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市場・価格上級

JEPX、間接送電権の清算書を2026年6月13日受渡分から変更。CSVを廃止し、新スポットシステムから取得する形に

日本卸電力取引所(JEPX)は2026年5月28日、間接送電権の日々の清算書を変えると知らせた。間接送電権取引が新システムへ移るのに合わせたもので、2026年6月13日(土)受渡分から適用する。清算方法は変わらない。変わるのは清算書の取り方だ。これまでは清算システムから清算種別「間接送電権」で落としていたが、新スポットシステムの清算情報からダウンロードする形になり、CSVファイルの提供はやめる。端数処理も一部変わるとJEPXは書いているが、変更前と何が違うかは資料に載っていない。清算書を社内の仕組みに自動で取り込んでいる事業者は、受け口を作り直すことになる。

読了目安:約7分対象読者:上級(間接送電権を使うアグリゲーター・蓄電池事業者のシステム担当と取引担当)種別:お知らせの解説(清算事務の変更)

要点まとめ

何が起きたか:JEPXが、間接送電権の清算書を2026年6月13日(土)受渡分から変えると公表した。取得先は新スポットシステムの清算情報になり、CSVファイルは廃止する。

なぜ重要か:清算の計算式は変わらないが、ファイルの形式と置き場所が変わる。CSVを前提に照合や会計処理を自動化している場合、そのままでは動かない。

何をすべきか:間接送電権を持っているなら、清算書の取り込み手順を点検する。社内で金額を検算しているなら、その端数処理の順番もJEPXの記載例(p.2)に合わせる。

間接送電権の清算書は何を精算しているか

間接送電権は、連系線ごとに売り買いされる商品である。JEPXの資料は、この清算書を「日々スポット取引と併せて清算する実値差と間接送電権価格との差額清算書」と説明している(JEPX資料 p.1)。権利を持つ事業者は、受電側と送電側のエリア価格の差を受け取り、そのかわりに権利の約定価格を払う。差し引きがその日の清算額になる。

計算は翌日取引の商品、つまり30分単位の48個ごとに行う(p.2)。

  • 値差の受け取り:保有量(MW)÷2 × エリア間値差(円/MWh)
  • 権利の代金:保有量(MW)÷2 × 約定価格(円/MWh)
  • 金額(円)=値差の受け取り − 権利の代金

÷2は、30分のMWをMWhに直す分である。エリア間値差は「受電側エリア価格−送電側エリア価格」、約定価格は間接送電権の約定価格を指す。保有量は「間接送電権の約定量−キャンセル量」で、キャンセル量は混雑処理などで減らされる量のことだ(p.2の注2・注4・注5)。

間接送電権の清算額は30分ごとに、保有量÷2×エリア間値差から保有量÷2×約定価格を差し引いて求め、値差の受け取りは翌日取引の約定量までになることを示す図。
図1:清算額は30分ごとに「値差の受け取り−権利の代金」。出典=JEPX「間接送電権清算書の変更について」 p.1・p.2。作図=BESS NEWS編集部。

一つ条件が付く。翌日取引の約定量が保有量より少ないコマでは、値差の受け取りは約定量までになる(p.2の注1)。ここでいう約定量は、翌日取引(スポット)の売約定量と買約定量の合計で、経過措置用の入札分も含む(注3)。一方、権利の代金は保有量で払う。

p.1の注記も同じことを書いている。時間帯別・連系線別に、保有量と全エリアの売り買い約定量の積算量(グロス量)を比べ、約定量が下回れば約定量の分しか値差を清算しない。間接送電権の買い代金は保有量で清算する。

つまり、権利を持っていても、そのコマに翌日取引で十分な量を約定していなければ、値差の受け取りは減り、代金は満額かかる。蓄電池でエリアをまたいだ取引をしていて、充放電の都合でスポットの約定量が細るコマがあるなら、この点は清算額に効いてくる(この段落は式からの編集部の解説)。

