低圧の系統用蓄電池、敷地分割による低圧連系への対策案。名義を分けた分割と判断される場合は地権者の確認を「1年遡り」から「5年遡り」へ、異種設備の例外(特段の理由5)から蓄電設備を外す方向(次世代電力系統WG 第13回)
低圧の系統用蓄電池の契約申込みが、2026年8月末時点で約13万kW・約2,800件に達した。資源エネルギー庁は10月6日の次世代電力系統ワーキンググループ(WG)第13回で、土地を分けて低圧で連系しようとする案件への対策として、電気事業法の分割設置対策を蓄電設備について見直す方向を示した。一体の土地を複数名義に分けて大規模設備を小規模に分割していると判断される場合に地権者の同一性を確認する期間を「1年の遡り」から「5年の遡り」に延ばすことと、異なる種類の設備を接した場所に置く場合の例外(特段の理由5)から蓄電設備を外すことの2点である。資料は「見直すことも考えられるのではないか」と書いており、事務局案の段階で、施行時期も示されていない。
CONTENTS目次
何が起きたか:次世代電力系統WG 第13回の資料2が、低圧の系統用蓄電池の敷地分割対策として、地権者の同一性確認期間の延長(1年→5年の遡り。一体の土地を複数名義に分けて大規模設備を小規模に分割していると判断される場合)と、特段の理由5の対象から蓄電設備を外すことを示した(p.24)。
なぜ重要か:低圧には接続検討のプロセスがなく、保証金も土地の使用権原の提出もなしに容量が確保される(p.15)。土地の分け方や太陽光発電所との位置関係によっては、一の構内として高圧扱いになりうる方向の見直しである。
何をすべきか:低圧で開発・販売を計画している案件は、土地の分け方と既設発電所との位置関係を洗い出しておく。施行時期・経過措置は未定で、1事業者の多数申込みへの対応と土地所有者との関係整理は今後の議論になる。
低圧の系統用蓄電池に何が起きているか
資料2(資料2、24頁)の後半「②低圧の系統用蓄電池に対する対策について」によると、2026年4月に低圧リソースをアグリゲーターが束ねて需給調整市場へ応札できる制度変更があり、それに合わせるように低圧の系統用蓄電池の接続ニーズが急増した。8月末時点で約13万kW、約2,800件の契約申込みがある(p.13)。
低圧(出力50kW未満)には、高圧以上で求められる接続検討のプロセスがなく、契約申込み(容量確保)から始まる。そのため接続検討の段階に入れた規律はどれも低圧には適用されない。契約申込みのときも保証金の支払いなしで容量が確保され、申込みから連系までが早ければ1か月ほどと短いことなどから、土地の使用権原の提出も求めていない(p.15)。
一般送配電事業者へのヒアリングでは、1事業者が同時期に数百件を申し込む例や、低圧で連系するために敷地を分割しようとする例があるという。資料は、低圧の蓄電池でも同じ配電系統に集中すれば上位系統の潮流・電圧・設備容量に大きく影響しうること、事故のあと低圧設備は自動で復帰するため、多数がつながると事故復旧に支障をきたす恐れがあることも挙げた(p.16)。
当座の具体策として資料が挙げたのは3つで、今回議論したのは①である(p.17)。
- 昇圧回避等を目的とした敷地分割による低圧接続希望案件への対策
- 1事業者が多数の契約申込みを行う事案への対応
- 土地所有者と事業実施者との関係整理(高圧以上でも別途検討)
見直しの土台:電気事業法の分割設置対策
分割設置対策は、特段の理由なく意図的に設備を分けて置くことで、本来かかる保安規制を逃れる不公平や、託送料金への転嫁、不要な電柱・メーターの設置が生じるのを防ぐために、太陽光を主な対象として2022年4月の電気事業法施行規則改正で入った仕組みである(p.18・p.21)。柵などで分かれていても、特段の理由なく複数の設備を隣接した構内に置く場合は「一の構内」に当たると整理されている。
その例外として「発電等設備の分割対策に関するQ&A」は8つの「特段の理由」を挙げており、その5が「異なる種類の発電等設備を接した場所に設置する場合」である(p.23)。再エネ設備の設置を進める観点から置かれた例外で、蓄電用の設備が発電等用電気工作物と位置づけられたあとも、発電設備と蓄電設備を接して置く場合は、蓄電池の特性を特に考慮せず発電設備と同じように扱ってきた(p.18)。
資料は、低圧の系統用蓄電池について寄せられた相談事例を2つ示している(p.19〜20)。
| 事例 | 内容 | いまの扱い(資料2) |
|---|---|---|
| 事例1 | 1つの土地を複数の名義に分け、そのあと低圧の系統用蓄電池を置く | 登記簿上の地権者の同一性は、申込みの年度から遡って1年以内(FIT制度を使う太陽光は2014年度まで遡り)を確認している。申込みの1年以上前に名義を分けていれば、分割設置に当たらないと扱われる場合もある |
