櫻貿易株式会社
制度・政策・審議会上級

需給調整市場向けの連系線確保量(α値)、監視委が2026年度9月以降の値を算出。前年度値の暫定継続を終える

連系線の空き容量のうち、どれだけを需給調整市場の広域調達に回すか。それを決めるのが「α値」だ。電力・ガス取引監視等委員会の事務局は2026年8月28日、第23回制度設計・監視専門会合に資料5を出し、2026年度9月以降に適用するα値を算出したと報告した。2026年度は全商品の前日取引化で分析の前提が変わったため、1月の会合で、当面は前年度の設定を続け、前日取引化後の実績を3、4か月程度ためてから算出すると整理されていた。今回はその宿題の答えにあたる。前年度値の暫定継続は、9月適用分から実績ベースの値に置き換わる。エリアをまたいで調整力を売るBESSにとって、約定できる量の前提がここで入れ替わる。

読了目安:約8分対象読者:上級(複数エリアで需給調整市場に応札するアグリゲーター・BG、広域調達を収支に織り込む投資家)種別:審議会資料の解説

要点まとめ

何が起きたか:監視委事務局が2026年8月28日、需給調整市場向けの連系線確保量(α値)について、2026年度9月以降に適用する値の算出結果を報告した(第23回制度設計・監視専門会合 資料5)。

なぜ重要か:αは連系線の空き容量のうち時間前市場に残す分で、残りが需給調整市場の広域調達に使われる。エリアの外へ調整力を出せるかどうかの前提が、この値で変わる。

何をすべきか:自社リソースが関係する連系線・方向・時間帯ブロックの値を資料5の算出結果で確かめ、9月以降の供出計画と収支モデルに反映する。

α値とは何か。連系線の空き容量を分ける1本の線

α値は時間前市場向けに残す連系線容量で、α=0MWなら連系線は全て需給調整市場向け、αがスポット市場後の空容量を超えれば全て時間前市場向けになることを、3つの場合と前日12〜14時の入札・14〜15時の約定の流れで示した図。
図1:α値の定義と需給調整市場の入札・約定の時間帯。出典=監視委 第23回制度設計・監視専門会合 資料5「需給調整市場向け連系線確保量の上限値」。作図=BESS NEWS編集部。

需給調整市場では、調整力をエリアをまたいで調達できる。資料5は冒頭で、三次調整力②が2021年度、三次調整力①が2022年度、残る商品が2024年度に取引を始めた経緯を振り返っている。広域で調達した調整力を実際に使うには、地域間連系線の容量をあらかじめ押さえておく必要がある。

ただし連系線は、スポット市場や時間前市場でエリア間の電気を流すためにも使われる。需給調整市場のために押さえすぎれば、今度は時間前市場の取引が詰まる。そこで確保量には上限が置かれている。この上限を決めるのがα値だ。

αは時間前市場向けに残す連系線容量のことであり、α値(MW)がスポット市場後の空容量を超過したとき、連系線は全て時間前市場のために確保される。逆に、α=0MWのとき、連系線は全て需給調整市場のために確保される。

— 監視委 第23回制度設計・監視専門会合 資料5「需給調整市場向け連系線確保量の上限値」

順番に置き直すとこうなる。需給調整市場は全商品とも、スポット市場が終わった後、時間前市場が始まる前の前日12時〜14時に入札を受け付け、14〜15時に約定処理をする。その時点で連系線に残っている空き容量から、まずαの分を時間前市場のために取り分ける。需給調整市場の広域調達に使えるのは、その残りである(この一文は定義からの編集部の読み)。

BESSの立場で言い換えると、αが大きいほど、他エリアの需要に向けて調整力を出せる余地は狭くなる。自エリアの募集量が埋まっていて、隣のエリアに売りたいときほど、この値が効いてくる。

なぜ2026年9月なのか。全商品前日取引化で前提が変わり、暫定継続が終わった

2019年9月の第41回から2026年8月の第23回までのα値をめぐる議論の経緯と、今回の算出結果が9月〜3月の月別・1日8ブロック・連系線ごとの順方向と逆方向・MW単位で示されたこと、事務局が必要に応じ見直しを検討するとしたことを示す図。
図2:α値をめぐる議論の経緯と今回の算出結果の形。出典=監視委 第23回制度設計・監視専門会合 資料5「本日の報告内容」「(参考)過去の制度設計専門会合での議論」「【算出結果】2026年度に適用予定の連系線容量(α)」。作図=BESS NEWS編集部。

