櫻貿易株式会社
市場・価格上級

JEPX時間前市場は9月30日に乗り換わる——10月1日受渡分から新システム、清算書の取り口も同じ日に分かれる

日本卸電力取引所(JEPX)が2026年9月8日、取引システムの更改について現状を整理して公表した。時間前取引の新システムは2026年9月30日に稼働し、10月1日受渡分から取引可能になる。現行システムで取引できるのは9月30日受渡分までで、その後は実績データ等の取得のため10月9日まで稼働する。見落としやすいのは清算側で、新システムでの売買に伴う清算書は現行清算システムでは取得できない。さらに先には、スポットの現行システムと清算システムが2027年3月31日で並行稼働を終える期日が控えている。

読了目安:約7分対象読者:上級(時間前市場でポジション調整を行うアグリゲーター、系統用蓄電池のトレーディング担当、バックオフィス)種別:市場インフラの切替解説

時間前の新システム稼働
9月30日(2026年)
新システムで取引
10月1日受渡分から
現行システムの稼働終了
10月9日実績データ等の取得はこの日まで
清算システムの廃止
2027年4月1日以降
図解サマリー(3行)

何が起きたか:JEPXが2026年9月8日、取引システムの更改を1枚に整理して公表した。時間前取引の新システムは9月30日稼働、10月1日受渡分から取引可能になる。

なぜ重要か:時間前市場は蓄電池がポジションを最終調整する場である。切替日を跨ぐ運用と、受渡日で分かれる清算書の取得先を取り違えると、実務が止まる。

何をすべきか:9月30日受渡分と10月1日受渡分で使うシステムを分け、清算書の取得先を切り替える。あわせて2027年3月31日の並行稼働終了までに自社システムを用意するか、連係システム提供事業者と契約する。

時間前市場は、スポット市場の約定後に生じたずれを埋める場である。系統用蓄電池にとっては、需給の振れやSOCの実績に合わせて最後にポジションを整える窓口にあたる。そこが月末に別のシステムへ移る。公表文は2ページで、決まっていることと決まっていないことがはっきり分かれている。

3つのシステムと、3つの期日

今回の公表文は、スポット市場・時間前市場・清算システムの3つについて、それぞれの現在地を並べたものである。ひとつの締切に向かって全部が動くのではなく、期日が3つに割れているのが要点になる。

時間前市場の新システムは2026年9月30日に稼働し、10月1日受渡分から取引可能になる。スポット市場の新システムはすでに2026年4月1日から稼働しており、期限があるのは現行システム側の卒業のほうで、並行稼働は2027年3月31日受渡分までとされている。清算システムも2027年3月31日まで並行稼働し、4月1日以降は廃止となる。

JEPXの時間前市場・スポット市場・清算システムの3つについて、新システムの稼働日と現行システムの終了日を並べた図。
図1:3つのシステムと、それぞれの期日。時間前市場の切替が最も近く、清算システムの廃止が最も遠い。出典=JEPX「取引システムの更改について」(2026年9月8日)。作図=BESS NEWS編集部。

公表文は、スポットの現行システムの並行稼働について「それまでに自らシステムを用意するか、本取引所連係システム提供事業者と契約する必要があります」と書いている。連係システム提供事業者の一覧は、公表文の脚注で JEPXの提供事業者ページ が示されている。事業者名や料金体系は公表文には書かれていない。

時間前市場の切替は「受渡日」で切れる

切替の境目は、取引した日ではなく受渡分で引かれている。新システムで取引できるのは10月1日受渡分から、現行システムで取引できるのは9月30日受渡分までである。

現行システムはそこで止まるわけではない。公表文は「その後実績データ等の取得のため10月9日までは稼働します」としている。取引はできないが、実績を取りに行く窓は9日ぶん残る、という設計である。逆に言えば、10月9日を過ぎてから現行システムに実績を取りに戻ることはできない。

9月30日は当日取引の当日でもある。翌日受渡分を扱う時間帯と、当日受渡分を扱う時間帯が同じ日に混在する市場なので、「その日にどちらの画面を開くか」ではなく「その商品の受渡日はいつか」で判断することになる。

見落としやすいのは清算書の取り口

公表文のなかで、運用が止まりうる箇所はここである。「新システムでの売買に伴う清算書は、現行清算システムでは取得することが出来ません。新システムの清算管理より取得頂く必要がありますのでご注意下さい」と明記されている。

受渡日によって清算書の取得先が現行清算システムと新システムの清算管理に分かれることを示した図。
図2:受渡日で清算書の取得先が分かれる。新システムでの売買に伴う清算書は現行清算システムでは取得できない。出典=同上。作図=BESS NEWS編集部。

つまり10月に入ると、9月30日受渡分までの清算書は現行清算システム、10月1日受渡分からの清算書は新システムの清算管理、という二本立てになる。月次で締める側から見ると、1か月ぶんの数字が2か所に分かれる最初の月が10月である。

2027年4月1日以降はさらに形が変わる。清算システムそのものが廃止され、清算書等は各取引システムの清算管理から取得し、決済日で合算して移動金額を確認することになる。公表文は、この合算に「非化石取引も含む」と括弧書きを添えている。