何が変わるか。取得方法、CSV、端数の順番

JEPXが挙げた変更点は2つである(p.1)。

  1. 変更後の清算書と計算方法はp.2のとおり。CSVファイルの提供は廃止する。
  2. 清算書の取得方法が変わる。
区分取得方法
現行清算システムから、清算種別「間接送電権」としてダウンロードする
変更後新スポットシステムの清算情報としてダウンロードする。現行システムから取得する場合は、スポット取引清算書と併せてダウンロードする(スポット取引清算書と同じ書庫に格納)

現行システム側で取得を続けられる期間について、資料は何も書いていない。

端数の扱いは、p.2の記載例が手順として示している。

  1. 翌日取引の商品(30分単位の48個)ごとに金額を出す。端数処理はしない。
  2. 間接送電権の商品ごとに金額を合計する。ここでも端数処理はしない。
  3. すべての間接送電権商品の金額を合計し、合計した後に端数を切り捨てる。切り捨て後の合計に税率を掛けて消費税を出し、その端数も切り捨てる。
  4. 清算額=金額合計+消費税
清算書の取得先が清算システムから新スポットシステムの清算情報に変わり、端数は全商品の合計後に切り捨てること、記載例の清算額が413円であることを示す図。
図2:清算書の「取り方」が変わる。取得方法・端数の扱い・記載例の清算額。出典=JEPX「間接送電権清算書の変更について」 p.1・p.2。作図=BESS NEWS編集部。

記載例で計算を追う

p.2の記載例は、2026年1月7日受渡分を想定した清算書である。商品は2つ。26W02T21(東北→北海道、保有0.20MW、約定価格100円/MWh)と、26W02T34(東京→中部、0.30MW、150円/MWh)だ。資料は各商品の最初と最後のコマだけを載せている。この4行を式に当てはめると、資料の金額と一致した。

商品コマ翌日取引の約定量エリア間値差保有量値差の受け取り権利の代金金額(資料)
26W02T2100:00-00:300.30MW200円/MWh0.20MW20.00円10.00円10.00円
26W02T2123:30-24:000.20MW0円/MWh0.20MW0.00円10.00円▲10.00円
26W02T3400:00-00:300.40MW100円/MWh0.00MW(キャンセル0.30)0.00円0.00円0.00円
26W02T3423:30-24:000.10MW400円/MWh0.20MW(キャンセル0.10)20.00円(約定量0.10MWで計算)15.00円5.00円

「値差の受け取り」「権利の代金」の列は、資料の数値から編集部が計算した。最後の行が注1の例にあたる。保有量0.20MWに対して約定量は0.10MWなので、値差は0.10MW分しか受け取れず、代金は0.20MW分かかる。

商品ごとの合計は、清算書の側で26W02T21が250.80円、26W02T34が125.50円。全商品の合計376.30円を切り捨てて376円、消費税は税率10%で37円、清算額は413円になる。

記載例には一か所、数字の食い違いがある。手順②の表では26W02T34が120.50円になっており、清算書の125.50円と合わない。376円と整合するのは125.50円のほうなので、②の表の誤記とみられる(編集部の検算)。社内で清算額を検算する仕組みを作るとき、この記載例をテストデータに使うなら注意したい。

間接送電権を使う事業者が確かめること

資料の記載から、実務で点検しておきたいことを並べる。

#確かめること根拠
1清算書をCSVで取り込み、照合や会計処理に流していないか。していれば、新しい形式での受け取り方を決めるp.1(CSV提供の廃止)
2取得先を新スポットシステムの清算情報に切り替える手順と担当を決めたかp.1(取得方法)
3現行システムから取る場合、間接送電権の清算書がスポット取引清算書と同じ書庫に入る。ファイルを振り分ける処理がそれを前提にしているかp.1
4社内で清算額を再計算しているなら、端数処理の順番(コマ別・商品別は処理しない、全商品の合計後に切り捨て、消費税も切り捨て)が記載例と同じかp.2
5スポットの約定量が保有量を下回るコマで、値差の受け取りが約定量までになることを収支の見込みに入れているかp.1・p.2 注1
6発行済み量を減らすときにJEPXから届くメール(取引規程第87条に基づく通知。コマ別の減少量MWが入る)の受け手を決めているかp.3