α値はこれまで、年度の初めに向けて1〜3月ごろに報告されてきた。2026年度はそうならなかった。需給調整市場が2026年度から全商品の前日取引化に移り、α値を算出する分析の前提条件そのものが変わったからだ。

そこで2026年1月の第17回会合では、2026年度の取引開始以降も当面は前年度の設定を継続し、前日取引化に移った後の取引実績を一定期間(3、4か月程度)ためたうえで算出する、と整理された。4月から8月までの5か月、α値は2025年度向けに試算された値のまま運用されていたことになる。

今回の資料5は、そのデータがたまったとして「2026年度9月以降に適用する需給調整市場向けの連系線確保量を算出した」と報告した。算出の考え方は従来の方法を引き継いでいる。広域調達で需給調整市場のコストがどれだけ下がるかと、連系線を押さえたことで市場が分断され、時間前市場の調達額がどれだけ増えるか。この2つを各コマで見積もって足し合わせ、総コストが最小になるαをそのブロックの値とする。広域調達によるコストの削減分は、2026年のデータを用いて算出したとされる。

結果は「2026年度に適用予定の連系線容量(α)」として、9月から3月までの月ごとに、1日を8つに分けたブロック(注記では1ブロック=0:00〜3:00など)、連系線ごと、順方向と逆方向別に、MW単位で表にまとめられている。表は「αを増加させるブロック」と「αを減少させるブロック」に分けて示されている。

本稿で表の数値を転記していない理由

算出結果の表は月・ブロック・連系線・方向の組み合わせで値が並び、件数が多い。一部だけを抜き出すと、自社に関係する連系線や向きを取り違えるもとになる。そのため本稿には数値を載せていない。自社に関係する値は、資料5の算出結果ページで直接確かめてほしい。

2021年にαを2度引き下げた前例。αは実績で動く変数

資料5は参考として、α値をめぐる過去の議論を並べている。読むと、αは一度決めたら動かない定数ではないことが分かる。

会合開催日扱った内容(資料5の参考ページの要旨)
第41回2019年9月13日三次調整力②の取引開始を前に、α値の考え方を議論
第57回2021年3月2日時間前市場向けの確保量を年間一定に設定
第61回2021年5月31日三次調整力②の調達量未達と市場分断を受け、αを引き下げ
第63回2021年7月30日依然として調達量未達と市場分断が生じており、αをさらに引き下げ
第70回・第89回・第90回2022年2月〜2023年10月β値・α値を試算(2022年度向け・2024年度向け)
第5回2025年1月20日2024年度のデータで2025年度向けのα値を試算
第17回2026年1月20日前日取引化後のデータがたまるまで、2025年度の設定を継続

第90回までは制度設計専門会合、第5回以降は制度設計・監視専門会合での議論である。目を引くのは2021年だ。三次調整力②の調達量未達と市場分断が生じていたことを受け、5月の第61回でαを引き下げた。2か月後の第63回の時点でも、未達と市場分断は依然として生じていた。そこでαをさらに下げている。αを下げれば需給調整市場に回る連系線容量が増え、広域で約定しやすくなる。実績を見て、半年のうちに2度動かした例である。

今回の資料5も、値を固定するとは書いていない。

2026年度の各商品の取引実績や潮流の状況等を見ながら必要に応じ見直しを検討していく

— 監視委 第23回制度設計・監視専門会合 資料5「本日の報告内容」

9月に入れ替わった値が、年度末までそのまま続くとは限らない。2026年度中に再び動く余地を残した書き方である。

9月は上限価格の引き下げと重なる。BESS事業者が確かめる手順

9月の需給調整市場では、もう一つ前提が動く。一次調整力・二次調整力①・複合商品の上限価格が15円から10円/ΔkW・30分に下がり、9月1日実需給分から適用される。αは「どれだけ広域で約定できるか」という量の枠、上限価格は「いくらまで値が付くか」という価格の天井である。同じ月に両方が変わるので、9月以降の収益前提は二重に見直すことになる(この整理は編集部の解釈)。

実務で確かめる順番を挙げておく。

#確かめること根拠
1自社リソースのあるエリアと、調整力を出したい先のエリアを結ぶ連系線と、その向き(順方向・逆方向)を特定する資料5 算出結果の表の構成
2資料5の算出結果で、該当する連系線・向き・月・ブロックの値と、「増加させるブロック」「減少させるブロック」のどちらに入るかを見る資料5「【算出結果】2026年度に適用予定の連系線容量(α)」
3自社が応札している時間帯を8ブロックに重ね、αが効く時間帯を洗い出す資料5 算出結果の注記(1ブロック=0:00〜3:00など)
4広域での約定を見込んだ収支モデルは、前年度値のままになっていないか確認し、9月以降の値で置き直す資料5「本日の報告内容」
5次回以降の制度設計・監視専門会合の議題に、α値の見直しが載るかを追う資料5「本日の報告内容」(必要に応じ見直し)
投資判断の担当者へ