その先にある2027年3月31日

時間前の切替が済んでも、期日はもう一段ある。スポット市場の現行システムの並行稼働と、清算システムの並行稼働が、どちらも2027年3月31日で終わる。

スポット側について公表文が求めているのは、「自らシステムを用意する」か「本取引所連係システム提供事業者と契約する」かのどちらかである。自社で接続を作るか、間に入る事業者を使うかという選択であり、どちらにも準備期間がいる。9月30日の切替に人手を取られている最中に、半年先のこの選択が置き去りになりやすい。

新システムのAPI仕様や接続要件の詳細は、この公表文には書かれていない。そこは未確認である。提供事業者との契約に要する期間も同様で、公表文からは読み取れない。

ベースロード・間接送電権・先渡は「画面だけ」になる

その他システムの扱いは、自動化している事業者には効いてくる。公表文は「2027年3月までに新たな取引用画面を本取引所で用意します(API対応はなし)」としている。括弧書きが短いので読み飛ばしやすいが、意味するところは大きい。

ベースロード取引・間接送電権取引・先渡取引の新しい取引用画面にAPI対応がないこと、預託金制度が検討中であることを示した図。
図3:その他システムは2027年3月までに新しい取引用画面が用意されるが、API対応はない。預託金制度は検討中。出典=同上。作図=BESS NEWS編集部。

ベースロード取引・間接送電権取引・先渡取引を自動発注や自動照合で回している事業者は、2027年3月以降、その部分が画面操作に戻る。清算書についても、各市場(スポット市場)価格との清算書はスポット市場の清算管理から、売買手数料は取引用画面から取得することになる。

預託金制度は、まだ形が決まっていない。公表文は「預託金制度(必要預託金の算出方法等)については、システムを利用しない方法を現在検討しております。検討結果が出次第、ご案内申し上げます」としている。ここは決定ではなく検討中である。算出方法が変わるのか、提出の手段だけが変わるのかも、この文面からは判断できない。

系統用蓄電池の事業者に、どこが効くのか

ここからは一次情報の事実をもとにした編集部の読み解きである。公表文に書かれた事実ではない。

蓄電池は、スポットで組んだ計画を時間前で削り直すことで、実需給に近い時点の誤差を吸収する。時間前がインバランス回避の最後の砦になっている事業者ほど、9月30日の切替が「取引できない時間帯を作らないか」を確認する必要がある。公表文はシステムの停止時間帯には触れていないので、切替当日の運用可能時間は未確認である。

バックオフィス側では、10月の清算書が2か所に分かれる。決済照合を自動化している場合、取得先の分岐を10月1日受渡分で切るロジックが要る。手作業で回している場合は、9月30日受渡分までと10月1日受渡分からで担当の手順書を分けるほうが早い。

2027年3月31日は、スポットの接続そのものの期日である。蓄電池の収益はスポットと時間前の両輪で立つので、ここで接続が途切れると片輪が止まる。自社で作るか事業者に頼むかの判断は、要件が出てから始めると間に合わない可能性がある。

今から備えること

  1. 受渡日で切る。9月30日受渡分までと10月1日受渡分からで、使う取引システムと清算書の取得先を分けて手順書に書く。
  2. 10月9日を予定表に入れる。現行システムから実績データ等を取りに行けるのはこの日までである。必要な実績の洗い出しを9月中に終える。
  3. 10月の決済照合を二本立てで設計する。1か月ぶんの清算書が2か所に分かれる最初の月になる。
  4. 2027年3月31日から逆算する。スポットの現行システムの並行稼働終了までに、自社でシステムを用意するか、連係システム提供事業者と契約するかを決める。契約するなら提供事業者ページから候補を洗う。
  5. API前提の自動化を棚卸しする。ベースロード・間接送電権・先渡にAPI対応はない。画面運用に置き換えたときの工数を今のうちに見積もる。
  6. 預託金は続報を待つ。「システムを利用しない方法を検討中」の段階であり、今できるのは案内が出たときに拾える体制を作っておくことだけである。