6はp.3にサンプルが載っている。件名は「【間接送電権取引】減少量に関するご通知」で、本文に01〜48コマごとの減少量が並ぶ。減らされた量は、計算式のキャンセル量にあたると読める(編集部の読み)。

投資判断の担当者へ

この通知は清算事務の変更で、間接送電権の制度や清算の考え方を変えるものではない。間接送電権を持たない事業者には関係がない。持っている事業者でも、収益への直接の影響は小さい。

よくある質問

Q1. 清算方法そのものは変わるのですか。
変わりません。JEPXは「清算方法は変更ありません(端数処理の一部は変更)」と書いています。変更後の端数処理の手順はp.2の記載例で示されていますが、変更前とどこが違うかは資料に書かれていません。
Q2. いつから変わりますか。
2026年6月13日(土)受渡分からです。
Q3. CSVファイルは今後も提供されますか。
提供されません。資料は「CSVファイルの提供は廃止します」と書いています。
Q4. 現行の清算システムからは取得できなくなるのですか。
資料は、現行システムから取得する場合はスポット取引清算書と併せてダウンロードする(スポット取引清算書と同じ書庫に格納)と書いています。現行システムでの取得がいつまで続くかは書かれていません。
Q5. 翌日取引の約定量が保有量より少ないと、清算はどうなりますか。
値差の受け取りは翌日取引の約定量までになり、権利の代金は保有量で払います。記載例では、保有量0.20MW・約定量0.10MW・エリア間値差400円/MWh・約定価格150円/MWhのコマの金額が5.00円です。
Q6. 記載例の数字が合わないところがあるようですが。
手順②の表で26W02T34が120.50円、清算書では125.50円になっています。全商品の合計376円と整合するのは125.50円のほうです。
Q7. 系統用蓄電池の事業者に関係がありますか。
間接送電権を持っている場合に限って関係します。エリアをまたいで電気を売り買いする事業者が、エリア間値差の変動に備えて持つことがある商品です。持っていれば、清算書の取り込みと照合の手順に手を入れることになります。

編集部の見立て

  1. 変わるのは清算の中身ではなく、清算書の置き場所と形式である。手間がかかるのは、CSVを前提に照合や仕訳を自動化している事業者だろう。手作業でPDFを見ている事業者なら、取得先を変えれば足りる。
  2. 資料の中で実務に効くのは、注1の扱いだと考える。値差は約定量まで、代金は保有量で精算されるので、保有量に見合う量をスポットで約定できないコマが続くと、権利を持つほど持ち出しになる。蓄電池の充放電計画と間接送電権の保有量は、同じ表で見ておきたい。
  3. 記載例の120.50円と125.50円の食い違いは小さな誤記とみられるが、検算の仕組みを作る側にとっては紛らわしい。JEPXが訂正版を出したかどうかは、本稿では確認していない。

編集体制と事実確認プロセス

BESS NEWSの記事はこう作っています

  • BESS NEWSは一次情報主義を採ります。官公庁・電力広域的運営推進機関・一般送配電事業者・取引所などが自ら公表した文書とページのみを出典とし、業界紙・ニュースサイト・プレスリリース配信の二次情報は出典に用いません。
  • 本稿は、JEPXの「電力取引 お知らせ」一覧から本PDF(全3ページ)を取得して読みました。p.2は表と式の文字が小さいため、ページ画像に描画して確認しました。PDFの文字情報には画面に表示されない文言が残っていましたが、本稿は表示されている内容だけを使っています。
  • 記載例の計算(4コマの金額、商品別の合計、消費税、清算額)は、編集部が資料の数値で検算しました。対照結果は「数値照合表」に示しました。
  • 間接送電権の位置づけ(エリア間値差に備える商品)と、蓄電池の取引への影響の整理は、一次情報の事実にもとづく編集部の解説です。