α値は連系線の空き容量の分け方を決める変数で、約定量そのものではない。実際に広域で約定できるかは、スポット市場後にどれだけ空き容量が残るか、各エリアの募集量や応札状況にも左右される。αの増減だけを見て収益の増減を結論づけないこと。

よくある質問

Q1. α値は何を表す数値ですか。
需給調整市場向けに地域間連系線を確保するときの上限を決める値で、時間前市場向けに残す連系線容量(MW)です。α=0MWなら連系線は全て需給調整市場のために確保され、αがスポット市場後の空容量を超えれば全て時間前市場のために確保されます。
Q2. α値が大きくなると、蓄電池にとって不利になりますか。
定義上、αが大きいほど需給調整市場の広域調達に回る連系線容量は小さくなり、他エリアに向けて調整力を出せる余地は狭くなります。ただし実際の約定は、スポット市場後に残る空容量や各エリアの募集量・応札状況にも左右されるため、αの増減だけで収益の増減は決まりません。
Q3. なぜ4月からではなく9月からの適用なのですか。
2026年度から需給調整市場が全商品の前日取引化に移り、算出の前提条件が変わったためです。2026年1月の第17回制度設計・監視専門会合で、当面は前年度の設定を継続し、移行後の取引実績を3、4か月程度ためてから算出すると整理されました。今回の資料5はその算出結果で、2026年度9月以降に適用するとしています。
Q4. 今回のα値は年度末まで変わりませんか。
変わらないとは限りません。資料5は「2026年度の各商品の取引実績や潮流の状況等を見ながら必要に応じ見直しを検討していく」としています。2021年には三次調整力②の調達量未達や市場分断を受け、5月と7月の2度にわたりαを引き下げた例があります。
Q5. 自社に関係するα値はどこで確認できますか。
資料5の「【算出結果】2026年度に適用予定の連系線容量(α)」のページです。9月から3月までの月別に、1日を8つに分けたブロック、連系線ごと、順方向と逆方向別にMW単位で示され、αを増加させるブロックと減少させるブロックが分けて記載されています。

編集部の見立て

  1. 今回の算出で変わったのは値そのものより、値の根拠である。4月から8月までは前日取引化の前のデータで決めた2025年度の設定で動いていた。9月からは前日取引化後の実績にもとづく値になる。広域での約定を前提に収支を組んでいるなら、モデルの前提を4〜8月と9月以降で分けて置くのが筋だろう。
  2. 2021年の2度の引き下げは、調達量の未達と市場分断という実績の問題から起きた。今回も事務局は見直しの余地を明記している。前日取引化後の約定実績や潮流が想定とずれれば、年度の途中でも値は動きうる。BESS側が自社の約定データを持っていることが、変更を早く察知する材料になる。
  3. 算出結果は月・ブロック・連系線・向きで細かく分かれており、「全国で増えた」「減った」と一言でまとめられる形ではない。同じ月でも時間帯によって逆方向に動くことがある。自社の供出時間帯に重ねて読まない限り、影響は見えてこない。

編集体制と事実確認プロセス

BESS NEWSの記事はこう作っています

  • BESS NEWSは一次情報主義を採ります。官公庁・電力広域的運営推進機関・一般送配電事業者などが自ら公表した文書とページのみを出典とし、業界紙・ニュースサイト・プレスリリース配信の二次情報は出典に用いません。
  • 本稿は2026年8月28日公表の資料をもとに、2026年10月4日に作成した遡及記事です。公開日は資料の公表日に合わせ、本文は公表日時点で分かっていた情報だけで書いています。
  • 資料5は全11ページを2026年10月4日に取得して読み、引用した文、各ページの見出し、過去の会合の回次と日付を原本と照らし合わせました。算出結果の表の数値も原本で確かめています。
  • 本稿では該当箇所を資料5内のページ見出しで示しています。算出結果の表の数値は、件数が多く一部の抜き出しが誤読を招くため、本文に転記していません。
  • 上限価格の引き下げ(15円→10円/ΔkW・30分、9月1日実需給分から)は資料5の記載ではなく、BESS NEWSの日次モニタリングの記録にもとづきます。本稿の取材時点で一次資料の該当箇所は開けていません。
  • αの定義から読める広域調達への影響、収支モデルの置き直し方、確認の手順は、一次情報の事実にもとづく編集部の解釈です。確定的な見通しではありません。