| 事例2 | 既設の低圧太陽光・風力発電所の敷地を分筆する、敷地内に柵で別構内をつくる、隣の土地を使う、のいずれかで低圧の系統用蓄電池を置く | 異種の設備を隣接して置くことは「特段の理由」に当たるとされ、分割設置が原則認められている |
見直しの2つの方向
資料は「分割設置の対策の制度創設時には想定されていなかった事象が生じている」として、次の方向で見直すことも考えられるのではないか、とした(p.24)。
蓄電設備にあっては、一体の土地を複数の名義に分け、大規模設備を小規模設備に分割していると判断される場合、地権者の同一性確認期間を、各種申込みの年度から「1年の遡り」を「5年の遡り」に変更
出典:資料2 p.24 見直しポイント①再エネ発電設備と同様の例外的取扱いを認める政策的必要性は必ずしも高くないことから、蓄電設備を特段の理由5の対象外とする。
出典:資料2 p.24 見直しポイント②
①は事例1、②は事例2への手当てにあたる。①では、申込みの数年前に名義を分けておく方法が通りにくくなる。②が入れば、既設の低圧太陽光発電所の分筆地・別構内・隣地に低圧の系統用蓄電池を置く場合、「特段の理由5」(異なる種類の発電等設備を接した場所に設置する場合)を根拠に別の構内として扱われる道がなくなる。資料が見直しを示したのは特段の理由5だけで、道路・河川を挟む場合などほかの特段の理由には触れていない。また資料は、異なる種類の設備同士でも保安規制の回避が懸念される場合等は、特段の理由に形式的に当たっても総合判断を行っているとしている(p.23)。一の構内と判断されれば、合計の出力で高圧の扱いになりうる。
一方で資料は、蓄電設備を需給調整市場での活用や再エネの出力制御低減のために、発電設備と同じ構内にその附属設備として置くことは推奨しているとしている(p.24)。事例2でも、既設の低圧太陽光発電所の敷地内に蓄電池を併設し、発電所内で変動を調整する、需給調整市場に参加する、といった形は「特段の懸念は生じない」と整理されている(p.20)。資料の見直し方向は「蓄電設備」全般について書かれているが、編集部の見方では、影響を受けるのは併設ではなく、隣に別の設備として置く系統用(単独)の蓄電池である。
同じ系統への大量連系による影響は、分割設置の場面に限った問題ではないとして、必要に応じて別途検討するとされた(p.24)。
8月の「低圧にも規制へ」から何が進んだか
BESS NEWSは2026年8月24日の記事で、再エネ主力電源化小委員会 第4回の資料2が、低圧の系統用蓄電池についても早期に対策を講じることも視野に検討を進めるとしたことを伝えた。そのときの想定論点は、接続検討プロセスを求めるか、導入済みの対策を契約申込みに適用するか、の2つで、具体的な手段は示されていなかった。
今回は、当座の具体策3つが整理され、そのうち敷地分割への対策として、電気事業法の分割設置対策の運用を蓄電設備について変える方向が、確認期間(5年の遡り)と例外の除外(特段の理由5)という具体的な形で示された。受付状況として、8月末時点の約13万kW・約2,800件という数字も示された。
低圧で開発・販売する事業者が今確かめること
| # | 確かめること | 根拠 |
|---|---|---|
| 1 | 計画地が、一体の土地を複数の名義に分けたものか。分けたのはいつか(申込み年度から5年以内か) | 資料2 p.19・p.24 |
| 2 | 既設の低圧太陽光・風力発電所の分筆地・別構内・隣地に置く計画か | 資料2 p.20・p.24 |
| 3 | 発電所と同じ構内の附属設備(併設)として計画できないか | 資料2 p.20・p.24 |
| 4 | 一の構内と判断された場合に、高圧の手続き(接続検討・保証金・保安規制)で事業が成り立つか | 資料2 p.15・p.22 |
| 5 | 1事業者の多数申込み・土地所有者との関係について、次回以降に示される対策 | 資料2 p.17 |
今回は見直しの方向が示された段階で、施行時期も、すでに申し込んだ案件の扱いも示されていない。ただ、土地を分けて小口の低圧区画として売る計画は、案どおりになれば一の構内として扱われる可能性がある。区画の分け方と分けた時期を、いまのうちに整理しておきたい。
よくある質問
編集部の見立て
- 2つの見直しは、名義を分ける方法(事例1)と、太陽光等の発電所の隣に別の設備として置く方法(事例2)の両方をふさぐ組み合わせになっている。低圧で小口に分けて売る事業の前提は、案どおりなら大きく変わる。
- 一方で、同じ構内に附属設備として置く併設は推奨すると明記された。単独の系統用か、発電所の併設かという線引きが、低圧の蓄電池事業の分かれ目になると編集部はみている。
- 1事業者の多数申込みと土地所有者との関係は、まだ議論されていない。資料は同じ系統への大量連系の影響も別途検討するとしており、低圧への規律は今回の2点で終わらない可能性が高い。