数値照合表

本文に出した主要な数値と事実を、一次情報の該当箇所と1対1で対照した表である。

#本文の数値・事実一次情報の記載出典(該当箇所)
1適用 2026年6月13日(土)受渡分から「2026年6月13日(土)受渡分より変更します」JEPX資料 p.1
2清算方法は変わらない。端数処理は一部変更「清算方法※は変更ありません(端数処理の一部は変更)」JEPX資料 p.1
3CSVファイルの提供は廃止「CSVファイルの提供は廃止します」JEPX資料 p.1
4現行の取得方法「清算システムより、清算種別「間接送電権」としてダウンロードする」JEPX資料 p.1
5変更後の取得方法と、現行システムから取る場合の書庫「新スポットシステムの清算情報としてダウンロードする」「スポット取引清算書と併せてダウンロードする(スポット取引清算書と同じ書庫に格納)」JEPX資料 p.1
6清算書の説明「日々スポット取引と併せて清算する実値差と間接送電権価格との差額清算書」JEPX資料 p.1
7約定量が保有量を下回れば約定量まで値差清算。買い代金は保有量「約定量の積算量が間接送電権保有量を下回る場合は、約定量の積算量までしか値差清算しない(間接送電権買い代金の清算は保有量によって行われます)」JEPX資料 p.1
830分単位の48個ごとに算出・端数処理しない「翌日取引の商品(30分単位の48個)ごとに金額を算出する。(※端数処理しない)」JEPX資料 p.2 手順①
9金額=保有量÷2×エリア間値差−保有量÷2×約定価格「金額(円) = (保有量(MW)※1 / 2(MW⇒MWh) × エリア間値差(円/MWh)※4) − (保有量(MW) / 2(MW⇒MWh) × 約定価格(円/MWh)※5)」JEPX資料 p.2
10注1 約定量が下回る場合は約定量「「保有量※2」より「翌日取引の約定量※3」が下回る場合、「翌日取引の約定量」の値とする」JEPX資料 p.2 注1
11保有量・翌日取引の約定量・エリア間値差・約定価格の定義注2「間接送電権の約定量-キャンセル量(混雑処理などで減少させる量)」注3「売約定量と買約定量の合計(※経過措置用入札分も含む)」注4「受電側エリア価格-送電側エリア価格」注5「間接送電権の約定価格」JEPX資料 p.2 注2〜注5
12端数は全商品の合計後に切り捨て、消費税も切り捨て「全ての間接送電権商品の金額を合計する。(※合計した後に端数を切り捨てる)」「税率を乗じ、消費税を算出する。(※端数を切り捨てる)」JEPX資料 p.2 手順②③
13記載例 4コマの金額 10.00/▲10.00/0.00/5.00円記載例の表(26W02T21:保有0.20MW・約定価格100、26W02T34:0.30MW・150、各行の約定量・エリア間値差・キャンセル量)JEPX資料 p.2 記載例
14記載例 250.80円・125.50円、合計376円、消費税37円、清算額413円(2026年1月7日受渡分)清算書「商品名:26W02T21 東北 -> 北海道 250.80」「26W02T34 東京 -> 中部 125.50」「合計(課税対象額)376」「消費税(10%対象 376 円)37」「清算額 413 円」JEPX資料 p.2 記載例
15手順②の表の26W02T34は120.50円手順②の表「26W02T34 120.50」(清算書側は125.50。376円と整合するのは125.50=編集部の検算)JEPX資料 p.2 記載例
16減少量の通知は取引規程第87条に基づく。01〜48コマ別の減少量「取引規程第87条に基づき、以下の通り量を減少しましたので通知いたします」「時間帯(01-48コマ)ごとの減少量(MW)」JEPX資料 p.3

出典(一次情報)

  1. 日本卸電力取引所「間接送電権清算書の変更について」(PDF、全3ページ。2026年5月28日 公表。本稿はp.1〜p.3を参照)
  2. 日本卸電力取引所「電力取引 お知らせ」(2026年5月28日 掲載の「間接送電権清算書の変更について」)
  3. 日本卸電力取引所(JEPX)

※二次情報(業界紙・ニュースサイト・プレスリリース配信)は出典に用いていません。出典2は随時更新されるページです。

出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/market/proffessional/4617003001001/

本記事は BESS media の転載条件(出典明記のうえ全文転載可)にもとづき転載しています。 記事内容の著作権は転載元に帰属します。

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