櫻貿易株式会社
技術・仕様・EMS中級

系統用蓄電池のPCS・BMS・EMSにJC-STAR★1を求める改定案、意見公募が始まる。適用は2027年4月以降の契約申込みからの予定(締切11月6日)

資源エネルギー庁は2026年10月6日、「電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン」の改定案を公表し、意見公募を始めた(e-Gov 案件番号620340012、締切11月6日)。改定案は第2章第1節に「分散型電源のサイバーセキュリティ対策」の項を新しく設け、IP通信機能を持つ機器に、JC-STAR★1以上の適合ラベルが付いた製品を使うよう求めている。蓄電設備について案が示した適用開始は、特別高圧・高圧が2027年4月1日、低圧が同年10月1日。その日以降に契約申込みを受け付けた案件からで、受付を終えた案件には設備が未設置でも遡らない。ただし、適用日以降に対象機器をIP通信機能付きの機器へ変更する場合や、既設設備で増設・交換する場合は、その機器に要件がかかる。意見公募の段階なので、最終的な内容はこのあと変わりうる。

読了目安:約8分対象読者:中級(2027年度以降に契約申込みを控える開発事業者・EPC、PCS・BMS・EMSを選ぶ設計担当)種別:改定案(意見公募中)の解説

要点まとめ

何が起きたか:系統連系技術要件ガイドラインの改定案の意見公募が2026年10月6日に始まった(締切11月6日)。同じ日の次世代電力系統WG 第13回でも資料4として報告された。

なぜ重要か:案どおりなら、2027年4月1日以降に契約申込みを受け付ける特高・高圧の系統用蓄電池は、PCS・BMS・EMSなどIP通信機能を持つ機器をJC-STAR★1以上のラベル付き製品にすることが、各一般送配電事業者の系統連系技術要件に反映されれば、連系の条件になる(ガイドラインは標準的な指標で、実際の要件は各社の系統連系技術要件による。改定案 p.7)。

何をすべきか:採用予定の機器について、メーカーにJC-STAR★1の取得状況と予定時期を確かめる。案に意見があれば11月6日までに提出する。

改定案が求めること:対象になる機器

改定案の該当箇所は、第2章第1節「5.分散型電源のサイバーセキュリティ対策」(改定案 p.9〜11)である。太陽光発電設備と蓄電設備の適用範囲は次のとおり書かれている。

ゲートウェイ等(電気設備内部の通信ネットワークと外部ネットワークとの接続点として機能し、通信の中継又は制御を行う機器をいう。…)、電気設備内部の通信ネットワークにおいてゲートウェイ等より発電等設備側に存在する機器及びゲートウェイ等を介さずにシステム内の主要な構成製品とIP通信を行う機器。

出典:改定案 第2章第1節5(1)① ア(p.9〜10)
ガイドライン改定案がJC-STAR★1以上を求める機器の範囲を示した図。太陽光発電設備・蓄電設備では、ゲートウェイ等、その内側にあるPCS・BMS・EMS等の出力制御装置や遠隔監視装置、ゲートウェイ等を介さずに主要な構成製品とIP通信を行う機器が対象。IP通信機能があれば使っていない機器も必要で、IP通信機能を持たない機器などは対象外。
図1:改定案がJC-STAR★1以上を求める機器の範囲(太陽光発電設備・蓄電設備)。出典=資源エネルギー庁 改定案 p.9〜10・次世代電力系統WG 第13回 資料4。改定案の段階の内容。作図=BESS NEWS編集部。

外とつながる出入口のゲートウェイだけではない。その内側のネットワークにある機器や、ゲートウェイを通らずに主要な構成製品と通信する機器も含まれる。例外は、一般用電気工作物のうちインターネット回線との接続に使うルーティング機器で、発電等設備を制御する機能を持たないものに限られる。

次世代電力系統WG 第13回の資料4は、対象をもう少し具体的に書いている。PCS・BMS・EMSなどの出力制御装置、遠隔監視装置、ゲートウェイを介さずに主要な構成製品と通信上つながっているIoT機器である。理由として、インターネットに直接出ていない機器でもIP通信機能がある以上は外部からの侵入のリスクがある、と説明している。

