5月20日の北海道「広域予備率0.26%」は誤った値だった。融通指示と自動演算のずれが原因、200円/kWhの料金は修正後の単価で精算へ
2026年5月20日の午後、北海道エリアの15:30〜16:00のコマで、広域予備率が0.26%と公表された。同じコマのインバランス料金単価は200円/kWhになった。ところが0.26%は実際の需給状況とは異なる値だった。電力広域的運営推進機関(OCCTO)は6月2日、第119回調整力及び需給バランス評価等に関する委員会に原因と対応を報告している。14:51に出した融通指示が14:55の自動演算の直前になり、連系線の空容量だけが先に減った状態で計算された。予備率は5月26日に修正を終え、インバランス料金単価も修正後の単価で精算される予定である。
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何が起きたか:5月20日の15:30〜16:00のコマで、北海道エリアの広域予備率が0.26%、インバランス料金単価が200円/kWhと公表された。0.26%は実際の需給状況とは異なる値だった。
なぜ重要か:広域予備率の誤りは、インバランス料金単価の修正と精算のやり直しにまで及んだ。逼迫を知らせる指標が、データの反映順だけで跳ねうることを公式資料が示した事例である。
何をすべきか:このコマに北海道エリアでインバランスを出していた事業者は、修正後の単価による精算を自社の数字と照らす。予備率を運用の判断に使っているなら、融通指示の直後に出る値の扱いを決めておく。
何が公表されたか。0.26%と200円/kWh
広域予備率は、エリアの供給力にどれだけ余裕があるかを示す値である。OCCTOは、各一般送配電事業者から届く調整電力計画(エリアの需要と供給力)と、OCCTOのシステムで管理している連系線の空容量をもとに、毎時25分と55分に自動で計算している(資料3 p.4)。式は「(連系線空容量+エリア供給力−エリア需要)÷エリア需要」で、結果は毎時00分ごろと30分ごろに広域予備率Web公表システムへ出る(p.5)。
5月20日、この値が北海道エリアの「16時コマ」で0.26%と公表された(p.2)。16時コマとは15:30〜16:00の30分のことで、資料は同じコマを「16時コマ」「16:00コマ」「15:30~16:00」と書き分けている。公表画面の写しでは、北海道の「16:00」の列に、最新の広域予備率・最小の広域予備率ともに0.26が並ぶ(p.3)。
同じ時間帯のインバランス料金単価は200円/kWhになった。資料に載ったインバランス料金情報公表ウェブサイトの画面(5月21日11:04現在)では、北海道の15:30〜16:00は余剰単価・不足単価ともに200.00円/kWhである。同じコマの東北は9.17円/kWh、東京は28.04円/kWhだった(p.3)。
資料は、この0.26%を「実際の需給状況とは異なる値」と書いている(p.2)。予備率がどういう計算で200円/kWhという単価につながったのかまでは、資料は説明していない。ただ、予備率の修正とあわせて単価の修正作業を進めていると明記しており、誤った予備率が単価にも効いたことは資料の構成から読み取れる(この一文は編集部の読み)。インバランス料金の仕組みそのものは、入門記事「JEPX(卸電力市場)入門」で扱っている。
原因は融通指示と自動演算のタイミングのずれ
資料3 p.4の経緯を、時刻順に並べるとこうなる。
| 時刻 | 出来事 |
|---|---|
| 14:51 | エリア間補正融通を指示。北海道電力ネットワークが東北電力ネットワークから、15:30〜16:30に最大25.21万kWの供給を受ける |
| 14:54 | OCCTOのシステムで、融通を考慮した連系線空容量を更新(北海道向きの空容量が減少) |
| 14:55 | 14:54の更新だけが反映された状態で自動演算。15:30〜16:00は0.26%、16:00〜16:30は5.58% |
| 15:12 | 北海道電力ネットワークから、融通を考慮した調整電力計画を受信 |
| 15:25 | 空容量と調整電力計画の両方を反映して自動演算。16:00〜16:30は9.26%。15:30〜16:00はゲートクローズ後のため変更されず |
資料の説明では、融通量の調整に時間がかかり、14:55の自動演算の直前に融通指示を出すことになった(p.4)。融通を受ける北海道側では、連系線の空容量が融通分だけ減る。本来なら同じ分だけエリアの供給力が増え、予備率は融通前と変わらない。今回は空容量の減少だけが先に入り、供給力は融通前のまま計算された。p.6の算出イメージは、この状態を「エリア供給力と空容量の状態が不一致」と表している。
融通指示が広域予備率自動演算直前となり、融通指示の考慮において、エリア供給力と空容量の状態が不一致となり、広域予備率が低下
— OCCTO 第119回調整力及び需給バランス評価等に関する委員会 資料3 p.6時刻を並べると、計画側が間に合わなかった理由も見えてくる。各一般送配電事業者は、自動演算に合わせて毎時15分と45分までに調整電力計画を送る(p.4)。14:55の演算に使われるのは14:45ごろに出た計画で、14:51の融通指示を織り込む余地はもともとなかったことになる(この段落は資料の時刻からの編集部の読み)。