数値照合表

本文に出した値と表現を、一次情報の記載と1対1で対照した表である。

#項目本文の値一次情報(出典・該当箇所)
1時間前の新システム稼働日2026年9月30日JEPX 2026年9月8日公表文(時間前市場)
2新システムでの取引開始10月1日受渡分より取引可能JEPX 2026年9月8日公表文(時間前市場)
3現行システムでの取引9月30日受渡分まで取引可能JEPX 2026年9月8日公表文(時間前市場)
4現行システムの稼働終了実績データ等の取得のため10月9日までは稼働JEPX 2026年9月8日公表文(時間前市場)
5清算書の取得先「新システムでの売買に伴う清算書は、現行清算システムでは取得することが出来ません」JEPX 2026年9月8日公表文(時間前市場)
6スポット新システムの稼働2026年4月1日より新システムを稼働JEPX 2026年9月8日公表文(スポット市場)
7スポット現行システムの並行稼働2027年3月31日受渡分までJEPX 2026年9月8日公表文(スポット市場)
8並行稼働終了までにすること「自らシステムを用意するか、本取引所連係システム提供事業者と契約する必要があります」JEPX 2026年9月8日公表文(スポット市場)
9清算システムの並行稼働2027年3月31日までJEPX 2026年9月8日公表文(清算システム)
10清算システムの廃止4月1日以降は廃止JEPX 2026年9月8日公表文(清算システム)
11廃止後の清算書の取り方各取引システムの清算管理から取得し、決済日で合算し移動金額を確認(非化石取引も含む)JEPX 2026年9月8日公表文(清算システム)
12預託金制度「システムを利用しない方法を現在検討しております」JEPX 2026年9月8日公表文(預託金制度)
13その他システムの新画面2027年3月までに新たな取引用画面を用意(API対応はなし)JEPX 2026年9月8日公表文(その他システム)
14その他システムの清算書・手数料清算書はスポット市場の清算管理から、売買手数料は取引用画面より取得JEPX 2026年9月8日公表文(その他システム)

よくある質問

Q1. JEPXの時間前市場は、いつから新システムになるのですか。
新システムは2026年9月30日に稼働し、10月1日受渡分から取引可能になります。現行システムで取引できるのは9月30日受渡分までです。現行システムはその後も実績データ等の取得のため10月9日までは稼働します。
Q2. 切替の境目は、取引した日と受渡日のどちらですか。
受渡分で切れます。公表文は新システムを「10月1日受渡分より取引可能」、現行システムを「9月30日受渡分まで取引可能」としています。取引を行った日ではなく、その商品の受渡日で判断することになります。
Q3. 10月の清算書はどこから取ればよいのですか。
受渡日で取得先が分かれます。公表文は「新システムでの売買に伴う清算書は、現行清算システムでは取得することが出来ません。新システムの清算管理より取得頂く必要があります」としています。9月30日受渡分までは現行清算システム、10月1日受渡分からは新システムの清算管理になります。
Q4. スポット市場はどうなるのですか。
スポット市場の新システムは2026年4月1日からすでに稼働しています。現行システムとの並行稼働が2027年3月31日受渡分までで、それまでに「自らシステムを用意するか、本取引所連係システム提供事業者と契約する必要があります」とされています。
Q5. 清算システムはいつ廃止されるのですか。
2027年3月31日まで並行稼働し、4月1日以降は廃止されます。廃止後は清算書等を各取引システムの清算管理から取得し、決済日で合算して移動金額を確認することになります。この合算には非化石取引も含まれます。
Q6. ベースロード取引や間接送電権取引はAPIで続けられますか。
続けられません。公表文は「2027年3月までに新たな取引用画面を本取引所で用意します(API対応はなし)」としています。ベースロード取引・間接送電権取引・先渡取引を自動化している場合は、画面運用への置き換えが必要になります。
Q7. 預託金の扱いは変わるのですか。
公表文の時点では決まっていません。「預託金制度(必要預託金の算出方法等)については、システムを利用しない方法を現在検討しております。検討結果が出次第、ご案内申し上げます」と記載されており、検討中の段階です。
Q8. 新システムのAPI仕様や接続要件はどこで確認できますか。
2026年9月8日の公表文には記載がありません。本稿執筆時点では未確認です。連係システム提供事業者については公表文の脚注でJEPXの提供事業者ページが示されていますが、事業者名や料金体系は公表文には含まれていません。

編集体制と事実確認プロセス

BESS NEWSの記事はこう作っています

  • BESS NEWSは一次情報主義を採ります。本稿の出典は一般社団法人日本卸電力取引所が自ら公表した文書とページのみで、業界紙・ニュースサイト・プレスリリース配信の二次情報は用いていません。
  • 本稿の日付・期日・引用は、保存した公表文PDF(2026年9月8日・2ページ)の本文から該当箇所を特定して突合しています。「数値照合表」の出典欄に該当節を記載しました。
  • 記載が見当たらない事項は「未確認」と明記し、推測で埋めません。本稿では、新システムのAPI仕様と接続要件、切替当日の運用可能時間、連係システム提供事業者の事業者名と料金体系、預託金の新しい算出方法がこれに当たります。
  • 預託金制度と、その他システムの新しい取引用画面は、公表文の表現どおり「検討中」「2027年3月までに用意」の段階であり、確定した仕様ではありません。
  • 「系統用蓄電池の事業者に、どこが効くのか」の節は、一次情報の事実に基づく編集部の解釈です。確定した見通しではありません。
  • 公表文に記載された問い合わせ担当者の個人名と電話番号は、本稿には転記していません。

出典(一次情報)

出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/market/proffessional/4627403001001/

本記事は BESS media の転載条件(出典明記のうえ全文転載可)にもとづき転載しています。 記事内容の著作権は転載元に帰属します。

お気軽にご相談ください

系統用蓄電池事業についてなど、まずはお気軽にお話しください。

メールでお問い合わせいただいたお問い合わせには、2〜3営業日以内に担当者よりご返信いたします。
些細なことでも、まずはお気軽にご相談ください。
お問い合わせはこちら

NEWS

お知らせ