延期間の容量確保契約金額に対して110%相当のペナルティを新設する案が示されました。未運開の月ごとに、月額の110%の経済的ペナルティが発生します。
Q4. なぜペナルティの水準が110%なのですか。
事前に部分退出した電源との公平性を保つためです。資料5は、直前の部分退出と、実需給期間中のペナルティ上限(容量確保契約金額の110%)を踏まえたとしています。資料の設例では、期限前に部分退出した場合と期限後にペナルティを受けた場合の年間収支が、どちらも760億円になります。
Q5. 運開したことはどのように証明しますか。
資料5は、新規に運開する安定電源と変動電源に「供給力提供開始の証明等」(運開証明)の提出を求めるとしています。提出後は運開後の期間について容量確保契約金額が交付されます。提出する書類の種類や様式は、資料5には書かれていません。
Q6. 長期脱炭素電源オークションにも適用されますか。
資料5は、メインオークションと追加オークションの仕組みを前提に検討しており、長期脱炭素電源オークションへの適用には触れていません。
Q7. 系統用蓄電池も対象になりますか。
資料5は電源の種類を区切らず「新設電源」として整理しており、蓄電池への言及はありません。新設の蓄電池が運開時期を設定して容量市場に応札する場合は、この案の対象になる立場にあると編集部は読んでいます。

編集部の見立て

  1. 設例を見る限り、110%は「期限を過ぎたから罰を重くする」数字ではない。先に部分退出した場合と収支が同じになるよう逆算した水準である。期限の前に退出しても後で払っても、遅れた分の年間収支は変わらない作りになっている。
  2. それでも期限の前と後とで違いは残る。部分退出なら、退出した月の分はアセスメントの対象から外れる手続きが年度の前に済む。期限後は、運開証明を出すまで毎月マイナスの収支が続き、資金の出入りが実需給期間に入ってから動く。工程の遅れを12月末までに見極められるかどうかが、資金繰りの組み方を分けることになる。
  3. 建設の遅れは事業者だけでは避けにくい。系統連系の工事や機器の納期のように、外部要因で運開がずれることもある。資料5の案は、遅延の理由によって扱いを分けていない。応札前の工程計画に余裕を持たせるかどうかは、この案を前提にあらためて考えたい。

編集体制と事実確認プロセス

BESS NEWSの記事はこう作っています

  • BESS NEWSは一次情報主義を採ります。官公庁・電力広域的運営推進機関・一般送配電事業者などが自ら公表した文書とページのみを出典とし、業界紙・ニュースサイト・プレスリリース配信の二次情報は出典に用いません。
  • 本稿の数値・引用は、第73回容量市場の在り方等に関する検討会の資料5(PDF、全12ページ)を2026年10月4日にOCCTOのサイトから取得し、本文の該当ページと突合しています。開催日(2026年5月27日)と議題は、同検討会の開催ページで確かめました。対照結果は「数値照合表」に示しました。
  • 本稿は会合当日の資料の範囲で書いています。会合後に公表された議事録や、その後の募集要綱の内容は扱っていません。
  • 設例の上段の年間収支760億円は、資料の800億円と退出ペナルティ40億円から編集部が算出した値です。資料に直接書かれているのは下段の合計760億円です。
  • 蓄電池への当てはめ、工程管理で確かめること、見立ての3点は、一次情報の事実にもとづく編集部の解釈です。確定的な見通しではありません。

数値照合表

本文に出した主要な数値と事実を、一次情報の該当箇所と1対1で対照した表である。

#本文の数値・事実一次情報の記載出典(該当箇所)
1第73回検討会 2026年5月27日・共同事務局「2026年5月27日 容量市場の在り方等に関する検討会事務局」「資源エネルギー庁と電力広域的運営推進機関の共同事務局により開催」資料5 p.1
22026年度(対象実需給年度2030年度)メインオークション「2026年度(対象実需給年度:2030年度)メインオークション募集要綱・容量確保契約約款への反映を進めている」資料5 p.2
3第72回検討会 2026年3月27日「第72回 容量市場の在り方等に関する検討会 資料6より(2026年3月27日)」資料5 p.2・p.3
4対価が同一とならない不公平「契約容量に対するkW価値への対価が同一とならないことがあり、公平性の観点から…募集要綱・約款を見直す必要がある」資料5 p.4
5表明期限 N-1年12月末「N-1年12月 市場退出表明期限」「事後の容量拠出金算定等のスケジュールを考慮し12月末と設定」資料5 p.4
6退出ペナルティ率 5%・10%図「N-1年3月…ペナルティ率 5%/ペナルティ率 10%/原則退出が認められない期間」資料5 p.4・p.7
7約款第12条に運開遅延の記載なし「『運開遅延』については、市場退出に該当するかの記載はない」資料5 p.5
8月単位の部分退出・約款改定「一部市場退出(以下、『部分退出』という。)を可能として、容量確保契約約款を改定し、市場退出の要件として追加する」「月単位での部分退出を可能とする」資料5 p.6・p.7
9120万kW、4月→8月遅延で契約容量80万kW表「運開時期が4月から8月に遅延した電源のアセスメント対象容量設定の例」運開遅延後 4〜7月 0、8〜3月 120、契約容量 80(単位:万kW)資料5 p.7
10期限後は遅延期間の契約金額の110%相当「直前の部分退出と実需給期間中のペナルティ上限(容量確保契約金額の110%)も踏まえ、遅延期間の容量確保契約金額に対し110%相当のペナルティを新設」資料5 p.8
11設例 月100億円・年1,200億円、ペナルティ440億円、部分退出800億円、退出ペナルティ40億円「440億円(=容量確保契約金額(400億円)×110%)のペナルティを新設」「計 1200」「計 800」「実需給期間前に40億円の退出ペナルティが発生(ペナルティ率10%の場合)」資料5 p.8
12未運開月は各月マイナス10億円、年間760億円月ごとの収支の例「-10 -10 -10 -10 100 … 計 760」(単位:億円)資料5 p.9
13運開証明・月額の110%・対象容量ゼロみなし・実需給期間中のペナルティ扱い「新規運開する安定電源および変動電源に『供給力提供開始の証明等…』の提出を求める」ほか詳細設計4点資料5 p.9
14運開後は期中運開電源の扱い3点を適用「運開時期に応じた容量停止計画の控除日数(コマ数)」「ペナルティレート」「経済的ペナルティの月間上限額レート」資料5 p.10
15開催日時と議題「日時 2026年5月27日(水曜日)15時00分~17時00分」議題「新設電源の運開遅延における扱いについて」第73回 開催ページ

出典(一次情報)

  1. 電力広域的運営推進機関「第73回 容量市場の在り方等に関する検討会」(2026年5月27日 開催。2026年10月4日 取得)
  2. 容量市場の在り方等に関する検討会事務局「資料5 新設電源の運開遅延における扱いについて」(2026年5月27日。本稿はp.1〜11を参照)

※二次情報(業界紙・ニュースサイト・プレスリリース配信)は出典に用いていません。出典1は随時更新されるページで、本稿は取得時点の掲載にもとづきます。

出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/institutional/proffessional/4616903102001/

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