15:25の再演算で直らなかった理由
15:12に融通を考慮した計画が届き、15:25の自動演算では空容量と計画の両方がそろった。それでも15:30〜16:00の0.26%は残った。p.5のフローによれば、15:30〜16:00コマのゲートクローズは1時間前の14:30で、15:25の自動演算が対象とするのは16:00〜16:30コマ以降である。誤った値が出たコマは、公表された時点でもう計算し直す対象から外れていた。
結果として、14:55に5.58%だった16:00〜16:30コマは、15:25の再演算で9.26%に上がった。0.26%が残ったのは15:30〜16:00の1コマだけである。
修正・再精算と、自動演算の運用の見直し
広域予備率Web公表システムの「5月20日16:00コマの広域予備率0.26%」は、5月26日に修正を完了した(p.7)。インバランス料金単価も修正作業を進めており、修正された単価で精算が行われる予定だという。資料の日付は6月2日なので、ここでの「修正作業中」「精算予定」は6月2日時点の状況である。修正後の予備率の値も、修正後の単価も、精算の時期も、資料3には書かれていない。
再発防止として、OCCTOは「広域予備率自動演算タイミングを踏まえた業務運行に努める」とし、次の3点を挙げた(p.7)。
- 融通指示が反映された連系線空容量の更新と、調整電力計画の更新がそろってから自動演算を実施する。
- 調整電力計画の受領が自動演算の後になる場合は、連系線空容量の更新も自動演算の後に行う。
- やむを得ず自動演算のタイミングにデータがそろわない場合は、広域予備率の自動演算をロックする(次の自動演算のタイミングで演算・公表)。
3点目は、片方だけ更新された値を出すくらいなら、その回の公表を見送るという判断である。ロックした場合、その回に出るはずだった値は次の自動演算まで更新されない。どのコマが何分遅れるのか、ロック中に画面へ何が表示されるのかは、資料には書かれていない。
蓄電池の運用と精算で確かめること
系統用蓄電池の運用では、インバランス料金単価が高値になるコマを放電の機会と見て、広域予備率を逼迫の合図として読む。今回は、その合図が実態と関係なく跳ね、価格の修正にまで及んだ。この事案から、実務で確かめておくことを挙げる。
| # | 確かめること | 根拠 |
|---|---|---|
| 1 | 5月20日15:30〜16:00に北海道エリアでインバランスを出していたか。出していたなら、修正後の単価による精算額を自社の計算と照らす | 資料3 p.3・p.7 |
| 2 | このコマの200円/kWhを前提に、放電や計画の変更をしていなかったか。していた場合、精算は修正後の単価で行われる予定であることを損益の見込みに入れる | 資料3 p.7 |
| 3 | 広域予備率を自動売買やアラートの条件に使っているなら、融通指示の直後に急低下した値をどう扱うかを決めておく | 資料3 p.4・p.6 |
| 4 | 自動演算のロックが入ると公表が次の演算まで遅れる。予備率の更新を待つ処理にタイムアウトや前回値の扱いを決めておく | 資料3 p.7 |
今回の0.26%は、需給が逼迫したから出た数字ではない。データの反映順で出た数字である。公表された予備率と単価が、あとから修正されて精算に使われる場合があることを、収益計算の前提に入れておきたい。
よくある質問
編集部の見立て
- 原因は計算式の誤りではなく、入力2つの更新順だった。空容量はOCCTOが即座に更新し、調整電力計画は一般送配電事業者から決まった時刻までに届く。この2つの時計がずれると、式が正しくても予備率は低く出る。融通指示が演算の直前に重なれば、どのエリアでも起こりうる形である。
- 改善策の3点目(ロック)は、誤った値を出す代わりに公表を一回遅らせるものだ。予備率の更新を待って動く自動売買の仕組みは、値が来ない時間をどう扱うかを先に決めておく必要がある。
- 資料3は、修正後の予備率も修正後の単価も示していない。精算額がどれだけ動いたかは、この資料からは分からない。北海道エリアで当該コマにポジションを持っていた事業者は、修正後の単価の公表と精算の結果を自社の記録で確かめたい。
編集体制と事実確認プロセス
BESS NEWSの記事はこう作っています
- BESS NEWSは一次情報主義を採ります。官公庁・電力広域的運営推進機関・一般送配電事業者などが自ら公表した文書とページのみを出典とし、業界紙・ニュースサイト・プレスリリース配信の二次情報は出典に用いません。
- 本稿の数値・引用は、OCCTO 第119回調整力及び需給バランス評価等に関する委員会の資料3(PDF、全7ページ)を取得し、全ページの本文と突合しています。p.3の公表画面の写し(予備率の表とインバランス料金単価の表)は、PDFをページ画像として描画し、拡大して数値を読み取りました。対照結果は「数値照合表」に示しました。
- 本稿は、2026年6月2日に公表された資料をもとに、2026年10月4日に作成した記事です。内容は資料の公表時点の記載にもとづき、その後の修正単価の公表や精算の結果は扱っていません。
- 「16時コマ」が15:30〜16:00を指すことは、資料p.3の公表画面とp.4の経緯の数値の一致から確認しました。