編集体制と事実確認プロセス
BESS NEWSの記事はこう作っています
- BESS NEWSは一次情報主義を採ります。官公庁・電力広域的運営推進機関・一般送配電事業者などが自ら公表した文書とページのみを出典とし、業界紙・ニュースサイト・プレスリリース配信の二次情報は出典に用いません。
- 本稿は、次世代電力系統WG 第13回の資料2(24頁)の後半にもとづきます。2026年10月6日の監視で取得しました。
- 資料2は原本PDF(Wayback Machine経由で取得)でテキストを取り出し、頁番号(原本に印刷された番号)を照合しました。p.24の「その他の対応」の見出しの下は、同一系統への大量連系による系統影響を別途検討する1項目だけで、欠けている記載が無いことも確かめています。
- 分割設置対策の見直しは事務局案の段階で、施行時期・経過措置・既に申し込んだ案件の扱いは示されていません。
- 「編集部の見立て」は一次情報の事実にもとづく編集部の解釈で、確定的な見通しではありません。
数値照合表
本文に出した主要な数値と記載を、一次情報の該当箇所と1対1で対照した表である。
| # | 本文の数値・事実 | 一次情報の記載 | 出典(該当箇所) |
|---|---|---|---|
| 1 | 低圧の系統用蓄電池 8月末で約13万kW・約2,800件の契約申込み | 「8月末時点で約13万kW、約2,800件の契約申し込みがなされている状況」 | 資料2 p.13 |
| 2 | 2026年4月から低圧リソースをアグリゲーターが束ねて需給調整市場へ応札可能 | 「2026年4月より、低圧リソースをアグリゲーターが束ねる形で、需給調整市場へ応札することを可能とする制度変更がなされた」 | 資料2 p.13 |
| 3 | 低圧は接続検討プロセスが無く、保証金なし・使用権原の提出なし、早ければ1か月ほどで連系 | 「接続検討のプロセスは存在せず、契約申込み(容量確保)からプロセスが開始」「保証金の支払いなしで申込みが可能」「早ければ1か月ほど」 | 資料2 p.15 |
| 4 | 1事業者が同時期に数百件申し込む例・敷地分割の例 | 「1事業者が大量に申し込みを行う事例(同時期に数百件など)や、低圧設備として連系するためにいわゆる敷地分割を行おうとする事例が存在」 | 資料2 p.16 |
| 5 | 当座の具体策3つ、本日は①分割対策 | ①敷地分割による低圧接続希望案件への対策 ②1事業者が多数の契約申込みを行う事案への対応 ③土地所有者と事業実施者との関係整理。「本日はこのうち、①の分割対策」 | 資料2 p.17 |
| 6 | 分割設置対策は2022年4月の電気事業法施行規則改正 | 「2022年4月に電気事業法施行規則を改正し…「一の構内」に当たると整理された」 | 資料2 p.21 |
| 7 | 現行の地権者確認は申込み年度から遡って1年以内(FIT太陽光は2014年度まで) | 「接続検討申込み又は契約申込みを行う年度から遡って1年以内(FIT制度を利用する太陽光発電設備については、2014年度まで遡り)の状況を確認」 | 資料2 p.19 |
| 8 | 見直し①:1年の遡り→5年の遡り | 「地権者の同一性確認期間を、各種申込みの年度から「1年の遡り」を「5年の遡り」に変更」 | 資料2 p.24 |
| 9 | 見直し②:蓄電設備を特段の理由5の対象外に | 「蓄電設備を特段の理由5の対象外とする」 | 資料2 p.24 |
| 10 | 特段の理由5は異なる種類の発電等設備を接した場所に設置する場合 | 「5. 異なる種類の発電等設備を接した場所に設置する場合」 | 資料2 p.23 |
| 11 | 併設で発電所内の変動調整・需給調整市場参加は特段の懸念なし | 「既設低圧太陽光発電所に蓄電池を併設…①発電所内で変動を調整 ②需給調整市場への参加 特段の懸念は生じない」 | 資料2 p.20 |
出典(一次情報)
- 資源エネルギー庁「系統用蓄電池をはじめとする発電等設備の迅速な系統連系に向けた対応について」次世代電力系統ワーキンググループ 第13回 資料2(PDF・24頁)(2026年10月6日 公表。本稿は p.13・p.15〜24 を参照)
- 次世代電力系統ワーキンググループ 第13回(開催資料一覧)(2026年10月6日 開催)
※二次情報(業界紙・ニュースサイト・プレスリリース配信)は出典に用いていません。
出典: BESS media(株式会社エコ革)
https://bessnews.jp/institutional/proffessional/4630203102004/
本記事は BESS media の転載条件(出典明記のうえ全文転載可)にもとづき転載しています。 記事内容の著作権は転載元に帰属します。