数値照合表

本文に出した主要な数値と事実を、一次情報の該当箇所と1対1で対照した表である。引用は2026年10月4日に取得した資料5の原本による。

#本文の数値・事実一次情報の記載出典(該当箇所)
1資料の公表 2026年8月28日・第23回表紙「第23回 制度設計・監視専門会合 事務局提出資料 2026年8月28日(金) 資料5」資料5 表紙
22026年度9月以降に適用「2026年度9月以降に適用する需給調整市場向けの連系線確保量を算出した」資料5「本日の報告内容」
3前年度の設定を当面継続・3、4か月程度ためて算出(第17回の整理)「2026年度の取引開始以降も当面は前年度の設定を継続し」「全商品前日取引化移行後の取引実績を一定期間(3、4か月程度)蓄積した上で」資料5「本日の報告内容」
4必要に応じ見直しを検討「2026年度の各商品の取引実績や潮流の状況等を見ながら必要に応じ見直しを検討していく」資料5「本日の報告内容」
5α値の報告は例年1〜3月ごろ従来は1〜3月に報告してきたが、2026年度は全商品前日取引化への移行でデータ蓄積が必要になった旨の記載資料5「本日の報告内容」
6三次②は2021年度、三次①は2022年度、全商品は2024年度から取引需給調整市場の取引開始の経緯(三次調整力②2021年度・三次調整力①2022年度・全商品2024年度)資料5「本日の報告内容」
7αの定義・α=0MWの扱い「αは時間前市場向けに残す連系線容量のことであり、α値(MW)がスポット市場後の空容量を超過したとき、連系線は全て時間前市場のために確保される」「逆に、α=0MWのとき、連系線は全て需給調整市場のために確保される。」資料5「需給調整市場向け連系線確保量の上限値」
8前日12〜14時に入札、14〜15時に約定処理「前日12時~14時に入札が行われ、14~15時の間に約定処理が行われる。」資料5「需給調整市場向け連系線確保量の上限値」
9ブロックごとに総コストが最小となるαを採る「各コマ毎の影響額の算出結果を足し合わせ、その総コストが最小となる際のαを当該ブロックにおけるα値とした」資料5「(参考)各ブロックにおける最適なα値の設定方法」
102026年のデータを用いて算出「α値は需給調整市場の広域調達によるコストの削減分を、2026年のデータを用いて算出した」資料5「(参考)α値の算定方法(広域調達によるコストの削減について)」
119月〜3月の月別・8ブロック・連系線ごと順方向/逆方向・MW表題「2026年度に適用予定の連系線容量(α)」、月別の表、8ブロック(注記:1ブロック=0:00~3:00)、単位MW、「αを増加させるブロック」「αを減少させるブロック」資料5「【算出結果】2026年度に適用予定の連系線容量(α)」
12第41回 2019年9月13日・第57回 2021年3月2日過去の議論の一覧(第41回:α値の考え方/第57回:時間前市場向けの確保量を年間一定に)資料5「(参考)過去の制度設計専門会合での議論」
13第61回 2021年5月31日・第63回 2021年7月30日過去の議論の一覧(第61回:三次②の調達量未達・市場分断を受けαを引き下げ/第63回:「依然として」調達量未達・市場分断が生じていたことを受けさらに引き下げ)資料5「(参考)過去の制度設計専門会合での議論」
14第5回 2025年1月20日・第17回 2026年1月20日過去の議論の一覧(第5回:2025年度向けα値を試算/第17回:前日化後のデータ蓄積まで2025年度の設定を継続)資料5「(参考)過去の制度設計専門会合での議論」
15第23回の配布資料(資料1〜5)配布資料一覧「資料5 需給調整市場向けの連系線確保量について」第23回 配布資料ページ

出典(一次情報)

  1. 電力・ガス取引監視等委員会「制度設計・監視専門会合(第23回)‐配布資料」(2026年8月28日 公表)
  2. 電力・ガス取引監視等委員会 事務局「資料5 需給調整市場向けの連系線確保量について」(2026年8月28日 公表。全11ページ)

※二次情報(業界紙・ニュースサイト・プレスリリース配信)は出典に用いていません。資料5は原本で確認しました(取得 2026年10月4日)。

出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/institutional/proffessional/4626203102007/

本記事は BESS media の転載条件(出典明記のうえ全文転載可)にもとづき転載しています。 記事内容の著作権は転載元に帰属します。

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