資料4はもう1点、実務で迷いやすいところを整理している。IP通信機能を持たない機器は対象外。一方で、IP通信機能を備えていて使う予定がない機器は、取得が必要になる。

適用は「契約申込みの受付日」で分かれる

改定案は、適用開始を連系の日ではなく、契約申込みを受け付けた日で決めている。

電源対象機器適用開始(その日以降に契約申込みを受け付けた案件)
太陽光発電設備・蓄電設備ゲートウェイ等、その内側の機器、ゲートウェイを介さず主要構成製品とIP通信する機器特別高圧・高圧:2027年4月1日
低圧:2027年10月1日
風力発電設備ゲートウェイ等のファイアウォール機能又は同等の機能を持つ機器2027年4月1日
燃料電池(逆変換装置を用いて連系するもの)太陽光・蓄電設備と同じ範囲の構成機器2028年4月1日

資料4(第13回次世代電力系統WG)は、この表の燃料電池の適用開始に「必要に応じて経過措置の導入を検討」、風力発電設備に「対象範囲の拡大やその適用開始時期について現在検討中」と注記している。

出典:改定案 第2章第1節5(1)①〜③(p.9〜10)

設備は未設置であっても発電等設備に関する契約申込みの受付が完了しているものについては、本要件は遡って適用しない。

出典:改定案 第2章第1節5(1)(p.9)

資料4の手続きの図は、契約申込みの「受付」を、不備のない書類の提出と保証金の入金がそろった時点として描いている。案どおりなら、特高・高圧の蓄電池で2027年3月末までに受付まで進んだ案件には、この要件はかからない。

逆に、接続検討の回答を待っているうちに4月1日を越えると、機器をラベル付き製品にそろえる必要が出てくる。

既設の増設・交換と、猶予の条件

改定案は、新しく連系する案件だけでなく、すでに動いている設備の増設や機器交換にも触れている(改定案 p.10〜11)。適用開始日以降に、既設の分散型電源の対象機器を増設・交換し、その機器がIP通信機能を持つ場合は、増設・交換する機器に要件がかかる。新設の計画で使う予定の機器をIP通信機能のある機器に変える場合も同じだ。

そのうえで、交換について猶予の道を残している。ただし条件はかなり絞られている。

  1. 対象機器の交換に際し、発電等設備の変更に伴う接続検討、又は接続検討の要否確認を行うものであること
  2. 要件を適用すると、発電事業の継続に大きな影響を及ぼすなどの過度な負担が生じると、属地の一般送配電事業者が認めること
  3. 次の3点について、一般送配電事業者が指定する様式で個別に協議し、了承を得ること。ラベル付き製品への交換が難しい理由と「過度な負担」の具体的な内容。リプレースや広範な装置切替の時期を特定し、ラベル付き製品へ交換する具体的な計画。設置者が講じるサイバーセキュリティ対策(「電力制御システムに関するサプライチェーン・セキュリティ対策の手引き」など3つの文書・ツールの利用、又は同等の対策)

この条件がそろって初めて「当面の間」交換が猶予される。故障したPCSを同じ型番で入れ替えるつもりでいると、案どおりならその時点で要件が効く可能性がある。

資料4は、増設とFIP転・卒FITの扱いも示している。太陽光発電に蓄電池を増設するような場合、増設部分の機器はラベル付き製品が必要で、既設の機器をそのまま使うなら交換は求めない。FIP転の認定申請そのものではJC-STARへの対応は求めず、FIP転や卒FITで設備の増設・変更を伴わない場合も交換は求めない。リパワリングやリプレースを伴うときは、更新する機器にラベル付き製品が必要になる。

運転中の案件の担当者へ

猶予は「交換すれば必ず猶予される」仕組みではない。案では、接続検討又はその要否確認を伴う交換で、一般送配電事業者が過度な負担と認め、3点の協議で了承を得た場合に限られる。予備品の型番と調達先を、保守計画の中で確かめておきたい。

これまでの方針から、今回文書になったこと

BESS NEWSは2026年2月9日の記事で、2027年4月から(低圧は10月から)JC-STAR★1が系統連系の要件になる方針を伝えた。方針は、2025年12月の第20回グリッドコード検討会で太陽光・蓄電池について決まっていたものだ(資料4の経緯表)。実務の確認点は4月の解説記事でも整理している。