- 計画の送信時刻から見た原因の読み、予備率と単価の関係、実務で確かめることの整理は、一次情報の事実にもとづく編集部の解釈です。確定的な見通しではありません。
数値照合表
本文に出した主要な数値と事実を、一次情報の該当箇所と1対1で対照した表である。
| # | 本文の数値・事実 | 一次情報の記載 | 出典(該当箇所) |
|---|---|---|---|
| 1 | 北海道エリア16時コマの広域予備率 0.26%・インバランス料金単価 200円/kWh | 「5月20日の16時コマにおいて北海道エリアの広域予備率が0.26%と公表され、インバランス料金単価が200円/kWhとなる事象が発生」 | 資料3 p.2 |
| 2 | 0.26%は実際の需給と異なる値 | 「0.26%という値は実際の需給状況とは異なる値であり」 | 資料3 p.2 |
| 3 | 北海道 15:30〜16:00 の余剰・不足単価 200.00円/kWh、東北 9.17円/kWh、東京 28.04円/kWh | インバランス料金情報公表ウェブサイトの画面写し「2026年05月20日(水)15:30 - 16:00」(05月21日 11:04 現在) | 資料3 p.3 |
| 4 | 自動演算は毎時25分・55分 | 「毎時25、55分に自動演算している」 | 資料3 p.4 |
| 5 | 14:51 融通指示・15:30〜16:30・最大25.21万kW | 「14:51 エリア間補正融通融通指示 北海道電力ネットワークは、東北電力ネットワークから15:30~16:30、最大25.21万kWの電気の供給を受けること」 | 資料3 p.4 |
| 6 | 14:54 空容量を更新(北海道向き減少) | 「14:54 広域機関システムで融通を考慮した連系線空容量を更新(北海道向き空容量減少)」 | 資料3 p.4 |
| 7 | 14:55 自動演算 15:30〜16:00 0.26%・16:00〜16:30 5.58% | 「14:55 ②のみが反映された広域予備率を広域機関システムにて自動演算 15:30~16:00 0.26%、16:00~16:30 5.58%」 | 資料3 p.4 |
| 8 | 15:12 計画受信・毎時15分と45分までに送信 | 「15:12 北海道NWより融通を考慮した調整電力計画を受信(広域予備率演算タイミングに合わせ、各一送は毎時15,45分までに送信)」 | 資料3 p.4 |
| 9 | 15:25 再演算 16:00〜16:30 9.26%・15:30〜16:00 は変更されず | 「15:25 ②、④が反映された広域予備率を広域機関システムにて自動演算 16:00~16:30 9.26%(15:30~16:00はゲートクローズ後のため変更されなかった)」 | 資料3 p.4 |
| 10 | 広域予備率の式・ゲートクローズは1時間前・公表は毎時00分ごろと30分ごろ | 「広域予備率=(①+②ー③)÷③」(①連系線空容量 ②供給力 ③需要)、「15:30~16:00コマ ゲートクローズ(1時間前)」、「広域予備率公表(毎時00分頃)」「(毎時30分頃)」 | 資料3 p.5 |
| 11 | 予備率は5月26日に修正完了・単価は修正後の単価で精算予定 | 「5月26日に修正を完了している。インバランス料金単価についても修正作業を進めており、修正されたインバランス料金単価により精算が行われる予定」 | 資料3 p.7 |
| 12 | 今後の対応3点(そろってから演算・空容量の更新を後に・演算をロック) | 「融通指示が反映された連系線空容量の更新と調整電力計画の更新が揃ってから自動演算を実施」ほか2点 | 資料3 p.7 |
| 13 | 委員会の開催 2026年6月2日・資料3の題名 | 「日時:2026年6月2日(火)12:00~13:00」「(資料3)5月20日の北海道エリアにおける広域予備率について(報告)」 | 議事次第 |
出典(一次情報)
- 電力広域的運営推進機関「第119回 調整力及び需給バランス評価等に関する委員会」(2026年6月2日 開催)
- 調整力及び需給バランス評価等に関する委員会 事務局「資料3 5月20日の北海道エリアにおける広域予備率について(報告)」(2026年6月2日 公表。本稿はp.2〜p.7を参照)
- 電力広域的運営推進機関「第119回 調整力及び需給バランス評価等に関する委員会 議事次第」(2026年6月2日 公表)
- 電力広域的運営推進機関「広域予備率Web公表システム」(随時更新されるシステム。本稿の数値は資料3 p.3 の画面写しによる)
※二次情報(業界紙・ニュースサイト・プレスリリース配信)は出典に用いていません。インバランス料金単価の数値は、資料3 p.3 に掲載されたインバランス料金情報公表ウェブサイトの画面写し(5月21日11:04現在)によります。
出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/market/proffessional/4617503001001/
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