今回はその方針が、ガイドラインの改定案という条文の形で示された。新しく文書に出たのは次の点である。

  • 適用の基準を「契約申込みの受付日」とし、受付を終えた案件には遡らないこと(改定案 p.9)
  • 増設・交換への適用と、交換猶予の条件(改定案 p.10〜11)
  • 増設、FIP転・卒FITの扱い(資料4)
  • 燃料電池の適用開始を2028年4月1日とすること(改定案 p.10)

意見公募の出し方と、今後の手続き

意見の受付は2026年10月6日19時30分に始まり、締切は11月6日23時59分(e-Govの案件ページ)。意見公募要領は「11月6日(金)必着」としている。提出の方法は、e-Govの意見提出フォーム、郵送、電子メールの3つ。いずれも要領の別紙の様式で、該当箇所・意見内容・理由を書く。電話では受け付けない。

資料4によると、ガイドラインは意見公募を経て年内を目途に改定される予定だ。各一般送配電事業者はこれを参照して系統連系技術要件(託送供給等約款の別冊)を改定し、年度内に経済産業大臣へ認可を申請する予定とされている。改定も認可も、まだ行われていない。

開発事業者・EPCが今確かめること

#確かめること根拠
12027年4月1日(低圧は10月1日)より前に契約申込みの受付まで進めるか改定案 p.9〜10
2採用予定のPCS・BMS・EMS・遠隔監視装置・ゲートウェイがIP通信機能を持つか。持つならJC-STAR★1の取得状況と取得予定時期改定案 p.9〜10、資料4
3IP通信機能はあるが使わない機器が含まれていないか資料4
4運転中の案件で、故障時に入れ替える機器の調達先にラベル付き製品があるか改定案 p.10〜11
5案に意見があるか。あれば11月6日までに提出意見公募要領、e-Gov 案件ページ

よくある質問

Q1. 改定はもう決まったのですか。
いいえ。2026年10月6日に改定案の意見公募が始まった段階で、締切は11月6日です。資料4はガイドラインを年内目途に改定する予定としていますが、内容は意見公募のあとで変わりえます。
Q2. どの日付で、要件がかかるかどうかが決まりますか。
改定案では、契約申込みを一般送配電事業者が受け付けた日です。蓄電設備は特別高圧・高圧が2027年4月1日、低圧が2027年10月1日で、その日以降に受け付けた案件から適用します。受付を終えた案件には、設備が未設置でも遡りません。ただし、適用日以降に、使う予定だった対象機器をIP通信機能付きの機器へ変更する場合や、既設の設備で対象機器を増設・交換し、その機器がIP通信機能を持つ場合は、その機器に要件がかかります(改定案 p.10)。
Q3. IP通信機能を使わない設定にすれば、対象から外れますか。
資料4によると外れません。IP通信機能を備えていて使う予定がない機器も、取得が必要とされています。IP通信機能を持たない機器は対象外です。
Q4. 故障した機器を交換するときも、ラベル付き製品が必要ですか。
改定案では、交換する機器がIP通信機能を持てば要件がかかります。猶予が認められるのは、交換に伴って接続検討又はその要否確認を行うもので、過度な負担が生じると属地の一般送配電事業者が認め、3点について協議し了承を得た場合に限られます。
Q5. FIP転や卒FITのときに機器を替える必要はありますか。
資料4によると、FIP転の認定申請そのものではJC-STARへの対応を求めず、設備の増設や変更を伴わなければ交換も求めません。リパワリングやリプレースを伴う場合は、更新する機器にラベル付き製品が必要です。
Q6. 意見はどうやって出せばよいですか。
e-Govの意見提出フォーム、郵送、電子メールのいずれかで、意見公募要領の別紙の様式に、該当箇所・意見内容・理由を書いて提出します。e-Govの受付締切は11月6日23時59分で、要領は11月6日(金)必着としています。電話では受け付けていません。

編集部の見立て

  1. 実務の分かれ目は「受付日」だ。接続検討の回答から契約申込みの受付までの期間を逆算すると、2027年3月末に間に合うかどうかは2026年度のうちに見えてくる。間に合わない案件は、機器選定の段階でラベル付き製品を前提にしておくほうが、後から設計を替えるより手戻りが小さい。
  2. 猶予の条件は、新設ではなく運転中の設備の保守計画に効いてくる。案どおりなら、故障時に同じ型番へ入れ替えるという前提が崩れうる。保守契約の予備品と調達先を見直す材料になる。
  3. 意見公募は案の段階で中身を動かせる最後の機会になりうる。「使う予定のないIP通信機能」の扱いや猶予の手続きは、機器メーカーや運転中の事業者の負担に直結する論点で、意見を出す価値がある。

編集体制と事実確認プロセス

BESS NEWSの記事はこう作っています

  • BESS NEWSは一次情報主義を採ります。官公庁・電力広域的運営推進機関・一般送配電事業者などが自ら公表した文書とページのみを出典とし、業界紙・ニュースサイト・プレスリリース配信の二次情報は出典に用いません。
  • 本稿は、e-Govの案件ページ、意見公募要領(3頁)、改定案本文(34頁)、次世代電力系統WG 第13回 資料4にもとづきます。いずれも2026年10月6日の監視で取得しました。
  • 改定案と要領はPDF原本からテキストを取り出して照合しました。改定案の頁番号は、本文下部に印刷された頁番号(PDFの13〜15枚目が p.9〜11)で示しています。
  • 資料4は原本PDFを取得できず、本文のテキストで確認しました。そのため資料4は頁番号を示していません。
  • 改定は意見公募中で、条文・適用時期・猶予の条件はいずれも案の段階です。「編集部の見立て」は一次情報の事実にもとづく編集部の解釈で、確定的な見通しではありません。

数値照合表

本文に出した主要な数値と条文を、一次情報の該当箇所と1対1で対照した表である。

#本文の数値・事実一次情報の記載出典(該当箇所)
1案件番号620340012・公示2026年10月6日・任意の意見募集案件番号 620340012/案の公示日 2026年10月6日/任意の意見募集e-Gov 案件ページ
2受付開始10月6日19時30分・締切11月6日23時59分受付開始日時 2026年10月6日19時30分/受付締切日時 2026年11月6日23時59分e-Gov 案件ページ
3要領では11月6日(金)必着、提出はe-Gov・郵送・電子メール「令和8年10月6日(火)~令和8年11月6日(金)必着」、提出方法(1)〜(3)意見公募要領 p.1〜2
4JC-STAR★1以上の適合ラベル付与品を使う「★1(レベル1)…以上の適合ラベルが付与された機器を用いることとする」改定案 p.9
5蓄電設備 特高・高圧2027年4月1日、低圧2027年10月1日「特別高圧および高圧に連系するもの:2027年4月1日」「低圧に連系するもの:2027年10月1日」改定案 p.10
6風力2027年4月1日、燃料電池2028年4月1日②風力発電設備 イ 2027年4月1日/③燃料電池 イ 2028年4月1日改定案 p.10
7受付完了済みは未設置でも遡らない「設備は未設置であっても…受付が完了しているものについては、本要件は遡って適用しない」改定案 p.9
8猶予は接続検討又は要否確認を行う交換で、過度な負担を一般送配電事業者が認め、3点を協議し了承を得た場合「接続検討若しくは接続検討の要否確認を行うものであって…過度な負担が生じると属地の一般送配電事業者が認める場合には、次の3点に関して…了承を得ることを条件として、当面の間…猶予する」改定案 p.10〜11
9対象機器の例:PCS・BMS・EMS等の出力制御装置、遠隔監視装置「PCS、BMS、EMS等の出力制御装置、遠隔監視装置」次世代電力系統WG 第13回 資料4
10IP通信機能はあるが使う予定のない機器も取得が必要「IP通信機能を具備しておりIP通信の使用を予定していない機器については…JC-STAR★1の取得が必要」資料4
11年内目途にガイドライン改定予定、一般送配電事業者は年度内に大臣認可を申請予定「年内を目途に改定予定」「年度内に経済産業大臣に認可を申請予定」資料4
12太陽光・蓄電池の方針は2025年12月の第20回グリッドコード検討会で決まった「2025年12月 第20回グリッドコード検討会にて、太陽光・蓄電池におけるJC-STAR★1要件化の方針を決定」資料4

出典(一次情報)

出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/technology/standard/4630202405001/

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